*12:36JST 品川リフラ Research Memo(6):2023年3月期は、1年前倒しで中期経営計画目標をほぼ達成
■業績動向
1. 2023年3月期の連結業績概要
(1) 2023年3月期経営成績の概況
品川リフラクトリーズ<5351>の2023年3月期の連結業績は、売上高が前期比12.8%増の124,963百万円、営業利益が同7.3%増の10,844百万円、経常利益が同6.9%増の11,457百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同56.5%増の8,307百万円となった。売上高、経常利益ともコロナ禍前の水準を超え、利益は過去最高を2期連続更新した。第2四半期決算発表時点の予想との比較では、売上高が1.6%減、営業利益が8.4%増、経常利益が4.2%増、親会社株主に帰属する当期純利益が同18.7%増であった。第5次中期経営計画の最終年度となる2024年3月期の目標値の売上高1,150億円、経常利益115億円を、1年前倒しでほぼ達成した。
親会社株主に帰属する当期純利益が大幅に増加した理由は、特別利益に固定資産売却益2,625百万円を計上したことによる。社宅として使用していた遊休資産(さいたま市浦和区)を売却した。同社は、中期経営計画で想定した業績目標を1年前倒しでほぼ達成したが、設備投資でも同様に3期分の金額を最初の2期で投入した。今後も積極的な設備投資により国内市場でのシェア拡大を図る。
(2) 営業利益の増減要因
2022年度の国内粗鋼生産量(日本鉄鋼連盟調べ)は、半導体不足による自動車の減産が影響して8,785万トンと前年度比8.1%減少した。同社は、タイムラグがあるもののスプレッドを一定幅に保つよう価格改定に努めている。2023年3月期における耐火物原料価格の上昇や円安によるコスト高を、期中に一部を価格転嫁できなかったものの、「販価・原料スプレッド/為替」が10億円の営業利益の増加をもたらした。在庫評価差による増益10億円と合わせて、販管費等の増加16億円を上回った。また、コストダウンが4億円の増益要因であった。
(3) 事業セグメント別動向
耐火物及び関連製品事業の売上高が前期比17.2%増の99,476百万円、セグメント利益が同8.9%増の10,288百万円、売上高営業利益率が同0.8ポイント減の10.3%であった。販売数量減を価格改定で補った。市況及び為替変動による原料価格上昇の価格転嫁は、次期も継続する意向だ。エンジニアリング事業の売上高は、同1.7%減の24,487百万円、セグメント利益は同8.6%増の1,982百万円、売上高営業利益率は同0.8ポイント増の8.1%となった。窯炉補修工事の減少により減収となったものの、工事構成の変動により増益となった。不動産事業は、売上高が同1.5%増の998百万円、セグメント利益が同12.2%増の493百万円、売上高営業利益率が4.8ポイント増の49.4%となった。賃貸契約が終了した資産の取り壊しにより固定資産税額が減少した。
2. 財務状況
(1) 貸借対照表
2023年3月期末の総資産は、前期末比24,191百万円増加の143,901百万円となった。流動資産は、同12,694百万円増の91,434百万円であった。現金及び預金・有価証券が同1,437百万円増加し、受取手形・売掛金等が973百万円減少した。たな卸資産は同11,423百万円増加した。内訳は商品及び製品が4,242百万円増、仕掛品が789百万円増、原材料及び貯蔵品が6,392百万円増であった。原材料価格の高騰とコロナ禍対策などで物流網が停滞するときのリスクに備え、原材料の在庫を積み増した。無形固定資産に、ブラジルと米国における事業授受にともなう「のれん」6,256百万円が計上された。負債合計が同16,004百万円増の72,475百万円であった。有利子負債は、短期借入金が11,706百万円増の22,066百万円、長期借入金が459百万円減の11,957百万円、合計で同11.247百万円増の34,023百万円となった。
財務の健全性比率となる流動比率が前期末比34.9ポイント減の165.0%、自己資本比率が同3.0ポイント減の47.3%へ低下した。同社は、自己資本比率50%をめどとする堅固な財務体質を保ってきたこともあり、M&A時の機動的な資金手当が可能であったが、積極投資時期には、財務比率の一時的悪化を許容する。2024年3月期は、遊休資産の売却益が計上される見込みであり、安全性の指標も改善しよう。
コロナ禍により業績が悪化した2021年3月期を除くと、収益性の総合指数となるROE(自己資本当期純利益率)とROA(総資産経常利益率)は通常資本コストとされる8%を上回る水準をキープしてきた。2023年3月期は、特別利益を計上したためROEが前期比4.2ポイント増の13.0%に急伸した。ROAは同0.6ポイント減の8.7%であった。
(2) キャッシュ・フロー計算書
2023年3月期の現金及び現金同等物の期末残高は、前期末比1,434百万円増の18,197百万円となった。営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益(12,478百万円)等により10,281百万円の入超となった。投資活動によるキャッシュ・フローは、15,950百万円の出超であった。有形固定資産の取得(4,781百万円)と連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得(11,969百万円)が主な支出であった。有形固定資産の取得額は、減価償却費(2,931百万円)を上回った。投資活動によるキャッシュ・フローの出金が営業活動の入金を上回り、フリーキャッシュ・フローがマイナスとなった。財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債の減少により出超が続いていたが、6,836百万円の入超となった。短期借入金の純増額が11,125百万円あった。増配により配当金の支払額が増加した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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1. 2023年3月期の連結業績概要
(1) 2023年3月期経営成績の概況
品川リフラクトリーズ<5351>の2023年3月期の連結業績は、売上高が前期比12.8%増の124,963百万円、営業利益が同7.3%増の10,844百万円、経常利益が同6.9%増の11,457百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同56.5%増の8,307百万円となった。売上高、経常利益ともコロナ禍前の水準を超え、利益は過去最高を2期連続更新した。第2四半期決算発表時点の予想との比較では、売上高が1.6%減、営業利益が8.4%増、経常利益が4.2%増、親会社株主に帰属する当期純利益が同18.7%増であった。第5次中期経営計画の最終年度となる2024年3月期の目標値の売上高1,150億円、経常利益115億円を、1年前倒しでほぼ達成した。
親会社株主に帰属する当期純利益が大幅に増加した理由は、特別利益に固定資産売却益2,625百万円を計上したことによる。社宅として使用していた遊休資産(さいたま市浦和区)を売却した。同社は、中期経営計画で想定した業績目標を1年前倒しでほぼ達成したが、設備投資でも同様に3期分の金額を最初の2期で投入した。今後も積極的な設備投資により国内市場でのシェア拡大を図る。
(2) 営業利益の増減要因
2022年度の国内粗鋼生産量(日本鉄鋼連盟調べ)は、半導体不足による自動車の減産が影響して8,785万トンと前年度比8.1%減少した。同社は、タイムラグがあるもののスプレッドを一定幅に保つよう価格改定に努めている。2023年3月期における耐火物原料価格の上昇や円安によるコスト高を、期中に一部を価格転嫁できなかったものの、「販価・原料スプレッド/為替」が10億円の営業利益の増加をもたらした。在庫評価差による増益10億円と合わせて、販管費等の増加16億円を上回った。また、コストダウンが4億円の増益要因であった。
(3) 事業セグメント別動向
耐火物及び関連製品事業の売上高が前期比17.2%増の99,476百万円、セグメント利益が同8.9%増の10,288百万円、売上高営業利益率が同0.8ポイント減の10.3%であった。販売数量減を価格改定で補った。市況及び為替変動による原料価格上昇の価格転嫁は、次期も継続する意向だ。エンジニアリング事業の売上高は、同1.7%減の24,487百万円、セグメント利益は同8.6%増の1,982百万円、売上高営業利益率は同0.8ポイント増の8.1%となった。窯炉補修工事の減少により減収となったものの、工事構成の変動により増益となった。不動産事業は、売上高が同1.5%増の998百万円、セグメント利益が同12.2%増の493百万円、売上高営業利益率が4.8ポイント増の49.4%となった。賃貸契約が終了した資産の取り壊しにより固定資産税額が減少した。
2. 財務状況
(1) 貸借対照表
2023年3月期末の総資産は、前期末比24,191百万円増加の143,901百万円となった。流動資産は、同12,694百万円増の91,434百万円であった。現金及び預金・有価証券が同1,437百万円増加し、受取手形・売掛金等が973百万円減少した。たな卸資産は同11,423百万円増加した。内訳は商品及び製品が4,242百万円増、仕掛品が789百万円増、原材料及び貯蔵品が6,392百万円増であった。原材料価格の高騰とコロナ禍対策などで物流網が停滞するときのリスクに備え、原材料の在庫を積み増した。無形固定資産に、ブラジルと米国における事業授受にともなう「のれん」6,256百万円が計上された。負債合計が同16,004百万円増の72,475百万円であった。有利子負債は、短期借入金が11,706百万円増の22,066百万円、長期借入金が459百万円減の11,957百万円、合計で同11.247百万円増の34,023百万円となった。
財務の健全性比率となる流動比率が前期末比34.9ポイント減の165.0%、自己資本比率が同3.0ポイント減の47.3%へ低下した。同社は、自己資本比率50%をめどとする堅固な財務体質を保ってきたこともあり、M&A時の機動的な資金手当が可能であったが、積極投資時期には、財務比率の一時的悪化を許容する。2024年3月期は、遊休資産の売却益が計上される見込みであり、安全性の指標も改善しよう。
コロナ禍により業績が悪化した2021年3月期を除くと、収益性の総合指数となるROE(自己資本当期純利益率)とROA(総資産経常利益率)は通常資本コストとされる8%を上回る水準をキープしてきた。2023年3月期は、特別利益を計上したためROEが前期比4.2ポイント増の13.0%に急伸した。ROAは同0.6ポイント減の8.7%であった。
(2) キャッシュ・フロー計算書
2023年3月期の現金及び現金同等物の期末残高は、前期末比1,434百万円増の18,197百万円となった。営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益(12,478百万円)等により10,281百万円の入超となった。投資活動によるキャッシュ・フローは、15,950百万円の出超であった。有形固定資産の取得(4,781百万円)と連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得(11,969百万円)が主な支出であった。有形固定資産の取得額は、減価償却費(2,931百万円)を上回った。投資活動によるキャッシュ・フローの出金が営業活動の入金を上回り、フリーキャッシュ・フローがマイナスとなった。財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債の減少により出超が続いていたが、6,836百万円の入超となった。短期借入金の純増額が11,125百万円あった。増配により配当金の支払額が増加した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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