―大手・西友を飲み込む新興リテールテック企業に注目、円高メリット享受する価格均一系ショップも―
厚生労働省の統計によると、1月の実質賃金は3ヵ月ぶりにマイナスに転じた。きょう集中回答日を迎えた春闘を経て今後も賃上げムードは持続するとみられるが、消費者の財布のひもが本格的に緩むのはまだ先のことになりそうだ。足もと株式市場ではトランプ関税への警戒感から主力輸出株に逆風が吹くなか、内需系銘柄に活路を見いだす向きがある。内需の代表格と言えば小売りセクターだが、実質賃金が冴えない今の状況下ではなかなか手掛けづらい。しかし、解像度を上げて見ていくと、セクター内には消費者の 生活防衛ニーズを捉えて成長を続ける企業が数多く確認できる。キーワードは「低価格」だ。
●賃金上昇も物価高に追いつけず
総務省が先月発表した1月の全国消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合指数が前年同月比で3.2%上昇した。前月の伸び率(3.0%上昇)から拡大し、市場予想(3.1%上昇)をも上回った。生活実感に近い生鮮食品を含めた総合指数は同4.0%上昇となり、2年ぶりの高い伸び率を記録した。
ここ数年、ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー・資源価格の高騰、インフレ抑制に向けた米国の急激な利上げに伴う円安によって日本の輸入価格は上昇し、物価高が急速に進んだ。さまざまな商品の値上げが話題を呼んだが、ここにきては日本の主食として安定供給が図られてきたコメまでもが値上がりし、政府が備蓄米を放出する事態となっている。一方、商品を購入する消費者の「手取り」も増えてはいるが、物価高の勢いにまだ追いついていないのが現状だ。厚労省が10日に発表した1月の毎月勤労統計調査(速報)によれば、名目賃金を示す現金給与総額は前年同月比2.8%増と37ヵ月連続でプラスとなった一方、物価変動の影響を除いた実質賃金は同1.8%減と3ヵ月ぶりに減少した。実質賃金は年間ベースで、昨年まで3年連続でマイナスとなっている。
●20年以上増収増益の「ドンキ」
こうしたなか、消費者の視線は自然と価格のより安いモノへ向かう。この動きを捉える小売りの低価格業態と言えば「ディスカウントストア」だろう。その名の通り(ディスカウント=値引き)、食料品や日用品を手ごろな価格で提供している。筆頭銘柄はパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス <7532> [東証P]だ。独自の商品陳列による魅力的な店舗空間が特徴の「ドン・キホーテ」を全国展開する。都市部の店舗を中心に外国人観光客でにぎわう光景もみられ、インバウンド関連の側面からも目が離せない。業績は長期成長トレンドをたどり、20年以上にわたって増収・営業増益を続ける。今25年6月期も過去最高業績を更新する見込みで、上期時点での進捗は順調だ。
話題のトライアルホールディングス <141A> [東証G]にも注目。同社は昨年に新規上場したニューフェイスで、九州を中心に全国300店舗以上を展開する。小売り向けシステムの開発から現事業へ転身した異色の経歴を持ち、現在でもシステム開発のノウハウを生かして店舗内のデジタル化を図るなどリテールテック企業の雄として存在感を示している。今月5日に大手スーパー の西友を買収すると発表し、今後の一段の成長に期待が高まっている。今25年6月期も営業最高益トレンドを継続する見通し。積極出店による先行コストや販管費の増加で上期は減益で着地しているが、通期予想に変更はない。
サンドラッグ <9989> [東証P]はドラッグストア大手だが、傘下でディスカウントストア「ダイレックス」を運営する。九州を地盤に西日本エリアに多く展開するとともに関東にも進出し、総店舗数は400店舗以上に及ぶ。サンドラッググループのなかでディスカウントストア事業の売上高は約4割(24年3月期時点)を占める。旺盛なインバウンド需要を取り込み、今25年3月期も売上高、営業利益とも過去最高を更新する見通し。配当も増配基調を続け、利回りは3%台と良好だ。
関連銘柄には各地域に根差した中堅・中小規模の企業も多く、首都圏ではジェーソン <3080> [東証S]、関西エリアではスギホールディングス <7649> [東証P]傘下のジャパン、トライアルやダイレックスと同じ九州地盤ではミスターマックス・ホールディングス <8203> [東証P]が挙げられる。また、静岡のマキヤ <9890> [東証S]、岡山の大黒天物産 <2791> [東証P]、北陸のPLANT <7646> [東証S]などがある。
●セリア・ワッツは配当利回り上昇、キャンドゥは優待アリ
低価格業態として、もう一つ見逃せないのが100円ショップだ。業界大手4社のうち「ダイソー」を運営する大創産業(広島県東広島市)以外は上場しており、セリア <2782> [東証S]、キャンドゥ <2698> [東証S]、ワッツ <2735> [東証S]がある。海外生産の安価な雑貨を仕入れて国内で販売するビジネスモデルのため、足もと日銀の追加利上げ観測を背景に為替市場で強まる円高傾向は追い風だ。これは円安による原材料高に苦しんできた前述のディスカウントストアを含む小売り業界全体にとってもプラスに働く。
上場大手3社とも業績は堅調に推移している。ただ、株価は昨年半ばから調整気味であり、それゆえにセリア、ワッツは配当利回りが2%台後半に上昇。キャンドゥは利回りこそ高くないが、3社のなかで唯一株主優待を実施している点はポイントだ。100円ショップ関連株としてはこのほか、フランチャイジー(加盟店)としてダイソー店舗を運営するホットマン <3190> [東証S]、セリア・キャンドゥ・大創産業を主要顧客とする生活雑貨メーカーのアミファ <7800> [東証S]がある。
また、価格均一系の周辺銘柄として、300円商品を中心とした「3COINS(スリーコインズ)」を運営するパルグループホールディングス <2726> [東証P]、「illusie300(イルーシーサンマルマル)」を展開するパレモ・ホールディングス <2778> [東証S]をマーク。500円以下の商品を中心に取りそろえた「無印良品500」を手掛ける良品計画 <7453> [東証P]にも目を向けたい。
株探ニュース
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