―AI登場で将来的に電力需要増加へ、脱炭素と経済安保の面からも必要性高まる―
新潟県の花角英世知事は11月21日、東京電力ホールディングス <9501> [東証P]柏崎刈羽原子力発電所6、7号機の再稼働を容認すると表明した。県議会の判断を経て年内にも「地元同意」の手続きが完了し、早ければ来年初めごろに営業運転が再開される見通しだ。同月28日には北海道の鈴木直道知事も北海道電力 <9509> [東証P]泊原発3号機の再稼働を容認した。ここ原発再稼働の話題が相次ぐなか、足もとでは既存炉の建て替えに向けた動きも進み、原発を巡る状況に大きな変化が出てきている。もちろん、安全性の確保が大前提であることは言うまでもない。
●40年代に4~5基分の建て替え必要に
2013年に施行された新たな安全基準のもと、これをクリアした発電所として15年に九州電力 <9508> [東証P]川内原発が初めて営業運転を再開した。これを皮切りに関西電力 <9503> [東証P]、四国電力 <9507> [東証P]、中国電力 <9504> [東証P]と広がりをみせたが、いずれも西日本に限られる形に。22年のウクライナ戦争に端を発するエネルギー価格高騰を受けて電気代の「東高西低」が鮮明となるなか、24年になって東北電力 <9506> [東証P]女川原発が東日本エリア第1号としてようやく運転を再開。今後、柏崎刈羽、泊と続いていくことになろう。
政府は今年2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画で、原子力を再生可能エネルギーとともに「脱炭素電源」に位置づけ、「最大限活用」する方針を明記した。従来の「可能な限り原発依存度を低減する」との文言は削除された。人口減少や省エネの普及で将来的に減少するとみられていた電力需要が、生成AIの登場とそれに伴うデータセンターや半導体工場の建設によって増加に転じる公算が大きくなったためだ。ウクライナ戦争など地政学リスクの高まりによる「経済安全保障上の要請」という側面も当然ある。
こうしたなか、再稼働だけでなく新規建設の話も持ち上がっている。関西電は7月に美浜原発の建て替えを目指し、現地調査に乗り出す方針を表明。11月から実際に調査をスタートしている。大手電力会社でつくる電気事業連合会によると、今後の電力需要増加や運転期限の到来などを踏まえ、40年代に550万キロワット(4~5基分に相当)の建て替えが必要になる可能性があるという。官民の動きを背景に、マーケットでは関連銘柄への関心が上昇。主力どころでは東電HDや関西電、三菱重工業 <7011> [東証P]、中小型では助川電気工業 <7711> [東証S]への注目度が高い。原発関連株は高市早苗政権が掲げる注力分野の一つ、核融合発電とも被る部分の多いテーマであり、息の長い相場が期待できる。
●プラントやエンジニアリング、ろ過装置など
東京エネシス <1945> [東証P]は発電所向けの総合エンジニアリング企業。東電HDを主要顧客に抱える。会社側では再稼働に絡む工事が期待できる原子力分野のほか、電力需要増加に伴う新設・増設工事が見込める変電分野、脱炭素電源の一つである再生可能エネ分野に注力する構えにある。26年3月期は2期ぶり増収増益と7期連続増配を予想。株価は約32年ぶりの高値水準で実質的な青空圏にあるが、指標面ではPBR0.8倍、配当利回り3%超と依然割安感が意識される。
木村化工機 <6378> [東証S]は各種設備・機器の開発から設計、製作、工事まで幅広く展開。原発関連の容器や濃縮機器に強みを持つ。安全審査が終結した原発の再稼働向け業務をはじめ、福島原発の廃炉作業や青森県六ヶ所村の再処理工場向け案件を担うなど実績豊富。過去最高だった前期の反動で26年3月期は減収減益を見込むが、株価には既に織り込み済み。波乱安となった今春以降に一貫して上値を指向し、足もと17年ぶり高値圏に浮上。それでも配当利回りは3%台半ばと高い。
太平電業 <1968> [東証P]は火力・原子力発電所向けで高実績のプラント建設会社。建設工事やメンテナンスから運転業務、解体、原発の廃止措置までトータルに提供する。直近の上期決算はやや冴えない結果となったが、決算説明資料では企業価値向上へ再稼働案件の獲得を目指す方針を引き続き明示。「今後の原子力発電所の新増設は当社の技術や動員力無くしては成立しない」とし、将来的な建て替え案件の獲得にも期待がかかる。株価は新値圏でしっかり。
オルガノ <6368> [東証P]は東ソー系の水処理装置大手。ウエハーの洗浄に使う超純水装置を製造していることから 半導体関連として注目されるが、電力業界向けにも多様な製品を展開し、原発向けでは原子炉や燃料プールに用いるろ過装置を手掛ける。上期決算は営業51%増益と好調。主力の電子産業向けが伸びたほか、原発向けソリューションも堅調だった。この決算発表とあわせ、通期利益予想の上方修正を行っている。PERは22倍前後と半導体セクターのなかで特段割高感はない。
ステラ ケミファ <4109> [東証P]はフッ素化合物大手。ウエハー製造に欠かせない高純度薬品で世界高シェアを握り、同社も半導体関連の切り口で脚光を浴びることが多いが、原子力関連製品も手掛けており要マークだ。中性子を吸収するホウ素の濃縮技術を生かし、使用済み核燃料の貯蔵容器や中性子遮蔽材料に使用される製品を提供する。上期は主力の半導体や電子材料部門が好調で営業2ケタ増益を達成。株価は4000円近辺を横に走る200日移動平均線を絡めた動きが続く。
西華産業 <8061> [東証P]は三菱重系の機械商社。23年から三菱重の原発設備の販売代理店業務を開始し、同年に発電所向けバルブのTVE <6466> [東証S]、翌24年に発電所内の消火設備を手掛ける日本フェンオール <6870> [東証S]をそれぞれ持ち分法適用会社に収めるなど原子力分野に注力する姿勢を鮮明としている。これらが収益面で寄与し、25年3月期は4期連続の営業増益で過去最高を達成。続く26年3月期も小幅ながら最高益更新を計画する。配当利回りは3%台に位置する。
株探ニュース
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