*13:05JST CAICAD Research Memo(5):2025年10月期は増収増益(黒字転換)を見込む(1)
■CAICA DIGITAL<2315>の業績見通し
1. 2025年10月期の業績予想
2025年10月期の連結業績について同社は、売上高を前期比11.0%増の6,220百万円、営業利益を215百万円(前期は159百万円の損失)、経常利益を215百万円(同263百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益を196百万円(同359百万円の損失)と大幅な増収増益により、各段階損益の黒字転換を見込んでいる。
売上高は、引き続き「ITサービス事業」が順調に拡大する。とりわけ既存事業が堅調に推移するとともに、新規事業として取り組むDXソリューションサービスによる上乗せ分(約4.8億円を想定)が業績の底上げに大きく寄与する想定だ。一方、「金融サービス事業」は「Zaif INO」の取扱高拡大などに取り組むも、未だ本格的な業績貢献は見込んでいない。
利益面でも、引き続き「金融サービス事業」への先行費用が発生するものの、「ITサービス事業」の伸びや高単価案件の選別継続により大幅な増益となる。
2. 弊社の見方
同社の業績予想の達成は、DXソリューションサービスによる上乗せの実現に負うところが大きいと、弊社は見ている。もっとも、その点については海外有力ベンダーとの業務提携により、一定の顧客基盤や案件における連携が裏付けされていることから、同社の前提には十分に合理性があるものと判断している。人的リソースの確保を含めて、順調に立ち上がってくれば、今後の収益ドライバーとしてのポテンシャルにも大いに期待ができる。また、中長期の視点からは、引き続き「Zaif INO」やWeb3ビジネスの進展に注目したい。
■中期経営計画の方向性
安定したキャッシュ・フローを生み出す「ITサービス事業」に集中するとともに、Web3ビジネスの拡大にも取り組む
1. 今後の方向性
同社は、「Zaif」を含む連結子会社3社の譲渡による「金融サービス事業」の抜本的な再編に伴い、2023年10月に新たに3ヶ年の中期経営計画を公表し2年目を迎えている。ただし、「デジタル金融の世界を切り拓く」※というスローガンは引き続き掲げ、方向性に大きな変更はない。安定したキャッシュ・フローを生み出す「ITサービス事業」に集中するとともに、資本業務提携を締結したクシムなどとの協業により、ブロックチェーン技術を活用したWeb3ビジネスの拡大を図る方針である。
※ 「デジタル金融の世界を切り拓く」をスローガンとして、「あらゆる事がデジタル化される未来。中央集権型から分散型(DeFi)へ、業界構造そのものが大きく変革していく金融。CAICAはその変革者になります。」を目指す姿に掲げている。
2. 環境認識
同社の主力である「ITサービス事業」においては、金融及び非金融分野ともにDX投資が企業の重要な成長戦略の柱となっており、今後も好調な受注環境が継続する見方が大勢である。もっとも、同社ならではの成長性(市場を上回るアウトパフォームの可能性)を判断するには、中長期的な成長ドライバーとして期待されるWeb3ビジネスの展望が重要なポイントと言える。
(1) Web3の特長と同社の強み
Web3のプラットフォームやサービスは、従来のような中央集権型ではなく、分散型で構成される。これによりサービスやビジネスにおける主導権は、これまでのようにサービス提供事業者に集中するのではなく、サービスの向上と拡大に貢献したコミュニティなどの参加者に分散されるようになる。また、サービス利用者のデータは利用者自身が管理できるようになる。このような特長を持つWeb3への流れは、大量の利用者データを収集することで成長してきたテック系企業のビジネスモデルにも大きな影響を及ぼすと言われる一方、新しいサービスや事業を創出するスタートアップ企業の台頭も目立つようになってきた。特に、インターネット上に新しい世界観や経済圏を創り出すことで、ビジネス環境を一変させるポテンシャルを秘めていると見られている。
同社の強みは、FinTech事業に注力し、ブロックチェーンに関する様々な実績を有していることである。Web3の基盤技術であるブロックチェーンには2016年から集中的に取り組み、様々なプロジェクトを推進し、多くの知見とノウハウを蓄積してきた。また、Web3の重要な決済技術である暗号資産についても、暗号資産交換所「Zaif」を譲渡する結果となったものの、カイカコインの運用実績(約7年間)などを含めて知見やノウハウは獲得できており、この2つの重要な技術(ブロックチェーン及び暗号資産)を有する同社には明らかにアドバンテージがあると言える。
(2) 市場規模(見通し)
Web3の国内市場規模は、2027年までに2021年の20倍の約2.4兆円、グローバル市場でも約13倍の66.9兆円に拡大することが想定されている※1。また、外部の意識調査においても、多くの事業会社がWeb3に高い関心を寄せており、「1年以内にWeb3を活用した事業開発を行いたい」との回答が高い比率を示すデータもある※2。特にゲームや金融、セキュリティ、組織運営、アプリ開発、アート、決済、資金調達など幅広い分野で事業開発が期待される一方、知識不足や予算、人材面などが大きなハードルとなっている実態もうかがえる。同社では、「Zaif」の運用やNFTローンチパッド「Zaif INO」の運用経験を生かし、Web3コンサルティング事業を展開して市場の拡大をリードする方針である。
※1 同社成長戦略資料よりフィスコ抜粋
※2 同社成長戦略資料よりフィスコ抜粋
3. 数値目標とその前提
中期経営計画最終年度(2026年10月期)の数値目標として、売上高7,813百万円、営業利益467百万円(営業利益率6.0%)を目指している。これまで業績面で大幅なマイナス要因となっていた「金融サービス事業」の再編効果と、「ITサービス事業」への集中により、まずは黒字転換を実現するとともに、好調な受注環境が継続している「ITサービス事業」の伸びが成長をけん引する想定である。特に、DXコンサルティングやWeb3コンサルティング事業から上流工程の高単価SI案件を獲得することで利益率の向上を図る考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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1. 2025年10月期の業績予想
2025年10月期の連結業績について同社は、売上高を前期比11.0%増の6,220百万円、営業利益を215百万円(前期は159百万円の損失)、経常利益を215百万円(同263百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益を196百万円(同359百万円の損失)と大幅な増収増益により、各段階損益の黒字転換を見込んでいる。
売上高は、引き続き「ITサービス事業」が順調に拡大する。とりわけ既存事業が堅調に推移するとともに、新規事業として取り組むDXソリューションサービスによる上乗せ分(約4.8億円を想定)が業績の底上げに大きく寄与する想定だ。一方、「金融サービス事業」は「Zaif INO」の取扱高拡大などに取り組むも、未だ本格的な業績貢献は見込んでいない。
利益面でも、引き続き「金融サービス事業」への先行費用が発生するものの、「ITサービス事業」の伸びや高単価案件の選別継続により大幅な増益となる。
2. 弊社の見方
同社の業績予想の達成は、DXソリューションサービスによる上乗せの実現に負うところが大きいと、弊社は見ている。もっとも、その点については海外有力ベンダーとの業務提携により、一定の顧客基盤や案件における連携が裏付けされていることから、同社の前提には十分に合理性があるものと判断している。人的リソースの確保を含めて、順調に立ち上がってくれば、今後の収益ドライバーとしてのポテンシャルにも大いに期待ができる。また、中長期の視点からは、引き続き「Zaif INO」やWeb3ビジネスの進展に注目したい。
■中期経営計画の方向性
安定したキャッシュ・フローを生み出す「ITサービス事業」に集中するとともに、Web3ビジネスの拡大にも取り組む
1. 今後の方向性
同社は、「Zaif」を含む連結子会社3社の譲渡による「金融サービス事業」の抜本的な再編に伴い、2023年10月に新たに3ヶ年の中期経営計画を公表し2年目を迎えている。ただし、「デジタル金融の世界を切り拓く」※というスローガンは引き続き掲げ、方向性に大きな変更はない。安定したキャッシュ・フローを生み出す「ITサービス事業」に集中するとともに、資本業務提携を締結したクシムなどとの協業により、ブロックチェーン技術を活用したWeb3ビジネスの拡大を図る方針である。
※ 「デジタル金融の世界を切り拓く」をスローガンとして、「あらゆる事がデジタル化される未来。中央集権型から分散型(DeFi)へ、業界構造そのものが大きく変革していく金融。CAICAはその変革者になります。」を目指す姿に掲げている。
2. 環境認識
同社の主力である「ITサービス事業」においては、金融及び非金融分野ともにDX投資が企業の重要な成長戦略の柱となっており、今後も好調な受注環境が継続する見方が大勢である。もっとも、同社ならではの成長性(市場を上回るアウトパフォームの可能性)を判断するには、中長期的な成長ドライバーとして期待されるWeb3ビジネスの展望が重要なポイントと言える。
(1) Web3の特長と同社の強み
Web3のプラットフォームやサービスは、従来のような中央集権型ではなく、分散型で構成される。これによりサービスやビジネスにおける主導権は、これまでのようにサービス提供事業者に集中するのではなく、サービスの向上と拡大に貢献したコミュニティなどの参加者に分散されるようになる。また、サービス利用者のデータは利用者自身が管理できるようになる。このような特長を持つWeb3への流れは、大量の利用者データを収集することで成長してきたテック系企業のビジネスモデルにも大きな影響を及ぼすと言われる一方、新しいサービスや事業を創出するスタートアップ企業の台頭も目立つようになってきた。特に、インターネット上に新しい世界観や経済圏を創り出すことで、ビジネス環境を一変させるポテンシャルを秘めていると見られている。
同社の強みは、FinTech事業に注力し、ブロックチェーンに関する様々な実績を有していることである。Web3の基盤技術であるブロックチェーンには2016年から集中的に取り組み、様々なプロジェクトを推進し、多くの知見とノウハウを蓄積してきた。また、Web3の重要な決済技術である暗号資産についても、暗号資産交換所「Zaif」を譲渡する結果となったものの、カイカコインの運用実績(約7年間)などを含めて知見やノウハウは獲得できており、この2つの重要な技術(ブロックチェーン及び暗号資産)を有する同社には明らかにアドバンテージがあると言える。
(2) 市場規模(見通し)
Web3の国内市場規模は、2027年までに2021年の20倍の約2.4兆円、グローバル市場でも約13倍の66.9兆円に拡大することが想定されている※1。また、外部の意識調査においても、多くの事業会社がWeb3に高い関心を寄せており、「1年以内にWeb3を活用した事業開発を行いたい」との回答が高い比率を示すデータもある※2。特にゲームや金融、セキュリティ、組織運営、アプリ開発、アート、決済、資金調達など幅広い分野で事業開発が期待される一方、知識不足や予算、人材面などが大きなハードルとなっている実態もうかがえる。同社では、「Zaif」の運用やNFTローンチパッド「Zaif INO」の運用経験を生かし、Web3コンサルティング事業を展開して市場の拡大をリードする方針である。
※1 同社成長戦略資料よりフィスコ抜粋
※2 同社成長戦略資料よりフィスコ抜粋
3. 数値目標とその前提
中期経営計画最終年度(2026年10月期)の数値目標として、売上高7,813百万円、営業利益467百万円(営業利益率6.0%)を目指している。これまで業績面で大幅なマイナス要因となっていた「金融サービス事業」の再編効果と、「ITサービス事業」への集中により、まずは黒字転換を実現するとともに、好調な受注環境が継続している「ITサービス事業」の伸びが成長をけん引する想定である。特に、DXコンサルティングやWeb3コンサルティング事業から上流工程の高単価SI案件を獲得することで利益率の向上を図る考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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