生物多様性や人権の尊重・DE&Iにおける新たな取り組みの実施、パーム油調達に向けたトレーサビリティ確保の推進に加え、ESG活動が財務および事業成長等に与える影響を開示
花王株式会社(社長・長谷部佳宏)は、2024年5月24日、花王ウェブサイトにて、「花王サステナビリティレポート2024」を公開し、ESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」(キレイライフスタイルプラン)の進捗状況を公表しました。2023年は、世界で喫緊の社会課題となっている生物多様性において、方針の改訂やTNFD*1フレームワークに沿った情報開示を実施。「ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DE&I)方針」の策定など、企業活動すべての基盤となる人権の尊重に関わる活動も推進しました。花王の主な原材料のひとつであるパーム油については、サステナブルな調達の実現に向け農園までのトレーサビリティの確保に努めています。また、本レポートでは、ESG活動の成果や財務への貢献、想定される将来的な成長等を定量的に示し、ESG戦略が中期経営計画「K27」にどのように貢献するのかを記載しています。2023年の新たな取り組みと、主な重点取り組みテーマの活動実績を報告します。
*1 Taskforce on Nature-related Financial Disclosure:自然関連財務情報開示タスクフォース。2021年に発足。企業が自然資本に関連する自社の活動について、共通のフレームワークを用いてリスクや機会を分析・公表することで、生物多様性の回復を推進することを目的とする
「花王サステナビリティレポート2024」
花王のESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」
花王は約130年にわたり、人々の暮らしに寄り添うことで、こころ豊かな暮らしの実現をめざしてきました。2019年4月には、生活者のニーズが高まっている持続可能な暮らしを「Kirei Lifestyle」とし、それを実現するためのESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」を策定。19の重点取り組みテーマを設定しています。また、2021年からは、「未来のいのちを守る~Sustainability as the only path」をビジョンに掲げた中期経営計画を推進。経営にESGの視点を導入し、事業の発展と生活者や社会へのよりよい製品・サービスの提供をめざし、パーパスである「豊かな共生世界の実現」に向けて取り組んでいます。
「Kirei Lifestyle Plan」の進捗状況の公表にあたり、取締役 常務執行役員 ESG部門統括のDave Muenz(デイブ・マンツ)は、「花王は、『ESG視点のよきモノづくり』を通じて、バリューチェーン全体で事業運営を最適化し、社会が直面する課題に対する解決策を通じて、生活者に新たな価値を提案することをめざしています。2023年は、生活者を主役としたESGの具体的な活動の方向性と、将来への意欲的な目標を表したESG 戦略『Kirei Lifestyle Plan』に基づき、『未来のいのちを守る~Sustainability as the only path』をビジョンに掲げた中期経営計画『K27』への取り組みを加速しました。『花王サステナビリティレポート2024』では、『Kirei Lifestyle Plan』の2030年に向けた3つのコミットメントの進捗と、『Kirei Lifestyle』推進に向けた新たな取り組みについて報告しています。具体的には、『生物多様性の行動指針』の公開とTNFDフレームワークに沿った情報開示の推進、人権の尊重とDE&Iの推進、新たな情報開示の取り組みです。ESG活動の成果や財務への貢献、想定される将来的な成長等を示し、ESG戦略が中期経営計画『K27』にどのように貢献するのかの開示に取り組みました。より持続可能な社会への移行が進む中、花王は、サステナビリティを事業に組み込み、ESGとEVA(R)*2<Economic Value Added:経済的付加価値>の両立を図ってまいります」としています。
*2 Stern Stewart & Co.: EVAを理論的に発展、企業のEVA経営に適用。EVAを商標登録
こうした取り組みが評価され、国際NPOのCDPが実施する「気候変動」「フォレスト」「水セキュリティ」のすべての調査で、最高評価である「Aリスト企業」に4年連続で選定されました。トリプルA企業は、CDP質問書への回答をもとに評価された21,000社以上の中から、10社選定されています。また、米国のシンクタンクEthisphere Institute(エシスフィア・インスティテュート)の「World’s Most Ethical Companies(R)」(世界で最も倫理的な企業)には18年連続で選定されています。
2024年2月 ニュースリリース
花王、4年連続でCDPから「気候変動」「フォレスト」「水セキュリティ」の分野で最高評価を獲得
2024年3月 ニュースリリース
花王、アジアおよび日本で唯一18年連続で「World’s Most Ethical Companies(R)」(世界で最も倫理的な企業)に選定
「Kirei Lifestyle」推進に向けた新たな取り組み
■「生物多様性の行動指針」公開とTNFDフレームワークに沿った情報開示の推進
花王はパーム油や紙・パルプなど、多くの天然資源の恩恵を受けて事業を行っています。生物多様性の保全と回復、さらに自然を再生へと導く活動が企業に求められている昨今の状況を受け、2022年に「生物多様性の基本方針」を改訂しました。2023年の10月には「生物多様性保全の行動指針」も改訂し、「生物多様性の行動指針」として公開。生物多様性に関わる具体的な活動や、国際的なフレームワークに沿った情報開示等について定めています。新たに「人・自然と化学の共生をめざす」という項目も加え、化学物質による生物多様性への影響の評価を実施するとし、生物多様性と気候変動の双方の課題に対応していく姿勢も示しています。
2023年10月 ニュースリリース
花王、「生物多様性の行動指針」を公開
また花王は、2021年より、サプライチェーンにおける生物多様性の接点を確認し、マテリアリティの特定を行ってきました。2022年4月には、新たな情報開示の流れにいち早く対応するため、TNFDのフォーラムに参加。当時開発中だったフレームワークに関する情報の収集やTNFDへのフィードバックを実施しています。2023年4月には、アクセンチュア株式会社と共同で、TNFD(β版v0.3)のLEAPアプローチ*3に沿って分析したレポートを公開。5月には「花王サステナビリティレポート2023」内で、主力製品の洗浄剤における生物多様性の分析結果として、13のリスクと機会を特定し公表しています。そして、今回発行した「花王サステナビリティレポート2024」においては、2023年9月に公表されたTNFDの最終提言となるフレームワークに沿って分析を進め、昨年特定したリスクにより想定される財務インパクトを新たに公表しています。また、TNFDは提言に沿って情報を開示する意向を示す企業を「TNFDアダプター」として募っており、花王も登録されています。引き続き、ネイチャーポジティブを前提とした生物多様性戦略の立案と目標設定、具体的な活動に取り組んでいきます。
*3 Locate(優先地域の特定)、Evaluate(依存と影響の把握)、Assess(リスクと機会の特定と評価)、Prepare(戦略と目標設定と評価、報告)の順に分析
2023年4月 ニュースリリース
花王、TNFDのフレームワークを活用した生物多様性に関するレポート「生物多様性がもたらすビジネスリスクと機会」を公開
TNFDアダプターリスト(英語)
「花王サステナビリティレポート2024」 生物多様性
■人権の尊重とDE&Iの推進
花王は企業理念「花王ウェイ」のなかで、「正道を歩む」「個の尊重と力の結集」を「基本となる価値観」として位置づけ、企業活動全体において人権侵害をゼロにし、問題が起きた場合には速やかに解決することをめざしています。また、ESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」においても、「人権の尊重」のほか、「責任ある原材料調達」「受容性と多様性のある職場」「社員の健康増進と安全」といった人権に関係する多くのテーマに、重点的に取り組むとしています。
人権リスクの把握にあたっては、毎年アセスメントを実施し、その結果を「花王サステナビリティレポート」で公開しています。アセスメントでは、人権・DE&Iステアリングコミッティのメンバーを含む多様な部門の社員が、さまざまな視点から想定されうるリスクについて議論。2023年は有識者の意見も踏まえ、花王グループにおける人権リスクを一覧にまとめるとともに、花王における重要な人権テーマを「ともに働く人々の労働環境」とし、特にリスクが高く優先的に取り組みを進める対象を「原材料調達先の生産者や農家」「グループ会社を含むサプライチェーン上の外国人労働者」としました。
「原材料調達先の生産者や農家」に対しては、花王の主な原材料のひとつであるパーム油の調達において、2020年にインドネシアの小規模パーム農園の支援プログラム「SMILE」(SMallholder Inclusion for better Livelihood & Empowerment program)を開始し、生産性向上、RSPO*4認証の取得を支援。2022年からは、農園の苦情や問い合わせを受け付けるグリーバンスメカニズム(苦情処理メカニズム)の導入も進めています。「グループ会社を含むサプライチェーン上の外国人労働者」についても、委託先企業に対し、外国人労働者に向けたグリーバンスメカニズムの導入の提案や、労働実態把握のため第三者によるインタビューを実施しています。
*4 Roundtable on Sustainable Palm Oil、持続可能なパーム油の生産と利用を促進するための円卓会議
加えて、2023年のアセスメントを通じて、新たに気候変動に伴う人権リスクを一覧に追加しました。気候変動やその対策がもたらす人権リスク、例えば自然災害による生活基盤の劣化・喪失、健康や生活への悪影響などを記載しています。
また、DE&Iについても推進を強化しています。2023年6月には、「DE&I方針」を新たに策定。さまざまな事業を展開していることで得られる多くの機会を活用しながら、社員、ビジネスパートナー、生活者を含む社会といった、各ステークホルダーと共にDE&Iの実践を促進し、社会と事業のさらなる発展をめざしています。
2023年6月 ニュースリリース
花王、「ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DE&I)方針」を策定
花王ウェブサイト:ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン
「花王サステナビリティレポート2024」 人権の尊重
「花王サステナビリティレポート2024」 責任ある原材料調達
「花王サステナビリティレポート2024」 受容性と多様性のある職場
「花王サステナビリティレポート2024」 社員の健康増進と安全
■「花王サステナビリティレポート2024」における新たな情報開示の取り組み
本レポートは、ESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」に基づいた活動と中期経営計画「K27」とのつながりを、活動の成果や財務への貢献に加え、期待される将来的な成長を通して示すために、新たな情報開示にも取り組んでいます。冒頭に加えた「エグゼクティブ・サマリー」では、2023年の主な活動成果を、「暮らしと社会への新価値創造」「暮らしと社会への負荷削減」に分類し、活動の進捗を定量的に示すと共に、「暮らし」「社会」「環境」「事業基盤」の4つの区分でわかりやすく開示しています。
「花王サステナビリティレポート2024」 エグゼクティブ・サマリー
主な重点取り組みテーマ 2023年活動実績
■脱炭素
2040年カーボンゼロ、2050年カーボンネガティブの実現に向け、事業活動におけるCO2排出量削減に加え、社会の排出量削減や、大気の炭素の固定化を通じて、脱炭素社会実現と持続可能な事業への貢献をめざします。
「花王サステナビリティレポート2024」 脱炭素
花王は、2021年5月に2040年カーボンゼロ、2050年カーボンネガティブをめざす、「脱炭素」目標を公表しました。その達成に向けて設定した中長期目標は、国際的なイニシアチブであるSBTイニシアチブ(SBTi)から「1.5℃目標」の認証を取得しており、事業の使用電力を100%再生可能エネルギーで賄うことをめざす国際的なイニシアチブ「RE100」にも加盟しています。2023年には、日本における購入電力の100%再生可能エネルギー化を実現し、2025年までにスコープ1・2*5のCO2排出量(絶対量)を28%削減するという中間削減目標も2年前倒しで達成しています。詳細は、2024年4月に公表した、2023年の「脱炭素」実績報告ニュースリリースをご覧ください。
*5 企業・組織が自ら排出する温室効果ガス量
2021年5月 ニュースリリース
新たな「脱炭素」目標を策定 2040年カーボンゼロ、2050年カーボンネガティブをめざす
2024年4月 ニュースリリース
2040年カーボンゼロ、2050年カーボンネガティブ実現への活動を加速
花王「脱炭素」2023年実績
■ごみゼロ
花王は、資源循環型社会の実現をめざして、事業活動に伴い使用・排出される包装容器や製品に使われる資源の削減と再資源化を推進し、事業と社会の持続的な発展に貢献します。
「花王サステナビリティレポート2024」 ごみゼロ
花王は、資源循環型社会の実現に向け、事業活動に伴い使用・排出されるプラスチック包装容器に関し、2040年までに「ごみゼロ」、2050年までに「ごみネガティブ」*6を目標としています。2023年は、目標に向けたロードマップを公表。水平リサイクルにより、再生材料を一部に使用したつめかえパックも初めて製品化しています。詳細は、2024年4月に公表した、2023年の「ごみゼロ」実績報告ニュースリリースをご覧ください。
*6 「ごみゼロ」は、花王のプラスチック包装容器使用量と、花王がプラスチック再資源化に関与した量が等しい状態、「ごみネガティブ」は、花王のプラスチック包装容器使用量よりも、花王がプラスチック再資源化に関与した量が多い状態と定義
2023年5月 ニュースリリース
プラスチック包装容器2040年「ごみゼロ」、2050年「ごみネガティブ」実現に向けたロードマップを公表
2024年4月 ニュースリリース
2040年「ごみゼロ」、2050年「ごみネガティブ」実現への活動を加速
■責任ある原材料調達
資源保護、環境保全や安全、人権などに配慮した原材料を調達するとともに、トレーサビリティの確保に努め、サプライヤーとの対話を通じ、よりサステナブルな原料調達をめざします。
「花王サステナビリティレポート2024」 責任ある原材料調達
花王ウェブサイト:パームダッシュボード
花王は事業が自然資本に依存していることを認識し、サステナブルな天然資源の調達に取り組んでいます。界面活性剤の主要原料となるパーム油や、包装材料や紙おむつに使用される紙・パルプは、花王にとって最も重要な天然資源と位置づけています。特に森林破壊ゼロに対しては、NDPE*7を支持し、サプライヤーとそのグループ企業、またその投資先企業に対しても遵守徹底の要求と確認を進めています。
*7 No Deforestation, No Peat and No Exploitation(森林破壊ゼロ、泥炭地ゼロ、搾取ゼロ)
パーム油に関しては、サプライヤーを通じてパーム農園までのトレーサビリティの確保に努めています。2023年は、パーム搾油工場(ミル)までは99%、パーム農園までは87%まで、トレーサビリティの確認ができています。また、持続可能なパーム油に対する認証(RSPO認証)油の購入については、2025年までに花王グループで使用するパーム油のRSPO認証油への切り替えをめざしており、2023年の実績はBook & Claim*8を含め40%となっています。
*8 RSPO 認証クレジットを生産者と最終製造者、販売者との間でオンライン取引する認証モデル
2020年に開始したインドネシアの小規模パーム農園の支援プログラム「SMILE」では、油脂製品製造・販売会社のアピカルグループ、農園(プランテーション)会社のアジアンアグリの2社と共に、パーム油の持続可能なサプライチェーンの構築をめざし、北スマトラ州・リアウ州・ジャンビ州の小規模パーム農園の生産性向上、RSPO認証の取得を支援しています。農地管理、労働安全、火災管理、RSPO認証取得などに関する教育を実施し、支援した農園数は2023年には延べ3,080農園、うち839農園がRSPO認証を取得しています。花王はこれらの小規模パーム農園の認証クレジットを全量購入しており、花王が支払った認証プレミアムは農園が直接受け取るため、農園の安定収入に貢献しています。また、生産性の向上と農薬使用量の低減による収益改善や、環境負荷の低減につながる花王の「アジュバント」*9を、2023年には延べ628の小規模パーム農園に無償配布しました。2022年9月に導入した農園の苦情や問い合わせを受け付けるグリーバンスメカニズムについては、2023年12月末時点で212農園に導入されており、開始時からの問い合わせ件数は延べ213件となっています
*9 花王が開発した植物原料由来の高機能の農薬展着剤。農薬散布時に薬剤を濡れ広がるように植物表面に展着させる
2020年10月 ニュースリリース
花王、アピカルグループ、アジアンアグリがインドネシアの小規模パーム農園の支援プログラム「SMILE」を開始
2022年4月 ニュースリリース
インドネシア小規模パーム農園支援進捗について
2022年8月 ニュースリリース
花王、インドネシアの小規模パーム農園を対象にグリーバンスメカニズムの運用を開始
花王「責任ある原材料調達」2023年実績
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*1 Taskforce on Nature-related Financial Disclosure:自然関連財務情報開示タスクフォース。2021年に発足。企業が自然資本に関連する自社の活動について、共通のフレームワークを用いてリスクや機会を分析・公表することで、生物多様性の回復を推進することを目的とする
「花王サステナビリティレポート2024」
花王のESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」
花王は約130年にわたり、人々の暮らしに寄り添うことで、こころ豊かな暮らしの実現をめざしてきました。2019年4月には、生活者のニーズが高まっている持続可能な暮らしを「Kirei Lifestyle」とし、それを実現するためのESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」を策定。19の重点取り組みテーマを設定しています。また、2021年からは、「未来のいのちを守る~Sustainability as the only path」をビジョンに掲げた中期経営計画を推進。経営にESGの視点を導入し、事業の発展と生活者や社会へのよりよい製品・サービスの提供をめざし、パーパスである「豊かな共生世界の実現」に向けて取り組んでいます。
「Kirei Lifestyle Plan」の進捗状況の公表にあたり、取締役 常務執行役員 ESG部門統括のDave Muenz(デイブ・マンツ)は、「花王は、『ESG視点のよきモノづくり』を通じて、バリューチェーン全体で事業運営を最適化し、社会が直面する課題に対する解決策を通じて、生活者に新たな価値を提案することをめざしています。2023年は、生活者を主役としたESGの具体的な活動の方向性と、将来への意欲的な目標を表したESG 戦略『Kirei Lifestyle Plan』に基づき、『未来のいのちを守る~Sustainability as the only path』をビジョンに掲げた中期経営計画『K27』への取り組みを加速しました。『花王サステナビリティレポート2024』では、『Kirei Lifestyle Plan』の2030年に向けた3つのコミットメントの進捗と、『Kirei Lifestyle』推進に向けた新たな取り組みについて報告しています。具体的には、『生物多様性の行動指針』の公開とTNFDフレームワークに沿った情報開示の推進、人権の尊重とDE&Iの推進、新たな情報開示の取り組みです。ESG活動の成果や財務への貢献、想定される将来的な成長等を示し、ESG戦略が中期経営計画『K27』にどのように貢献するのかの開示に取り組みました。より持続可能な社会への移行が進む中、花王は、サステナビリティを事業に組み込み、ESGとEVA(R)*2<Economic Value Added:経済的付加価値>の両立を図ってまいります」としています。
*2 Stern Stewart & Co.: EVAを理論的に発展、企業のEVA経営に適用。EVAを商標登録
こうした取り組みが評価され、国際NPOのCDPが実施する「気候変動」「フォレスト」「水セキュリティ」のすべての調査で、最高評価である「Aリスト企業」に4年連続で選定されました。トリプルA企業は、CDP質問書への回答をもとに評価された21,000社以上の中から、10社選定されています。また、米国のシンクタンクEthisphere Institute(エシスフィア・インスティテュート)の「World’s Most Ethical Companies(R)」(世界で最も倫理的な企業)には18年連続で選定されています。
2024年2月 ニュースリリース
花王、4年連続でCDPから「気候変動」「フォレスト」「水セキュリティ」の分野で最高評価を獲得
2024年3月 ニュースリリース
花王、アジアおよび日本で唯一18年連続で「World’s Most Ethical Companies(R)」(世界で最も倫理的な企業)に選定
「Kirei Lifestyle」推進に向けた新たな取り組み
■「生物多様性の行動指針」公開とTNFDフレームワークに沿った情報開示の推進
花王はパーム油や紙・パルプなど、多くの天然資源の恩恵を受けて事業を行っています。生物多様性の保全と回復、さらに自然を再生へと導く活動が企業に求められている昨今の状況を受け、2022年に「生物多様性の基本方針」を改訂しました。2023年の10月には「生物多様性保全の行動指針」も改訂し、「生物多様性の行動指針」として公開。生物多様性に関わる具体的な活動や、国際的なフレームワークに沿った情報開示等について定めています。新たに「人・自然と化学の共生をめざす」という項目も加え、化学物質による生物多様性への影響の評価を実施するとし、生物多様性と気候変動の双方の課題に対応していく姿勢も示しています。
2023年10月 ニュースリリース
花王、「生物多様性の行動指針」を公開
また花王は、2021年より、サプライチェーンにおける生物多様性の接点を確認し、マテリアリティの特定を行ってきました。2022年4月には、新たな情報開示の流れにいち早く対応するため、TNFDのフォーラムに参加。当時開発中だったフレームワークに関する情報の収集やTNFDへのフィードバックを実施しています。2023年4月には、アクセンチュア株式会社と共同で、TNFD(β版v0.3)のLEAPアプローチ*3に沿って分析したレポートを公開。5月には「花王サステナビリティレポート2023」内で、主力製品の洗浄剤における生物多様性の分析結果として、13のリスクと機会を特定し公表しています。そして、今回発行した「花王サステナビリティレポート2024」においては、2023年9月に公表されたTNFDの最終提言となるフレームワークに沿って分析を進め、昨年特定したリスクにより想定される財務インパクトを新たに公表しています。また、TNFDは提言に沿って情報を開示する意向を示す企業を「TNFDアダプター」として募っており、花王も登録されています。引き続き、ネイチャーポジティブを前提とした生物多様性戦略の立案と目標設定、具体的な活動に取り組んでいきます。
*3 Locate(優先地域の特定)、Evaluate(依存と影響の把握)、Assess(リスクと機会の特定と評価)、Prepare(戦略と目標設定と評価、報告)の順に分析
2023年4月 ニュースリリース
花王、TNFDのフレームワークを活用した生物多様性に関するレポート「生物多様性がもたらすビジネスリスクと機会」を公開
TNFDアダプターリスト(英語)
「花王サステナビリティレポート2024」 生物多様性
■人権の尊重とDE&Iの推進
花王は企業理念「花王ウェイ」のなかで、「正道を歩む」「個の尊重と力の結集」を「基本となる価値観」として位置づけ、企業活動全体において人権侵害をゼロにし、問題が起きた場合には速やかに解決することをめざしています。また、ESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」においても、「人権の尊重」のほか、「責任ある原材料調達」「受容性と多様性のある職場」「社員の健康増進と安全」といった人権に関係する多くのテーマに、重点的に取り組むとしています。
人権リスクの把握にあたっては、毎年アセスメントを実施し、その結果を「花王サステナビリティレポート」で公開しています。アセスメントでは、人権・DE&Iステアリングコミッティのメンバーを含む多様な部門の社員が、さまざまな視点から想定されうるリスクについて議論。2023年は有識者の意見も踏まえ、花王グループにおける人権リスクを一覧にまとめるとともに、花王における重要な人権テーマを「ともに働く人々の労働環境」とし、特にリスクが高く優先的に取り組みを進める対象を「原材料調達先の生産者や農家」「グループ会社を含むサプライチェーン上の外国人労働者」としました。
「原材料調達先の生産者や農家」に対しては、花王の主な原材料のひとつであるパーム油の調達において、2020年にインドネシアの小規模パーム農園の支援プログラム「SMILE」(SMallholder Inclusion for better Livelihood & Empowerment program)を開始し、生産性向上、RSPO*4認証の取得を支援。2022年からは、農園の苦情や問い合わせを受け付けるグリーバンスメカニズム(苦情処理メカニズム)の導入も進めています。「グループ会社を含むサプライチェーン上の外国人労働者」についても、委託先企業に対し、外国人労働者に向けたグリーバンスメカニズムの導入の提案や、労働実態把握のため第三者によるインタビューを実施しています。
*4 Roundtable on Sustainable Palm Oil、持続可能なパーム油の生産と利用を促進するための円卓会議
加えて、2023年のアセスメントを通じて、新たに気候変動に伴う人権リスクを一覧に追加しました。気候変動やその対策がもたらす人権リスク、例えば自然災害による生活基盤の劣化・喪失、健康や生活への悪影響などを記載しています。
また、DE&Iについても推進を強化しています。2023年6月には、「DE&I方針」を新たに策定。さまざまな事業を展開していることで得られる多くの機会を活用しながら、社員、ビジネスパートナー、生活者を含む社会といった、各ステークホルダーと共にDE&Iの実践を促進し、社会と事業のさらなる発展をめざしています。
2023年6月 ニュースリリース
花王、「ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DE&I)方針」を策定
花王ウェブサイト:ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン
「花王サステナビリティレポート2024」 人権の尊重
「花王サステナビリティレポート2024」 責任ある原材料調達
「花王サステナビリティレポート2024」 受容性と多様性のある職場
「花王サステナビリティレポート2024」 社員の健康増進と安全
■「花王サステナビリティレポート2024」における新たな情報開示の取り組み
本レポートは、ESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」に基づいた活動と中期経営計画「K27」とのつながりを、活動の成果や財務への貢献に加え、期待される将来的な成長を通して示すために、新たな情報開示にも取り組んでいます。冒頭に加えた「エグゼクティブ・サマリー」では、2023年の主な活動成果を、「暮らしと社会への新価値創造」「暮らしと社会への負荷削減」に分類し、活動の進捗を定量的に示すと共に、「暮らし」「社会」「環境」「事業基盤」の4つの区分でわかりやすく開示しています。
「花王サステナビリティレポート2024」 エグゼクティブ・サマリー
主な重点取り組みテーマ 2023年活動実績
■脱炭素
2040年カーボンゼロ、2050年カーボンネガティブの実現に向け、事業活動におけるCO2排出量削減に加え、社会の排出量削減や、大気の炭素の固定化を通じて、脱炭素社会実現と持続可能な事業への貢献をめざします。
「花王サステナビリティレポート2024」 脱炭素
花王は、2021年5月に2040年カーボンゼロ、2050年カーボンネガティブをめざす、「脱炭素」目標を公表しました。その達成に向けて設定した中長期目標は、国際的なイニシアチブであるSBTイニシアチブ(SBTi)から「1.5℃目標」の認証を取得しており、事業の使用電力を100%再生可能エネルギーで賄うことをめざす国際的なイニシアチブ「RE100」にも加盟しています。2023年には、日本における購入電力の100%再生可能エネルギー化を実現し、2025年までにスコープ1・2*5のCO2排出量(絶対量)を28%削減するという中間削減目標も2年前倒しで達成しています。詳細は、2024年4月に公表した、2023年の「脱炭素」実績報告ニュースリリースをご覧ください。
*5 企業・組織が自ら排出する温室効果ガス量
2021年5月 ニュースリリース
新たな「脱炭素」目標を策定 2040年カーボンゼロ、2050年カーボンネガティブをめざす
2024年4月 ニュースリリース
2040年カーボンゼロ、2050年カーボンネガティブ実現への活動を加速
花王「脱炭素」2023年実績
■ごみゼロ
花王は、資源循環型社会の実現をめざして、事業活動に伴い使用・排出される包装容器や製品に使われる資源の削減と再資源化を推進し、事業と社会の持続的な発展に貢献します。
「花王サステナビリティレポート2024」 ごみゼロ
花王は、資源循環型社会の実現に向け、事業活動に伴い使用・排出されるプラスチック包装容器に関し、2040年までに「ごみゼロ」、2050年までに「ごみネガティブ」*6を目標としています。2023年は、目標に向けたロードマップを公表。水平リサイクルにより、再生材料を一部に使用したつめかえパックも初めて製品化しています。詳細は、2024年4月に公表した、2023年の「ごみゼロ」実績報告ニュースリリースをご覧ください。
*6 「ごみゼロ」は、花王のプラスチック包装容器使用量と、花王がプラスチック再資源化に関与した量が等しい状態、「ごみネガティブ」は、花王のプラスチック包装容器使用量よりも、花王がプラスチック再資源化に関与した量が多い状態と定義
2023年5月 ニュースリリース
プラスチック包装容器2040年「ごみゼロ」、2050年「ごみネガティブ」実現に向けたロードマップを公表
2024年4月 ニュースリリース
2040年「ごみゼロ」、2050年「ごみネガティブ」実現への活動を加速
■責任ある原材料調達
資源保護、環境保全や安全、人権などに配慮した原材料を調達するとともに、トレーサビリティの確保に努め、サプライヤーとの対話を通じ、よりサステナブルな原料調達をめざします。
「花王サステナビリティレポート2024」 責任ある原材料調達
花王ウェブサイト:パームダッシュボード
花王は事業が自然資本に依存していることを認識し、サステナブルな天然資源の調達に取り組んでいます。界面活性剤の主要原料となるパーム油や、包装材料や紙おむつに使用される紙・パルプは、花王にとって最も重要な天然資源と位置づけています。特に森林破壊ゼロに対しては、NDPE*7を支持し、サプライヤーとそのグループ企業、またその投資先企業に対しても遵守徹底の要求と確認を進めています。
*7 No Deforestation, No Peat and No Exploitation(森林破壊ゼロ、泥炭地ゼロ、搾取ゼロ)
パーム油に関しては、サプライヤーを通じてパーム農園までのトレーサビリティの確保に努めています。2023年は、パーム搾油工場(ミル)までは99%、パーム農園までは87%まで、トレーサビリティの確認ができています。また、持続可能なパーム油に対する認証(RSPO認証)油の購入については、2025年までに花王グループで使用するパーム油のRSPO認証油への切り替えをめざしており、2023年の実績はBook & Claim*8を含め40%となっています。
*8 RSPO 認証クレジットを生産者と最終製造者、販売者との間でオンライン取引する認証モデル
2020年に開始したインドネシアの小規模パーム農園の支援プログラム「SMILE」では、油脂製品製造・販売会社のアピカルグループ、農園(プランテーション)会社のアジアンアグリの2社と共に、パーム油の持続可能なサプライチェーンの構築をめざし、北スマトラ州・リアウ州・ジャンビ州の小規模パーム農園の生産性向上、RSPO認証の取得を支援しています。農地管理、労働安全、火災管理、RSPO認証取得などに関する教育を実施し、支援した農園数は2023年には延べ3,080農園、うち839農園がRSPO認証を取得しています。花王はこれらの小規模パーム農園の認証クレジットを全量購入しており、花王が支払った認証プレミアムは農園が直接受け取るため、農園の安定収入に貢献しています。また、生産性の向上と農薬使用量の低減による収益改善や、環境負荷の低減につながる花王の「アジュバント」*9を、2023年には延べ628の小規模パーム農園に無償配布しました。2022年9月に導入した農園の苦情や問い合わせを受け付けるグリーバンスメカニズムについては、2023年12月末時点で212農園に導入されており、開始時からの問い合わせ件数は延べ213件となっています
*9 花王が開発した植物原料由来の高機能の農薬展着剤。農薬散布時に薬剤を濡れ広がるように植物表面に展着させる
2020年10月 ニュースリリース
花王、アピカルグループ、アジアンアグリがインドネシアの小規模パーム農園の支援プログラム「SMILE」を開始
2022年4月 ニュースリリース
インドネシア小規模パーム農園支援進捗について
2022年8月 ニュースリリース
花王、インドネシアの小規模パーム農園を対象にグリーバンスメカニズムの運用を開始
花王「責任ある原材料調達」2023年実績
関連情報
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花王のサステナビリティ
「花王統合レポート2024」を公開
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