*15:37JST オンコリス Research Memo(7):「OBP-601」は前期第2相臨床試験が順調に進捗
■開発パイプラインの動向
2. センサブジン「OBP-601」
核酸系逆転写酵素阻害剤「OBP-601」は2020年6月に、トランスポゾンとの間で主に神経変性疾患の治療薬開発に関して、全世界における再許諾権付き独占的ライセンス契約を締結した。ライセンス契約の総額は3億米ドル以上(販売ロイヤリティ収入除く)となり、開発・製造・販売のコストはすべてトランスポゾンが負担する契約となっている。
「OBP-601」については、米ブラウン大学が実施した動物実験の結果、神経変性疾患に有効であるとのデータが得られ、トランスポゾンとの契約につながった。具体的には、「OBP-601」がレトロトランスポゾン※の逆転写と複製を抑制する効果があることと、脳内への高い移行性を示すことが確認された。レトロトランスポゾンのなかでもLINE-1(Long Interspersed Element)というゲノムが複製されると、生体内でインターフェロンなどの産生が局所で行われ、様々な神経変性を引き起こす。特に神経細胞を傷つけることにより神経変性疾患が発症し、症状が悪化すると考えられている。「OBP-601」には、逆転写や複製の抑制により、症状の進行を遅らせる効果が期待されている。「OBP-601」はHIV治療薬として開発を進めてきた経緯があるが、HIV患者がアルツハイマー病等の神経変性疾患の発症リスクが低い(=神経変性疾患に有効)という疫学調査があることから、トランスポゾンでは最終的に患者数の多いアルツハイマー病治療薬としての開発も視野に入れていると考えられる。
※ ヒトのゲノムの約半分は「動く遺伝子」と呼ばれるトランスポゾンで構成されている。その大部分が「逆転写酵素」によってゲノムのほかの箇所へと転移するレトロトランスポゾンであり、ヒトゲノムの約8%を占めている。
トランスポゾンでは、神経変性疾患のなかでもいまだ治療法が確立されていない希少疾患を対象に開発をスタートしている。具体的には、「PSP」を対象とした前期第2相臨床試験を2021年11月より開始したほか、「ALS及びFTD」を対象とした前期第2相臨床試験を2022年1月より欧米で開始している。予定症例数は各40例で安全性と忍容性を確認し、副次評価項目として四肢機能等の測定によるスコア評価などを行い有効性を確認する(治療期間は48週間、フォローアップ期間4週間)。プラセボを比較対象とした二重盲検試験となり、結果が良好であれば次のステップに進む。
PSPの臨床試験については中間解析を実施し、安全性に問題のあるような副作用の報告がなく、臨床試験の精度についても問題なかったとの報告を受けている。有効性のデータに関しては後発医薬品も多く出ているため開発戦略上、非開示となっている。POCを取得できればトランスポゾンから大手製薬企業へのサブライセンス契約を結んで開発が進む可能性もあるだけに今後の動向が注目される。一方、ALS及びFTDの臨床試験についても2023年3月7日付で被験者登録の組入れが完了しており、2024年中に開発方針が明らかにされるものと予想される。患者数はPSP、FTD、ALSともに日本では1万人前後、世界で約3万~5万人となっており、いずれもオーファンドラッグ指定対象である。
また、3本目のパイプラインとして、遺伝性希少疾患で治療法がいまだ確立されていないアイカルディ・ゴーティエ症候群(AGS)※を対象とした前期第2相臨床試験を2023年7月より欧州で開始した(予定症例数16名、治験期間48週間、フォローアップ期間12週間)。患者数は世界で100~200人と少ないが、社会的意義のあるプロジェクトとして開発を進める。
※ AGSは遺伝性疾患で乳児期に発症する脳症。進行性の小頭症や痙縮、不随意運動(ジストニア)、重度の精神発達遅滞がみられ、小児期に死亡するケースもある。
トランスポゾンでは、PSPやALS/FTDで開発に成功すれば次のステップとして世界の患者数が5千万人以上と格段に大きいアルツハイマー病をターゲットにすると考えられる。このため前期第2相臨床試験の結果が注目される。トランスポゾンがメガファーマと再ライセンス契約を締結した場合には、オンコリスバイオファーマ<4588>はトランスポゾンが受け取る契約一時金や開発の進捗に応じて得られるマイルストーン収入の一部を得られる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. センサブジン「OBP-601」
核酸系逆転写酵素阻害剤「OBP-601」は2020年6月に、トランスポゾンとの間で主に神経変性疾患の治療薬開発に関して、全世界における再許諾権付き独占的ライセンス契約を締結した。ライセンス契約の総額は3億米ドル以上(販売ロイヤリティ収入除く)となり、開発・製造・販売のコストはすべてトランスポゾンが負担する契約となっている。
「OBP-601」については、米ブラウン大学が実施した動物実験の結果、神経変性疾患に有効であるとのデータが得られ、トランスポゾンとの契約につながった。具体的には、「OBP-601」がレトロトランスポゾン※の逆転写と複製を抑制する効果があることと、脳内への高い移行性を示すことが確認された。レトロトランスポゾンのなかでもLINE-1(Long Interspersed Element)というゲノムが複製されると、生体内でインターフェロンなどの産生が局所で行われ、様々な神経変性を引き起こす。特に神経細胞を傷つけることにより神経変性疾患が発症し、症状が悪化すると考えられている。「OBP-601」には、逆転写や複製の抑制により、症状の進行を遅らせる効果が期待されている。「OBP-601」はHIV治療薬として開発を進めてきた経緯があるが、HIV患者がアルツハイマー病等の神経変性疾患の発症リスクが低い(=神経変性疾患に有効)という疫学調査があることから、トランスポゾンでは最終的に患者数の多いアルツハイマー病治療薬としての開発も視野に入れていると考えられる。
※ ヒトのゲノムの約半分は「動く遺伝子」と呼ばれるトランスポゾンで構成されている。その大部分が「逆転写酵素」によってゲノムのほかの箇所へと転移するレトロトランスポゾンであり、ヒトゲノムの約8%を占めている。
トランスポゾンでは、神経変性疾患のなかでもいまだ治療法が確立されていない希少疾患を対象に開発をスタートしている。具体的には、「PSP」を対象とした前期第2相臨床試験を2021年11月より開始したほか、「ALS及びFTD」を対象とした前期第2相臨床試験を2022年1月より欧米で開始している。予定症例数は各40例で安全性と忍容性を確認し、副次評価項目として四肢機能等の測定によるスコア評価などを行い有効性を確認する(治療期間は48週間、フォローアップ期間4週間)。プラセボを比較対象とした二重盲検試験となり、結果が良好であれば次のステップに進む。
PSPの臨床試験については中間解析を実施し、安全性に問題のあるような副作用の報告がなく、臨床試験の精度についても問題なかったとの報告を受けている。有効性のデータに関しては後発医薬品も多く出ているため開発戦略上、非開示となっている。POCを取得できればトランスポゾンから大手製薬企業へのサブライセンス契約を結んで開発が進む可能性もあるだけに今後の動向が注目される。一方、ALS及びFTDの臨床試験についても2023年3月7日付で被験者登録の組入れが完了しており、2024年中に開発方針が明らかにされるものと予想される。患者数はPSP、FTD、ALSともに日本では1万人前後、世界で約3万~5万人となっており、いずれもオーファンドラッグ指定対象である。
また、3本目のパイプラインとして、遺伝性希少疾患で治療法がいまだ確立されていないアイカルディ・ゴーティエ症候群(AGS)※を対象とした前期第2相臨床試験を2023年7月より欧州で開始した(予定症例数16名、治験期間48週間、フォローアップ期間12週間)。患者数は世界で100~200人と少ないが、社会的意義のあるプロジェクトとして開発を進める。
※ AGSは遺伝性疾患で乳児期に発症する脳症。進行性の小頭症や痙縮、不随意運動(ジストニア)、重度の精神発達遅滞がみられ、小児期に死亡するケースもある。
トランスポゾンでは、PSPやALS/FTDで開発に成功すれば次のステップとして世界の患者数が5千万人以上と格段に大きいアルツハイマー病をターゲットにすると考えられる。このため前期第2相臨床試験の結果が注目される。トランスポゾンがメガファーマと再ライセンス契約を締結した場合には、オンコリスバイオファーマ<4588>はトランスポゾンが受け取る契約一時金や開発の進捗に応じて得られるマイルストーン収入の一部を得られる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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