光フードサービス、立呑み業態を主軸に売上高は右肩上がりに推移 直営店を中心に積極的に出店拡大
光フードサービス株式会社 会社概要
司会者:本日は2024年2月28日に東証グロースに上場された、証券コード138A、光フードサービス株式会社より大谷社長にお越しいただきました。大谷社長、このたびは上場おめでとうございます。
大谷光徳(以下、大谷):ありがとうございます。
司会者:本日は、光フードサービスのビジネスモデルや今後の成長戦略について、いろいろとうかがっていきたいと思っています。
さっそくですが、どのような会社なのか、どのような事業をされているのか、ご紹介いただけますか?
大谷:光フードサービス株式会社、代表取締役社長の大谷です。我々は飲食業を行っており、その中でも小箱に特化した立呑み屋を中心に展開している企業です。
沿革
司会者:会社の成り立ちからうかがっていきたいのですが、もともとは大谷さんが飲食店1店舗目を創業されたところがスタートなのですよね?
大谷:おっしゃるとおり、私は現場からの叩き上げで、初代店長ももちろん私です。ゼロから作り、現在の六十数店舗まで成長させてきました。
司会者:飲食店を開こうと考えたきっかけはありますか?
大谷:私自身がつつましい家庭で生まれ育ち、非常に貧乏でした。しかし、そこで感じた家族の団らんの温かさや、食事を通じて実感できた豊かさのようなものを1人でも多くの人に伝えられればと考え、この業界に入りました。
司会者:最近は、飲食店の経営者で上場を目指す方が少なくなっていると思います。飲食業でこのタイミングで上場されたことには、何か目的や思いがあったのでしょうか?
大谷:私は創業時から上場を目指すと言っていましたし、1号店を出した時点ですでに100店舗は展開するつもりでした。創業者ですので、当然野心もあります。会社は「この指とまれ」だと思っています。1人でも多くの仲間や同志を募ろうと考えると、志の高い目標は必要です。
上場を目指していこうと思ったきっかけは、当初から「100店舗以上の出店を目指す」、そこから更に「外食トップ10を目指す」と言っていたことにあります。外食トップ10を目指すには、規模として、売上高の増加のみならず時価総額も1,000億円超を狙っていかなければなりません。そのためにも、コンプライアンスがしっかりしているか、ガバナンスがしっかり効いているかなど、今後の急成長に耐えうる内部管理体制を先に整えておきたいと思っていました。
会社をパブリック化させていくために、上場は非常に有効な手段ですので、かなり早い段階から上場を志して進んできました。
司会者:今後の急成長に耐えうる骨格や基盤を作るために、上場というプロセスを経て、今回上場企業になられたということなのですね。
業態ポートフォリオ
司会者:具体的なサービスやブランドについても、うかがっていきます。御社は飲食事業の単一セグメントで、提供されているブランドが「焼きとん大黒」と「立呑み魚椿」の2つかと思います。それぞれにどのような特徴があるのか、ぜひ教えていただけますか?
大谷:どちらも客単価2,200円前後の、低客単価の立呑み居酒屋です。「焼きとん大黒」は豚肉の串焼きに特化した、串焼きの焼きとん居酒屋です。
一方「立呑み魚椿」は、新鮮な魚と、注文が入ってから1品ずつ揚げていく、揚げたての天ぷらが特徴の立呑み居酒屋です。
司会者:どちらも小箱であることも1つのポイントですか?
大谷:おっしゃるとおり、基本的にはカウンター商売で、スタッフとお客さま、またはお客さまとお客さまの物理的な距離が近いことも特徴の1つになっています。
既存店売上高推移:コロナ前2019年同月比
司会者:飲食業界においては、直近では新型コロナウイルスの影響がかなりあったのではないかと思います。御社の場合はどのような影響を受けましたか?
大谷:非常に大変でした。緊急事態宣言中は、お店を開けられないことがありましたし、当然お酒の提供もできませんでした。本当にすべての商売道具が奪われてしまったような、本当に苦しい時期でした。
売上高の長期推移
司会者:コロナ禍では当然売上が落ちたと思いますが、スライドを見ると、その後はコロナ禍前よりも売上が伸び続けています。何がきっかけで、ここまで売上が上がったのでしょうか?
大谷:4年間で売上を約2倍まで増やしたのですが、実は店舗数はあまり増えていません。では何が起こったのかというと、既存店の売上が継続的に伸びたことが要因です。
司会者:既存店の売上が上がっていく仕組みはありますか?
大谷:お客さまの数が増えました。単純にそれだけです。また、今までは常連のお客さまに支えられてきましたが、そのような常連のお客さまの来店頻度も伸びてきました。そのようなところが大きな要因になっています。
司会者:コロナ禍を経て、お客さまの飲み方に変化はありましたか?
大谷:行動様式は大きく変化しています。一昔前は、大箱の居酒屋で大きい宴会が数多く行われていましたが、コロナ禍が明けてからは消費者の行動様式が大きく変化しました。
例えば、短時間利用の方が非常に増え、少人数化も進みました。お一人さまの利用もかなり増えました。
我々の業態は1組あたりの平均来客数が1.4名ですので、ほとんどがお一人さまのお客さまです。お一人さまでの短時間利用が特徴です。
例えば、会社の飲み会の前に、ウォーミングアップでビールを1杯飲みに来るような、0次会のご利用があります。
また、会社の宴会後に「じゃあ、2軒目はあの店に行こうか」ということもかなり減っています。グループでの2次会は少なくなったものの、終電前にあと1杯だけ飲みたいという方の「お一人さま2次会」のような利用動機へと大きく変わってきました。これは私たちにとって非常に追い風となり、高い客席稼働率にもつながってきました。
さらに、時代の追い風もあり、短時間利用の需要も我々のビジネスとマッチしたと考えています。
司会者:0次会でカフェに行くのではなく、ビールが飲みたいという方もいますよね。そのような場合に、「カウンター席に通される居酒屋には入りづらいけれど、立呑みなら行ってみようかな」という方が増えたのでしょうか?
大谷:おっしゃるとおりです。カジュアルにビールを1杯くっと飲み、「では、今から飲み会に行ってきます」というような方が増えました。
司会者:そこからさらに二次会で戻ってこられる方なども多いのでしょうか?
大谷:そのようなお客さまも、よくいらっしゃいます。
再来店・はしご戦略
司会者:御社の強みについても深堀りしていきたいと思います。戦略として、既存顧客を増やしていくというお話がありました。具体的にどのような取り組みなのでしょうか?
大谷:既存のお客さまを増やす方法を、私たちは社内で「接近戦」と呼んでいます。
その中には、スタッフとお客さま、さらに別のお客さまとの間で共通の話題を作る「トライアングル戦略」があります。トライアングルをいくつ作っていくかについて、各店舗で「今日は15トライアングルを作ろう」といった目標設定をします。
そのようなトライアングルができていくことにより、お客さまが食事やお酒を目的に来店するだけではなく、「誰かに会いたい」「誰かと話をしたい」と思えるようなコミュニティを形成します。
そのコミュニティを来店動機につなげていくことが、私たちの特徴や強みとなっています。これは今後も伸ばしていこうと考えています。
司会者:お客さまが来店した連続記録などもデータを取られているそうですね。現在1位の方は、どのくらい来店しているのでしょうか?
大谷:900日連続で来店されています。
司会者:ほぼ3年間、毎日来店されていることになりますね。
大谷:皆勤賞です。
司会者:すごいことだと思います。そのようなお客さまはお1人だけではないそうですね?
大谷:おっしゃるとおりです。最低でも週1日以上、年間で60日以上来店されている方が、我々のグループ統計で430人いらっしゃいます。
司会者:その方々は、1つの店舗に足しげく通われているのでしょうか?
大谷:そのような方もいらっしゃいますが、私たちは戦略的に人員配置をシャッフルしています。例えば、お客さまの推しスタッフが隣の店舗の新店長に就任すると、「一言お祝いに行ってくるよ」と、そのスタッフの異動先にもお祝いに来てくださいます。
その後、「彼、がんばっていたよ」と同じブランドのお店をはしごして、またホームの店舗に戻ってくるということが、今あちこちの店で起きています。
司会者:いつものホームの店舗に行き、「〇〇さん、今日はいないね」と尋ねると「実はあちらの店舗の店長になりました」と言われ、「行ってくるよ」と異動先に行って、またホームに帰ってくる。すると、客数としては3になるということですね。1人のお客さまが店舗をはしごすることで来店数が増えていくのですね。
「はしご戦略」は、他店から2軒目で来店される方を獲得していく戦略なのだろうと思っていました。そうではなく、御社内ではしごしてもらう戦略なのですね。これはなかなか難しい戦略だと思います。
大谷:非常に難しいです。しかしながら、私たちのビジネスのストロングポイントは、やはり既存店の売上が上がっていくこと、すなわち客数増です。
売上を上げるためには、客単価が変わらないのであれば、客数を増やしていかなければなりません。客数増を因数分解していくと、常連のお客さまを増やすことや、来店頻度を上げていくことなどもありますが、有効的な手段として「はしご」は非常に効果的であると考えています。
ドミナント出店
司会者:出店の形式がドミナントであることも、ひとつのポイントかと思います。御社は名古屋に本社があり、地場とされています。名古屋で出来上がったものは、例えば東京や広島、仙台などでも同じような現象として起きているのでしょうか?
大谷:他の地域でも起きています。
司会者:「はしご戦略」には再現性があるということですね。
大谷:おっしゃるとおりです。これは再現できると我々は認識しています。
立呑み×小箱業態
司会者:小箱で、なおかつドミナント出店で展開し、魅力的な店舗を作ることではしごをしてもらい、客数も増えていく仕組みになっているのですね。
大谷:そのとおりです。常連のお客さまの数自体も増えていきます。
司会者:来店数上位の方々は、どんどん記録を更新して競り合っているのですね。
大谷:皆勤賞の方々は、競り合っています。
司会者:熱狂的なファンがいらっしゃるということですね。ファンの方が来店したくなる仕組み作りにも取り組まれていると思いますが、イベントなどを積極的に開催されていることもポイントではないかと思います。
大谷:店舗のスタッフや店長の誕生日にお客さまを巻き込んで盛大にお祝いするイベントや、店舗ごとに「このたび、めでたく7周年を迎えました」という周年イベントなど、日頃の感謝をお客さまに伝え、還元できるようなイベントを企画しています。
トピックス
大谷:また、今盛り上がりを見せているのが「レッチュー甲子園」です。レモンチューハイをどの店舗が一番飲んだかを競う、店舗対抗イベントです。「夏のレッチュー甲子園」と、春の大会もあります。これもお客さまが非常に良い盛り上がりを見せていました。非常に熱狂しています。
司会者:これは、お客さまがまるで選手のようにお酒を飲むわけですね。そして全店舗で、甲子園のトーナメントのように行われるということですね。
大谷:おっしゃるとおりです。春の大会では、決勝トーナメントの前にリーグ戦が行われます。リーグ内では総当たりで戦い、杯数の多い上位2チームが決勝トーナメントに進出します。夏の大会では、決勝トーナメントでどの店舗が一番飲んだのかを競います。
ここにもドミナントの良さのようなものがあり、決勝トーナメントに勝ち進み、準決勝ぐらいになると、もちろん負けてしまう店舗もたくさん出てきます。すると、負けたチームの連合軍が、勝ち残っているチームを応援しに行くのです。
これもすべてお客さまの来店動機にアプローチしていることになります。それが当然、はしごにもつながっています。
やはり、私たちは売上を上げるために客数を増やしていきたいですし、かつ、既存店の売上を伸ばしていきたいと思っています。今来てくださっているお客さまの来店頻度にアプローチし、来店回数が多くなっていけば、既存店の売上も上がっていきます。
常連のお客さまにもさまざまな方がいらっしゃいますが、このようなイベントでスタッフや店舗、全社・全体のファンを1人でも多く作っていこうという戦略です。
司会者:1対1のお客さまで「レモンチューハイでも飲まなきゃ」ということではなく、トライアングルになっているからこそ、隣のお客さまと「あの店舗に応援しに行こうよ」ということもできるのですね。やはりそのような仕組みは他の飲食店にはなかなかない仕組みだと思います。
大谷:名物大将や名物女将がいるような一部の個人店にはあるかもしれません。しかし、チェーンとして取り組んでいる企業はまだ見たことがありません。
司会者:ただの立呑みではなく、まさにいろいろな動機で行きたくなる立呑み屋のような店舗が御社の店舗なのですね。
競合状況
司会者:競合関係について、もう少しうかがいます。今、個人店のお話も出ましたが、実際にさまざまな飲食店がある中で、ポジショニング、あるいは競合状況はどのようになっているのでしょうか?
大谷:上場企業の中でも、大衆系の居酒屋などは客単価も近く、一部には競合だと思えるようなお店もあります。
しかし、人に会いに行くなどの来店動機がない中では、「焼きとん大黒」の串焼きや「魚椿」の天ぷらなどの専門業態で、かつ小箱での業態ポジショニングを取っている企業は少ないと思っています。
司会者:焼きとんや天ぷらなどの専門性に加えて、「人に会いに行く」という動機も、ある意味専門的なところですよね。他に同じようなところはまだなく、なかなか真似もできないのでしょうか?
大谷:例えば、外食の上場企業が隣に出店してきたとしても、私たちの売上に影響することはほとんどありません。「うちのお客さんが流れているのでは」ということはありません。
司会者:それは、御社のスタッフなど、人に会いたくて来店しているお客さまだからですね。
大谷:そのとおりです。動機が違うのです。
司会者:それが御社のもう1つのポイントなのですね。
成長戦略全体像
司会者:成長戦略についてもうかがっていきたいと思います。御社はどのようなところを成長戦略と位置付けているのか教えてください。
大谷:やはり、お客さまの数がみるみる増えていく、すなわち既存店の売上が伸び続けていくことが私たちの特徴です。したがって、成長戦略の一番の柱には、既存店の継続的な成長を据えていきたいと思います。
さらに、新規出店とドミナントエリア拡大があります。私たちはドミナント出店がとても得意ですので、ドミナントを活かして新規出店していきたいです。ドミナント出店により、掛け算で継続した成長を続けていきたいと思っています。
司会者:KPIにも入っている既存店の数は、上場時から今期第2四半期決算までで、ものすごく増えていますよね?
今後はこの既存店に来店される常連さまもどんどん増えていき、お店が1店舗増えればはしごもしてもらえ、はしごの領域も広がっていくということですね。
大谷:出店に伴って、売場面積が増えていくようなイメージです。
司会者:単なる店舗出店で売上が大きく上がるというよりも、その地域全体での売上が上がっていくのですね。
新規出店とドミナントエリア拡大
司会者:今後、出店していきたいエリアはありますか?
大谷:基本的に、今ドミナントが成立しているのは乗降客数16万人以上の駅があるエリアです。このような駅・エリアは日本全国に163駅ありますので、今後もドミナントを中心に据えた店舗展開を続けていこうと思っています。
司会者:では今後、飲み屋街に行けば「焼きとん大黒」があり、複数の「焼きとん大黒」を次々とはしごしていく経済圏が生まれるわけですね。
大谷:おっしゃるとおりです。
司会者:大谷社長のお話を聞いていると今後の光フードサービスさまから目が離せないなと思えてきますが、最後にご覧の投資家のみなさまにぜひ一言お願いします。
大谷:私たちのビジネスモデルの強みは既存店の売上が伸び続けていくところにあると考えています。また、ドミナントを活かした店舗展開も得意としています。ここの掛け算で、今後の会社の継続的な成長につなげていこうと考えています。期待していただければ嬉しいです。
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