【QAあり】エフビー介護サービス、事業拡大戦略で増収増益 売上高と経常利益が過去最高を記録し、中期経営計画を発表
目次
栁澤美穂氏:エフビー介護サービス株式会社 代表取締役社長の栁澤美穂です。本日は、2024年3月期決算説明をご視聴いただきありがとうございます。
本日の決算説明は、2024年3月期連結決算の概況、2025年3月期連結業績の予想、2024年5月28日に発表した中期経営計画です。
会社概要と当社の強みは資料のみでのご提供となるため、説明をお聞きになりたい方は、当社IRページ等にて2024年3月期第2四半期決算説明の動画をご覧ください。
2024年3月期 Topics
2024年3月期のトピックスです。第一に、人件費上昇、物価高の逆風下、事業拡大戦略で増収増益を図り、特に売上高と経常利益が過去最高を記録したことです。
第二に、地域密着型サービス事業では、地域行政による介護サービス拠点の公募案件に積極的に取り組んでおり、2024年3月に1介護事業所、同年4月に2介護事業所を開設しました。また、2023年7月31日には、長野県岡谷市で介護事業を営むスマートケアタウン社の株式100パーセントを取得し、子会社化しています。
第三に、2024年3月期第2四半期の決算説明動画でもお話ししましたが、経営環境の変化に迅速に対応し、持続的な成長と中長期的な企業価値向上への取り組みを強化するため、創業者で前代表取締役会長兼社長の栁澤秀樹が、2023年6月29日に代表取締役会長に復帰しました。
私、代表取締役社長の栁澤美穂とともに、代表取締役2名のダブル代表で持続可能な成長を目指していきます。
2024年3月期 連結業績
2024年3月期連結業績の概要です。
連結売上高は、福祉用具事業が堅調に推移し、介護事業では2023年3月期に子会社化したシルバーアシスト社と介護事業所4ヶ所が通年稼働したことにより、前期比7.7パーセント増の103億6,100万円となり、売上高過去最高を記録しました。
売上総利益は前期比4.2パーセント減となる14億8,800万円で減益、営業利益は前期比3.1パーセント減となる5億2,700万円で減益となりました。
減益の理由は、介護事業が物価高騰によるコスト上昇が続く中で経費削減に努め、増益を確保しましたが、福祉用具事業では今後、自社レンタル品の営業に注力すべく、その準備のためにレンタル品仕入を増加させたためです。
また、従業員のやる気を確保し、ワークライフバランスの充実を図るため、今期より従業員の年間休日120日体制にしています。人材確保とともにDX推進を含め、業務の効率化に努めていきます。
経常利益は、補助金収入、新規施設開設に伴う補助金1億5,600万円の他、物価高騰対策支援金および新型コロナウイルス対策支援金等と合わせて2億7,600万円があり、結果として前期比8.8パーセント増となる8億200万円で、過去最高益となりました。
新規施設開設に伴う補助金収入は、会計基準上、営業外収益に計上されますが、介護事業所の開設で発生する費用を地方自治体が事業者のために補助しているのが実情です。仮に、会計上は補助金収入を営業コストと相殺できるとすると、営業利益は実質的には増益と見ることができます。
親会社株主に帰属する当期純利益は、既存施設の減損損失および関係会社出資金評価損による特別損失が発生しましたが、減税効果を享受したこと等によって法人税等の負担が減少し、前期比17.6パーセント増となる5億2,300万円で増益となりました。
2024年3月期 事業セグメント別サマリー
事業セグメント別の決算サマリーです。福祉用具事業は、地域に密着したきめ細やかな営業訪問により、着実に増収しました。事業は順調に推移したものの、自社レンタル品の売上比率を上げるため、レンタル品仕入を増加させ、減益となりました。
介護事業は、2023年3月に開設した4介護事業所が増収に寄与しています。子会社化したシルバーアシスト社の業績が順調に推移し、増収増益に貢献しました。また、経費の削減や業務の効率化等を推進し、増益しました。
さらに、スマートケアタウン社の全株式を取得し、子会社化しているほか、2024年3月から4月にかけて、新潟県糸魚川市、長野県安曇野市、栃木県小山市の計3ヶ所に施設を新規開設します。
2024年3月期 セグメント別損益実績
セグメント別の業績概要です。当社は経営上の管理区分の見直しを行ったことに伴い、2024年3月期より報告セグメントの区分を変更し、居宅介護支援を「福祉用具事業」から「介護事業」へ移管しています。前年同期比較については、2023年3月期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しています。
福祉用具事業は、営業、相談、納品、契約を同一担当者が行う一貫専任制を取り、利用者さまの信頼獲得に努め、きめ細やかな利用者さまへの訪問、キャンペーン等を実施しました。さらにケアマネージャーや介護施設、病院への訪問営業を進め、セグメント売上高は前期比7.0パーセント増の43億7,100万円となりました。
セグメント利益は、前期比11.3パーセント減の3億3,300万円となりました。福祉用具事業は着実かつ順調に推移しており、今後の販売施策として自社レンタル品売上比率を上げるべく、レンタル品の仕入を増加させたため、減益となりました。
自社レンタル品の会計処理は購入時に全額一括して売上原価に計上されるため、仕入を増加させた期は減益になる傾向があります。今後も増加する自社レンタル品売上に対応して増加した仕入金額は約6,000万円であり、仮に仕入を増加させなかった場合には増益となっています。
自社レンタル品売上は、レンタル卸業者が利用者さまにレンタル品を提供する卸レンタル品売上と比較して、利用者さまのニーズにすばやく柔軟に対応できます。さらにレンタル品は当社でメンテナンスを行うため、利用者さまに安心してお使いいただけます。
当社では、レンタル品の在庫・メンテナンス管理を行う商品管理センターを長野県本社と群馬県に設置しており、自社レンタル品を提供できることが強みです。今後も当社の強みを活かすべく、自社レンタル品の販売強化に努めていきます。
介護事業のセグメント売上高は、前期比8.3パーセント増の59億8,900万円となりました。2023年3月期に行った事業拡大戦略で、グループホーム2ヶ所、看護小規模多機能型居宅介護1ヶ所、住宅型有料老人ホーム1ヶ所の計4ヶ所の新設および子会社化したシルバーアシスト社が通年稼働し、増収に寄与しました。
セグメント利益は、前期比15.4パーセント増の1億9,300万円となりました。2024年3月に新設した3事業所等の初期投資がありましたが、シルバーアシスト社の利益貢献と、全体的な経費削減やDX推進を含めた業務の効率化に努めたことから、増益となりました。
2024年3月期に実施した事業拡大戦略は、2023年7月にスマートケアタウン社の全株式を取得し、子会社化するとともに、2024年3月から4月にかけて3ヶ所の介護事業所(グループホーム)を開設しています。
なお、スマートケアタウン社は、当社グループの既存事業所との相乗効果等により、初年度から連結決算ベースで営業利益および最終利益の黒字化を達成しています。
福祉用具事業セグメント
福祉用具事業セグメントのレンタル商品の売上推移です。
新規利用者さまの開拓を進めていることもあり、介護度が軽度な利用者さまを中心に、手すりや歩行器等の需要が引き続き高まっています。レンタルで手すりなどを利用された利用者さまは、その後の体調に応じて車いすや介護ベッド等、複数の福祉用具を利用されていくケースが多く見られます。
また、近年は要介護者の傾向として、老人ホームに入所されるよりも、できるだけ長く自宅で過ごすことを希望される方が増加しており、住宅改修のご希望も増えています。
商品仕入れ状況については、前スライドでご説明したとおり、今後自社レンタル品の売上割合を増やすため、介護ベッド等のレンタル品仕入が増加しました。
介護事業セグメント
介護事業セグメントのサービス種別売上推移です。
なお、グループ内において、介護事業は当社の介護事業部とシルバーアシスト社が運営しています。2023年7月にスマートケアタウン社を子会社化したことに伴い、同社が当社グループに加わりました。連結決算上は2024年3月期第3四半期より、スマートケアタウン社の売上高が加算されています。
当社グループでは、介護保険における地域密着型サービスを中心に展開しており、施設サービスと在宅サービスの両部門をバランスよく運営しています。2024年3月期の介護事業の売上高はスライド7ページに記載のとおり、前期比8.3パーセント増の59億8,900万円でした。
グループホームが2023年3月期に新設した2事業所の通年稼働に加え、小規模多機能・看護、デイサービス、訪問介護・看護の売上高が、シルバーアシスト社の通年稼働等により、それぞれ増加しています。
特定・有料老人ホームは、グループホームを除き、入居系よりも在宅系の介護サービスに近年需要がシフトする傾向があり、入居率は若干低下傾向で推移しています。営業に注力し、入居率を高めていきます。
当社グループは介護事業サービスを幅広く提供しており、福祉用具事業とのシナジー効果を含め、利用者さまにワンストップサービスを提供しています。
また、介護サービスでは、認知症の高齢者増加によるグループホームの需要拡大と、グループホームを除き、入居系よりも在宅系サービスに需要がシフトしている近年の傾向を捉え、小規模多機能訪問介護のサービス拡大に努めていきます。
2024年3月期 連結貸借対照表
連結貸借対照表の状況についてご説明します。
資産合計が4億8,000万円増加しているのは、2024年3月から4月にかけて介護事業所3ヶ所を開設したことによる固定資産の増加、および事業拡大に伴う売掛金の増加が主な要因です。
また、負債合計は、介護事業所3ヶ所を開設したことによる建設代金の未払金が増加しましたが、銀行借入金を2億2,500万円圧縮したことにより、微増にとどまりました。
当社は財務内容の強化によって持続可能な成長力を高めるべく、金融機関との関係強化に取り組み、みずほ銀行等と当座貸越枠を7億円増加しました。当座貸越契約の限度額は19億5,000万円となり、M&A実行時の緊急の資金需要に対して手当する一方で、M&Aがない平時には銀行借入金の圧縮に努めていきます。
純資産合計は、親会社株主に帰属する当期純利益5億2,300万円の計上等により、4億4,000万円増加しています。これにより、自己資本比率は2023年3月期の33.7パーセントから2.9ポイント増加し、2024年3月期は36.6パーセントとなり、財務基盤が強化されました。
2024年3月期 キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローの状況についてご説明します。
2024年3月末の現金及び現金同等物の残高は21億8,300万円となり、2023年3月末より400万円増加しました。
営業活動の結果得られた資金は10億6,200万円となりました。主な増加要因は、税金等調整前当期純利益7億5,400万円、減価償却費3億5,100万円です。主な減少要因は、法人税の支払いです。
続いて、投資活動によって資金は5億8,500万円減少しています。主な要因は、2024年3月から4月にかけて新設した介護事業所3ヶ所開設等による5億9,700万円の支出です。
また、財務活動によって4億7,200万円の資金が減少しています。主な要因は、短期借入金の純増による2億600万円の収入、長期借入金の純減による4億4,600万円の支出等によるものです。
2025年3月期 連結業績予想
今期の業績予想をご説明する前に、当社グループの業績の変動パターンについてお話しします。
2025年3月期は介護保険事業計画の新年度にあたり、通常は公募案件がほとんどありません。当社グループでは、介護事業所の新設にあたって、介護保険事業計画に基づく地方公共団体の公募選定を受けることが前提条件となっています。2024年4月に開設した介護事業所2ヶ所以降、現時点で2025年3月期は介護事業所を新設する予定はありません。
当社グループの場合、介護事業所の新設がない期の業績は、新規介護事業所の初期投資費用が発生しないため、営業利益が増加します。その反面、営業外収益に計上される新規介護事業所の設備補助金収入が剥落することから、経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益は減益となる傾向があります。
それでは、2025年3月期連結業績の予想についてご説明します。2025年3月期の売上高は、前期比7.1パーセント増の110億9,200万円を見込んでいます。福祉用具事業の売上高が順調に推移し、介護事業も2024年3月から4月に開設した介護事業所3ヶ所と、2023年7月に子会社化したスマートケアタウン社の通期稼働が貢献し、増収を計画しています。
営業利益は、福祉用具事業が引き続き順調に推移することが見込まれます。介護事業も物価の高止まりによるコスト高が継続するものの、新規介護事業所の初期投資費用の発生が軽減すること、2023年3月に新設した介護事業所4ヶ所の損益改善も期待されることから、前期比10.5パーセント増の5億8,200万円を見込んでいます。
経常利益は、2024年3月期は2024年3月から4月に開設した新設介護事業所3ヶ所に対する補助金収入がありましたが、2025年3月期はそれが剥落し、前期比29.0パーセント減の5億6,900万円を見込んでいます。
親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益の減益と税金の支払いを考慮し、前期比31.0パーセント減の3億6,000万円を見込んでいます。1株当たり当期純利益は、134円88銭と予想しています。
2025年3月期 事業セグメント別取り組み
次は、事業セグメント別の今期の取り組みです。
福祉用具事業では、人への投資として、適正な人事評価をもとに実力を重視した積極的な人材登用を進め、フォロー教育を行っていきます。販売戦略としては、2024年3月期連結決算の概況でお伝えしたとおり、自社レンタル品を活用した売上高の拡大を目指します。成長戦略としては、新規利用者さまの開拓により、地域シェア率の上昇を進めていきます。
介護事業における人への投資は、介護スタッフの介護技術及び接遇の再習得を行い、介護サービスの質の維持と向上を図ります。従業員に働きやすい職場を提供するため、変形労働時間制を導入しています。海外人材の受け入れを拡大し、ダイバーシティを推進します。
ITインフラの活用として、各種IT機器導入の検討、および導入済みのタブレット等のさらなる活用による業務の効率化を図ります。成長戦略としては、新規介護施設の開設、および同業種をターゲットとしたM&Aの検討を進めていきます。
以上の内容で中長期の成長を目指し、事業基盤の強化に取り組んでいきます。
2025年3月期 セグメント別損益予想
セグメント別の損益予想です。
福祉用具事業セグメントは、福祉用具のレンタル市場の拡大や自社レンタル品の営業強化を背景に、セグメント売上高は前期比4.0パーセント増の45億4,600万円、セグメント利益が前期比7.4パーセント増の3億5,800万円と、増収増益を見込んでいます。また、福祉用具事業においても、同業のM&A案件があれば積極的に検討していきます。
介護事業セグメントは、2024年3月から4月に開設した介護事業所3ヶ所、および2023年7月に子会社化したスマートケアタウン社の通期稼働により、セグメント売上高は前期比9.3パーセント増の65億4,600万円を見込んでいます。
また、セグメント利益については、物価の上昇等により食材費等の高止まりが続き、コスト高が継続しているものの、2023年3月に新設した介護事業所4ヶ所の利益が貢献している状況です。
さらに2025年3月期は介護保険事業計画の新年度にあたり、公募案件はほとんどないことから、現時点で介護事業所の新設予定はありません。新規介護事業所の初期投資費用の発生がなくなることから、前期比15.9パーセント増の2億2,400万円となり、増収増益を見込んでいます。
配当について
当社は、株主に対する利益還元を重要課題の1つとして認識し、株主への配当を安定かつ継続的に実施することを基本方針としています。
2024年3月期の配当は、発表している予想のとおり実施します。据え置きの期末配当は20円とし、実施済みの中間配当13円を合わせて、年間配当は33円とします。
2025年3月期は減益予想にはなるものの、安定かつ継続的に配当を実施する観点から、配当金額は据え置き、中間配当が13円、期末配当20円、年間配当合計33円とする予定です。
配当方針として、自己資本比率が50パーセント未満の間は、連結配当性向25パーセントを目指す考えです。2024年3月期は、親会社株主に帰属する当期純利益5億2,300万円の計上により、自己資本比率が2023年3月期の33.7パーセントから2.9ポイント増加した36.6パーセントとなりました。2025年3月期の予想連結配当性向は、24.5パーセントとなっています。
過去の業績推移と現在(2020年3月期~2025年3月期)
2024年5月28日に発表した、中期経営計画についてご説明します。スライドには、当社グループが連結決算を開始した2020年3月期以降の業績推移を示しています。
高齢者人口の増加に伴って要介護者が増加し、国が定める介護報酬は決して高くないものの、当社グループにおいては、デフレ経済のもとで介護市場が拡大していく中で業績を拡大させてきました。
事業ポートフォリオを見直して子会社を売却したことで、売上高が減少した2022年3月期を除いて順調に売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益(最終利益)が増加していきました。
2022年4月7日に東京証券取引所スタンダード市場に株式を上場し、最初に発表した決算では営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益が当時の最高益を記録しました。
2024年3月期も売上高、経常利益が過去最高を記録しましたが、上場以来、営業利益と親会社株主に帰属する当期純利益は、過去の記録を更新するには至っていません。
さらに2025年3月期の業績予想では、売上高と営業利益が順調に拡大する見込みとなりましたが、残念ながら、経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益は減益の見込みになりました。
現在も、高齢者人口の増加に伴って要介護者は増加しています。当社グループとしても要請に応えるべく、新規営業所や介護施設の開設を進め、順調に事業拡大・売上増を実現してきました。
しかし、2023年3月期からの物価高による食材費や光熱費等の高騰と、従前の介護業界で負担になっていた人材不足と人件費上昇が経営に打撃を与え、減益傾向が強まりました。
このような状況に対して、国の施策は3年に1度見直されています。2024年度に行われた介護報酬の改定や、介護職員処遇改善支援補助金が新たに制度化がありましたが、いずれも介護事業者側の諸問題を解決するには至っておらず、今後も厳しい経営環境が続くと考えています。このような状況の中で、再び成長路線に回帰すべく中期経営計画を策定しました。
策定の背景と目的
中期経営計画策定の背景と目的についてご説明します。今回の中期経営計画は、介護サービスの提供(公共性)と業績拡大(上場会社の責務)の両立を目指して策定しました。
現在の日本は、65歳以上の人口割合が全人口の29.1パーセントを占める超高齢化社会です。介護離職の増加、ヤングケアラーやビジネスケアラー問題、高齢者ご家族の介護疲れによる悲惨な事件、認知症の高齢者における行方不明者の増加、一人暮らしの高齢者の増加、老老介護や認認介護が社会問題化してきています。
これらを解決するため、介護サービスの重要性は増してきており、介護事業者には介護サービスの維持・拡大が求められています。
また、要介護者の増加による介護保険料支払いの増加は、保険料を負担する国民に経済的負担をかけるとともに、介護保険料の原資の半分を賄っている国や地方公共団体の財政負担も増加し、介護報酬の抑制を迫られています。
この度、2024年度を開始年度とする介護保険料の改定が行われたものの、物価の高騰による食材費等の高止まり、人件費の上昇、人材不足によって経営が圧迫している介護事業者の問題を解決するまでには至りませんでした。
さらには物価高が直撃している利用者さまと、そのご家族さまの経済的負担から考えると、物価高によるコストの増加分が転換できない状況にあります。一方で介護事業者には、介護サービスのコスト低減が求められています。
このように、介護事業者に社会的なしわ寄せが来る中、上場会社として事業規模拡大による効率化等で業績拡大を目指し、社会的な要請に応えていくために、中期経営計画を策定しました。
基本方針
中期経営計画の基本方針です。
1つ目は、サービスの質の維持と向上です。福祉用具事業では、利用者さまへの訪問を増やしてきめ細やかなサービスを提供する一方、福祉用具レンタル品の提供価格の低減に努め、利用者さまの負担や介護保険料の支払額を抑制します。
介護事業では、もう一度原点に立ち返って、介護スタッフに介護技術、および接遇を再習得させ、介護サービスの見直しを進め、必要なサービスの質の維持と向上を図ります。当社グループは、介護保険法が施行された2000年より介護保険事業に参入して以来、長年にわたって介護サービスが受け入れられ、多くの利用者さまの支持を受けてきました。
厳しい経営環境のもと、今回の中期経営計画に際してもう一度原点に立ち返り、介護スタッフに介護技術および接遇を再習得し、介護とは何か、必要な介護サービスは何かを見つめ直し、今までの当社グループのサービスの良いところを残しながら、見直しを進めていきます。
次に、従業員シフトの工夫等、介護事業所運営方法の見直しを行い、介護事業所のローコスト運営を目指します。従業員シフトの見直しや、介護スタッフを変形労働時間制に移行することで従業員のやる気を確保し、ワークライフバランスの充実を図るとともに、介護事業所運営方法の見直しを行い、介護事業所のローコスト運営を目指していきます。
また、近年、介護サービスの中でも特に需要が高まっている、グループホームや訪問介護(特に重度)のサービス拡大を加速していきます。認知症の高齢者の増加によるグループホーム需要の拡大、そしてできるだけ長く自宅で過ごしたいと願う利用者さまが増加し、グループホームを除き、入居系よりも在宅系サービスに需要がシフトしている傾向を捉え、訪問介護のサービス拡大に努めてまいります。
また、重度訪問介護は特殊な技術が必要となり、サービスが提供できる介護事業者が限られているのが現状です。当社グループは、重度訪問介護のサービスを提供し、どのような利用者さまにも対応できる体制を整え、ケアマネージャーの信頼を獲得することで、他の事業者との差別化を図っていきます。
さらに、要望が強まっている重度の障がい者介護(特に居宅介護と重度訪問介護)へ進出し、サービス対象を高齢者から幅広い年齢層の障がい者に拡大していきます。近年は障がい者介護の需要も高まっており、重度の障がい者の在宅介護についても、ご本人さまの「自宅で過ごしたい」、ご家族さまも「自宅でともに暮らしたい」というご要望が多くあります。
先ほどご説明した重度訪問介護サービスを障がい者の方々にも広げ、高齢者向けの介護サービスから幅広い年齢層の障がい者の方に向けて、サービスを提供していきます。
基本方針
2つ目は、サービスの提供地域の維持と拡大です。
福祉用具事業については、高齢者人口の増加に対応して新規利用者さまの開拓を行い、多くの利用者さまにサービスを提供することに努め、既存営業所の地域シェア率を高めて利益を確保していきます。既存営業所で高齢者人口が急増する地域では、営業所を拡張してサービス提供の拡大を目指します。
介護事業については、地方公共団体の介護保険事業計画に基づく介護事業所の公募に対して地域の介護需要に応えるため、新規に介護事業所を開設し、介護サービスを提供していきます。
地方公共団体の介護保険事業計画に基づく介護事業所の公募選定を受け、新規の介護事業所を開設しています。当社グループがサービスを提供している信越地区と関東地区を中心に、増加していく介護需要に応えるべく、積極的に介護事業所を新規開設していきます。事業規模拡大によって効率化を実現し、多くの方々に介護サービスを提供していきます。
また、経営者の後継者不在等で事業継続が困難な介護事業所には、M&Aを活用して当社グループが代わって介護サービスの提供を行い、事業規模拡大による経営の効率化を目指します。
2000年に介護保険法が施行されて以降、介護業界に多くの事業者が参入してきましたが、多くの介護事業者が高齢化し、後継者の不在等、事業承継に悩まれている経営者が多くいらっしゃいます。
また、近年の物価高で食材費等の高止まりや、従前の介護業界で問題になっている人材不足と人件費上昇が介護事業者の経営に打撃を与え、廃業や事業譲渡を考えている事業者が多くなりました。
当社グループには、このようなM&A案件が多く来ています。当社グループが代わって介護サービスを提供できるよう、事業規模拡大による事業所運営の効率化を目指していきます。
業績目標 (2025年3月期~2029年3月期)
業績目標についてご説明します。進行期の2025年3月期を初年度として、5年目となる中期経営計画の最終年度には、売上高150億円、営業利益に建設補助金を加えた利益は10億円を目指します。
売上高は、既存事業所の営業努力と新規事業所の開設によって年平均約6.3パーセントの成長率を見込んでおり、5年後には140億円を達成する計画です。さらにM&Aの実施によって売上高を10億円上乗せし、合計150億円にする計画です。
また、利益目標としている営業利益プラス建設補助金のご説明です。建設補助金とは、グループホーム等の介護事業所新設の際、介護事業者の投資負担の軽減のため、地方自治体から支給される新設事業所整備補助金を指します。当社グループは他の介護事業者と同様に、介護事業所を新設する際には、支給される補助金を前提として投資判断を行っています。
したがって、業績評価の観点から言えば、介護事業所新設のための初期投資費用と当該補助金は相殺されて良いものですが、会計上、連結損益計算書において初期投資費用は売上原価、新設事業所整備補助金は補助金収入として、営業外収益に別個計上されています。
補助金収入が営業外収益に計上される結果、営業利益は当社グループの実力値としての業績を示すものになっていません。そこで、営業利益に建設補助金を合算したものを利益目標としました。
また、M&A枠の利益目標についてです。M&Aの実施は不確実性が伴い、特に利益の目標設定が難しいことから、目標設定はしていません。
業績目標 セグメント別(2025年3月期~2029年3月期)
セグメント別の業績目標です。
福祉用具セグメントは年平均約7.2パーセントの伸びを見込み、5年後には売上高60億円を目指します。
事業拡大のためには営業所の新設が必要になりますが、福祉用具事業は新設しても営業所別の損益が早期には改善しないビジネスです。今回の中期経営計画では、利益重視で新規営業所の開設ではなく、既存事業所の拡張、分所化、もしくは移転拡張による事業拡大を考えています。また、福祉用具事業はM&A枠を設けていませんが、同業種のM&A案件があれば、積極的に検討していきます。
セグメント利益については、4億6,000万円を目標とします。新規利用者さまの開拓を行い、多くの利用者さまにサービスを提供することに努め、既存営業所の地域シェア率を高めて利益を確保していきます。
介護事業セグメントは年平均約5.9パーセントの伸びを見込み、5年後には売上高80億円を目指します。介護施設はいわゆる箱物のため、定員以上には利用者さまの利用が不可能です。
したがって、事業の拡大や売上高の増加を図るためには、新規介護事業所の開設が必要です。新規介護事業所については、グループホームや、特に重度訪問介護のサービス提供を考えています。
さらに新規分野として、重度の障がい者介護、特に居宅介護と重度訪問介護へ進出していきます。また、M&Aの実施により、5年後には売上高を10億円増加させます。
セグメント利益については、介護スタッフに介護技術や接遇を再習得させ、介護サービスの見直しや、従業員のシフト等の介護事業所運営方法の見直しを行うことによって、介護事業所の損益改善を図ることなどにより、5億4,000万円を目標とします。
以上で、2024年3月期の決算説明を終了します。お忙しい中ご視聴いただき、ありがとうございました。
今回は説明会を開催せず、動画のみの説明となりましたので、代わりによくいただくご質問に対して回答します。
<質問1>
Q:2024年3月期の実績について、経常利益が過去最高益となった半面、2025年3月期業績予想の経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益が、前期比でそれぞれ29.0パーセント減と31.0パーセント減の大幅減となっています。要因をご説明ください。
A:2024年3月期の実績が経常利益が過去最高益となったのは、補助金として2024年3月から4月にかけて開設した介護事業所(グループホーム)3ヶ所の新規介護事業所整備補助金や、新型コロナ対策支援金等の支給によるものです。親会社株主に帰属する当期純利益も経常利益と同じく増益となりました。
その反面、2025年3月期は2024年4月に開設した介護事業所以降、事業所新設の予定がないため新規介護事業所整備補助金の支給がありません。新型コロナ対策支援金についても支給が終了したため、補助金収入が大幅に減少となる予想です。そのため経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益が減益となる見込みです。
<質問2>
Q:2025年3月期は、新規の事業所の開設予定はありますか?
A:福祉用具事業は既存営業所の営業強化で業績を拡大する計画のため、新規営業所の開設予定はありません。介護事業については、2025年3月期が介護保険事業計画初年度にあたり、初年度は介護事業所の公募が少ないことから現時点では公募に応じておらず、新規事業所の開設予定はありません。
今後公募案件があったら開設を積極的に検討し、選定を受けたら発表します。
<質問3>
Q:中期経営計画で5年後の最終年度にM&Aによる売上高の増加目標として10億円を掲げていますが、可能でしょうか?
A:M&Aは不確実性を伴い、目標設定は困難です。決算説明動画でのご説明のとおり、2000年の介護保険法施行以降、介護業界に参入した多くの事業者が高齢化し、経営者の後継者不足が問題になっています。
また、近年の物価高や介護業界で慢性化している人材不足と人件費の上昇による経営難を背景に、当社グループにM&Aに関する照会が多くあることから、M&A枠の設定は可能であると判断しました。
ただし、利益に関しては、より不確実性を伴うことから目標設定は控えました。
<質問4>
Q:中期経営計画で株主還元に関する記載がありませんが、どのようにお考えでしょうか? また、配当政策は従来から変更はないという考えで間違いないでしょうか?
A:今回、中期経営計画は、公共性ある介護サービスの提供と上場会社としての業績拡大の両立を掲げて発表しました。
上場会社として業績の拡大を図り、株主の皆様に利益還元していくことが重要であると考えます。
2025年3月期は経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益が減益となる見込みです。まず、再び成長路線に回帰すべく施策を講じ業績拡大していくことが急務であり、業績拡大の形で株主・投資家のみなさまの期待に応えたいと考えています。
配当政策についても上述のとおり、業績拡大の形で株主・投資家のみなさまの期待に応えるべく、従来の配当政策に変更はありません。
<質問5>
Q:2024年4月に介護事業所2ヶ所を開設したとのことですが、資料によると初期投資費用(開設費用)が2024年3月期に計上されています。2024年4月に開設した介護事業所の初期投資費用は2025年3月期に計上すべきではないでしょうか?
A:消耗品等の少額の多種多様な物品の購入等に係る費用については、翌期への費用の繰り延べは認められず、支出した期の費用に計上されます。
新設の介護事業所は2ヶ所とも4月1日に開設しているため、上記の初期投資費用の多くが2024年3月までに支出、費用計上されています。
なお、減価償却費は、事業に使用を開始した時からになりますので、2025年3月期より費用計上されます。
<質問6>
Q:2024年4月に介護事業所2ヶ所を開設したとのことですが、連結貸借対照表に建設仮勘定で計上されている資産がありません。なぜでしょうか。
A:当該事業所は2024年3月末時点ですでに建設工事会社から事業所建物等の引き渡しを受けていたため、建設仮勘定ではなく、個々の資産科目に計上しています。
<質問7>
Q:2024年4月に開設した介護事業所2ヶ所の新設事業所整備補助金(建設補助金)を2024年3月期に計上したとされていますが、2025年3月期に計上すべきではないでしょうか?
A:建設補助金は介護事業所の開設に係る介護事業者の負担軽減を目的に支給されるものであり、介護事業者も補助金支給を前提として投資の意思決定をすることから、介護事業所を開設した期に建設補助金を計上したほうが実態に即していると思います。
しかしながら、会計上、介護事業所の開設と建設補助金の支給には直接的な関連はないとされています。建設補助金の計上時期は介護事業所の開設時期ではなく、建設補助金を支給する地方公共団体が補助金の支給を決定した日となります。
今回の建設補助金の支給が確定したのが2024年3月であるため、2024年3月期の計上 になりました。なぜ2024年3月に支給が確定したのかについては、支給を決定する地方公共団体側の都合によるものであり、当社側で操作できるものではありません。
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