鹿島(社長:天野裕正)は、鉄筋コンクリート構造物の施工における生産性向上を目的に、安価で締固め作業※1が不要な高流動コンクリート「LACsコンクリート」(ラックスコンクリート)※2を開発しました。このたび、「LACsコンクリート」を実工事に初導入した結果、普通コンクリートで施工した場合と比べ、作業人数を約80%削減、打設時間を約60%短縮できることを確認しました。 当社は今後、「LACsコンクリート」を各現場に展開し、コンクリート打設作業の効率化を進めていきます。
※1 コンクリート打設中に、コンクリート中の空気と過剰な水を追い出し,型枠の隅々まで行き渡らせる作業
※2 Low Action Casting / Low Actual Cost / Limited Abandoned Compaction /Lead Abbreviation Casting/楽(らく)コンクリート
開発の背景
コンクリートの打設作業は、構築物の品質を左右する重要な工程です。建設工事では、ほぼすべての工事に普通コンクリートが使用されますが、その打設の際には多くの技能者による入念な締固め作業が必要となるため、技能者不足に備えて省力化および省人化による生産性向上が求められています。その解決策の一つとして、締固め作業が不要な高流動コンクリートの導入が挙げられますが、既存の高流動コンクリートには特殊な材料の使用やコンクリートに配合されるセメント等の粉体量の増加などにより、製造コストが普通コンクリートと比較して大幅に上昇するという課題がありました。そのため、高流動コンクリートは複雑な形状や鉄筋が高密度に組まれている箇所など、特殊な施工条件での限定的な導入に留まっていました。
そこで当社は、一般的な条件で施工する鉄筋コンクリート構造物への導入を視野に、安価で締固め作業が不要な高流動コンクリートの開発を進めてきました。
「LACsコンクリート」の概要
「LACsコンクリート」は、ベースとなるコンクリートに、当社が新たに開発した粉末状の分散剤※3を現場で添加して、コンクリートの流動性を高めたものです。
また、ベースコンクリートに混ぜる細骨材の微粒分量を増量することで、普通コンクリートと同程度の単位セメント量300~350kg/m3でも、材料分離抵抗性※4を確保できます。混入する細骨材はセメントよりも安価のため、材料単価の大幅な上昇を抑えることが可能です。
コンクリートの流動性を高めることによって、打設時間と作業人数を大幅に削減しつつ、セメントよりも安価な細骨材を増量することで、トータルコストの増加を抑制しました。
※3 コンクリートを流動化する材料
※4 コンクリートの材料が分離することを防ぐ力
●後添加粉末分散剤について
今回新たに開発した粉末分散剤は、リグニン誘導体を主成分とした粉末状の混和剤です。一般的な高流動コンクリートで使用される混和剤は、コンクリートの材料分離抵抗性に寄与する粘性が低下しやすいため、その分セメントなど他の材料を多く含有しなければならず、コストが高くなることが課題でした。
そこで当社は、混和剤メーカーである株式会社フローリック(社長:横町彰一、本社:東京都豊島区)の協力のもと、分子構造などを改良して生成したリグニン誘導体を使用することで、高い流動性を付与しつつ粘性の低下が生じにくい混和剤を開発しました。
現場への導入と成果
当社が神奈川県横浜市で施工を進める、東日本高速道路株式会社発注の横浜環状南線 公田笠間トンネル工事の土砂ピットにおける底版コンクリート(約 520m3)に「LACsコンクリート」を初導入しました。その結果、材料分離が生じることなく充填が可能で、硬化後も所定の品質を確保できていることを確認しました。
同現場で普通コンクリートを用いた場合、コンクリートの締固め作業に4名、ホースの筒先制御に2名、仕上げ作業に3名、合計9名が必要でした。これに対して「LACsコンクリート」を用いた施工では、締固め作業が不要となるため、必要な人数を合計2名にまで減らすことができました。さらに、締固め作業が不要となったことで打設時間を約3時間半短縮することができ、「LACsコンクリート」の導入による省力化および省人化効果を確認しました。
今後の展開
鹿島は今後、他の工事にも 「LACsコンクリート」を導入し、作業人数の削減や打設時間の短縮による労働時間の削減、一日当たりの打設量増加による工程短縮を図っていきます。併せて、「LACsコンクリート」を活用した新たな施工方法の研究開発を進めることで、さらなる生産性向上を目指してまいります。
工事概要
工事名 :横浜環状南線公田笠間トンネル工事
工事場所 :神奈川県横浜市栄区公田町~飯島町
発注者 :東日本高速道路株式会社
施工者 :鹿島・竹中土木・佐藤工業特定建設工事共同企業体
工事諸元 :掘進延長約1.7km、覆工外径15m、離隔約1m
工期 :2016年4月~2028年10月
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