1. 主な活動実績
(1) 新商品のリリース実績
上期における新商品は、「ディープパッチシリーズ」の第4弾となる「チークポアパッチ」※1のほか、「ピールショット」※2、「ハリシュ」※3の3つとなった。特徴的なのは、大ヒットとなっている「ディープパッチシリーズ」の商品に加え、残り2商品については男性向け化粧品であるところである。男性化粧品市場は今後の成長※4が見込まれており、同社も開発に力を入れている。ただ、3商品のすべてがニッチマーケットの商品であり、同社が進めているマスマーケット商品のリリースには至っていない。
※1 頬の毛穴密集地帯の悩みに焦点を当て毛穴引き締め成分等を配合したマイクロニードル化粧品(2020年3月リリース)。
※2 男性の肌質に特化したシミ対策ピーリングジェル(2020年5月リリース)。
※3 男性の顔のたるみに特化したエイジングケアミストローション(2020年8月リリース)。
※4 (株)富士経済「化粧品マーケティング要覧2020 No.2」によれば、男性化粧品市場は約1,200億円規模までに成長し、今後も更なる成長が見込まれている。
(2) 「ディープパッチシリーズ」のギネス認定
2020年9月10日には、同社の「ディープパッチシリーズ」が、マイクロニードル化粧品市場において売上世界No.1であるとしてギネス世界記録(TM)認定を受け、その認定式が執り行われた。マイクロニードル化粧品市場はまだ小さいながら、世界的にも注目されており、他社に先駆け、かつ品質にも優れた同社には、明らかにアドバンテージが発揮できる市場であると言える。同社は国内に信頼できる製造委託先を確保するとともに、差別化のポイントとなる形状についての意匠権を同社自身が有していることから、知的財産の保護の面でも万全である。
(3) 定期顧客へのアプローチ
同社は、課題となっている新規獲得のテコ入れに取り組む一方、既存の定期顧客へのアプローチも本格的に実施している。その結果、クロスセル発生率※1が上昇するなど、LTV(顧客のもたらす売上高の総計)の拡大に向けて一定の成果を残した。また、継続率向上を目的とした専門窓口を開設したことにより、継続率※2も格段に改善している。
※1 クロスセルとは、現在購入している商品だけでなく、別の商品も購入してもらうためのセールス手法。推進前と比較して1.3%から8.8%にまで向上した。
※2 継続率は、専門窓口の開設前と比較して8.0%から14.1%にまで改善した。
(4) その他施策
その他にも、専門チームによるアフィリエイト※1の再活用やAmazonを始めとしたショッピングモールでの販売強化、Web広告以外の手法※2による広告配信、顧客ヒアリング会の実施など、様々な施策にも取り組んでいる。また、今後は、大手広告媒体への広告出稿や動画広告の活用等にも本格的に取り組む方針である。
※1 Web広告手法の1つであり、媒体主(アフィリエイター)が運営するブログやWebサイト等の媒体に、広告主の商品やサービスについての広告を掲載し、閲覧者がそのリンクを経由して商品を購入した場合に広告主が媒体主に手数料(報酬)を支払う仕組みを言う。最近では、スキルの高い成果報酬型のアフィリエイターが増加したため、再度取り組みを強化する方針としている。
※2 男性向けファッション誌や北海道等の一部地域における地上波TV広告など。
(5) 海外事業展開
台湾支社については、前期(2020年2月期)に着実な売上拡大を実現したものの、コロナ禍に伴って消費マインドの冷え込みが日本以上に厳しく成長の鈍化を招いている。ただ、同社業績の全体に占める割合は低く、影響は限定的である。また、取り扱う商品数の増加や台湾出身の専任担当者を複数名採用し教育に当たるなど、今後の拡大に向けた体制整備に着手している。さらに台湾以外のアジア圏への進出についても準備を進めている。
2. 課題への取り組み
同社は、前期(2020年2月期)の後半より、新規獲得件数の減少を課題として認識しており、その対策に取り組んでいる。一般的な法則として、顧客層の広がりに伴って新規獲得のハードル(獲得コスト)が上がっていく傾向があり、同社もその影響を受けているが、その壁を乗り越えていくための同社固有の課題については、急激な業容拡大に伴って人材の教育や体制の整備が追いつかず、1)適切な広告クリエイティブができていないこと、2)新商品のリリースに遅れが生じていることの2点を挙げている。特に、次の成長フェーズに向けて、これまでのニッチ市場からマスマーケット市場へと展開していく転換期にあることから、「クリエイティブ部門の強化」及び「商品開発部門の強化」などを通じて、課題解決と中長期成長をにらんだ組織体制の立て直しに注力している。
(1) クリエイティブ部門の強化
高いスキルと豊富な経験を有する経験者による教育体制を構築するとともに、短期間で業績への貢献が期待できる即戦力となる経験者の採用強化などに取り組んでいる。その結果、一定の改善は見られるものの、抜本的な立て直しには時間を要するため、具体的な成果はまだこれからである。
(2) 商品開発部門の強化
大手化粧品メーカー出身者等の採用を強化したほか、開発商品ジャンルの拡大、市場調査方法のブラッシュアップ等に取り組んでいる。その結果、商品開発部門は順調に拡大し、開発検討案件数も大幅に増加したが、マスマーケット商品の発売にはいまだ至っていない。今後は、品質最優先を維持しつつも、開発スピードの向上も図っていく方針である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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