2. 中長期的な注力領域
エモーショナルシステム事業は2023年9月期に悲願の黒字転換を達成した。これにとどまらず、同事業は2024年9月期も急成長する見通しであることからも明らかだが、中長期的には事業展開次第で大きな成長可能性を秘めていることを理解しておく必要があるだろう。特に社会の関心が高まっている「メタバース」を軸に、事業展開の方向性が拡がる可能性がある。
2023年9月期の最大の実績としては、福岡証券取引所に上場している総合不動産会社の大英産業<2974>向けに開発したメタバースサービスを顧客が利用開始したことが大きい。各社がメタバースの事業化に苦戦する中、着実に企業向けメタバース案件を完遂した。企業がメタバースに求めるサービス要件への理解が深まったほか、メタバースを利用する一般顧客の反応を見て、今後のサービスブラッシュアップに繋がる重要な示唆を得られるよい機会になったものと考えられる。実際同社の過去の決算説明会においてもその点に触れており、企業向けメタバースを今後浸透させていくには、一般顧客のサービス利用の敷居をなるべく低くする(VR用ゴーグルの着用を不要としたり、ユーザー認証を軽くするなど)形で、欲しい情報が簡単かつリアルタイムで得られる3D空間を実現していく必要があるとコメントしている。
また、2023年6月30日付で、ソフトバンク<9434>の「ONE SHIP」プログラムのパートナーとなったほか、ソフトバンクの「5Gコンソーシアム」に加入したことを発表している。前者はソフトバンクとイノベーションの実現を目指す企業が連携・共創するパートナープログラムであり、後者は5G時代を支えるサプライヤー、ソリューションパートナーが集まり、産業・領域のテーマに対して具体的な解決方法を議論・検討し、実証実験(PoC)を行う組織だ。自社でのさらなる事業推進に加え、5G・6Gをキーワードに他社を巻き込んだ形でMetaWalkersの可能性が拡がる形もイメージしやすく、さらなる継続的な取り組みを弊社では期待している。実際に現在MetaWalkersのラインナップ拡充を推進していることも明らかにしており、5Gと360度カメラを組み合わせたリアルタイム配信対応強化などは、開発が完了すれば新需要獲得に繋がる公算が高い。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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