2. 現中期経営計画の進捗
このように成長戦略を推進するなか、新型コロナウイルス感染症の社会活動への影響の長期化や地政学リスクに伴うコストの急上昇、資源管理によるすり身供給量減に伴う相場の上昇など、マクロの事業環境が中期経営計画策定時の想定から大きく変わった。この結果、海外売上高や設備投資など当初計画した目標に届かない項目が出てくる可能性が高まった。一方、世界的にインフレが進行するなか、また国内では人手不足が深刻となるなか、製造も流通もコストに見合った利益を確保する姿勢を明確にし、様々な業種・業態で価格改定が通りやすくなるなど、バブル崩壊後30年続いたデフレから、品質のよさを正当に認める傾向のある緩やかなインフレへと経済環境が様変わりする状況となった。このため紀文食品<2933>の営業利益は、2023年3月期にコスト上昇により中期経営計画の想定ラインから大きく下振れたが、価格改定が進んだ2024年3月期には、当初の目標に限りなく近い過去最高水準の予想を見込むまでに急回復した。このように、マクロ的状況変化に一時翻弄されたものの、価格改定など危機対応力などによって状況変化を克服し、結果的に営業利益面で当初の目標を射程圏に入れることができたということは、次期中期経営計画での再成長へ向けて大きな自信にもなるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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