ここまでの議論をまとめよう。
・ 株価のリターンは企業業績の伸びに比例する。
・ 日本の上場企業の業績は世界景気に連動する。
・ 2014年の世界景気は先進国中心に改善する。
よって株価は上昇する、という三段論法である。加えて、以下の状況も株式市場の追い風となる。
・ 2104年の日本の景気は消費増税の影響で鈍化するも底堅いものとなる。
・ 一方、デフレ脱却には更なる追加緩和が必要な状況。
では株価はどのくらいの水準まで上昇するだろうか。本日の日経新聞に主要証券会社の2014年の見通しがまとめられている。それによると来年の
日経平均の高値は1万8000円との予想が圧倒的に多い。現在がざっくり1万6000円だとすると、12%上昇することになる。12%というのは来期EPSの伸びに等しい。現在のところ、来期(2015年3月期)の予想EPSは今期予想に対して10%強の増益となるというのが市場のコンセンサスである。
つまり1万8000円というのは、バリュエーションが変わらないという前提のもと、利益が増える分に比例して株価が上がると言っているに過ぎない。冒頭に挙げた式(1)を思い出そう。
株価 = 業績/金利 … 式(1)
右辺分子の「業績」が1割増える見通しだから株価も1割上がります、ってそれじゃあ、誰でもできるよ、そんな予想。ストラテジストっていうのは楽な商売だと思われるだろう。
EPSの伸びに比例して株価が上がるという議論は、バリュエーションが変わらないということが暗黙の前提になっている。ではバリュエーションは変わらないのだろうか。もちろん、変わるのである。式(1)の両辺を「業績」で割ると、PERを求める式になる。
PER(株価収益率) = 株価/業績 = 1/金利
PERというのは金利の逆数。だから金利が下がれば(分母が小さくなって)バリュエーションは拡大するし、金利が上がれば(割り引く分母が大きくなって)バリュエーションは低下する。
ここで便宜的に一言で「金利」としたものは、実はリスクプレミアムや成長期待などを含む「割引率」であったことを思い出そう。さまざまな思惑でこの割引率は変化し、それに伴ってバリュエーションが変わるのである。
PART1では主に分子=業績について述べてきた。PART2では分母である金利を中心に議論する。その中核は来年の最大の投資テーマになると考える日銀の追加緩和である。それによって大きく相場展開が異なる2つのシナリオを提示する。
最後に業績の伸びについて補足しておこう。
僕はこの先、来期EPSが更に上方修正されると考えている。クィックコンセンサスによると現時点での
日経平均の2015年3月期の予想EPSは1100円。1万8000円というのはPER16倍強(16.36倍)の水準だ。僕は、ざっくり1200円程度にはなると思う。そうなれば同じPER倍率で評価して
日経平均は2万円になる。
信じられない?では今年の年初に書いたこのレポート「幸せなマリアージュ」をもう一度お読みください。そこには当時800円程度だった
日経平均のEPSが2割程度上方修正される可能性を指摘している。5ページに載せた表の右端のEPSをご覧ください。978円とある。
本日の日経新聞がお手元にあれば市況欄で昨日のPERをご確認されたい。15.95倍だ。昨日の
日経平均1万5587円を15.95で割れば977円を得る。
えーっと、今年の初めに
日経平均のEPSが1000円近くになるなんてことを言っていた人間は、古今東西、僕ひとりであっただろう。
(PART2に続く)