エフ・コード Research Memo(5):2023年12月期は事業領域をさらに拡大(1)

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最新投稿日時:2024/04/04 15:05 - 「エフ・コード Research Memo(5):2023年12月期は事業領域をさらに拡大(1)」(フィスコ)

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エフ・コード Research Memo(5):2023年12月期は事業領域をさらに拡大(1)

配信元:フィスコ
投稿:2024/04/04 15:05
*15:05JST エフ・コード Research Memo(5):2023年12月期は事業領域をさらに拡大(1) ■業績動向

1. 2023年12月期の業績概要
エフ・コード<9211>の2023年12月期(IFRS)の連結業績は、売上収益2,482百万円(前期比131.6%)、営業利益651百万円(同397.2%増)、税引前利益612百万円(同394.1%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益484百万円(同598.5%増)となった。企業のDX市場拡大、CX改善ニーズの高まりを受けて、既存のCX向上SaaS事業と付随するコンサルティングサービスの受注が順調に推移した。同社単体の売上収益は1,498百万円と前期比39.8%増となり、前期のM&Aにより譲り受けた4件のCX向上SaaS事業が通年でフルに貢献した。一方、連単差は984百万円あり、2023年12月期中にM&Aにより連結子会社化した5社(うち1社は期中で吸収合併)が成長に大きく寄与していることがうかがえる。

損益面においても、単体の営業利益は240百万円と前期比8.6%の伸びに留まるが、連単差は411百万円と単体の営業利益を大きく上回る。この5事業のM&Aにより、SaaSテクノロジー領域の隣接事業領域であるWebサイト構築から集客、リピート促進までのクリエイティブ及びマーケティング領域をカバーし、提供するプロダクトやサービスを大幅に拡充した。顧客数は2,616社と、上場時の271社から2年間で約10倍に成長し、売上収益は前期の約2.3倍、営業利益は前期の約5倍に成長した。上場後2年で、デジタルマーケティングサービスをワンストップで提供できる体制と収益基盤を構築し、今後の成長に向けた経営基盤が整ったと言えよう。

なお、2023年12月期より連結決算を導入し、2023年12月期第3四半期よりIFRSを任意適用しており、比較する2022年12月期決算もIFRSに基づき調整している。2022年12月期の売上収益は日本基準と不変であるが、営業利益は、日本基準では求められていない有給休暇及び新株予約権の費用化、減価償却方法の変更により、日本基準の営業利益230百万円が131百万円に減額されている。また、日本基準における「経常利益」項目はなくなり、「営業外収益・費用」「特別利益・損失」に表示していた項目は、「その他の収益・費用」と「金融収益・費用」とに分けられ、それぞれ営業利益の前と後に分解して表示されている。「税金等調整前当期純利益」がIFRSの「税引前利益」に該当する。

2. M&Aの概要
2023年12月期までに9件のM&Aを行い、5件の事業を同社が吸収し、4件の事業は新設分割により連結子会社化した。また、2024年1月には10件目のM&Aとして、LTVサイエンス事業を運営するBINKSを連結子会社化した。さらに、4月には、11件目のM&Aとして、新規事業開発や開発チーム内製化支援等を行うラグナロクの全株式を取得し完全子会社化した。ラグナロクが獲得してきたグロースエンジニアリングのノウハウ及び技術を生かし、同社グループによるクライアント企業への最適なDX推進と同社CX SaaSの機能開発強化を一層推進するための体制を構築し、顧客価値の最大化を目指す。同社では、テクノロジー領域のSaaS事業を対象とした、2022年2月のコミクスから2023年1月のKaiUまでのM&Aをフェーズ1と捉えている。2023年5月のSAKIYOMIからラグナロクまでは、テクノロジー領域の隣接事業を拡大するフェーズ2と捉えている。フェーズ1はSaaS事業の譲受であり、リカーリング収益を生むプロダクト、サービスを継承するため、最小限の人員を受け入れている。一方、フェーズ2は、クリエイティブ領域、マーケティング領域、データサイエンス領域の事業であり、それぞれ既往の経営陣、従業員を含めてグループ化しており、従業員数も前期末の単体50数名規模(臨時を含む)からグループで150名規模に増加している。

M&Aについては、買収後の事業の成長に応じて追加で対価を支払う条件付対価(=最大追加金額)を設定している。条件付対価については、支払済みの対価は「のれん」に加わり、未実現の対価は発生確率を加味した割引現在価値を「その他の金融負債」と「のれん」に両建てで計上されている。2023年12月期末で、「のれん」は4,284百万円、「その他の金融負債」は1,170百万円が計上されている。

個別の事業についてEBITDAは非公表であるが、フェーズ1については、支払い済みの条件対価を含め、被買収事業の純資産を控除したM&A投下資金約20億円に対して、EBITDAは約4億円増加した。フェーズ2については、BINKも含めて、同M&A投下資金約49億円に対して、EBITDAは約10億円増加する見込みだ。合計では約14億円のEBITDAがM&Aによって増加することになる。

また、M&Aを活用する企業において「投下資金をどのように調達するか」と「どのような企業を対象としているか」という2点は言わずもがな重要なポイントである。前者に関しては、当然エクイティ・ファイナンスによる調達の場合は、企業目線では返済義務がないという点において好ましいものの、株主目線では新株発行による1株価値の希薄化が生じて短期的には株価下落を伴うことが多く、忌避される。一方、同社の場合、M&A資金はデット・ファイナンスによる調達を基本方針として掲げており、ここまで資本コストを最小化しながらM&A実行により収益、利益を拡大している点は押さえておきたい。こうして企業価値を増加させながら、一方で財務バランスを厳格に評価し、2023年1月には効率的なエクイティ調達を新たに実行し、財務安全性を高めた。これにより、さらなるM&Aに向けた投資、デット調達を可能にする余力を獲得し、次の優良案件に備えるというサイクルを上手くコントロールしている。

また、「どのような企業を対象としているか」という点についても、これまで同社は事業ベースから企業体の買収まで徐々に規模を拡大させ知見を積み上げながら行ってきたが、一貫してM&A時点で黒字化している事業・企業のみをその対象にしてきた。加えて、グループの提供価値最大化を意図し、ケイパビリティ(組織能力や優位性)拡張のために実施することをM&A方針として有している。赤字企業を割安で買収し、再生して価値を高めるようなM&A手法もあるが、同社はそうしたリスクは排除している。経営効率が原因の可能性もあるため一概には判断できないものの、赤字企業の場合は製品・サービス自体が本質的には既に競争力を失っている場合もある。その場合は経営効率を改善したとしても、黒字化が一時的なものになりかねないからだ。

だからこそ、特に足元のM&Aに関しては、黒字化しているだけでなく、スタンドアローンで大きく成長を続けている(成長可能性も踏まえ)企業をターゲットとしているのだ。ケイパビリティ(組織能力や優位性)拡張のためのM&Aで、そもそも対象を隣接領域にいる事業・企業に限定しているため、同社自体がその評価を非常に正確に行うことが可能な点が最大のポイントであろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)

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