【QAあり】ミライト・ワン、受注高・売上高が上半期で過去最高 不採算案件の解消、国際航業の寄与で大幅増益決算
本日のご説明
中山俊樹氏(以下、中山):代表取締役社長の中山です。本日はお忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。それでは、スライドに沿ってご説明します。
2024年度 第2Q 決算サマリー
第2四半期の決算概況です。新たにグループ入りした国際航業の寄与もあり、受注高・売上高ともに前年同期比で大幅な増収となりました。上半期としてはオーガニック、つまり国際航業の寄与分を除いても過去最高の受注・売上となりました。
利益に関しても、営業利益・純利益ともに増益となり、増収増益の決算となりました。
受注高
まずは受注高です。企業/環境社会基盤ドメインの非キャリア事業が大きく伸びた結果、前年同期比571億円増の3,192億円となりました。
特に環境・社会事業が、昨年、当社グループ入りした国際航業の寄与に加えて、オーガニックベースでも大きく伸び、好調に推移しました。
ICTソリューション事業も増加しました。
一方、通信基盤ドメインのキャリア事業に関しては、NTT事業は増加しましたが、NTT以外のマルチキャリア事業は減少し、トータルで微減となりました。結果として、非キャリア事業の比率は63パーセントとなり、当社が重点的に成長を図っている「みらいドメイン」の構成比率も45パーセントと増加しています。
売上高
売上高です。受注高と同様に、企業/環境社会基盤ドメインの非キャリア事業については、環境・社会事業が増加、ICTソリューション事業は微増となりました。通信基盤ドメインのキャリア事業については、NTT事業が増加、マルチキャリア事業は減少しました。
全体として、前年同期比333億円増の2,499億円と増収となりました。売上高も、非キャリア事業の比率が59パーセントとなり、また、「みらいドメイン」の構成比も44パーセントと増加しました。
売上高(事業区分別)
以下、事業区分別の売上高です。まずは、環境・社会イノベーション事業についてご説明します。前期比317億円増の851億円と好調で、全体の売上増を牽引しました。ミライト・ワンの再生可能エネルギー関連、電気・空調分野に加えて、西武建設の建築・リノベーション分野、そして、国際航業の企画・コンサル分野も増収に寄与しました。
売上高(事業区分別)
ICTソリューション事業です。前期比6億円増の622億円と微増になっています。前年度にLAN等の分野で大口売上があり、その反動減やキャリア向け通信機器の物販が不調でしたが、需要が旺盛なDC(データセンタ)・クラウドの部分が大幅に伸びたほか、グローバル事業も為替等の影響を含めて増加しました。
売上高(事業区分別)
NTT事業です。固定関連が増加したほか、モバイルは5Gの品質改善投資が大きく伸びたことにより、前期比53億円増の854億円となりました。
売上高(事業区分別)
マルチキャリア事業です。通信キャリア各社によって多少濃淡はあるものの、前年度から続く受注減の影響を受けており、5G基地局整備、CATV関連いずれも減少し、前期比43億円減の172億円に留まりました。
営業利益
続いて営業利益です。前年同期比23億円増の47億円と、増益になりました。
営業利益対前期比較
こちらのスライドは、増減を因数分解したもので、前年同期比23億円の増益となった要因を示しています。
売上総利益は、全体で108億円増加しました。内訳として、環境・社会事業で73億円増、ICTソリューション事業で20億円増、この2つを合わせた企業/環境社会基盤ドメインで93億円の増となりました。
さらに、通信基盤ドメインの売上総利益も15億円伸ばすことができ、トータルで108億円の増益となりました。
一方で、販管費が環境・社会分野を中心に85億円増加しています。当期より、環境・社会事業の売上総利益と販管費が両建てで増加しているのは、当社既存事業とかなり事業構造が異なる建設コンサル業である国際航業の影響によるものとご理解いただければと思います。
なお国際航業に関しては、今年度から利益貢献をしており、のれん償却を加味しても上半期で約5億円の利益増となっています。また、オーガニックの部分でも販管費の増加がありますが、これは基幹システム刷新にかかる投資増です。
営業利益・EBITDA(率)
EBITDAについてです。2年前より参考値として、営業利益に減価償却費・のれんを加えたEBITDAを開示していますが、今回からこのスライドを正規に追加することにしました。
EBITDAは前年度の71億円に対して、今年度は111億円と増加しており、企業としての稼ぐ力を着実に伸ばしていることがおわかりいただけると思います。
純利益
純利益についてです。営業利益の増加に伴い、純利益は前年度の2億円から14億円に増加しています。
データセンタ事業戦略 現在
重点取り組み施策について、3点ご説明します。
1点目は、データセンタの事業戦略の現在と今後についてです。まず、当社グループのデータセンタ事業戦略の現在の展開です。現在の中心的な取り組みは、データセンタデータホール、いわゆるデータセンタの中の仕事になります。ケーブリング工事などの通信設備の施工で、日本を含めアジア13ヶ国に事業展開しており、今年度には約300億円の売上を想定しています。
また、電気分野では、特にUPS(無停電非常電源設備)の施工を拡大させています。最近、急速に需要が高まるGPU(Graphics Processing Unit)リソースを提供するコンテナ型データセンタなど、新しい分野への取り組みも加速させています。
スライド下部の施工部分を説明しましたが、上部にサービスとO&M(Operation&Maintenance)に関して記載しています。サービス提供分野においては、大阪で自社保有のデータセンタをオペレーターとして運用しています。そこではデータセンタのサービスそのものを提供(27億円)しています。さらに、他社のデータセンタをお借りしてサービスを提供する、DC in DC(Datacenter in Datacenter)の形態での事業も展開しています。
データセンタ事業戦略 今後
今後の展開について業容拡大を含めてご説明します。背景に建設分野における労働者不足があります。データセンタの建設にも大きな影響を及ぼしており、ゼネコンや通信、電気、空調など、それぞれのサブコンの分野で労働力を確保することが極めて困難になっています。
データセンタの建築そのものから、通信、電気、空調など、ワンストップでの請け負いを望まれるお客さまが非常に多くなっています。
私どもは、ゼネコンの西武建設、通信・電気のミライト・ワン、空調の日設をグループ内に持っているため、ワンストップを期待されているお客さまの声に応えることができる、数少ない企業グループであると考えています。もちろん、まだまだ各分野で経験値を積み重ねる必要もありますが、今後はグループの強みをフルに活かして、グループトータルのフルバリュー型でデータセンタ事業に本格的に取り組んでいきたいと考えています。
さらに、自社でオペレーターとしてデータセンタを運用していますので、その経験やノウハウを活かして、データセンタにおけるO&M(Operation and Maintenance)の分野にもサービス領域を拡大していきたいと考えています。
非常にチャレンジングではありますが、2026年度には、2024年度対比で50パーセント増を目指して取り組んでいきたいと考えています。
三位一体の事業シナジーの推進
2点目は、街づくり、里づくりの分野におけるミライト・ワン、西武建設、国際航業の三位一体のシナジーの推進についてです。
スライドに記載のとおり、「ゼロカーボンシティ事業」と「公益インフラマネジメント事業」の2軸に注力して取り組んでいるところです。
まず、ゼロカーボンシティ分野では、自治体向けZEB(Net Zero Energy Building)改修事業で上半期に3件12億円の受注を獲得しました。今年度の目標である10億円を上回る成果を上半期であげることができました。
公益インフラマネジメント分野では、道路包括管理事業で、自治体向けの提案を進めており、パイロット案件の早期受注を目指して鋭意取り組んでいるところです。
2026年度の受注目標である100億円達成に向けて、テーマごとに実務者での協議を進めており、また、ワーキングによる活動の推進も行っています。今後も三社連携をさらに強化していきたいと考えています。
ビジネスリスク管理室の運用状況
3点目は、「ビジネスリスク管理室」の運用状況についてです。昨年度、大変ご心配をおかけしたが、大型の不採算案件の再発防止のため、スライド左側に記載のとおり、まずカンパニーや各事業会社の事業サイドにおけるリスクマネジメント体制をしっかりと強化しました。
一方、スタッフ側であるガバナンスサイドではチェックと牽制機能を強化するために、今年4月に「ビジネスリスク管理室」を設置しました。
「ビジネスリスク管理室」では、一つひとつ案件の内容に応じて、各分野の社内専門家をアドバイザーとしてアサインして、上半期だけで24件の大型案件について、受注前のリスク評価を徹底して行うとともに、受注後の案件の進捗状況をしっかりとモニタリングし、毎月の取締役会で報告をしていく体制で取り組んでおります。
さらに、昨年度も含めた過去の大型不採算案件の事例分析や、そこから得られたリスク対策のノウハウをナレッジ化し、社内の教育機関である「みらいカレッジ」での研修を通じて全社的に共有することで、過去の失敗を繰り返さないための仕組みづくりを整備してきました。
2024年度 通期計画
今期業績と中期経営計画の見通しについてご説明します。今年度第2四半期までの業績は、概ね計画どおりに進行しています。その結果、通期業績予想は変更せず、受注高5,800億円、売上高5,700億円、EBITDA400億円、営業利益270億円、当期純利益180億円の通期計画の達成に向けて引き続き取り組んでまいります。
財務・資本戦略
株主還元についてです。今年度も、還元方針は「安定的な配当成長と機動的な自己株式取得」を基本としています。総還元性向のターゲットレンジ(50パーセントから70パーセント)をベースとして積極的に株主還元を実施していく方針です。
今中間期は、前年比で増収増益でしたし、年度計画も変えていませんので、配当は期初の予想どおり、中間期35円、期末40円の年間75円を予定しており、前年比で10円の増配となります。
自己株式取得は新たに20億円を追加することとし、年間の自己株式取得額は合計50億円となります。結果的に、総還元性向は65パーセント程度の水準になります。
ROEに関しては、昨年度は残念ながら5パーセントと低迷しましたが、今後も収益性の向上や株主還元の実施等により、目標の10パーセント以上を目指して取り組んでいきたいと思います。また、EPS(Earnings Per Share)は、中計目標の10パーセントを上回る前年比48パーセント増の198円を見込んで取り組んでいます。
中期計画(中間点)の振り返り
中期経営計画についてです。2024年秋は、5年計画である第5次中期経営計画(2022年から2026年まで)の開始から2年半が経過した中間点にあたるため、中期経営計画の前半部分の振り返りと、社内でも計画のローリングをしてきました。その見通しをご説明します。
まず事業環境の振り返りですが、この2年半は、通信キャリアの設備投資抑制が想定以上に加速するとともに、コロナ禍の長い期間を経て資材価格や人件費が上昇するなど、さまざまなコスト増の要因があり、当社グループにとって厳しい事業環境でした。
一方で、データセンタの需要が拡大しています。グリーンエネルギー市場も拡大しています。災害に強い強靭な街づくりニーズも、自治体を中心にどんどん活発になってきています。そのような新しいニーズや事業機会の拡大も変化しました。
このような変化への対応として、当社グループは事業運営の一層の効率化を図り、コスト増の要因を企業努力で吸収することに努めてきました。同時に、「みらいドメイン」という新しい分野の早期拡大を目指して西武建設、国際航業等のM&Aを実施するとともに、データインサイトを活用して事業変革を目指していくことで、DX投資、情報関連投資も促進してきました。
その結果、「みらいドメイン」の比率は今年度、当初目標の40パーセントを上回る水準に達し、西武建設、国際航業とのシナジーも含めて、成長分野の売上拡大を目指して取り組んでいます。
一方で、成長投資の加速により、ノン・キャッシュのDA(減価償却とのれん)は、中期経営計画を策定していた時に想定していた数字よりも約70億円増加するかたちでの事業運営となっています。
中期計画の見通し
事業環境の変化、それに対応した事業戦略の変化も踏まえた中期経営計画の見通しについてご説明します。
西武建設、国際航業のM&Aを含む成長事業へのシフトの加速により、売上高目標は通信基盤ドメインの想定以上の落ち込みをカバーして、計画当初の7,200億円以上の目標を維持したいと思います。それとともに、「みらいドメイン」比率は、当初目標を5パーセント引き上げて45パーセント以上に設定し直したいと思います。
利益面については、当社グループの持続的な収益成長力(稼ぐ力)を示す指標として、EBITDAもしくはEBITDA率を新しいKPIとして導入したいと思います。未公表ながら、中期経営計画策定当初、EBITDA率目標は8.5パーセント以上としていました。当初の想定と同じ8.5パーセント以上と設定し、稼ぐ力の目標値、事業成長をしっかりと維持していきたいと考えています。
一方で、M&Aや情報関連投資・DX投資によるのれん、減価償却費の増加等を考慮し、営業利益率目標については当初の7.5パーセント以上から6.5パーセント以上に見直しを図りたいと思います。
新事業戦略:5つの事業変革「5Changes」
「MIRAIT ONE Group Vision 2030」の進捗状況についてお話しします。スライドの図は事業戦略の柱となる5つの事業変革「5Changes」を表しています。
次のスライド以降は、Change1からChange5について、取り組み項目別に、目標に対してどのように進捗しているのかをわかりやすく記載しています。
本日は時間の関係上、「NEW」のマークが付いている新たに追加した施策項目についてのみご説明します。他の項目については各スライドをご参照ください。
Change 1 人間中心経営の進展
まず、Change1「人間中心経営」の進捗状況です。「みらいカレッジ」は、社員の利用率はほぼ100パーセントですが、パートナー企業、協力企業の利用率は現在約48パーセントとなっています。目標の60パーセント以上の実現に向けて順調に拡大しています。
ワークライフスタイル改革の進展については、表彰制度(アワード)を新設しています。また「ミライト・ワン流価値創造モデル」を制定し、6月に有価証券報告書に開示をしました。その他、人事制度改革、健康経営の取り組みについても着実に進捗しています。
Change 2 みらいドメインへの取り組み
Change2「事業成長加速」についてです。こちらのスライドをご確認ください。
Change 2 三位一体のシナジー
ミライト・ワン、西武建設、国際航業との三位一体によるシナジー効果についてご説明します。上半期における3社連携による受注実績は、西武建設とミライト・ワンの2社連携で18億円、西武建設、国際航業、ミライト・ワンの3社連携で12億円、合わせて30億円となっています。
三位一体のシナジーの着実な実現には、まだまだ課題がありますが、1つずつクリアして、フルバリュー型事業モデルの実現、成長に向けて取り組んでいきたいと思います。
Change 3 利益性改善の進捗状況
Change3「利益性トップクラス」です。生産性向上を目指した取り組みの進捗について、スライドをご参照ください。
Change 4 データインサイト経営
Change4「データインサイト経営」、DX関連についても、スライドをご参照ください。
Change 5 ESG経営基盤強化への取り組み
Change5「ESG経営基盤強化」についてご説明します。
当社は「環境にやさしく強靭な街づくり・里づくりへの貢献」をマテリアリティの1つのテーマとして取り上げており、生物多様性保全や自然環境全般に関わる取り組みをさらに加速していくため、TNFD(自然関連情報開示タスクフォース)の理念に賛同し、TNFDフォーラムに参画の申請を行っているところです。
取締役会は今年度、経営環境の変化に対応した意思決定の迅速化を図るため、取締役の人数を19名から13名へ変更し、大幅にスリム化しました。
さらに、サプライチェーン全体のサステナビリティ実現のために、調達基本方針およびガイドラインを策定して開示しています。
その他、スライド最下部に記載のとおり「えるぼし」「くるみん」等の認定取得を推進しています。今後もESG経営基盤強化と情報開示の充実を図っていきたいと考えています。
2022-2026 中期目標(ローリング)
スライドの図は、中期目標達成に向けた推移を表しています。「みらいドメイン」、非通信分野の拡大によりトップラインを成長させていきます。また、継続的な事業効率化とコストダウンを図ることにより、稼ぐ力としての利益率をEBITDAも含めて向上させていきます。中期目標の達成と、「超・通建」に向けた企業価値向上を目指して、継続して努力していきたいと考えています。
上半期業績の推移
ご説明は以上となりますが、少し補足させていただきたいことがございます。先週11月13日の決算発表後、当社の株価は5パーセント弱下落して、ご心配をおかけしております。その後、だいぶ戻してはきておりますが、いくつか下落した要因があるでしょうが、その1つに年間計画に対する上半期の利益進捗率が物足りないというご指摘があるのではないかと考えています。
スライドの表は、過去も含めた上半期の業績をまとめています。今年度の営業利益の進捗率は17.3パーセントと、過去2年と比較すると上昇しているものの、3年前、4年前に比べるとやや低くなっています。
下半期業績の推移
しかし、今年度の当初計画の達成は十分可能と考えています。スライドの表は、今年度を含む過去5年間の下半期の業績をまとめたものです。
今年度は、過去最高水準の豊富な繰越工事が下半期に控えているため、これをしっかりと完工促進させることにより利益増を図ってまいります。さらに、通信基盤ドメインの利益改善も見込まれているため、過去の実績水準から見ても達成可能な数字だと考えています。
前年度は、大型不採算案件の発生と通信基盤ドメインの減収により、営業利益が大きく減少しましたが、今年度は不採算案件の影響は概ね解消されていることに加え、国際航業のグループ入りによる業績貢献が通年で期待されています。
こうしたことからも、期初に公表した業績予想の達成は十分果たしていけるものと考えており、この点だけ補足でご説明させていただきました。
以上で私からの説明は終わります。
質疑応答:ICTソリューション事業の上半期進捗と下半期見通しについて
質問者:ICTソリューション事業の上期進捗と下期見通しについて教えてください。売上総利益率が、第1四半期対比で第2四半期が若干低下した背景、通期の計画(16.1パーセント)の達成確度についてコメントをお願いします。
髙屋洋一郎氏(以下、髙屋):取締役専務執行役員ソリューションカンパニー社長の髙屋です。ICTソリューション事業の上期(第1四半期、第2四半期合わせて)の業績について、前年比で売上高は若干の増加に留まりますが、総利益は大幅に戻っております。
売上高は、LAN等で前年大口受注の反動減と物販の減少をグローバル、データセンタ・クラウドの増加で戻しました。
総利益は、前年LAN等で発生した大型不採算の反動による戻りが大きいほか、グローバルやデータセンタ・クラウドの利益が好調なため、今期は対前期で復調しました。
私どものICTソリューション事業は、グローバルも含めて非常に多岐に亘っております。特段この第1四半期と第2四半期の3ヶ月で、全体のトレンドが変わっているという認識はありません。
通期見込みに関して、上期に続いて下期も大型不採算の反動がありますので、現時点で期初に策定した計画(売上高、総利益)を達成するのは十分可能だろうと見ています。
質問者:前年度に計上した不採算案件の影響は、第2四半期ではほとんどない、ほぼゼロという理解でよろしいですか?
髙屋:はい。昨年度ICTソリューション事業で発生した大規模な不採算は、上期の時点ですでに一定の規模出ていましたが、下期により多く出ました。その反動は下期により大きく出るとみております。
三ツ矢高章氏:取締役常務執行役員、財務経理本部長の三ツ矢です。昨年度は、第2四半期ICTソリューション事業で約10億円の不採算を計上して、同じ案件で下期にさらに35億円追加して年間で45億円という水準でした。その工事自体はすでに終わっておりますので、今後それが影響することはございません。
中山:先ほど不採算案件の影響はもう概ね解消と申し上げました。もちろん小さいものは多少ありますけれども、基本的に大型の不採算は、今のところ「ビジネスリスク管理室」含め、マネジメントで抑え込めている状況です。
質疑応答:データセンタ事業戦略の売上高目標、競合状況について
質問者:2026年度に50パーセント増という対象は、データセンタ関連すべての売上高、もしくは通信設備(300億円)だけで見た場合のどちらですか?
髙屋:スライドでお示ししたすべての分野が対象で、総額50パーセントぐらい拡大に向けて努力したいと考えております。
質問者:貴社が取り組んでいるデータセンタの中のケーブリングや通信設備工事の関連する部分について、通信設備工事で競合他社との競争環境はいかがでしょうか? 需要が非常に多いので価格面で競争になっているのではないかと思います。今の事業環境についてご教示ください。
髙屋:ケーブリングの競争環境について、特にアジアでは子会社Lantrovisionが非常に優良な顧客、いわゆる外資系のプラチナ企業を顧客にしており、そことの長い信頼関係の中で非常に競争力があると思っています。
国内における競争も、子会社の中で外資系の企業とよい関係を作っており、そこの事業が非常に伸びております。もちろん競合他社はありますが、私どもは非常に競争力があると考えております。今後さらに事業を伸ばしていけるものと、自信を持っているところです。
質疑応答:データセンタ事業の現状について
質問者:データセンタについて、要素技術として一通り揃っているというのは理解しますが、一方で施工力の余裕度の面ではいかがですか? スキル的な再育成が必要なことを踏まえると、5割増という計画は現実味があるのか、現状比較的余裕があるので、仕事があればあるだけ取っていけるということなのか、コスト競争力や人材、体制は現状いかがでしょうか?
西武建設というゼネコンがグループ内にいるとはいえ、中小型の規模です。エリアとか、顧客とか絞り込んでやっていくのか等、データセンタ事業に関して補足してください。
髙屋:スライドに「フルバリュー型」とありますが、海外ではLantrovisionの事業を伸ばしていこうと思っています。向こう2年を展望すると、日本国内の方を大きく伸ばしたいと考えております。
建物は西武建設、通信設備や電気はミライト・ワン本体、空調は日設という専門子会社が、 新たにチャレンジをしていきたいと思います。
スキルという点については、西武建設はすでに倉庫の建設で実績があります。実はデータセンタの建物はある意味倉庫に非常に近いという面もあり、そこに関してはスキル的な問題はないのかなと思っております。
空調についても、新しいチャレンジにはなりますが、すでに昨年から日設が新しいトライアルを始めているところで、これからノウハウをつけていきたいと思います。
電気通信設備については、当社が一定の経験もあるエリアであり、従来はUPS(無停電電源装置)が中心でしたが、特に昨年からデータセンタについて他社とJVを組むなどして、特高(特別高圧)の電気設備も含め、さらに電気関係等の工事領域も広げており、スキルは少しずつ上がっていると認識しています。
リソースという点については、社内或いはグループの中でこれからこの分野により重点的にシフトしていくことを考えています。具体的には、特に電気分野は一般の建物電気をやっているチームから人材を流用して、それ以外の分野は玉突きで社内人材流動を考えているところです。
中山:人材は一番のテーマですので、「みらいカレッジ」も含めて、いま資格や経験の蓄積を全社的に行って、人員のシフトが全体的に加速している状況で、大きなテーマとして取り組んでいるところです。
質疑応答:国際航業とのシナジーについて
質問者:国際航業がグループ入りしてしばらく経過しましたが、思っていたとおりにいく部分、新たにできそうな部分、思っていたより課題となる部分があればコメントをお願いします。
最近パスコ社のTOBのように、特に民間側で活用したいという方たちが参入してきます。貴社グループは官公庁向けの話が多いと思いますが、国際航業の事業エリアを広げるとか、あるいは外部に向けて国際航業を活用するとか、従来思っていた以上になにかできそうなことがあったら、教えてください。
三竹保宏氏(以下、三竹):常務執行役員、経営企画本部長の三竹です。スライドの中で、主に国際航業のコンサル力を活かすところで、自治体向け案件が2つ並んでいます。
「ゼロカーボンシティ事業」では、当年度10億円の受注を目指す計画が、上半期だけで自治体の庁舎・体育館のZEB改修事業で10億円を超える受注の実績がすでに出ております。
また、「公益インフラ・マネジメント事業」では、関東の自治体の中で西武建設、ミライト・ワン、国際航業がタッグを組んで、道路を含めた包括管理をやっていく提案をしていますが、これも起点は国際航業になります。国際航業の自治体向けのコンサルがミライト・ワングループに新たな事業機会と価値を発揮するチャンスを、想定どおり与えてくれているという実感です。
もう1つのご質問、パスコ社のTOBについては、伊藤忠商事が、宇宙ビジネス含めて民間事業の大きな拡大の中でこうした空間測量を活用していこうとする動きだと認識しております。当社も、民間のエリアで、鉄道・道路に加えてこれからの不動産事業等に関する提案の中で、測量や空間情報を活かす場面は多くあるだろうと考えています。
さらには自治体の仕事の中でも、自治体の業務と民間で持っているデータをどう組み合わせて、自治体に住んでいる方の利便性を向上させるとか、そのエリアに人を呼び込んでいくような効果も自治体側で考えておられます。民間の業務と自治体の業務の橋渡しをするデータの活用には、あらためて大きなビジネスチャンスと社会の課題解決に向けた貢献ができると強く認識をしています。
質疑応答:データセンタ事業の成長性について
質問者:データセンタ事業について、50パーセント伸ばすというお話は、既存部分がどれぐらい伸びて、フルバリューとなることによってどれぐらい伸びるのかについて教えてください。また、この成長は、最初からリニアに伸びるのか、それとも後半に向けて成長が加速していくのかについてもお願いします。
髙屋:最初の内訳についてですが、きちんと数字として公表できるものではありませんが、既存のエリア以外だと本当に新しいチャレンジは、建物と空調のエリアになります。これが2026年には、両方合わせて70億円から80億円ぐらいの事業規模にはしたいなと思っています。
それは、小ぶりなデータセンタ1棟を仕上げるぐらい事業規模だとお考えいただければと思います。
タイムラインについては、基本的には年度ごとに少しずつ増えていくと考えています。今もうすでに営業活動を行っていますが、データセンタ事業は足が長い事業になりますので、今年度受注したとしても完工が上がるのは来年度、再来年度になってくると思います。そういう意味では、売上の伸びとしては毎年少しずつ、着実に上がっていくと考えています。
質問者:これは、2026年度以降もまだ伸ばす余地はあるということでよろしいでしょうか?
髙屋:数字はこれからとなりますが、今後も向こう数年間は堅調な伸びが出てくるものと考えております。
質疑応答:「ビジネスリスク管理室」の運用状況について
質問者:「ビジネスリスク管理室」が発足して少し時間がたちました。この管理室の運用によって防がれたリスクや、新たに生まれたチャンスなどがありましたらご紹介ください。
三竹:実際にやっているところはスライド左側の事業サイドでのリスク管理の厳格化、それをさらに第三者的な立場で、社内の専門アドバイザーがリスクをしっかりと認識して、不採算、過去からの教訓についても、グループ内で共通の教訓としていくという取り組みです。
具体的に実際に専門アドバイザーで、受注前の検討に参画した案件が24件。これは主に大型の案件で、全社で受注すべきかどうかを審議するような案件において、社内の専門アドバイザーが過去の知見も活かして受注のビジネスリスクの管理を行いました。
ただ、これはリスクを予防、監視しながらリスクをきちんと認識して、マネジメントとして対応していくところが主眼ですので、難しいものをやめるというよりは、難しさをしっかりと認識して、全社の知見を集めてしっかりと仕上げ、利益をもたらす案件をつくっていくというところです。
そういう意味で、このリスク管理により、案件が増えたというよりは、しっかりと内容を認識した上で、全社のノウハウをしっかりと大事な案件に注ぐようにできるようになったと思います。
それに加えて、もう1つ上に「ビジネスリスク管理室」からガバナンスサイドにモニタリング報告とございます。こちらは、事前にリスクを把握した後に、施工に入った後でどのように予算どおり進行しているか、どういった変化点があるか、「恐れ情報」はないかを1件1件モニタリングをしながら、ガバナンスサイドでも取締役会含めて内容のチェック、問題がある場合にはどのような早期の手を打つべきかといった、早期の対応が図れていると思います。
まだまだの取組みではありますが、今期第2四半期において、昨年度に発生した不採算影響が出ていないことも含め、効果は出ていると思います。
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