*13:42JST SI Research Memo(2):「時間を奪うのではなく、時間を与えるソフトウェアを創り続ける」(1)
■事業概要
システムインテグレータ<3826>は1995年設立の独立系ソフトウェア開発会社で、自社開発したソフトウェアのパッケージ販売及び保守サービスのほか、クラウドサービス(SaaS)を提供している。新製品に関しては基本的にSaaSモデルでの事業展開を志向している。現在の主力製品には、データベース開発支援ツール「SI Object Browser」や統合型プロジェクト管理ツール「OBPM Neo」のほか、ECサイト構築パッケージ「SI Web Shopping」、Web-ERPパッケージ「GRANDIT」等がある。事業セグメントに関しては、Object Browser事業、E-Commerce事業、ERP事業、AI事業※のほか、新規事業をその他として区分開示している。
※AI事業は2023年2月期よりERP・AI事業から独立して開示された。
直近5期間の事業セグメント別売上構成比の推移を見ると、ERP事業が全体の約6割を占め、残りをObject Browser事業、E-Commerce事業が2分する格好で、構成比に大きな変動はない。同社はここ数期間でAI事業やその他の新規事業の育成に取り組んできたが、合計でも3%以下の水準にとどまっており、新たな収益柱の確立に苦戦しているともいえる。各事業の内容は以下のとおり。
1. Object Browser事業
Object Browser事業は、データベース開発支援ツール「SI Object Browser」やデータベース設計支援ツール「SI Object Browser ER」(以下、「Object Browser」シリーズ)のほか、統合型プロジェクト管理ツール「OBPM Neo」及びアプリケーション設計ツール「OBDZ」※の4製品で構成されている。
※2019年に販売を開始した「OBDZ」は、想定よりも販売が伸びず収益化が困難と判断したためサービス終了を決定した。2024年2月期中に既存顧客向けのサポートも終了する。
売上構成比は「Object Browser」シリーズが約4割、「OBPM Neo」が約6割である。「Object Browser」シリーズは1997年の発売以来、約2万社、48万ライセンスの導入実績があり、国内の主要データベースのほぼすべてに対応していることからデファクトスタンダードとなっている。高いブランド力を持つため販売費用もほとんどかからず、売上総利益率は80%超と高収益製品となっている。競合製品として無料ソフトが出ているが、機能面での差があるため直接的な影響は受けていない。従来はパッケージ販売(ライセンス販売+保守サービス)のみだったが、2021年2月よりSaaS型での販売※も開始している。売上高の30%超は保守サポート等のストック収入で占められており、売上高も比較的安定して推移している。
※契約期間は1年、2年、3年の年間契約(保守料含む)。バージョンアップは無償。for Oracleのみ。
一方、「OBPM Neo」は開発プロジェクトの進捗状況を統合管理(スケジュール、コスト、要員、品質、採算等の管理)することで不採算プロジェクトの発生を未然に抑止するなど、開発部門の生産性向上を支援するツールである。2008年にオンプレミス版となる「OBPM」の開発・販売を開始し、2021年3月にSaaS版の「OBPM Neo」※1にリニューアルした。国内で唯一、PMBOK※2に準拠していたことから中堅規模のIT企業を中心に導入が進み、2023年2月未時点の累計導入実績は約240社となっている。大手IT企業はプロジェクト管理ツールを内製化しているが、最近では「OBPM Neo」の認知度向上や品質の高さが評価され、部門内で導入を検討する企業も増えている。一方、中小企業はExcel等の市販ソフトや無料ソフトを使用しているケースが多い。SaaS版への移行によって一時的に収益が伸び悩む期間が3年程度続くと見ており、これら影響が一巡すれば売上総利益率はオンプレミス版並みの70%程度になると想定される(2023年2月期でオンプレミス版の顧客数は4割弱)。また、2022年6月より「OBPM Neo Basic Edition」の初期費用が無料となる「セルフプラン」を、同年7月には顧客のプロジェクトをオンラインで監視し、問題を早期発見・改善する「リモートPMOサービス」※3を開始している。
※1 月額利用料(税抜)は20ライセンスの場合、Basic Editionで75,000円、Limited Editionで112,500円、Enterprise Editionで150,000円。各種システムと連携するためのオプションサービス有り。
※2 PMBOK(Project Management Body of Knowledge)とは、プロジェクトマネジメントに関するノウハウや手法を体系立ててまとめたもの。1987年にアメリカの非営利団体PMIが「A Guide to the Project Management Body of Knowledge」というガイドブックで発表してから徐々に知られるようになり、現在はプロジェクトマネジメントの世界標準として世界各国に浸透している。
※3 月額料金(税抜)はサポートするプロジェクト数により、30万円、55万円、95万円の3プランを用意している。
2. E-Commerce事業
E-Commerce事業では、日本初のECサイト構築パッケージ「SI Web Shopping」を主力製品として開発・販売している。「SI Web Shopping」の特徴は、大規模ECサイトに強いことにある。具体的には、売上金額が数百億円規模となる大量のトランザクション処理に対応可能なスケーラビリティと、高いセキュリティ機能を有している。また、モバイル対応や多言語対応、そのほか顧客ニーズに応じた機能をカスタマイズで付加できるほかERPなど既存システムとの連携も可能である。1996年の発売以降累計で1,100社以上のECサイトを構築しており(アクティブ稼働数は1割弱)、ECサイト構築における豊富なノウハウやカスタマイズ対応できる高い技術力が同社の強みとなっている。
ECサイト構築パッケージ業界でのポジションは、BtoCの大規模事業者向けに限定すれば同社と、ソフトクリエイトホールディングス<3371>の子会社である(株)ecbeing(構築実績で1,500社超)、Eストアー<4304>の子会社である(株)コマース21(同300社超)の3社でほぼ寡占状態となっている。ここ数年で大規模事業者が新規にECサイトを構築する需要は一巡しているが、他社からのリプレース案件やレンタル・リース事業者及び宿泊事業者の予約サイトの構築案件を手掛けるケースが増えている。
そのほか、2022年5月にアドビ(株)とデジタルコマース基盤「Adobe Commerce」の国内販売に関するソリューションパートナー契約を締結し、営業活動を開始している。「Adobe Commerce」は単一プラットフォームで越境ECや複数のサイト、ブランドの運営をスムーズに行える利便性の高さが特徴で、海外ではBtoBやBtoCのグローバル企業に多数採用されている。同社ではカスタマイズ要求のある開発案件については「SI Web Shopping」で、標準機能のみで対応できる案件については「Adobe Commerce」の導入提案を行い、顧客層を拡げることで事業規模を拡大する戦略である。
また、同年7月からはDXを目指すEC事業者・小売業を支援する「EC&リテールDXサポート」の提供も開始している。これまで同社が蓄積してきた開発ノウハウを生かして、高品質なECサイトを素早く立ち上げるだけでなく、その後の社内開発体制構築支援まで行う顧客伴走型のサービスである。将来的には同社のオフショア開発拠点となるベトナム子会社と顧客企業がラボ型開発契約を行い、顧客企業の社内開発を支援することを目指している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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システムインテグレータ<3826>は1995年設立の独立系ソフトウェア開発会社で、自社開発したソフトウェアのパッケージ販売及び保守サービスのほか、クラウドサービス(SaaS)を提供している。新製品に関しては基本的にSaaSモデルでの事業展開を志向している。現在の主力製品には、データベース開発支援ツール「SI Object Browser」や統合型プロジェクト管理ツール「OBPM Neo」のほか、ECサイト構築パッケージ「SI Web Shopping」、Web-ERPパッケージ「GRANDIT」等がある。事業セグメントに関しては、Object Browser事業、E-Commerce事業、ERP事業、AI事業※のほか、新規事業をその他として区分開示している。
※AI事業は2023年2月期よりERP・AI事業から独立して開示された。
直近5期間の事業セグメント別売上構成比の推移を見ると、ERP事業が全体の約6割を占め、残りをObject Browser事業、E-Commerce事業が2分する格好で、構成比に大きな変動はない。同社はここ数期間でAI事業やその他の新規事業の育成に取り組んできたが、合計でも3%以下の水準にとどまっており、新たな収益柱の確立に苦戦しているともいえる。各事業の内容は以下のとおり。
1. Object Browser事業
Object Browser事業は、データベース開発支援ツール「SI Object Browser」やデータベース設計支援ツール「SI Object Browser ER」(以下、「Object Browser」シリーズ)のほか、統合型プロジェクト管理ツール「OBPM Neo」及びアプリケーション設計ツール「OBDZ」※の4製品で構成されている。
※2019年に販売を開始した「OBDZ」は、想定よりも販売が伸びず収益化が困難と判断したためサービス終了を決定した。2024年2月期中に既存顧客向けのサポートも終了する。
売上構成比は「Object Browser」シリーズが約4割、「OBPM Neo」が約6割である。「Object Browser」シリーズは1997年の発売以来、約2万社、48万ライセンスの導入実績があり、国内の主要データベースのほぼすべてに対応していることからデファクトスタンダードとなっている。高いブランド力を持つため販売費用もほとんどかからず、売上総利益率は80%超と高収益製品となっている。競合製品として無料ソフトが出ているが、機能面での差があるため直接的な影響は受けていない。従来はパッケージ販売(ライセンス販売+保守サービス)のみだったが、2021年2月よりSaaS型での販売※も開始している。売上高の30%超は保守サポート等のストック収入で占められており、売上高も比較的安定して推移している。
※契約期間は1年、2年、3年の年間契約(保守料含む)。バージョンアップは無償。for Oracleのみ。
一方、「OBPM Neo」は開発プロジェクトの進捗状況を統合管理(スケジュール、コスト、要員、品質、採算等の管理)することで不採算プロジェクトの発生を未然に抑止するなど、開発部門の生産性向上を支援するツールである。2008年にオンプレミス版となる「OBPM」の開発・販売を開始し、2021年3月にSaaS版の「OBPM Neo」※1にリニューアルした。国内で唯一、PMBOK※2に準拠していたことから中堅規模のIT企業を中心に導入が進み、2023年2月未時点の累計導入実績は約240社となっている。大手IT企業はプロジェクト管理ツールを内製化しているが、最近では「OBPM Neo」の認知度向上や品質の高さが評価され、部門内で導入を検討する企業も増えている。一方、中小企業はExcel等の市販ソフトや無料ソフトを使用しているケースが多い。SaaS版への移行によって一時的に収益が伸び悩む期間が3年程度続くと見ており、これら影響が一巡すれば売上総利益率はオンプレミス版並みの70%程度になると想定される(2023年2月期でオンプレミス版の顧客数は4割弱)。また、2022年6月より「OBPM Neo Basic Edition」の初期費用が無料となる「セルフプラン」を、同年7月には顧客のプロジェクトをオンラインで監視し、問題を早期発見・改善する「リモートPMOサービス」※3を開始している。
※1 月額利用料(税抜)は20ライセンスの場合、Basic Editionで75,000円、Limited Editionで112,500円、Enterprise Editionで150,000円。各種システムと連携するためのオプションサービス有り。
※2 PMBOK(Project Management Body of Knowledge)とは、プロジェクトマネジメントに関するノウハウや手法を体系立ててまとめたもの。1987年にアメリカの非営利団体PMIが「A Guide to the Project Management Body of Knowledge」というガイドブックで発表してから徐々に知られるようになり、現在はプロジェクトマネジメントの世界標準として世界各国に浸透している。
※3 月額料金(税抜)はサポートするプロジェクト数により、30万円、55万円、95万円の3プランを用意している。
2. E-Commerce事業
E-Commerce事業では、日本初のECサイト構築パッケージ「SI Web Shopping」を主力製品として開発・販売している。「SI Web Shopping」の特徴は、大規模ECサイトに強いことにある。具体的には、売上金額が数百億円規模となる大量のトランザクション処理に対応可能なスケーラビリティと、高いセキュリティ機能を有している。また、モバイル対応や多言語対応、そのほか顧客ニーズに応じた機能をカスタマイズで付加できるほかERPなど既存システムとの連携も可能である。1996年の発売以降累計で1,100社以上のECサイトを構築しており(アクティブ稼働数は1割弱)、ECサイト構築における豊富なノウハウやカスタマイズ対応できる高い技術力が同社の強みとなっている。
ECサイト構築パッケージ業界でのポジションは、BtoCの大規模事業者向けに限定すれば同社と、ソフトクリエイトホールディングス<3371>の子会社である(株)ecbeing(構築実績で1,500社超)、Eストアー<4304>の子会社である(株)コマース21(同300社超)の3社でほぼ寡占状態となっている。ここ数年で大規模事業者が新規にECサイトを構築する需要は一巡しているが、他社からのリプレース案件やレンタル・リース事業者及び宿泊事業者の予約サイトの構築案件を手掛けるケースが増えている。
そのほか、2022年5月にアドビ(株)とデジタルコマース基盤「Adobe Commerce」の国内販売に関するソリューションパートナー契約を締結し、営業活動を開始している。「Adobe Commerce」は単一プラットフォームで越境ECや複数のサイト、ブランドの運営をスムーズに行える利便性の高さが特徴で、海外ではBtoBやBtoCのグローバル企業に多数採用されている。同社ではカスタマイズ要求のある開発案件については「SI Web Shopping」で、標準機能のみで対応できる案件については「Adobe Commerce」の導入提案を行い、顧客層を拡げることで事業規模を拡大する戦略である。
また、同年7月からはDXを目指すEC事業者・小売業を支援する「EC&リテールDXサポート」の提供も開始している。これまで同社が蓄積してきた開発ノウハウを生かして、高品質なECサイトを素早く立ち上げるだけでなく、その後の社内開発体制構築支援まで行う顧客伴走型のサービスである。将来的には同社のオフショア開発拠点となるベトナム子会社と顧客企業がラボ型開発契約を行い、顧客企業の社内開発を支援することを目指している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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