―脱炭素社会の主要動力源として脚光、太陽光・風力発電の成長性を再評価局面に―
菅義偉首相は2020年10月の臨時国会で、50年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」というテーマを宣言した。そこでカギとなるのが、次世代型太陽電池、カーボンリサイクルをはじめとした、革新的なイノベーションであり、規制改革などの政策を総動員し、世界のグリーン産業をけん引し、経済と環境の好循環をつくり出す姿勢が示されている。また、米国にバイデン新政権が誕生し「環境重視」へと政策の軸は大きく振れることになる。そんななか、「再生可能エネルギー」が新年の注目テーマへと急浮上している。
●主要国首脳が温室効果ガスの実質ゼロに前向き姿勢
15年の第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で採択された「パリ協定」では、「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べ2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える」よう努力を続けることを目標に掲げている。パリ協定から5年後の20年12月半ばには国連とフランス、イギリス、日本、中国など70ヵ国以上の首脳がオンラインでの会合を開いている。この会合において目立ったことは、各国首脳が温室効果ガスの削減や温暖化の影響の軽減に向けて、取り組みを強化する姿勢を示したことだ。
欧州連合(EU)は19年、50年までに温室効果ガスの実質ゼロを目指すと発表した。そして今回開かれた首脳会議で30年までの目標を引き上げ、1990年に比べ排出量を55%削減することで合意した。また、世界最大の温暖化ガス排出国である中国では、2060年までに実質ゼロを実現できるよう努力すると表明したほか、太陽光発電と風力発電の設備容量を12億キロワット以上にする方針も明らかにしている。更に、米国で次期大統領に当選したバイデン氏がパリ協定への復帰を表明したことにより、今後のグローバルな気候変動対策において米国が積極的なリーダーシップを発揮することが見込める状況となってきた。
●カーボンニュートラルが新たな投資機会を生む
経済産業省によれば、50年までのカーボンニュートラルにコミットしている国は123ヵ国にのぼり、これらの国における世界全体の二酸化炭素(CO2)排出量に占める割合は23.2%(17年実績)であり、更に米国もこの目標を表明した場合には、世界全体のCO2排出量に占める割合は37.7%となるようだ。今後はどの国が最初に排出の実質ゼロを達成するかというスピードを競う流れになりやすく、それゆえに再生可能エネルギー関連企業に対する投資家による成長期待値が高まっている。また、再生可能エネルギーの電力コストは企業のイノベーションなども相まって急速に低下しており、日本においても再生可能エネルギーへのシフト加速を引き起こす素地は十分整っている。50年までのカーボンニュートラルへの目標達成は容易ではないだろうが、政府、投資家、企業の方向性はここにきて一致しており、投資機会を生む可能性が大きい。
●太陽光発電で関電工や板硝子、オリックスなど注目
「太陽光発電」についても、農地法や農業振興地域法などで規制されている荒廃した農地を転用したパネル設置や、土地造成が不要な場所に設置が可能になれば、地方の耕作放棄地の有効活用にもつながるため、アイデア次第では地方創生にもひと役買いそうだ。農地で作物を育てながら、その上部で太陽光発電を行う、環境調和型ソーラープロジェクトである「営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)」の動きが広がることなども見込まれる。関連銘柄としては、エネルギーソリューションを展開するウエストホールディングス <1407> [JQ]のほか、太陽電池製造装置のアルバック <6728> やエヌ・ピー・シー <6255> [東証M]、太陽電池モジュールのフジプレアム <4237> [JQ]、太陽光パネルの京セラ <6971> 、シャープ <6753> 、架台などの金属製品を手掛ける日創プロニティ <3440> [東証2]、蓄電池ではニチコン <6996> が主力だろう。
関電工 <1942> は太陽光発電システムや風力発電システムの設計・施工のほか、省エネルギー、CO2の削減、電力の安定供給を実現する「コージェネレーションシステム」などを手掛けている。昭和電線ホールディングス <5805> は、太陽光発電など新エネルギー政策による電線需要のほか、鉄塔や電線網など国内のインフラ設備が老朽化による更新需要なども期待されており、電線株全般に思惑が高まりやすいだろう。フジプレアムは超軽量太陽電池モジュール「希」をはじめ、標準的なシリコン結晶太陽電池モジュールや、建材一体型太陽電池モジュール製造を展開している。
日本板硝子 <5202> は米オハイオ州で建設中の新工場において、太陽電池パネル用透明導電膜(TCO)ガラス製造のフロートラインが稼働している。オリックス <8591> はスペインの環境エネルギー会社エラワン・エナジーを買収すると発表している。
●風力発電関連で国際石開帝石やJパワー、駒井ハルテクなど
風力発電については、50年の脱炭素社会の実現に向けた政府計画の原案では、 洋上風力を40年までに最大4500万キロワットとしている。日本は欧州に比べて普及が遅れており、潜在的な拡大余地が大きいとみられる。これまで政府は洋上風力の主力電源化を目指し、30年までに発電容量を原発10基分に当たる1000万キロワットとしていたが、これを40年までに原発45基分にあたる量を目指すことになる。こうしたことから、風力発電セクターでは洋上発電の見通しに投資家の注目が集まっている。
国際石油開発帝石 <1605> は再生可能エネルギー事業を次世代事業の柱と位置付けており、太陽光発電に加えて風力発電事業に本格的に参入。東亜建設工業 <1885> や大林組 <1802> は風力発電設備を建設する専用船のSEP船を保有する。NTN <6472> は風力発電装置の心臓部で使われる主軸、増速機、減速機、発電機などを手掛けている。五洋建設 <1893> は洋上風力発電の導入に際して幅広いソリューションを提供。東京電力ホールディングス<9501>は東京大学などと共同で、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募する「浮体式洋上風力発電低コスト化技術開発調査研究」に応募し採択されている。
Jパワー <9513> は、豪州の再生可能エネルギー企業ジェネックス パワー リミテッドとの間で、豪州における新規風力発電プロジェクト開発に係る覚書を締結している。駒井ハルテック <5915> は、高い疲労強度と耐風強度を保持した風車を製造している。「日本型仕様風車KWT300」は日本の風の特性が考慮され、設計においては世界的な設計基準であるIEC(国際電気標準会議)の条件を満たしている。
※本記事「新春3大テーマを追う(3)再生可能エネルギー「環境新時代の牽引役として急浮上」 <株探トップ特集>」で、記事中の以下の部分を削除しました。
【削除】東芝 <6502> [東証2]は再生可能エネルギー分野に今後5年間で1兆円を投資すると伝わっている。
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