3.「ウェルビーイングシティ構想」に基づく分譲マンション自社ブランド「CANVAS」
2022年5月期第2四半期に、同社は新たに「ウェルビーイングシティ構想」というブランドコンセプトを掲げ、分譲マンション自社ブランド「CANVAS」を立ち上げた。「マンションという「住まい」を提供するだけでなく、住まう人々の豊かな暮らしを実現するための様々なサービスを提供し続けることで、持続的かつ多面的に満たされる暮らしを提供し、持続可能な社会の構築に貢献する」というミッションの下、東京都八王子市に第1号案件となる「CANVAS南大沢」を建設した。既に分譲を行っており、販売は堅調に推移しているという。将来的には南大沢での実績とノウハウを基に、同コンセプトの展開エリアを積極的に拡大する方針だ。「CANVAS」は長期的視野に立ったブランドであり、中長期的に同社の業績に寄与することが期待される。
同マンションでは、「住・食・働・学・遊・健・看」をキーワードに、単身世帯、家族層から高齢者まで多様な年齢層やライフスタイルの消費者をターゲットに、毎日の生活の質を高めるサービスを提供している。例えば「働」というキーワードにおいては、「リモートワークのNEXTを見据えた、誰でも働ける仮想空間でのワーキング」というコンセプトの下、Wi-Fi環境を完備したリモートワークスペースを設けている。また、「看」というキーワードでは、人生の最後を自宅で迎えることができるよう地域医療機関と連携し介護を提供する、「かかりつけ介護」などのサービスを提供している。上記に挙げた例は、ほんの一例であり、今後も居住者の様々なニーズを的確に吸い上げ、外部機関と連携しながら多様なサービスを提供し、生活の質を高める計画である。
従来、高齢者のみを対象にしたシニア向けマンションは存在したが、全世代を対象にしたマンションというものは前例がない。医療技術の進歩によって健康寿命が伸びるなかで人生の最後は自宅で迎えたいという人、多様な働き方を志向する単身世帯、若い家族世帯など、様々なニーズが存在する現在において、外部の機関と連携しニーズを満たす多様なサービスを提供していく全世代型のマンションは、今後のマンション形態のメインストリームになる可能性が十分にあると弊社は考えている。
同社は、「ウェルビーイングシティ構想」を「CANVAS」から始め、将来的には街全体の開発に広げる考えだ。
「ウェルビーイングシティ構想」は注目度が高く、コロナ禍を経験した多くの人が「本当の幸福(ウェルビーイング)とは何か」を模索している今だからこそ刺さるブランドコンセプトである。
第三者機関による検査導入で信頼度が増大
4. 安全と品質維持のための取り組み
2005年の耐震強度構造計算書偽装事件に続き、2015年のマンションデータ偽造問題など、マンションに不信感を抱かせる事件が生じ、マンションに対する「安全・安心・堅実」が強く求められるようになった。これらの問題によって、消費者がマンション購入を躊躇し、一時的に業界全体で販売が落ち込んだが、同社は良質で均一な品質維持のための取り組みにより着実に受注を伸ばしてきた。
同社では、社内の独立した専門部署である安全品質管理室による安全巡回・品質管理と、第三者機関による検査のダブルチェック体制を整えるなど、安全と品質に対して徹底した姿勢で厳格な管理を実施している。安全品質管理室では、社員教育や健康管理も含めて事業の安全を厳しく管理している。
委託契約した第三者機関は、杭や配筋の検査、生コン工場の品質管理体制の確認など、厳しい施工監査を行う。杭の施工では、講習を受けた社員が立ち会い、支持層への到達を確認するほか、一部の工法を除き支持層のサンプルを必ず全数採取・保管し、竣工時にデベロッパーへ引き渡す。また、着工した後、安全品質管理室はすぐに建築部門と連携し、施工検討会への参画にはじまり、各作業所を毎月1回以上巡回して技術支援を行い、安全及び品質管理が正しく行われていることを確認・記録している。業務基準となる「建築施工マニュアル」についても常に内容を検討・改善し、毎年改訂するなど、「安全・安心・堅実」への強い取り組みが、事業主からの高い信頼につながっている。足元では安全と品質維持のための取り組みをさらに強化しており、2025年5月期からは新たに特定の内装工事に関しても第三者機関の検査対象とした。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
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