雇用統計が強気となると、株価下落リスクは高まる
5月22日のイエレンFRB議長の「景気が想定通りに回復した場合は年内の利上げが適切になる」との認識が示された事が今回のドル買いの一因となっているため、強気の雇用統計となれば、ドル買い・NY金売りで市場は反応するだろう。ただし、NY株式市場は、引き締めを嫌気する動きが予想され、一目均衡表の雲の薄い時間帯で、三尊が意識されるようなチャート形状となっており、ファーストアクションでNY金は売られても、株価が大きく下落するようなら、「安全資産」としての買いが、大きな突込み場面では出てきそうだ。また、利上げしても年内に1回だけで連続的なものにはなり難いと言うことを、ドル円も徐々に織り込み始めるだろう。
さらに、IMFは4日、米国経済についての年次審査の中間報告で、米経済成長予測を引き下げ(今年に入り2度目)、米利上げについて「賃金や物価上昇の兆しが今より明確になるまで待つべきだ」として、利上げの時期は「2016年前半」が適切との見方を示し、ドル相場は「やや過大評価されている」とし、さらに著しく上昇した場合は「悪影響が予想される」と指摘した。雇用統計が弱気となった場合、早期利上げ観測の後退から、これまでのドル買い・円売りの巻き戻しが予想される。この場合のNY金は、レンジ下限で下支えられえて、200日移動平均線が再び試されるだろう。
5月に長く続いた三角保合いを上に放れて、アルゴ系やトレンドフォロー系資金を巻き込んで上昇したドル円だが、早々に125円を超えて続伸していかないと、現在、120円前半にある10日間安値水準が、来週末には123円台半ばまで切り上がり、トレンドフォロー系指標の手仕舞いが誘発されやすい地合いとなる。「過度の円高は是正された」との原田日銀審議委員発言もあったように、さらなる円安ドル高のスピード感を持った値動きに対しては、当局による牽制発言も増えるだろう。
いずれにしろ、世界的に株価と実体経済の大きな乖離が拡大し続ける異常事態が続く中、歪みが大きければ大きいほど、長ければ長いほど、崩れた際は、(すぐにではないにしろ)大きな衝撃が予想され、生産コスト水準にまで値を沈めたNY金(GOLD)の値位置を考慮すると、金の下値もドルの上値も限定的と見る。
OPEC総会に関しては、市場のコンセンサスは生産枠の据え置き。一部で増産(生産枠拡大)も予想されており、押し上げ要因となり難く、ギリシャ問題の先送りで、ユーロ高の追い風も期待薄。季節傾向の夏高パターンが下値を支え、市場予想通りの結果であれば、60ドル±5ドル程度の保合いが継続しそうだ。ギリシャ問題と同じく、今月末に控えるイランの核開発協議の最終合意期限に向けた交渉の行方に市場の関心は移行するだろう。