*14:08JST TKP Research Memo(8):貸会議室事業と宿泊事業を2本柱として本格的に成長軌道に回帰へ。M&Aにも注目
■中期経営計画
ティーケーピー<3479>は、2023年2月にリージャス事業の売却に踏み切ったことや貸会議室・宿泊需要の回復が進んできたこと、仕入れ環境も追い風に向かっていることを踏まえ、アフターコロナを見据えた中期経営計画(3ヶ年)を2023年4月に公表し半分(1年半)が経過した。
1. 基本方針
1) 貸会議室の床面積を積極拡大しながら周辺事業を取り込み、シェア拡大と対象市場の拡張を図る、2) 経営効率の最適化を推進し、過去最高の利益を達成する、3) 積極性と合理性のバランスがとれた成長投資を柔軟に実施し、中長期的な企業価値向上への投資機会を逃さない、を基本方針に掲げ、貸会議室事業と宿泊事業を2本柱として本格的に成長軌道に回帰させていく計画だ。
2. 計数目標(当初計画)
中期経営計画最終年度の2026年2月期の数値目標(当初計画)については、売上高57,500百万円(年平均成長率25.4%)、営業利益9,400百万円(営業利益率16.3%)、経常利益9,100百万円、ROE10%を目指してきたが、リリカラの連結化や新規事業(M&Aを含む)による寄与を織り込むべく目標数値の見直しを精査中である。ただ、営業利益100億円は達成したい意向だ。
3. 事業別戦略(当初計画の前提)
(1) 貸会議室事業
2025年2月期(中期経営計画2年目)には、懇親会を含めた貸会議室需要がコロナ禍前の水準へ完全回復する想定の下、貸会議室市場の継続的拡大を見込み、東京・大阪を中心に会議室面積を年間約1万坪のペースで出店する方針だ。また、料飲の需要回復に伴う内製化、並びにDX戦略・営業力強化による事業の運営効率化・高付加価値化を推進することで、収益力の最大化を目指す。KPIについては、「坪当たり売上高(月平均)」41,000円、「有効会議室面積」79,000坪をターゲットとしている。
運営効率化・高付加価値化のカギを握るDX戦略については、ダイナミックプライシング導入によるプライシングの最適化と顧客ポータル開設による会議室予約の自動化を実施し、サービスの高付加価値化を加速する考えだ。また、増員等による人的資本の強化にも取り組む方針であるが、DX戦略による効率化・高付加価値化と人による提案営業力(リレーションシップ強化)のバランスをとりながら、各方面の需要を幅広く取り込んでいく戦略のようだ。
(2) 宿泊事業
フランチャイズで展開するアパホテルブランドを含めたビジネスホテルを中心に3年間で10施設を目安に出店し、貸会議室事業に次ぐ第2の柱に成長させる方針だ。仕入れ形態については、賃貸契約か、保有か、その時々の経済合理性を見て決定する。「持たざる経営」を基本としながらも、アパホテルブランドのように安定した稼働(集客力)が見込める案件については、高い収益性を享受すべく保有することも検討する。また、「石のや」をはじめとするリゾートホテルでは、リニューアルを通じたブランド力強化によりインバウンドの需要獲得を図る。3年後の直営施設数として31施設を計画している。
(3) 新規事業(M&Aを含む)
「空間再生流通事業」におけるコンセプトやビジネスモデルは、事業再生支援や地方創生、PFIなど様々な領域への応用も期待されており、新たな事業機会の創出も視野に入れているようだ。また、ハードだけでなくソフト(周辺サービス)の取り込みにおいても、付加価値向上に向けて積極的に取り組んでいく方針であり、これまでの資本業務提携の実績(識学、ノバレーゼ、APAMAN等)やリリカラの連結子会社化についても、その戦略に沿った動きと見ることができる。
4. 中長期的な注目点
外部環境が追い風にある貸会議室事業と宿泊事業の2本柱に注力し、事業拡大を目指す同社の戦略は理に適っていると、弊社でも評価している。コロナ禍によって同社の成長は一旦足踏みしたものの、中長期的な視点で見れば、これをきっかけに働き方やオフィスの在り方を見直す機運が一気に加速し、結果としてフレキシブルスペース市場の拡大に拍車が掛かる可能性が高いと見ている。
不稼働スペースを大量かつ機動的に仕入れ、貸会議室という新たな市場の創出につなげてきた従来のビジネスモデルから、今後は貸会議室をベースにしながらも、スペースでのコンテンツ提供という新たな領域へと拡充するプロセスにあり、この視点から今後の事業展開をフォローしていく必要があるだろう。既に他社との協業を通じて実績のある独自研修プログラムの提供やエンターテインメント性の高いイベントプロデュースなどにその一端が見られるほか、職住近接の流れのなかで居住空間(一時滞在型の社宅や外国人ワーカー向けの住宅提供等)としての活用も構想に入っているようだ。インバウンドMICEへの取り組みやショッピングモールへの出店などを含め、各方面に布石を打ち、様々な可能性を探っている同社の動きには今後も注目したい。また、仕入れについても、コンテンツを生かすための集客力に長けた好立地(駅前など)を優先するとともに、そこを起点としたドミナント展開によりエリア単位での空間利用価値を高め、質と量の両方を確保していく戦略のようだ。
さらに中長期的な視点からは、「空間再生流通事業」という領域でいかに社会課題の解決を市場創出に結び付けていくのか、そのポテンシャルの高さにも期待したい。その動きとともにM&Aや新規事業への参入が実現すれば、計画のアップサイドとなる可能性も十分に考えられる。いずれにせよ、高水準にある手元流動性や潤沢な営業キャッシュ・フローの活用が今後のカギを握るであろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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ティーケーピー<3479>は、2023年2月にリージャス事業の売却に踏み切ったことや貸会議室・宿泊需要の回復が進んできたこと、仕入れ環境も追い風に向かっていることを踏まえ、アフターコロナを見据えた中期経営計画(3ヶ年)を2023年4月に公表し半分(1年半)が経過した。
1. 基本方針
1) 貸会議室の床面積を積極拡大しながら周辺事業を取り込み、シェア拡大と対象市場の拡張を図る、2) 経営効率の最適化を推進し、過去最高の利益を達成する、3) 積極性と合理性のバランスがとれた成長投資を柔軟に実施し、中長期的な企業価値向上への投資機会を逃さない、を基本方針に掲げ、貸会議室事業と宿泊事業を2本柱として本格的に成長軌道に回帰させていく計画だ。
2. 計数目標(当初計画)
中期経営計画最終年度の2026年2月期の数値目標(当初計画)については、売上高57,500百万円(年平均成長率25.4%)、営業利益9,400百万円(営業利益率16.3%)、経常利益9,100百万円、ROE10%を目指してきたが、リリカラの連結化や新規事業(M&Aを含む)による寄与を織り込むべく目標数値の見直しを精査中である。ただ、営業利益100億円は達成したい意向だ。
3. 事業別戦略(当初計画の前提)
(1) 貸会議室事業
2025年2月期(中期経営計画2年目)には、懇親会を含めた貸会議室需要がコロナ禍前の水準へ完全回復する想定の下、貸会議室市場の継続的拡大を見込み、東京・大阪を中心に会議室面積を年間約1万坪のペースで出店する方針だ。また、料飲の需要回復に伴う内製化、並びにDX戦略・営業力強化による事業の運営効率化・高付加価値化を推進することで、収益力の最大化を目指す。KPIについては、「坪当たり売上高(月平均)」41,000円、「有効会議室面積」79,000坪をターゲットとしている。
運営効率化・高付加価値化のカギを握るDX戦略については、ダイナミックプライシング導入によるプライシングの最適化と顧客ポータル開設による会議室予約の自動化を実施し、サービスの高付加価値化を加速する考えだ。また、増員等による人的資本の強化にも取り組む方針であるが、DX戦略による効率化・高付加価値化と人による提案営業力(リレーションシップ強化)のバランスをとりながら、各方面の需要を幅広く取り込んでいく戦略のようだ。
(2) 宿泊事業
フランチャイズで展開するアパホテルブランドを含めたビジネスホテルを中心に3年間で10施設を目安に出店し、貸会議室事業に次ぐ第2の柱に成長させる方針だ。仕入れ形態については、賃貸契約か、保有か、その時々の経済合理性を見て決定する。「持たざる経営」を基本としながらも、アパホテルブランドのように安定した稼働(集客力)が見込める案件については、高い収益性を享受すべく保有することも検討する。また、「石のや」をはじめとするリゾートホテルでは、リニューアルを通じたブランド力強化によりインバウンドの需要獲得を図る。3年後の直営施設数として31施設を計画している。
(3) 新規事業(M&Aを含む)
「空間再生流通事業」におけるコンセプトやビジネスモデルは、事業再生支援や地方創生、PFIなど様々な領域への応用も期待されており、新たな事業機会の創出も視野に入れているようだ。また、ハードだけでなくソフト(周辺サービス)の取り込みにおいても、付加価値向上に向けて積極的に取り組んでいく方針であり、これまでの資本業務提携の実績(識学、ノバレーゼ、APAMAN等)やリリカラの連結子会社化についても、その戦略に沿った動きと見ることができる。
4. 中長期的な注目点
外部環境が追い風にある貸会議室事業と宿泊事業の2本柱に注力し、事業拡大を目指す同社の戦略は理に適っていると、弊社でも評価している。コロナ禍によって同社の成長は一旦足踏みしたものの、中長期的な視点で見れば、これをきっかけに働き方やオフィスの在り方を見直す機運が一気に加速し、結果としてフレキシブルスペース市場の拡大に拍車が掛かる可能性が高いと見ている。
不稼働スペースを大量かつ機動的に仕入れ、貸会議室という新たな市場の創出につなげてきた従来のビジネスモデルから、今後は貸会議室をベースにしながらも、スペースでのコンテンツ提供という新たな領域へと拡充するプロセスにあり、この視点から今後の事業展開をフォローしていく必要があるだろう。既に他社との協業を通じて実績のある独自研修プログラムの提供やエンターテインメント性の高いイベントプロデュースなどにその一端が見られるほか、職住近接の流れのなかで居住空間(一時滞在型の社宅や外国人ワーカー向けの住宅提供等)としての活用も構想に入っているようだ。インバウンドMICEへの取り組みやショッピングモールへの出店などを含め、各方面に布石を打ち、様々な可能性を探っている同社の動きには今後も注目したい。また、仕入れについても、コンテンツを生かすための集客力に長けた好立地(駅前など)を優先するとともに、そこを起点としたドミナント展開によりエリア単位での空間利用価値を高め、質と量の両方を確保していく戦略のようだ。
さらに中長期的な視点からは、「空間再生流通事業」という領域でいかに社会課題の解決を市場創出に結び付けていくのか、そのポテンシャルの高さにも期待したい。その動きとともにM&Aや新規事業への参入が実現すれば、計画のアップサイドとなる可能性も十分に考えられる。いずれにせよ、高水準にある手元流動性や潤沢な営業キャッシュ・フローの活用が今後のカギを握るであろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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