1. 会社概要と沿革
ハウスコム<3275>は、首都圏、中部圏、関西圏を中心に不動産仲介及び関連サービスを提供する業界有数の成長企業である。1998年に大東建託<1878>の100%出資子会社として設立。2003年に(株)ジューシィ情報センターから首都圏及び東海圏の62店舗の営業権を取得し、店舗網の基盤とした。直営店の新規出店とともに、周辺業務(損害保険代理店・リフォーム工事取次・引越取次・広告代理店など)を取り込み、順調に業績を伸ばしてきた。「住まいを通して人を幸せにする世界を創る。」というミッションを掲げ、「地域社会の玄関」と位置付ける店舗を通して、入居者や家主にとって役立つ存在になることと地域密着を徹底してきた。出店は関東、東海、関西を中心に大規模都市や人口流動性の高い地域に集中しており、2024年3月末時点で全国にハウスコム直営店197店舗・FC店43店舗を有している。グループの従業員数は2024年4月1日時点で1,133名。2011年6月に、大阪証券取引所JASDAQ市場に上場し、2019年6月には東京証券取引所(以下、東証)2部、8月には東証1部にそれぞれ昇格した。2020年3月期からは、M&Aにより2社を子会社化し、連結経営をスタートさせた。2021年3月には(株)宅都を子会社化し、関西圏の店舗網拡充を加速している。2022年4月に東証の区分見直しに伴い、プライム市場へ移行した。また、2022年10月には持株会社への移行に伴い、ハウスコムを10社に分社化し、宅都を大阪ハウスコム(株)へ商号変更、2023年6月に(株)シーアールエヌを連結子会社化した。2023年10月に東証スタンダード市場へ市場区分を変更した。
2014年3月に代表取締役社長に就任した田村穂(たむらけい)氏は、10年にわたりリーダーシップを発揮し、収益構造を改善・維持しながら、事業規模を拡大してきた。この10年間に、積極的かつ立地を吟味した店舗網の拡大、WebやAIといったITツールの積極活用、リフォーム事業への進出・拡大などを成功させている。特筆すべきは、ITがビジネスに与える可能性に早くから着目してきたことだ。画期的なサービスの開発・提供や事業活動の生産性向上に注力し「不動産DXのハウスコム」と呼ばれている。2015年には現地に出向かなくとも物件の内見が可能な「オンライン内見」を、2016年にはチャットで部屋探しの相談ができる「マイボックス」サービスをリリースしている。経済産業省が、ITシステムのあり方を中心に、日本企業がDXを実現していくうえでの現状の課題の整理とその対応策の検討を行うことを目的とした「デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速に向けた研究会」を設置したのが2018年ということを考えると、同社及び田村氏がいかに先見性を持っているかということが分かるだろう。今後はDXによりバリューチェーンからバリュージャーニーへの拡大及びビジネスモデルの変革を実現し、最高の顧客体験の提供と収益性のさらなる向上を目指す。
加えて、M&Aを活用して事業を拡大してきたことも特徴として挙げることができる。同社は、2019年5月にジューシィ出版(株)、同年7月にエスケイビル建材(株)を連結子会社化した。これらM&Aへの取り組みにより、テクノロジーを通じたサービスの提供や、塗装工事・リニューアル工事などの新サービスの提供を開始し、サービスラインナップを拡充した。また、2021年3月に宅都をグループへと迎え入れ、関西圏での事業拡大を加速させている。2023年6月には、不動産のフランチャイズ「クラスモ」ブランドを関西圏で積極的に展開するシーアールエヌを子会社化し、「既存事業の店舗数増加による規模の拡大」を着実に進めている。このように、M&Aにより同社サービスの訴求力を高めていることは、弊社では評価している。
2. 事業構成
同社の事業セグメントは、2020年3月期から「不動産関連事業」と「施工関連事業」の2分類に変更された。「不動産関連事業」は、住宅を探す個人に対してアパートやマンションなどの賃貸物件を紹介し、成約時に不動産仲介手数料を得るサービスが基本となる。仲介業務の関連サービスとして、入居者募集用の広告掲載依頼への対応、引越・損害保険等の各種サービスの取次業務、契約更新業務なども手掛ける。また、2023年3月期からは不動産管理業務も開始した。「施工関連事業」は、不動産仲介を契機として原状回復工事やリフォーム工事、鍵交換、サニタリー工事などのほか、外部のリフォームや改修工事などを行う。住む人と部屋をつなぐという点では両事業は類似する事業である。
今後は、仲介手数料を得るという「売り切り型」の収益モデルに加えて、スマートシステムPLUSなどの「継続収入型」のサービスも新たな収益基盤として育てていく方針だ。将来的には自社単体、または他社との提携により顧客体験の各接点に対応したサービスを提供するリテンション収入モデルへの移行を計画しており、同社の収益基盤はより強固になっていくことが予想される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)
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