2. 保険薬局事業の動向
(1) 調剤売上高の状況
保険薬局事業の売上高は、調剤薬局の調剤売上高と売店やEC等の商品売上高で構成されている。このうち、2021年3月期の調剤売上高は前期比3.0%減の136,832百万円となった。出店期・タイプ別内訳を見ると、自力出店店舗のうち、既存店については前期比1.9%減、金額ベースで809百万円の減収となった。一方、M&A等で取得した店舗については、既存店と新店を分けていないため解りにくい面もあるが、前期比3.8%減、金額ベースで3,739百万円の減収となっている。
調剤売上高を処方箋応需枚数と処方箋単価に分解すると、2021年3月期の処方箋応需枚数は前期比9.8%減の13,369千枚、処方箋単価は同7.5%増の10,234円となった。これらも出店期やM&A等の要因による影響を受けているため、以下ではそれぞれについてもう少し詳細に見る。
処方箋応需枚数の実態に近いと考えられる既存店の増減率は前期比9.6%減となった。前述したように、コロナ禍で感染リスクを避けるため、医療機関への受診を控える動きや処方期間を長期化する動きが出たことが要因だ。感染者数が再拡大した2020年11月以降、2021年2月まで処方箋応需枚数はマイナス基調が続いた。
一方、処方箋単価は全体で前期比7.5%の上昇となったが、より実態に近い既存店について見れば同8.5%増となり、前期の2.7%増から大きく上昇した。前述したように、処方期間の長期化に伴って1枚当たりの薬剤料が上昇したほか、調剤技術料単価もGE医薬品の取扱い率上昇や地域支援体制加算取得店舗の増加によって5%程度上昇したと見られる。特に、後発医薬品の取扱い比率(数量ベース)については、グループ全体で2019年4月時点の79.1%から2021年3月時点では85.9%まで上昇し、厚生労働省が目指しているGE比率8割の水準をクリアしている。最高点数となる28点(取扱比率85%以上の店舗)を取得した店舗の構成比は、2019年4月末時点の30.8%から、2021年3月末には64.7%まで上昇しており、単価上昇に寄与している。調剤技術料については地域のかかりつけ薬局としての機能充実や、薬剤コスト低減に対する取り組みの成果に対して付けられる評価点、つまり店舗の付加価値分に相当するため、技術料単価をどの程度引き上げることができるかで店舗の収益力も変わってくると言っても過言ではない。
(2) 出退店とM&Aの状況
2021年3月期末の店舗数は811店舗となり、前期末比で6店舗の増加にとどまった。ここ数年は少なくとも20店舗以上の純増ペースで拡大してきたが、コロナ禍でM&Aの交渉が遅延する等の影響が出たほか、既存店舗の収益力回復や不採算店舗の見直しを優先して取り組んだことが伸び率鈍化の要因となった。新規出店の内訳を見ると、10店舗がオーソドックスな自社出店(マンツーマン型)となり、5店舗が新業態店舗(ローソン併設店)、1店舗が売店、18店舗がM&Aによる取得となっている。一方で、事業譲渡含めて退店が28店舗と前期から7店舗増加した。このうち、JR西日本の駅ナカ店舗8店舗について店舗戦略の見直しを行った結果、第4四半期に譲渡している。
(3) 利益改善要因
保険薬局事業については、下期に収益性が改善しており、前期比で減収ながらも営業利益は2ケタ増益に転じている。ここ数年、店舗の生産性を高めるため各種自動化機器の導入を進めてきたことで、店舗当たりの薬剤師数の最適化が図られたほか、派遣薬剤師のコスト削減も進んだ。例えば、従来は手作業で行っていた薬剤のピッキングや調合作業を自動化機器の導入によって省力化を実現している。薬剤師の数は処方箋応需枚数の多寡にも影響されるため、環境変化に対応したコストコントロールが上手くいったものと考えられる。また、その他の経費削減についても取り組み、下期の収益性向上につながっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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