―17社が新規上場、年末相場への期待が膨らみ再評価機運高まる展開も―
株式市場は12月相場に突入した。今年も残すところあとわずかだが、4日からは恒例の「師走IPOシーズン」を迎える。今月は半導体関連のキオクシアホールディングス <285A> [東証P]がついに登場するほか、宇宙関連銘柄の上場などが注目されている。日経平均株価が3万9000円台を回復するなか師走IPOへの期待も膨らみつつある。
●IPOを含む中小型株はなお上値重いが上昇余地
12月は17社が新規上場する予定で、昨年に比べ2社の増加となる。具体的な内訳は、東証プライム市場への上場が1社、スタンダード市場への上場が3社、グロース市場への単独上場が11社、グロース市場と福岡証券取引所Qボードへの重複上場が1社、名古屋証券取引所ネクスト市場への上場が1社といったものだ。特に、26日には3社が同時上場するラッシュ状態となる見込みだ。
足もとのIPOを含む中小型株市場は全体的にはなお上値が重い展開が続く。中小型株の動向を示す東証グロース市場250指数は10月下旬に587まで値を下げた後、足もとでは640台まで戻しているものの、3月の年初来高値787からはなお低水準にあり、再評価余地も指摘されている。
●10月上場のオルツやインターメスティックなどは人気に
今秋以降のIPO市場をみても、10月は11社が新規上場したが5社の初値は公開価格を下回った。11月も4社の新規上場銘柄のうち2社の初値が公開価格を割り込んだ。プライム市場の上値の重い状態が続いたなか、鳴り物入りで登場した東京地下鉄 <9023> [東証P]など一部の銘柄を除けば「IPO銘柄への人気は盛り上がりに欠ける状態」(市場関係者)となった。
とはいえ、10月上場銘柄では人工知能(AI)関連のオルツ <260A> [東証G]やメガネブランド「Zoff」を展開するインターメスティック <262A> [東証P]、音声認識処理や自然言語解析処理を用いたプロダクトを手掛けるHmcomm <265A> [東証G]などの銘柄は上場後も堅調な値動きとなっている。成長期待の強いAI関連株などには着実な買いが入っており、全体相場が上昇基調を強めつつあるなか、今後IPO人気が高まることが期待されている。
●キオクシアには不透明要因残るも中期成長期待強い
そんななか、12月IPOで高い関心を集めているのが、18日にプライム市場に上場するキオクシアだ。同社は世界最大級のフラッシュメモリー専業企業で、東芝の半導体メモリー事業が独立して発足した。2020年に上場が承認されたがその際は延期となり、その後も上場が取り沙汰されてきた経緯がある。同社の連結業績は22年度と23年度の純損益は赤字で、25年3月期第3四半期(24年10~12月)は560億~840億円の黒字予想。仮条件から弾いた資金吸収額は1250億円、時価総額は8200億円前後の見込みだ。トランプ次期米政権の発足に向け、中国向けの半導体需要が警戒されているが、米国の対中半導体規制は日本企業には懸念されるほどの影響はないとの見方も出ているほか、先行きAI向けなどの需要拡大が見込まれている。「上場時の株価が伸び悩めば、そこは中長期的な買い場となる可能性がある」(アナリスト)との声もある。
4日には12月IPOの第1号銘柄となるTMH <280A> [東証G]が登場する。同社は半導体製造装置部品の販売・修理サービスなどを手掛けており、越境ECサイト「LAYLA」では31万点以上のアイテムを取り扱っている。24年11月期の単独営業損益は3億6100万円の黒字(前の期は1億2700万円の赤字)の予想。資金吸収額は約10億円、時価総額は50億円台の水準だ。
9日には、インフォメティス <281A> [東証G]が上場する。同社は、エネルギー関連のデータを独自のAIで解析するエナジー・インフォマティクス事業を展開。エネルギー効率化を推進し、脱炭素やグリーントランスフォーメーション(GX)に絡んでいる。24年12月期の連結営業損益は1億300万円の黒字(前期は1億6900万円の赤字)の予想。資金吸収額は30億円程度だ。
●宇宙ベンチャーのSynspectiveに熱視線も
12月中旬以降では、12日にはユカリア <286A> [東証G]が上場する。同社は医療法人の経営支援・高齢者施設の運営・紹介などを行っている。24年12月期の連結純利益は前期比92%増の20億1500万円の見込みだが、資金吸収額は120億円台とやや大きめだ。13日に上場するラクサス・テクノロジーズ <288A> [東証G]は、ブランドバッグのサブスクリプション型シェアリング事業を展開。ワールド <3612> [東証P]のグループ企業で資金吸収額は20億円台の見込み。17日にはリスキル <291A> [東証G]と黒田グループ <287A> [東証S]の2社が上場する。リスキルは研修サービスなど社会人教育事業を行っている。黒田グループは、製造事業と商社事業を展開しており、子会社に黒田電気を持つ。製造事業では液晶用特殊印刷版などを手掛けている。
19日にはdely <299A> [東証G]とSynspective <290A> [東証G]が上場する。delyは国内最大級のレシピ動画サービス「クラシル」などを展開している。Synspectiveは小型の合成開口レーダー(SAR)衛星の開発・運用からSARデータの販売とソリューション提供を行っている。市場の注目を集める宇宙ベンチャー企業で、業績は赤字基調だが、資金吸収額は110億円前後、時価総額は500億円台が見込まれている。同じくSAR衛星を手掛けるQPS研究所 <5595> [東証G]を意識する株価動向が予想されている。
●リーガルテック関連のGVA TECHなどに期待
12月下旬以降では、25日にMIC <300A> [東証S]とアルピコホールディングス <297A> [東証S]がともにスタンダード市場に登場する。MICはリテール販促における総合支援事業を展開。アルピコHDは長野県を地盤に運輸、観光事業などを展開しており、インバウンド関連の側面を持つ。
26日には、フォルシア <304A> [東証G]とvisumo <303A> [東証G]、GVA TECH <298A> [東証G]の3社が登場する。フォルシアは検索テクノロジーを基にしたシステム開発やコンサルティングなどを展開。visumoはビジュアルマーケティングプラットフォームの開発などを行う。GVA TECHは、リーガルテックサービスの開発・提供を手掛ける。3社ともに資金吸収額は4億~10億円前後の見込みで小粒だ。
■12月IPO一覧
コード・
上場日 上場市場 企業名 主幹事
福Q・
12月4日 280A・東G TMH SBI
9日 281A・東G インフォメティス みずほ
12日 286A・東G ユカリア SBI
13日 288A・東G ラクサス・テクノロジーズ みずほ
17日 291A・東G リスキル SBI
17日 287A・東S 黒田グループ SMBC日興、野村
18日 285A・東P キオクシアホールディングス 三菱UFJモルガン・スタンレー、野村
19日 290A・東G Synspective 野村
19日 299A・東G dely 大和、三菱UFJモルガン・スタンレー
23日 296A・東G 令和アカウンティング・ホールディングス 大和
23日 5241・名N 日本オーエー研究所 Jトラストグローバル
25日 300A・東S MIC 野村
25日 297A・東S アルピコホールディングス みずほ
26日 304A・東G フォルシア 野村
26日 303A・東G visumo 大和
26日 298A・東G GVA TECH みずほ
27日 302A・東G ビースタイルホールディングス SMBC日興
(注)東Pは東証プライム、東Sは東証スタンダード、東Gは東証グロース、福Qは福証Qボード、名Nは名証ネクスト
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