*14:26JST SI Research Memo(6):ERP事業とObject Browser事業が計画を上回る増収増益に
■システムインテグレータ<3826>の業績動向
2. 事業セグメント別動向
(1) Object Browser事業
Object Browser事業の売上高は前年同期比6.2%増の365百万円、セグメント利益※は同37.8%増の173百万円となり、会社計画(売上高353百万円、営業利益123百万円)を上回る増収増益となった。売上高は「Object Browser」のライセンス売上がオラクルユーザーの拡大もあって同16%強の増加となったほか、「OBPM Neo」のストック売上が契約件数の積み上がりにより同13%強の増加となった。収益性の高い「Object Browser」の売上構成比が上昇したことに加え、「OBPM Neo」の売上規模も順調に拡大したことが利益率上昇の要因となった。なお、前期から売上拡大施策として「OBPM Neo」に関する「リモートPMOサービス」も順調に契約件数を伸ばしたようだ。同サービスは顧客が実行しているプロジェクトの状況をオンラインで監視し、問題を早期発見・改善するサービスで、PMの人材不足問題を解決するソリューションとして引き合いが増えている。
※2024年2月期より各事業の収益状況をより正確に把握できるようにするため、事業セグメント別利益は事業利益ベースで開示することにした。2023年2月期第2四半期累計のセグメント利益についても同基準に基づいて見直している。従来は共通費用を各事業セグメントの売上高に応じて配分し営業利益として開示していたため、売上規模の大きいERP事業に共通費用の多くが配分されていた(2024年2月期第2四半期累計の共通費用は前年同期比110百万円増加の375百万円)。
「OBPM Neo」のKPIを見ると、第2四半期末のMRRは前年同期末比12.7%増の29百万円と契約件数の増加に伴い着実に積み上がっており、解約率も1%前後で低位安定して推移している。オンプレミス版の契約件数は4割弱まで低下しており、一部カスタマイズ機能を加えて提供している大口顧客の切り替えについては、同様の機能を追加後に移行作業を進める予定だ。このため、完全にクラウドサービスに切り替わる時期を2025年3月以降と見込んでいる。
(2) E-Commerce事業
E-Commerce事業の売上高は前年同期比3.3%減の428百万円、セグメント利益は同13.5%減の117百万円となり、会社計画(売上高456百万円、営業利益145百万円)に対しても若干下回った。コロナ禍の収束に伴い、小売企業の投資方針もEC重視からリアル店舗やその他の情報システムに比重を移し始めており、この影響により新規受注の獲得に苦戦したことが減収減益要因となった。
(3) ERP事業
ERP事業の売上高は前年同期比17.9%増の1,587百万円、セグメント利益は同85.2%増の343百万円となり、会社計画(売上高1,487百万円、営業利益253百万円)を上回る好調な業績となった。製造業を中心に新規顧客からの引き合いが順調に推移したことに加えて、既存顧客からインボイス制度対応案件を数多く受注できたことが主因だ。インボイス関連の売上寄与は2億円強あったと見られ、増収分の大半を占めたことになる。また、売上総利益率の高い同案件が伸びたことで、利益率も前年同期の13.8%から21.7%に大きく上昇した。
なお、同社はここ数年、社内エンジニアの不足により受注機会を取り逃すケースが多かったため、ERP事業やE-Commerce事業の開発体制強化を目的に2022年5月に福岡支社、同年10月にベトナムに子会社を相次いで開設し、エンジニアの増強に取り組んできたことも好業績の一因になったと見られる。2023年8月末のエンジニア数は全社で213名(前期末比22名増)となったが、うち福岡で23名(同7名増)、ベトナムで20名(同11名増)と増員分の大半をこの2拠点で占め、ERP事業の収益増に貢献した。
(4) AI事業
AI事業の売上高は前年同期比17.5%増の21百万円、セグメント損失は19百万円(前年同期は20百万円の損失)となり、会社計画(売上高29百万円、セグメント損失12百万円)に対して若干下回った。ディープラーニング外観検査システム「AISIA-AD」の検証考察(PoC含む)件数は増加したものの、製造ラインへの本格導入にはまだ慎重な企業が多く、計画の下振れ要因となった。なお、引き合いのある対象検査物としては、フィルム製品のほか輸送機器用部品、ペットボトルのキャップや電設資材など幅広く、今後AIによる判定精度を高め、生産性向上の効果を実証していくことで本格導入を促進し、収益化に取り組んでいく。
(5) インキュベーションその他
インキュベーションその他の売上高は前年同期比5.8%減の21百万円、セグメント損失は35百万円(前年同期は46百万円の損失)となり、会社計画(売上高25百万円、セグメント損失41百万円)に対しては売上高で若干下回ったが、損失額は縮小した。
プログラミングスキル判定サービス「TOPSIC」は、新規契約獲得件数が順調に推移した一方で、既存顧客の解約が数件発生したことが影響し減収となった。今度は、見込み顧客のターゲットを人事・採用部門に絞ってマーケティング活動を強化し、顧客獲得を推進する予定だ。ただ、競合サービスが導入社数を拡大しているなかで出遅れ感は否めず、成長軌道に乗せるためには、サービス内容も含めて抜本的な見直しが必要になるかもしれない。一方、「IDEA GARDEN」については、OpenAI社の提供するChatGPT機能を実装するなどサービスを強化したことで導入実績が増えたものの、当初の想定よりも伸び悩んでいる状況にある。このため、同社はこれら新規事業について事業の継続の可否も含めて検討を進める考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. 事業セグメント別動向
(1) Object Browser事業
Object Browser事業の売上高は前年同期比6.2%増の365百万円、セグメント利益※は同37.8%増の173百万円となり、会社計画(売上高353百万円、営業利益123百万円)を上回る増収増益となった。売上高は「Object Browser」のライセンス売上がオラクルユーザーの拡大もあって同16%強の増加となったほか、「OBPM Neo」のストック売上が契約件数の積み上がりにより同13%強の増加となった。収益性の高い「Object Browser」の売上構成比が上昇したことに加え、「OBPM Neo」の売上規模も順調に拡大したことが利益率上昇の要因となった。なお、前期から売上拡大施策として「OBPM Neo」に関する「リモートPMOサービス」も順調に契約件数を伸ばしたようだ。同サービスは顧客が実行しているプロジェクトの状況をオンラインで監視し、問題を早期発見・改善するサービスで、PMの人材不足問題を解決するソリューションとして引き合いが増えている。
※2024年2月期より各事業の収益状況をより正確に把握できるようにするため、事業セグメント別利益は事業利益ベースで開示することにした。2023年2月期第2四半期累計のセグメント利益についても同基準に基づいて見直している。従来は共通費用を各事業セグメントの売上高に応じて配分し営業利益として開示していたため、売上規模の大きいERP事業に共通費用の多くが配分されていた(2024年2月期第2四半期累計の共通費用は前年同期比110百万円増加の375百万円)。
「OBPM Neo」のKPIを見ると、第2四半期末のMRRは前年同期末比12.7%増の29百万円と契約件数の増加に伴い着実に積み上がっており、解約率も1%前後で低位安定して推移している。オンプレミス版の契約件数は4割弱まで低下しており、一部カスタマイズ機能を加えて提供している大口顧客の切り替えについては、同様の機能を追加後に移行作業を進める予定だ。このため、完全にクラウドサービスに切り替わる時期を2025年3月以降と見込んでいる。
(2) E-Commerce事業
E-Commerce事業の売上高は前年同期比3.3%減の428百万円、セグメント利益は同13.5%減の117百万円となり、会社計画(売上高456百万円、営業利益145百万円)に対しても若干下回った。コロナ禍の収束に伴い、小売企業の投資方針もEC重視からリアル店舗やその他の情報システムに比重を移し始めており、この影響により新規受注の獲得に苦戦したことが減収減益要因となった。
(3) ERP事業
ERP事業の売上高は前年同期比17.9%増の1,587百万円、セグメント利益は同85.2%増の343百万円となり、会社計画(売上高1,487百万円、営業利益253百万円)を上回る好調な業績となった。製造業を中心に新規顧客からの引き合いが順調に推移したことに加えて、既存顧客からインボイス制度対応案件を数多く受注できたことが主因だ。インボイス関連の売上寄与は2億円強あったと見られ、増収分の大半を占めたことになる。また、売上総利益率の高い同案件が伸びたことで、利益率も前年同期の13.8%から21.7%に大きく上昇した。
なお、同社はここ数年、社内エンジニアの不足により受注機会を取り逃すケースが多かったため、ERP事業やE-Commerce事業の開発体制強化を目的に2022年5月に福岡支社、同年10月にベトナムに子会社を相次いで開設し、エンジニアの増強に取り組んできたことも好業績の一因になったと見られる。2023年8月末のエンジニア数は全社で213名(前期末比22名増)となったが、うち福岡で23名(同7名増)、ベトナムで20名(同11名増)と増員分の大半をこの2拠点で占め、ERP事業の収益増に貢献した。
(4) AI事業
AI事業の売上高は前年同期比17.5%増の21百万円、セグメント損失は19百万円(前年同期は20百万円の損失)となり、会社計画(売上高29百万円、セグメント損失12百万円)に対して若干下回った。ディープラーニング外観検査システム「AISIA-AD」の検証考察(PoC含む)件数は増加したものの、製造ラインへの本格導入にはまだ慎重な企業が多く、計画の下振れ要因となった。なお、引き合いのある対象検査物としては、フィルム製品のほか輸送機器用部品、ペットボトルのキャップや電設資材など幅広く、今後AIによる判定精度を高め、生産性向上の効果を実証していくことで本格導入を促進し、収益化に取り組んでいく。
(5) インキュベーションその他
インキュベーションその他の売上高は前年同期比5.8%減の21百万円、セグメント損失は35百万円(前年同期は46百万円の損失)となり、会社計画(売上高25百万円、セグメント損失41百万円)に対しては売上高で若干下回ったが、損失額は縮小した。
プログラミングスキル判定サービス「TOPSIC」は、新規契約獲得件数が順調に推移した一方で、既存顧客の解約が数件発生したことが影響し減収となった。今度は、見込み顧客のターゲットを人事・採用部門に絞ってマーケティング活動を強化し、顧客獲得を推進する予定だ。ただ、競合サービスが導入社数を拡大しているなかで出遅れ感は否めず、成長軌道に乗せるためには、サービス内容も含めて抜本的な見直しが必要になるかもしれない。一方、「IDEA GARDEN」については、OpenAI社の提供するChatGPT機能を実装するなどサービスを強化したことで導入実績が増えたものの、当初の想定よりも伸び悩んでいる状況にある。このため、同社はこれら新規事業について事業の継続の可否も含めて検討を進める考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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