1. 2025年3月期の業績予想
同社グループは、電力コストの高騰、脱炭素社会の構築といった現在の経済環境を踏まえ、再生可能エネルギーの活用や、電力の運用改善・設備改善・調達改善による電力コストの削減を提案することで、ライフタイムバリュー(顧客生涯価値)の向上を図っている。2023年3月期より事業用太陽光発電システムを主力商材としてエネルギーコストソリューション事業の拡大を軸とする成長戦略をとっているが、引き続き好調な受注を背景に、今期もさらに事業用太陽光発電システムの販売を拡大する。また、小売電気事業については業績変動に対するリスクヘッジ施策を講じて安定的なストック収益源とすることで、グループ全体の成長につなげる考えだ。
以上の前提に基づき、2025年3月期の連結業績は、売上高34,000百万円(前期比13.7%増)、営業利益6,500百万円(同24.6%増)、経常利益6,570百万円(同24.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益4,320百万円(同22.0%増)と増収増益決算を予想している。積極的な人材投資を図り、エネルギーコストソリューション事業の拡大と小売電気事業の着実な成長によって、今期も営業利益は過去最高の更新を見込む。ただ、例年どおり期初の業績予想は保守的な傾向が強く、弊社では決算段階では期初予想を上回る可能性が高いと考えている。
2. セグメント別業績予想
エネルギーコストソリューション事業では、2025年3月期の売上高10,906百万円(前期比41.0%増)、売上総利益6,654百万円(同43.2%増)、セグメント利益4,575百万円(同51.0%増)と、事業用太陽光発電システムの販売を主軸とすることで大幅な増収増益を予想する。今期は事業用太陽光発電システムについて、売上高100億円(前期実績61億円)、売上総利益60億円(同34億円)と大幅な増加を計画しており、人員など経営資源を集中投下することでエネルギーコストソリューション事業及び同社グループ全体の業績拡大に貢献する見通しだ。意欲的な計画であるが、足下での月間工事高が粗利5億円以上で推移しており期末に向けてさらに拡大を目指していること、受注残の繰り越しが大きく積み上がっていることから、かなり確度の高い計画と考えられる。販売単価が高い事業用太陽光発電システムのウェイトが高まることで生産性が向上するため、セグメント利益率は42.0%(前期比2.8ポイント上昇)となる見通しだ。エネルギーコストソリューション事業は、本来は販売により対価を受け取るフロー収益であるが、市場規模が大きく競合他社もいないことから、営業リソースを投入することで、継続的に対価を受け取るストック収益に近い形で全社利益の拡大に貢献する見通しだ。
スマートハウスプロジェクト事業では、売上高4,310百万円(前期比2.9%減)、売上総利益1,803百万円(同2.3%減)、セグメント利益575百万円(同2.0%減)とおおむね横ばいを計画する。売上総利益率は41.8%(同0.2ポイント上昇)、セグメント利益率は13.4%(同0.2ポイント上昇)を見込む。前期実績や2025年3月期計画は巡航速度といったところだ。競合他社が多いことから、エネルギーコストソリューション事業に比べて利益率は低くとどまっている。
小売電気事業については、売上高18,783百万円(前期比5.9%増)、売上総利益2,742百万円(同0.8%減)、セグメント利益2,082百万円(同8.2%減)で、売上総利益率は14.6%(同1.0ポイント低下)、セグメント利益率も11.1%(同1.7ポイント低下)を計画する。容量市場が2025年3月期から開始することで容量市場拠出金の負担増があり、電力市場価格は前期よりも上昇を見込む一方、相対電源価格は前期よりも低下する見込みだ。また、販売単価については保守的に計画している。なお、容量市場とは、需要のピーク時に十分な発電能力を確保するため、発電事業者に対して安定供給を約束させ、需要家への確実な電力供給確保を目的に創設された市場である。電力広域的運営推進機関(広域機関)が設定した全国で必要な供給力や、応札価格に基づき約定価格が決定されることになる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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