【QAあり】インスペック、半導体市場は生成AIの普及に伴う需要の増加などにより回復見込み 今後も高い成長率で拡大予定
2024年4月期 業績ハイライト
菅原雅史氏(以下、菅原):インスペック株式会社代表取締役社長の菅原です。本日はお忙しい中、ご参加いただきありがとうございます。これから当社の第36期決算と今後の成長戦略についてご説明します。
まずは、2024年4月期の決算概要です。売上高は16億6,800万円、営業利益はマイナス2億3,300万円、経常利益はマイナス2億6,300万円、当期純利益はマイナス3億5,300万円と、大変厳しい1年となりました。
1年半ほど前から、半導体業界全般は足踏み状態で市況が冷え込みましたが、当社の場合、今年4月頃から比較的急ピッチで商談案件が増え、5月、6月でかなりの数の受注を獲得するなど非常に活発な状態です。
6月12日から14日にかけては、東京ビッグサイトで「JPCA Show」という展示会があり、我々も出展しました。当社は、この展示会に過去10年ほど出展していますが、今年はこれまでに経験したことがないくらいの来場者数でした。当社のブースにもたくさんの方がお見えになり、非常に多くの商談を獲得しています。
第36期は非常に厳しい1年ではありましたが、みなさまご承知のとおり、半導体分野はこれからさらなる拡大が見込まれています。後ほど、そのあたりを含めてご紹介します。
受注高及び売上高推移
受注及び売上高の推移です。第37期に入り、5月、6月と随時受注がありますが、このような動きは昨今の生成AI関連における半導体の増産によるものです。
それに関連して、私どものお客さまも積極的な投資計画を発表しているため、我々もそのような動きにしっかり対応していく準備を進めています。
製品別売上高
スライドの表は、製品別売上高です。過去数年間、ロールtoロール型検査装置というスマートフォン向けの製品は売上高比率が高かったのですが、スマートフォン業界でも買い替え需要が冷え込む時期がありました。
先日、トップメーカーであるAppleが「iPhone」に生成AIを組み込むと発表しました。Apple陣営だけでなく、Android陣営など大手メーカーもその開発を進めていますが、今年はまだ、そこまで拡大しないと予想しています。
生成AIがスマートフォンに組み込まれるという実に大きなトピックスにより、来年以降、スマートフォンの一斉買い替えが進むだろうと言われています。前期の数字は小さいですが、ロールtoロール型検査装置の受注が継続して入り始めている状況です。
2024年4月期 業績ハイライト
前期決算において営業利益が減少した大きな要因は、売上高が減少したためです。
また、粗利が若干悪化していますが、これはごく一部の古いお客さまとのいろいろなつながりから、戦略的にディスカウントして取引しているためです。コンペティターとの競争もありますが、全体の売上が下がったぶん、若干目立つような数字になっています。
要約貸借対照表
要約貸借対照表です。売上債権の減少を主な要因として、資産が減少しました。また、純損失を計上したため、資本の部も大きく減少しています。
要約キャッシュ・フロー計算書
キャッシュ・フローです。シンジケートローンの残高が増加したため、期末の現金及び現金同等物の残高は第35期と比べて増加しています。
研究開発費
研究開発費についてです。検査装置は主に半導体パッケージ基板のファイン品、さらにはウルトラファイン品と言われる配線パターンが2ミクロン、1.5ミクロンという次世代の半導体パッケージ向けの開発を積極的に進めています。
このウルトラファインの段階になると、従来の技術の延長で対応できる範囲を超えてしまうため、技術革新が必要だと言われています。当社はこの分野で一歩先んじており、大手のお客さまからも非常に高い評価をいただいています。この状態を維持し、シェアを高めていけるように取り組んでいます。
一方、露光装置については開発をスタートしてから足かけ6年になります。技術開発における主な工程はほぼ完了しています。今後は、お客さまのニーズに合わせたラインナップの拡大、あるいはお客さまの個別ニーズに対応するカスタマイズがテーマになってきます。したがって、露光装置に対する開発投資額は、これからかなり少なくなっていくと予想しています。
2025年4月期 通期業績予想
現在進行中の第37期の業績予想です。海外市場向けや半導体分野、ロールtoロール型検査装置が主な製品となります。今期については、露光装置も実績を上げられるだろうと考えているため、売上計画の一部に露光装置も入っています。
2025年4月期 通期業績予想
通期の業績予想に関する利益貢献度ですが、前期とは反対に、売上増加による増収効果が最も大きくなっています。また、利益率についても先ほどお伝えしたことと反対の意味で改善していく計画です。
Vision 2030
今後の成長戦略についてです。我々は、2030年を見据えて「Vision 2030」というビジョンを策定しました。売上高100億円、営業利益20億円を目標に取り組んでいますが、その中でも大きな取り組みが4点あります。
1点目は、半導体パッケージ分野です。先ほど技術革新について触れましたが、この高いハードルを越え、当社の大きな柱として検査装置事業の売上をさらに拡大していきます。
2点目は、露光装置事業です。苦労して開発に取り組んだ結果、お客さまから高い評価をいただける技術レベルに達しています。これをベースにラインナップの拡充を図るとともに、従来の自動車分野のラフなパターンからさらにフレキシブル基板市場全体に対応できるファインの露光装置を2つ目の柱に育てたいと考えています。
この2つの柱で売上高100億円まで持っていけるとは思っていますが、さらに新しい事業としてもう1本の柱を育成しようと考えています。これが3点目の取り組みです。まだ企画段階ですが、すでにいくつか案が出ており、早い段階でターゲットを定め、スタートを切りたいと思います。
4点目は、以前から取り組んでいる海外市場での売上拡大です。こちらについても、新しい動きがいろいろ出てきており、タイ及びベトナムでの市場拡大が活発化しています。今、欧米の企業、あるいは日本の企業も含めて、中国に大きな工場を持っている会社はたくさんありますが、そのような会社が「チャイナ・プラスワン」として、タイ・ベトナム地域に工場をどんどん進出させています。
私どもも、昨年契約した新しい代理店とともに、すでにタイで活動を始めており、商談が生まれています。この地域は、これからエレクトロニクス分野が一気に成長していくと言われているため、しっかりカバーし、将来的には国内事業に匹敵するぐらいの売上を上げていこうと取り組んでいます。
事業環境認識
事業環境全体について少し触れますが、冒頭でお伝えしたとおり、この4月、5月頃から商談や受注につながる案件が非常に増えています。それに加えて、スマートフォンに生成AIが組み込まれることで、買い替え需要が高まるため、それに向けた準備が重要だと我々は理解しています。先月あたりから、次世代スマートフォン向け検査装置への問い合わせがいろいろと寄せられており、これから商談につながっていくものと期待しています。
過去2年ぐらい、スマートフォンについてはかなり低迷していたため、我々としては「ようやく来たか」という感じで受け止めています。この分野では当社が非常に競争力を持っているため、しっかりと商談に結びつけていくよう取り組んでいきます。
成長を続ける半導体関連産業
スライドには「成長を続ける半導体関連産業」と書きましたが、あらためてご説明するまでもなく、生成AIや電気自動車はこれから中長期的に非常に増えていきます。特に自動運転に向けた開発がさらに加速していく中で、自動車向けの半導体がどんどん使われていきます。
そのような背景から、半導体分野はまだまだ拡大していくと言われており、すでに世界中がそれを前提として、どんどん投資を活発化させているのが実態です。
事業戦略ー基板検査装置事業
そのような中で、基板検査装置事業では、今までお客さまに対応してきたファイン品から、ウルトラファインと言われる2ミクロンや1.5ミクロンの配線パターンのようなものまで、さらなる競争力の強化に取り組んでいきます。また、スマートフォンについては、先ほどお話ししたとおりです。
事業戦略ー露光装置事業
露光装置事業については、技術開発という点では過去6年間積み上げてきており、すでにしっかりした技術を確立してきていますので、いよいよ、これを市場に出していく段階に入っていきます。
具体的に案件も出てきていますので、まずは1件1件にしっかり対応しつつ、そこを起点に拡大していきます。スライドに「L/S(ラインアンドスペース)50ミクロン→30ミクロン」とあるように、さらにその先のファインパターンも含めて対応できる体制を着々と進めている状況です。
現在の取り組み状況及び今後の展開について
海外市場の取り組みです。半導体が新たなフェーズで拡大が進んでいる中で、今までハイエンドの半導体パッケージ基板は日本のメーカーが非常に強く、海外のメーカーは十分な品質のものを高い歩留まりで作ることができていませんでした。
しかし、台湾のメーカーがかなり力をつけてきていることから、今後は台湾市場において当社のハイスペックな検査装置のニーズが間違いなく高まるため、本年度から台湾に本社の役員を常駐させ、今まで以上に台湾市場の開拓を強化していく方針で進めています。
また、タイ・ベトナムについては、先ほどお伝えしたとおりです。このような背景から、今後は開発の人員や工場の生産能力の拡大を考えていく必要があります。そのため、開発人員向けのオフィスや工場の増築を、いつ、どのように実行するかを、具体的な計画として検討中です。
国内外での展示会へ出展
こちらのスライドは、昨年度に参加した国内外の展示会を一覧で記載しています。「TPCA Show」は台湾のプリント基板の展示会です。「HKPCA Show」は中国・深圳で行われた同分野の展示会です。
「インターネプコン ジャパン」は東京ビッグサイトで毎年1月に開催される、製造装置関係の展示会です。3月の「インテリジェント アジア タイランド」はタイで初めて開催された、プリント基板をはじめとするエレクトロニクス関係の展示会で、代理店と連携して参加しました。
「CPCA Show 2024」は中国・上海で行われる展示会です。そして、冒頭にもお伝えした「JPCA Show 2024」は東京ビッグサイトで毎年6月上旬に開催されています。このように国内外で積極的に展示会に参加して、我々のビジネスの拡大に努めています。
資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応
資本コストや株価を意識した経営について、東京証券取引所から要請がありました。我々もまだ規模の小さい会社ながら、このようなことをしっかりと意識して取り組んでいきたいと考えています。
私からのご説明は以上となりますが、今期、そして今期以降も含めて、インスペックは非常に忙しくなると考えています。それに向けて、しっかり力をつけ、我々の当面の目標である「Vision 2030」を確実に実現できるように取り組んでいきますので、みなさまからご支援及びご期待していただきたいと思っています。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:露光装置の販売計画について
司会者:「露光装置は何台程度の販売を計画しているのでしょうか?」というご質問です。
菅原:今期は2台を計画しています。
質疑応答:今期の研究開発費の計画について
司会者:「前期の研究開発費が4億2,500万円と、前々期の2億8,500万円から大幅に増加しています。今期の計画はどのぐらいで想定していますか? 可能であれば事業別に教えてください」というご質問です。
菅原:今期の研究開発費は、検査装置に約2億円、露光装置に約1億6,000万円を計画しています。先ほど触れましたが、露光装置は技術開発のフェーズにひと区切りがついたため、今後は研究開発費が徐々に減少していくと考えています。一方、検査装置は対応する分野がかなり広がっているため、おそらく少しずつ増えていくと考えています。
質疑応答:受注から納品までの期間について
司会者:「サプライチェーンについて、ほぼ正常化しているのではないかと思いますが、受注から納品までの期間は何ヶ月ぐらいなのでしょうか?」というご質問です。
菅原:私どもの製品を構成している部品の調達状況は、ほぼ正常化しています。ただし、ごく一部の特殊な部品、例えば検査装置の非常に高性能なレンズなどについては、従来同様にかなり長い納期を必要とします。しかし、このような部品はある程度、社内に在庫を持つかたちで対応しているため、生産ラインの中で工程に影響するような納期の遅延状況はほぼなくなりつつあります。
製品の受注から出荷までの期間については、装置の規模によってさまざまです。受注から出荷まで3ヶ月程度で出荷できるものもあれば、全自動化ラインの大型装置になると、受注から出荷まで8ヶ月から9ヶ月ぐらいかかるものもあります。
質疑応答:今期の受注計画と現況及びその継続性について
司会者:「足元では受注好調とのご説明がありました。今期の受注の計画値と、今期に入ってからの受注高の状況と、その継続性についてどう見ているかを教えてください」というご質問です。
菅原:今期に入ってから5月と6月前半で、だいたい6億円前後は受注しています。受注高の計画値としては、通期で25億円から30億円を見込んでいます。その継続性については、現在の商談状況や、展示会での商談数などを合わせると、計画は十分達成できるのではないかと考えています。
質疑応答:検査装置の強み及び競合他社について
司会者:「御社の検査装置の強みは何でしょうか? 競合他社はあるのでしょうか?」というご質問です。
菅原:私どもの検査装置には2種類あります。1つは半導体パッケージ基板です。こちらについては、私どもが対象としている製品を検査できる装置を出している会社は、アメリカに1社、韓国に1社、日本では当社と世界に3社しかありません。
その中で、当社製品の強みとしては、非常に微細な配線がパッケージ基板の中に無数にあるのですが、そのすべての配線の太さと、配線と配線の間のスペースを精密に計測し、コンピューターが演算して正しく製造できているかどうかを判断できるという機能にあります。この機能においては、当社が最も高い精度を持つと認識しており、お客さまからもそのような評価をいただいています。
もう1つは、ロールtoロール型検査装置です。こちらについては、同じスペックのものに関しては、競合会社はほぼ存在していないと考えています。
お客さまが導入する際、インスペックと台湾や韓国の会社を比較検討して、稀に値段が安いほうを買うケースがあります。その場合も、忘れた頃に私どもに再び相談があって、当社の装置をあらためて買っていただけるという経験が何度かあります。
質疑応答:業績計画における上期と下期のバランスについて
司会者:「今期の業績計画について上期、下期のバランスはどのように見ていますか? 下期の回復を見込んでいるのでしょうか?」というご質問です。
菅原:今期がスタートしてまだ間もない状態ですので、予算ベースでお答えすると、前半は少しプラスになる見込みで、利益の大半は後半で計上する予測です。
従来は、上半期が赤字で、第3四半期から第4四半期で一気に売上を上げ、利益が上がるというかたちが何度かありました。今期は、期初から受注も比較的好調に推移しているため、前半は少しプラスになる計画でスタートしています。
質疑応答:検査装置受注実績のボトム時期と今回の好調基調の見通しについて
司会者:「検査装置受注のボトムはいつだったのでしょうか? また、今回のこの良いサイクルはいつ頃まで続きそうでしょうか?」というご質問です。
菅原:検査装置の受注実績の過去データが手元になく、申し訳ないのですが、スライド5ページには過去の売上ベースの製品別実績が出ています。こちらをご覧いただくと、2021年4月期に検査装置の売上が一番低かったことがわかります。
先ほどご説明したような好調なサイクルがどれだけ続くのかについては、過去の半導体のサイクルから考えると、少なくとも2年から3年は続くと思われます。ただし、今回は過去のシリコンサイクルの背景とはまったく違う要因で、半導体の用途が一気に広がっていくかたちでの市場拡大のため、踊り場のような時期はあるかもしれません。それでも、比較的長く拡大が続くのではないかと私どもは考えています。
質疑応答:「Vision 2030」の売上高目標における各事業比率と新規事業について
司会者:「2030年の売上高目標100億円について、検査装置、露光装置、新規事業の売上比率はどのように想定しているのでしょうか? また、新規事業はどのような領域を検討していますか?」というご質問です。
菅原:「Vision 2030」の売上高比率についてはアバウトな数字ですが、検査装置で約半分、露光装置で4割程度、新規事業は2030年時点ではまだ拡大する途上にあるため1割程度、あるいはもう少しいけばよいという考えで取り組んでいます。
新規事業の分野については、現在いろいろな企画を検討している段階で、まだ具体的にお話しできる段階ではありません。申し訳ないのですが、ご了承いただければと思います。
質疑応答:露光装置の販売対象国及び拡大展開のイメージについて
司会者:「露光装置はどの国で販売を予定していますか? 露光装置販売数の拡大展開イメージをどのように持っているのでしょうか?」というご質問です。
菅原:今期及び来期の段階では、主に国内を販売対象としています。それ以降については、おそらくハイスペックの製品と、自動車産業向けのスペックの製品の2種類に分かれると思っています。当社が最初に取り組んだ自動車産業向けの製品については、一部は国内で、多くはアジア地域が販売対象国になる見通しです。
質疑応答:今後の受注減少リスクについて
司会者:「先ほど、5月から6月の2ヶ月で受注高6億円というご回答がありましたが、そのペースでいくと年間36億円になります。それと比較すると、今期1年間での計画が25億円から30億円程度というのはかなり保守的に思えますが、後半に受注が減少するリスクがあるのでしょうか?」というご質問です。
菅原:計算上はそのような数字になると思いますが、実際には「5月と6月前半で6億円だったから、1年間では6倍の36億円になる」などという単純な話ではありません。何か明確なリスクを想定して、予想を算出したわけではないとご理解ください。
菅原氏からご挨拶
本日は長時間、当社のご説明を聞いていただき、たくさんのご質問もいただき、誠にありがとうございました。お話ししたとおり、我々インスペックは全社一丸となって、この大きなチャンスをしっかりとつかめるよう取り組んでいきますので、引き続きご支援を賜りますよう、よろしくお願いします。
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