2. 新中期3ヶ年経営計画
nmsホールディングス<2162>は2019年2月に新中期3ヶ年経営計画を発表した。2018年5月に前中期経営計画を発表したが、その後中国の景気減速に伴う需要の変化や部材価格高騰などの影響を受け、初年度の実績が計画から乖離した。当初は自前の進出を検討していた北中米において、ソニーから事業譲受するなどの新展開があった。
(1) 新中期経営計画の目標数値
新中期経営計画の目標値の3ヶ年の推移は、売上高が720億円(2020年3月期)→850億円(2021年3月期)→1,000億円(2022年3月期)、営業利益が13億円→26億円→40億円としている。3ヶ年のCAGRは、売上高が20.1%、営業利益が93.9%の高率となる。
(2) アクションプラン
新中期経営計画の目標数値を実現するためのアクションプランを事業ごとに策定した。HS事業は、1)外国人技能実習生の管理受託規模拡大、2)省力化機器・装置事業の本格立ち上げ、3)エンジニア人材比率の拡大、4)海外人材ビジネスの投資効果刈り取り、収益力強化を掲げた。EMS事業は、1)製造業のファブレス化に即応する拠点戦略の実施(アジア・北中米)と2)商品設計まで担う開発機能の強化(中国)となる。PS事業は、製品ポートフォリオ見直し、抜本的コスト構造改革の実行による収益力強化、2)グループリソース活用による機動的な生産体制構築、ASEANへの事業展開、3)「エネルギーマネジメント」を軸とした新製品の売上拡大・利益貢献となる。
a) HS事業
2020年3月期におけるHS事業の大幅な増収要因の1つに、外国人技能実習生の管理受託の規模拡大がある。前期末の人数はベトナム人を中心に約300名であったが、2020年3月末には3,000名規模を計画している。来期末には、1万人規模を目指す。
2019年1月に、厚生労働省は日本を代表する大手電機メーカーや自動車メーカーなど4社が労働基準法に違反したとして、技能実習計画の認定を取り消した。実習計画に記載されていない業務を行わせたことが発覚したためである。これらの企業は、今後5年間、技能実習生だけでなく新在留資格「特定技能」による外国人労働者の受け入れができなくなった。
2017年に厚生労働省が行った調査では、実習生を受け入れた5,966事業所のうち7割に相当する事業所で違法残業や賃金未払いなどの法令違反が確認された。2017年11月に施行された外国人技能実習制度適正化法では、受け入れ企業は届け出制、管理団体は許可制とし、人権侵害行為には罰則を設けた。厚生労働省は、企業の法令順守の監視体制を強化するため、人員を7割増加する計画でいる。中小はもとより大手企業でも、外国人技能実習生の受け入れに不慣れなところが多く、管理受託業務の潜在需要は大きい。
2018年10月における日本の総人口は、1億2,644万人と8年連続して減少した。15歳から64歳までの生産年齢人口の割合は59.7%と過去最低となった。2018年平均の就業者は6,664万人と前年比134万人増加した。女性の就業者が87万人増加し、65歳以上も55万人増えた。一方、完全失業率は2.4%と前年比0.4ポイント低下し、8年連続の下落となった。2019年2月の労働者過不足判断D.I.は、正社員等労働者が45(=「不足」-「過剰」)と31四半期連続の不足超過で、過去最高の水準に達した。パートタイム労働者のD.I.は31とこちらも38期連続して不足超過となった。正社員、パートタイムともに、人手不足が全産業に蔓延している。政府は、70歳までの継続雇用を企業に義務付けて労働力の供給を増やすように動いているものの、外国人労働者抜きでは回らない職場も出てきた。
2018年10月末の外国人労働者は前年比14.2%増の146万人と6年連続して増加し、過去最多となった。その規模は、初めて派遣社員数を上回った。外国人労働者の在留資格別内訳は、身分に基づく在留資格が49.5万人(前年比8.0%増)、技能実習が30.8万人(同19.7%増)、資格外活動(留学)が29.8万人(同15.0%増)であった。技能実習は5万人増加した。国別のトップ3は、中国が38.9万人(同4.5%増)、ベトナムが31.6万人(同31.9%増)、フィリピンが16.4万人(同11.7%増)であった。ベトナムの増加が7.6万人と最も多い。
外国人技能実習制度は、2017年11月の制度改正により、優良な実習実施者・監理団体に対する優遇措置として、最長実習期間は3年から5年へ延長し、一旦帰国後、1ヶ月以上の間を置いて再び最大2年間の実習が可能となった。最大受入人数枠は、常勤従業員の5%から10%へ拡大された。
同社は、2017年8月に外国人技能実習制度を総合的かつ、専門的に支援することを目的に、外国人技能実習生向け研修事業会社「日本技能教育機構(JATEO)」を設立した。同子会社は、1)入国後教育研修の受託、2)実習生受入先への業務支援を事業目的とする。
HS事業では、2018年4月にキーエンス<6861>製の高解像度カメラを用いて、目視で行っていた検査工程の大幅な工数削減と安定した品質管理を実現する省力化装置の製造・販売に参入した。従来の人材サービス生産ライン請負に加えて、生産ライン診断・検証や省力化装置の設計・製作・導入の複合提案をする。既にベトナムや中国で引き合いが増加しており、タイにおいても省力装置事業を展開することを計画している。
b) EMS事業
中期ビジョンにおいて、TKRは弱電分野及び車載関連分野を注力分野と位置付け、国内外における拠点戦略を展開している。海外拠点においては、中国(東莞)ではテーラーメイド型EMSを目指して設計開発力を強化し、自動化に適合した設計を行う。一方、マレーシアとベトナム、メキシコの拠点はメガEMSと位置付けている。ベトナムに新設したTKR MANUFACTURING VIETNAM CO., LTD.は、2019年5月からプレス工場の操業を開始した。同工場は、4万平米の敷地にプレス工場と実装組立工場を配置する。マレーシアの拠点と機能の棲み分けをし、機動的な生産体制を構築する。生産品目は、液晶テレビ関連部品を始め、複合機関連部品などを予定している。2019年3月に、TKRは米国法人を設立してソニーの米国法人の事業部門Sony Service and Operations of Americasの機能及び事業並びにメキシコの生産拠点を譲受した。車載関連分野の事業展開においては、自動車産業の一大集積地への進出が急務となっており、かねてよりその検討を進めていた。
c) PS事業の新分野・新市場への参入
PS事業は、成熟化が進む電源部品分野の製品ポートフォリオを見直す。低採算の低圧部品を縮小し、マグネットロールや電源パックなどの高圧品にシフトする。現在、日本を開発拠点とし、中国で集中生産をしてきたが、チャイナリスクを軽減するため、製品ポートフォリオの見直しと連動して、グループ内EMS機能を活用してASEANにて生産展開を行う。
これまで培ってきた電源技術を生かし、電池マネジメントシステム事業を始動した。松阪工場は、2018年10月から日産自動車<7201>の「NV350キャンピングカー」向けリチウムイオン2次電池パックの納入を開始した。車載のエアコン、キッチン家電、AV家電など多様な機器類の使用を可能にし、ワンランク上のキャンピングカーとする。自動車以外では、電動化が進む建設機械、農業機械、産業用ロボットや搬送機などの蓄電システム、災害時のバックアップ電源として無停電電源装置(UPS)などへの用途拡大を目指す。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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