現金比率はリーマンショック後の水準に
また、新興国株式を「アンダーウエート」とした割合は差し引きで34%と過去最大となった。現金比率は5.5%で、2008年のリーマン・ブラザーズ破たん後につけた水準に並んだ。投資家のリスク回避が続いている。
外為市場でも、早期利上げの観測が後退し、先物市場にみるドル円のポジションはほぼスクウェアになっている。
ところで、こういった投機資金にポジションの偏りが見られないことが、本当に市場に方向性がないことを意味するのだろうか?
相場では、ごく普通に売りが多い、買いが多いという表現を使うが、実のところ相場での売り買いは、常に同数だ。市場での取引高は、株数であろうが、売買金額であろうが、常に売り手に見合った同数、同額の買い手がいる。それを出合い、出来高と呼んでいる。
外為市場での資金フローを見ると、2015年に入っての経常黒字は1~7月で約10兆だ。黒字は外貨余剰なので、円買い圧力となるが、黒字の元となっている所得収支は必ずしも円には戻さない。経常収支に含まれ、より直接的に円相場と関わる貿易収支は1~8月上中旬までで2.7兆円の赤字となっている。これは円安圧力だ。
資本の方では、必ずしも為替オープンとは限らないが、外国人の日本株買いが1~8月で1.2兆円の買い越し。これは円高圧力。一方、日本の年金・生保の外国証券買いが1~9月第1週までで16兆円。これは概ね円安圧力となっている。他には為替市場を通るM&Aが過去最大規模となっているが、ここでも円安圧力が大きい。
これらの円売り長期資金フローに外為銀行などの投機資金が相対で取引すると、投機資金全体では円ロング・外貨ショートになる。相場では、常に売り手に見合った同数、同額の買い手がいるからだ。
それでも、円ロング・外貨ショートをカバーしないのは、利上げ確率を25%程度とみているためで、円安に行く恐れが少ないのなら、利益につながらないカバーは極力したくないのだ。
また、現金比率が5.5%で、2008年のリーマン・ブラザーズ破たん後につけた水準に並んだということは、市場は既に未曽有の金融危機を織り込んだことになる。そこまでプロの投資家たちはリスク回避なのだ。
とはいえ、現金や債券では、プロの投資家たちは、最終顧客が望むリターンを確保できない。どこかでリスクを取らねば、いつまでもプロとして飯を食ってはいけないのだ。
私は、現金比率がリーマンショック並み、低利回りの債券を買い続けているところからみて、株価が安定して上昇する時期は遠くないとみている。その為にも米は利上げを早く行い、市場の不確定要素を早急に取り除くべきかと思う。