「スペイン救済を好感も、買い一巡後は・・・」
株価上昇の要因となりそうなのが、ユーロ圏財務相がスペインの銀行を最大1000億ユーロ(日本円で10兆円程度)の支援を行う用意があることを表明したこと。市場参加者の一部は「数兆円の支援では」との見方があったために、金額の大きさがサプライズとなりそうだ。外国為替市場ではユーロ・円相場が1ユーロ=100円台に上昇。これが輸出関連株への追い風となりそうだ。
これまではスペイン政府が銀行を支援すると、政府の財務負担が増加することが懸念されていた。EUからの支援が明確となれば、その懸念は払拭。欧州リスクは後退し、投資家の買い戻しの動きは優勢となりそうだ。
ただ、今回活用されるEFSFもしくはESMという“箱”は、スペインが約12%を債務保証する欧州の内部組織。破綻国家がその屋台骨を支える“入れ子”のような構図となっており、危うさがにじみ出ている。
実際、欧州危機を端的に表した「PIIGS」という言葉も、その順番通りに順次破綻している。すでにアイルランド、ポルトガル、ギリシャが“ギブアップ”しており、事実上EU、IMF傘下へと入っているのだ。スペインは「銀行救済に特定」と今までと別パターンを強調しているが、支援を求めた時点で事実上の破綻に変わりはない。こうやって「PIIGS」が順次、EUに統合されており、次は間違いなく“イタリア”ということになる。もし、イタリアを救済する場合には、日本円で200兆円近いお金が必要とされており、これを捻出するのは至難の業だろう。やはりいずれは欧州共同債が発行され、ECBがこれを引き受けるに違いない。もちろんフランスやドイツも例外ではなく、この“戦禍”に巻き込まれていくだろう。そのような意味で、「危機はまだ半ば」である。
そうような状況下、日経平均の日足チャートでは、とりあえず上値を試す動きとなりそうだ。週末の予想外の急落の反動もあり、売り方の買い戻しが一気に進むだろう。焦点となるのは週末のメジャーSQ値(8613.40円)との攻防。この付近は強い抵抗帯となっており、買い一巡後の値動きが注目される。
先週末の動きから軸が再び下向きになった可能性が高く、今回のスペイン救済報道がそれを一蹴するかどうかがポイントとなる。現時点では「軸に変化はない」と考え、買い一巡後は急速に伸び悩む展開を想定したい。なぜならば上方には“ファンダメンタルズの壁”が位置しており、強烈に上値を抑えるからだ。6/17のギリシャ再選挙が警戒材料となり、投資家は買いの手を引っ込めるに違いない。