*13:50JST リケンNPR Research Memo(10):ネクストコア事業を第3の柱に育成
■リケンNPR<6209>の成長戦略
3. 事業戦略
事業戦略としては、事業ポートフォリオ改革に向けて、収益力強化を目指すピストンリング事業、ベース事業(自動車・産業機械向け焼結製品・樹脂製品・素形材製品・精密加工製品、建設業界向け配管機器製品)、及び売上規模拡大・中核事業化を目指すネクストコア事業(成長分野にある既存事業・新製品・新事業)に分類し、それぞれの事業戦略を推進する。ピストンリング事業とベース事業については、EV化によってICE部品市場が長期的には縮小するものの、商用・産業用・船舶用も含め一定の中長期需要が見込めること、さらに補修用市場(世界の自動車保有台数は約15億台)が長期的に堅調に推移することを踏まえ、事業統合効果により安定した収益源を拡大する。ネクストコア事業については、成長分野への経営資源投入により、中長期的に売上・利益の拡大を目指す。
(1) ピストンリング事業
ピストンリング事業の2027年3月期目標値は売上高675億円、営業利益率10%以上(計画発表時点での2024年3月期予測は売上高649億円、営業利益率7%)としている。ピストンリングのグローバルNo.1サプライヤーとして、エンジンが残る非乗用(商用・産業用、補修用、船舶用)分野の拡販強化、事業統合によるシナジー創出、抜本的な生産性改善などによって利益率改善を推進するとともに、水素・代替燃料対応などカーボンニュートラルに向けた革新的製品技術開発も推進する。
(2) ベース事業
ベース事業の2027年3月期目標値は売上高800億円、営業利益率7%以上(計画発表時点での2024年3月期予測は売上高790億円、営業利益率5%)としている。得意領域でのシェア拡大によりエンジン減産分を補填し、合理化や製品構成見直しなどにより利益率の改善を推進する。自動車・産業機械向け精密機械部品(バルブシートなどの焼結部品、自動車変速機用シールリングなどの樹脂(エンジニアリングプラスティック)部品、カムシャフトなどの精密加工製品、鋳鉄素形材部品)は、コスト競争力を強化し、競争力のある市場製品を特定・深掘することでグローバルニッチトップサプライヤーを目指す。建設業界向け配管機器製品については、日本継手を子会社化して国内配管継手業界トップになったことも踏まえて、配管工不足を背景とした省力化につながる配管機材やプレファブリケーションのニーズ増加に対応し、建設分野でのプレゼンスを向上させる。
(3) ネクストコア事業
ネクストコア事業の2027年3月期目標値は売上高180億円、営業利益率10%以上(計画発表時点での2024年3月期予測は売上高58億円、営業利益率4%)としている。成長分野(半導体、電動化、カーボンニュートラル対応)での事業拡大、リソース強化によるスピード感ある事業展開を推進するとともに、M&Aなども活用して次世代を担う事業ポートフォリオの拡充を図る。具体的な事業分野としては、熱エンジニアリング事業、EMC事業、メタモールド(R)※事業、及びその他の新製品・新事業(電動ユニット製品、機能性樹脂製品、磁性材製品、医療機器製品)がある。
※メタモールドはNPRの金属粉末射出成形製品の登録商標。
熱エンジニアリング事業は、独自開発の金属発熱体「パイロマックス(R)」やセラミックス発熱体「パイロマックス・スーパー(R)」を製造・販売するとともに、それらを活用したヒータユニット、工業炉まで一貫して対応する。2024年2月にリケンが子会社化したシンワバネスとのシナジーによって産業界の幅広い分野に適用するとともに、特に半導体製造装置向けヒータユニットの開発及びフルラインナップ化、カーボンニュートラルに対応した開発・生産能力増強を推進する。
EMC事業は、自動車メーカーや電子機器メーカーなどでのEMC試験※1に必要な電波暗室等を、設計・施工管理からアフターサービスまで展開している。CASE※2などの進展や通信技術の発展などを背景にEMC試験の必要性が高まったことから電波暗室を新設・改造する需要が増加しており、今後も電子機器等に関する電波影響を受けない・及ぼさない「電磁適合性」を確保する設備・製品の開発・販売を推進する。2024年3月期には国内で初めて最新国際規格CISPR16-1-4適合の大型電波暗室を納入した。
※1 電子機器が発する電波が他の機器に悪影響を与えないか、他の機器が発する電波を受けて誤作動しないかなどを確認する試験。
※2 CASEは、Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(シェアリングとサービス)、Electric(電気自動車)の頭文字をとった造語である。
メタモールド(R)事業は自動車、航空宇宙、産業・医療機器など幅広い用途の複雑形状部品に適用される金属射出成形製品(MIM:Metal Injection Molding)を展開しており、自動車の電動パワーステアリングやスカラーロボットのボールネジ循環駒など、産業機器向けの拡販を推進している。金属粉末射出成形によって高密度・高強度の複雑形状品に低コストで対応できる優位性を生かすとともに、ターゲットに合わせた効率的マーケティング体制を構築、案件獲得力を大幅に強化し、CASE関連部品、ロボット、センサー、医療分野などへ展開する方針だ。
その他の新製品・新事業では、産業/介護・医療ロボット用などの小型・軽量化に対応した超薄型アクチュエータや軽量波動減速機などの電動ユニット製品の開発、次世代モビリティ・ロボット市場の拡大に対応するため、異種材接合技術を活用した機能性樹脂製品の開発・拡販、EMC事業で培った技術を活かした電磁障害対策用磁性材製品の開発・拡販、生体適合材料による体内埋入型の医療機器製品の開発などを推進し、中長期的な売上・利益の拡大と中核事業化を目指す。機能性樹脂製品では、2024年に金属部品をインサート成形した「樹脂歯車」を製品化し、電動アシスト自転車向けに量産を開始した。
なお医療機器製品では、医療用新材料チタン・タンタル合金「NiFreeT(R)」(登録商標)を展開している。ニッケルフリー・非磁性で生体適合性が高く、体内留置が可能で、医療機器用貴金属(プラチナ)と比較して安価という優位性がある。ピストンリング用に自社開発した形状記憶合金だが、ニッケルフリーで加工性に優れているため医療材料に転換した。歯科用スクリュー、ガイドワイヤ、カテーテル補強材、整形外科を中心とした医療機器など、埋入型医療機器への応用が期待されており、早期の製品化・事業化を目指している。また、世界最大手の医療機器メーカーであるMedtronicとの植込型医療機器協同開発プログラムでも新製品開発を進めている。
また、水素エンジンを核とした水素関連事業も推進している。前期、水素エンジン実機評価専用のベンチ室を増強し、小型エンジンから大型トラックや建設機械向けの大型エンジンまで評価可能となったが、2025年3月期は水素貯蔵施設を増強し長時間の耐久評価も可能となる予定だ。さらに、柏崎事業所で使用している小型トラック等を水素エンジンに改造し、実際の事業活動に使用して検証を行うプロジェクトも開始した。これに加え、新潟県柏崎市に水素ステーション建設を予定している。水素エンジン開発を足掛かりに、エネルギーの地産地消へ貢献し、カーボンニュートラル社会の実現を目指す。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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3. 事業戦略
事業戦略としては、事業ポートフォリオ改革に向けて、収益力強化を目指すピストンリング事業、ベース事業(自動車・産業機械向け焼結製品・樹脂製品・素形材製品・精密加工製品、建設業界向け配管機器製品)、及び売上規模拡大・中核事業化を目指すネクストコア事業(成長分野にある既存事業・新製品・新事業)に分類し、それぞれの事業戦略を推進する。ピストンリング事業とベース事業については、EV化によってICE部品市場が長期的には縮小するものの、商用・産業用・船舶用も含め一定の中長期需要が見込めること、さらに補修用市場(世界の自動車保有台数は約15億台)が長期的に堅調に推移することを踏まえ、事業統合効果により安定した収益源を拡大する。ネクストコア事業については、成長分野への経営資源投入により、中長期的に売上・利益の拡大を目指す。
(1) ピストンリング事業
ピストンリング事業の2027年3月期目標値は売上高675億円、営業利益率10%以上(計画発表時点での2024年3月期予測は売上高649億円、営業利益率7%)としている。ピストンリングのグローバルNo.1サプライヤーとして、エンジンが残る非乗用(商用・産業用、補修用、船舶用)分野の拡販強化、事業統合によるシナジー創出、抜本的な生産性改善などによって利益率改善を推進するとともに、水素・代替燃料対応などカーボンニュートラルに向けた革新的製品技術開発も推進する。
(2) ベース事業
ベース事業の2027年3月期目標値は売上高800億円、営業利益率7%以上(計画発表時点での2024年3月期予測は売上高790億円、営業利益率5%)としている。得意領域でのシェア拡大によりエンジン減産分を補填し、合理化や製品構成見直しなどにより利益率の改善を推進する。自動車・産業機械向け精密機械部品(バルブシートなどの焼結部品、自動車変速機用シールリングなどの樹脂(エンジニアリングプラスティック)部品、カムシャフトなどの精密加工製品、鋳鉄素形材部品)は、コスト競争力を強化し、競争力のある市場製品を特定・深掘することでグローバルニッチトップサプライヤーを目指す。建設業界向け配管機器製品については、日本継手を子会社化して国内配管継手業界トップになったことも踏まえて、配管工不足を背景とした省力化につながる配管機材やプレファブリケーションのニーズ増加に対応し、建設分野でのプレゼンスを向上させる。
(3) ネクストコア事業
ネクストコア事業の2027年3月期目標値は売上高180億円、営業利益率10%以上(計画発表時点での2024年3月期予測は売上高58億円、営業利益率4%)としている。成長分野(半導体、電動化、カーボンニュートラル対応)での事業拡大、リソース強化によるスピード感ある事業展開を推進するとともに、M&Aなども活用して次世代を担う事業ポートフォリオの拡充を図る。具体的な事業分野としては、熱エンジニアリング事業、EMC事業、メタモールド(R)※事業、及びその他の新製品・新事業(電動ユニット製品、機能性樹脂製品、磁性材製品、医療機器製品)がある。
※メタモールドはNPRの金属粉末射出成形製品の登録商標。
熱エンジニアリング事業は、独自開発の金属発熱体「パイロマックス(R)」やセラミックス発熱体「パイロマックス・スーパー(R)」を製造・販売するとともに、それらを活用したヒータユニット、工業炉まで一貫して対応する。2024年2月にリケンが子会社化したシンワバネスとのシナジーによって産業界の幅広い分野に適用するとともに、特に半導体製造装置向けヒータユニットの開発及びフルラインナップ化、カーボンニュートラルに対応した開発・生産能力増強を推進する。
EMC事業は、自動車メーカーや電子機器メーカーなどでのEMC試験※1に必要な電波暗室等を、設計・施工管理からアフターサービスまで展開している。CASE※2などの進展や通信技術の発展などを背景にEMC試験の必要性が高まったことから電波暗室を新設・改造する需要が増加しており、今後も電子機器等に関する電波影響を受けない・及ぼさない「電磁適合性」を確保する設備・製品の開発・販売を推進する。2024年3月期には国内で初めて最新国際規格CISPR16-1-4適合の大型電波暗室を納入した。
※1 電子機器が発する電波が他の機器に悪影響を与えないか、他の機器が発する電波を受けて誤作動しないかなどを確認する試験。
※2 CASEは、Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(シェアリングとサービス)、Electric(電気自動車)の頭文字をとった造語である。
メタモールド(R)事業は自動車、航空宇宙、産業・医療機器など幅広い用途の複雑形状部品に適用される金属射出成形製品(MIM:Metal Injection Molding)を展開しており、自動車の電動パワーステアリングやスカラーロボットのボールネジ循環駒など、産業機器向けの拡販を推進している。金属粉末射出成形によって高密度・高強度の複雑形状品に低コストで対応できる優位性を生かすとともに、ターゲットに合わせた効率的マーケティング体制を構築、案件獲得力を大幅に強化し、CASE関連部品、ロボット、センサー、医療分野などへ展開する方針だ。
その他の新製品・新事業では、産業/介護・医療ロボット用などの小型・軽量化に対応した超薄型アクチュエータや軽量波動減速機などの電動ユニット製品の開発、次世代モビリティ・ロボット市場の拡大に対応するため、異種材接合技術を活用した機能性樹脂製品の開発・拡販、EMC事業で培った技術を活かした電磁障害対策用磁性材製品の開発・拡販、生体適合材料による体内埋入型の医療機器製品の開発などを推進し、中長期的な売上・利益の拡大と中核事業化を目指す。機能性樹脂製品では、2024年に金属部品をインサート成形した「樹脂歯車」を製品化し、電動アシスト自転車向けに量産を開始した。
なお医療機器製品では、医療用新材料チタン・タンタル合金「NiFreeT(R)」(登録商標)を展開している。ニッケルフリー・非磁性で生体適合性が高く、体内留置が可能で、医療機器用貴金属(プラチナ)と比較して安価という優位性がある。ピストンリング用に自社開発した形状記憶合金だが、ニッケルフリーで加工性に優れているため医療材料に転換した。歯科用スクリュー、ガイドワイヤ、カテーテル補強材、整形外科を中心とした医療機器など、埋入型医療機器への応用が期待されており、早期の製品化・事業化を目指している。また、世界最大手の医療機器メーカーであるMedtronic
また、水素エンジンを核とした水素関連事業も推進している。前期、水素エンジン実機評価専用のベンチ室を増強し、小型エンジンから大型トラックや建設機械向けの大型エンジンまで評価可能となったが、2025年3月期は水素貯蔵施設を増強し長時間の耐久評価も可能となる予定だ。さらに、柏崎事業所で使用している小型トラック等を水素エンジンに改造し、実際の事業活動に使用して検証を行うプロジェクトも開始した。これに加え、新潟県柏崎市に水素ステーション建設を予定している。水素エンジン開発を足掛かりに、エネルギーの地産地消へ貢献し、カーボンニュートラル社会の実現を目指す。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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