一正蒲鉾<2904>は、主力のカニ風味かまぼこ(以下、カニかま)商品を中心に水産練製品を製造・販売する食品メーカーであり、業界第2位のシェアを占める。また、まいたけの生産・販売事業も展開しており、まいたけの生産量では国内第3位のシェアを持つ。スーパーなど量販店の全国統一チェーンオペレーションに対応できる営業・生産体制を整え、消費者や生活環境の変化に応じた消費者視点の「モノづくり」に挑戦し続けている。
1. 2024年6月期の業績概要
2024年6月期の連結業績は、売上高34,487百万円(前期比5.1%増)、営業利益1,271百万円(前期は193百万円の損失)、経常利益1,247百万円(前期は146百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益957百万円(前期は84百万円の利益)と、増収となり利益は急回復した。前期は原材料・エネルギーコストの上昇や消費者の買い控えなどにより営業損失となったが、2024年6月期は利益転換した。水産練製品・惣菜事業において前期に実施した価格改定が消費者にも浸透し販売数量が増加したことや、スティックタイプのカニかまの拡販効果が奏功した。損益面においては、主原料のすり身価格の上昇が一服し、2023年4月より新たに稼働した本社第二工場が年間で寄与したことなどにより、売上総利益率が20.7%と同4.3ポイント上回った。販管費は同4.8%増加したが、売上総利益の増加によりこれらを吸収し、営業利益は大幅に改善した。
2. 2025年6月期業績見通し
2025年6月期の連結業績は、売上高36,500百万円(前期比5.8%増)、営業利益1,300百万円(同2.3%増)、経常利益1,350百万円(同8.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益960百万円(同0.3%増)と、増収増益を見込む。2024年6月期より準備してきたカニかま発売50周年記念キャンペーンの開始、まいたけの業務用・加工用チャネルの開拓などにより、販売数量増を計画する。キャンペーンによる販促費増、販売数量増に伴う物流費増、昇給による人件費増などの販管費の増加も見込むが、それらを合理化投資による省人化や生産性向上により吸収する計画である。
3. 中長期の成長戦略
同社は2015年の創業50周年を機に、2017年6月期の30年後に当たる2046年6月期のありたい姿を描いた「ICHIMASA30ビジョン」を掲げた。「グローバル企業」「食品バイオ企業」となることに加え、あらゆるステークホルダーに“食”を中心に“幸せ”と“喜び”を届ける「あたたかい企業」をありたい姿として目指す。30年を10年ずつ3つのステージに分け、さらに1つのステージを5年ずつの“第一次・第二次中期経営計画”に分けている。同ビジョンに基づき、バックキャスティング思考で課題を設定し、解決の戦略・戦術を中期経営計画に反映している。
1stステージ(2017年6月期〜2026年6月期)は、「成長基盤創りの5年」と位置付けた第一次中期経営計画(2017年6月期〜2021年6月期)を終了し、現在は「成長軌道への5年」と位置付けた第二次中期経営計画(2022年6月期〜2026年6月期)を推進中である。第二次中期経営計画は、「国内外のマーケットへの果敢なチャレンジを通じて、事業の成長力・収益力基盤を確立し、1stステージで掲げた「成長軌道への5年」を実現する」ことを基本方針としている。「変革と創造」「選択と集中」「デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)」「新規事業」「アライアンス」の5つを重要戦略とし、2026年6月期の数値目標として売上高400億円、営業利益26億円、ROE10.0%、ROIC9.0%を掲げている。
■Key Points
・2024年6月期は増収、本社第二工場の稼働などにより売上総利益が大幅増となり利益は急回復
・2025年6月期はカニかま発売50周年記念キャンペーンなどにより、増収増益を見込む
・第二次中期経営計画で2026年6月期の売上高400億円、営業利益26億円を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)
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