波乱の種が蒔かれる時間帯
昨晩発表された米労働省発表の7月25日までの週間新規失業保険申請件数は27万件(前週比+0.3万)。前週から若干増加したが、トレンドを示す4週移動平均は26.8万件と前週(27.5万)から改善し、労働市場の堅調を市場は材料視した。
注目の雇用統計に対する事前予想は、非農業部門雇用者数が前月比+22.5万人、失業率が5.3%、時間当たり賃金が前月比+0.2%と、全般的に緩やかな回復の継続が予想されている。 注目は労働参加率。6月雇用統計では労働参加率が0.3pp低下したが、これは厳冬により卒業や学期末が遅れた学生の労働参加が例年よりも少なく、季節調整に歪みが生じていた可能性が指摘されており、この反動で労働参加率上昇となれば材料視されるだろう。
雇用統計で事前予想比強めの数字が出れば、ドル買いで反応、黒田レンジ上限を試す動きも予想されそうだが、注意すべきはNY株式市場の動きだ。200日移動平均線を割り込み、その抵抗を確認してから5連続陰線と続落している。パターン分析でも、ソーサートップや三尊天井が意識されやすい形状となっており、米早期利上げ観測の高まりから大きく崩れるようだと、リスク回避の動きが高まり、ファーストアクションでのドル買いが、急速にしぼんでいく可能性もあろう。リーマンショック後の切り返しから、既に6年目に入っており、通常の米経済循環からは、サイクルトップが意識されても良い時間帯に向かっていく。世界的な金融緩和で実体経済と株価との異常な乖離も継続しているが、大統領選挙年はNYダウにとっては分が悪い年回りで、2016年~17年にかけて、この咎めが出てくると思われる。
過去の季節傾向を振りかえると、ここ20年間では8月の円高傾向が確認される。8月月間の平均値幅は約4.2円である事から、雇用統計で期待感が高まった噴き値が今月の高値となり、その後にリスク回避が高まれば月末にかけて「高値-4円」程度が下値の目処となる可能性も想定しておきたい。
ドルとの逆相関の動きを見せるNY金が、今週のドル円125円乗せ場面でも下げなかった値動きにも注視したい。NY金は、1999年8月安値~2011年9月高値までの上昇に対する半値押し水準で下げ止まりを見せており、心理的節目1000ドル~61.8%押し(886ドル)を試すような値動きとならない限り、ドル円の上値も限定的となるだろう。雇用統計後のNY株の動きと合わせて、NY金の反応にも注意だ。
暑い夏が過ぎれば、ヒラリーのメール問題などに対する議会証言など、秋には政治的ファクターの高まりも浮上してくる。その前に利上げしたいFRBの思惑が高まれば高まるほど、マーケットにとって仇になる可能性が高まるだろう。