1. 分野別の概要
新日本空調<1952>の主要事業は、空調設備を主とした建築設備の設計・施工管理の単一事業であることから、「セグメント別」は開示されていないが、同社では「分野別売上高・受注高」を開示している。
分野別の大分類として「個別(親会社)」と「関係会社」に分けられている。さらに中分類として個別は「国内一般(新築)」「国内一般(リニューアル)」「原子力」に分けられ、関係会社は「国内」と「海外」に分けられている。案件ごとに受注金額は大きく異なり、数百万円から数十億円と幅が広い。工期(受注から完工・売上まで)も数ヶ月から長いものは数年に及ぶ。利益率も案件ごとに異なるが、労務費や資材コスト、工程管理等の影響により、売上時の利益率が当初の計画から変動する場合もある。
(1) 国内一般(新築):2024年3月期売上比率34.3%
一般的なビル・工場・公共施設等の新築物件の空調設備工事を行うもの。新築のため、大手ゼネコンの下請けとして入る場合が多い。また空調関係以外に給排水工事なども行っているが、売上比率が低いため特に区分けはしていない。
(2) 国内一般(リニューアル):同42.8%
対象は新築と同じだが、リニューアル(更新)工事を請け負うもの。元請けとして施主から直接受注するケースが多いため、相対的に利益率は高い。
(3) 原子力:同6.1%
原子力発電所や関連施設への空調工事を行うもの。日本初の原子炉空調を施工した長い歴史があることから信頼も厚く、同分野でのシェアは40%ほどと推定されており、国内ではトップクラスである。ただし、市場が限られていることもあり、受注高は期によって変動する場合が多い。
(4) 関係会社(国内):同7.4%
国内の関係会社が行う工事高。
(5) 関係会社(海外):同9.4%
海外の関係会社が行う工事高。
また同社では、半導体関連を含む電気・電子、自動車、機械などの産業向けの売上高(及び比率)を「産業」として開示しているが、2024年3月期の同売上高は69,470百万円、同比率は54.3%であった。
2. 特色と強み
(1) 原子力関連に強い
国内に同社と同様の空調設備の工事・監理を提供する企業は無数にある。そのような業界の中で、同社の強みの1つはやはり長い歴史を有する「原子力関連」だろう。既述のように、日本原子力研究所(現 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構)に日本初の原子炉空調を施工した実績と、その後の信頼は現在も続いており、これは同社の強みだ。
(2) 半導体向けに強い
同社は比較的「産業向け」の売上比率が高いが、その中でも特に半導体関連に強い。これは、古くから東芝<6502>との関係が深かったことによる。これもまた同社の「信頼と実績」に基づいており、特色であり強みと言えるだろう。
(3) トップクラスの技術力と優良な顧客基盤
戦前から培われた高い技術力は同社の強みであり、国内トップクラスの水準と言える。磨かれた技術力は幅広い分野に及ぶ。また、長い歴史の中で積み重ねた実績が信頼につながっており、この信頼関係に基づいた豊富で優良な顧客基盤も同社の強みだろう。戦前の南満州鉄道の特急「あじあ号」や関釜連絡船「興安丸」の実績は言うに及ばず、戦後の高度成長期に日本初の超高層ビル「霞が関ビルディング」の空調施工を行ったことなど数多くの実績が近年の大型再開発プロジェクトの受注につながったとも言える。
3. 主な競合企業
同社のような空調設備工事を手掛ける企業は、大小合わせれば全国に無数にある。その意味では、競合する企業は無数にあると言えるが、超高層ビルや大規模工場・設備などの空調を手掛けられる企業は少ない。正確な市場シェア等の算出はできないが、同社によれば「東京証券取引所プライム市場に上場している空調工事大手7社の中で、当社は5番目になる」とのことである。
主な競合企業は、高砂熱学工業<1969>、三機工業<1961>、朝日工業社<1975>、日比谷総合設備<1982>などである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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