S&P500月例レポート(23年1月配信)<前編>

\ あなたにピッタリの銘柄がみつかる /

みんかぶプレミアムを無料体験!

プランをみる

最新投稿日時:2023/01/26 11:40 - 「S&P500月例レポート(23年1月配信)<前編>」(みんかぶ株式コラム)

お知らせ

読み込みに失敗しました。

しばらくしてからもう一度お試しください。

重要なお知らせ すべて見る

S&P500月例レポート(23年1月配信)<前編>

S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

THE S&P500 MARKET:2022年12月
個人的見解:過ぎ行く年に別れを告げ、明日を夢見る

 2022年は株式市場にとってひどい1年となり、S&P500指数は19.44%の下落と、2008年(38.49%の下落)以来の下落率となりました。セクター別では年間リターンがプラスとなったのはエネルギーセクターのみでした(59.05%上昇。ただし、公益事業の配当込みのトータルリターンはプラス1.57% ―― 筆者は配当重視派です)。139銘柄が値上がりし(平均上昇率は22.21%)、363銘柄が値下がりしました(平均下落率は24.58%。全銘柄では平均11.62%下落)。ここでも2008年(値上がり銘柄数が僅か25銘柄)以来の悪い結果となりました(2008年にリターンが最も高かったのはファミリー・ダラー・ストアーズで、35.57%上昇)。

 ボラティリティは大幅に上昇し、日中の高値と安値の変動幅が1%以上となったのは219日(全営業日数の251日中)、これに対して2021年は95日でした。前日比で1%以上変動した日数は122日(上昇が59日、下落が63日)、これに対して2021年は55日(上昇が34日、下落が21日)でした。2022年通年の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は1.84%でした(2009年の2.03%以来の高水準。ちなみに2008年は2.81%)。これに対して2021年は0.97%でした(2019年は0.85%、2017年は0.51%と穏やかで、筆者がデータ収集を開始した1962年以来の最低でした)。

 時価総額は、S&P500指数全体で8兆2200億ドル減少し(32兆2150億ドルとなり)、情報技術セクターが3兆4900億ドルの減少、エネルギーセクターは5890億ドルの増加となりました。

 2022年の市場データは悪く、それ(あるいは痛み)を軽く見せたいとは思っていませんが、前年までは過去3年間で累計90.13%上昇し(2021年:26.87%、2020年:16.24%、2019年:28.88%)、過去5年間では累計112.89%上昇していました(2018年:-6.24%、2017年:19.42%)。「イベントはリアルタイムで起き」、そして市場は変化します。新型コロナウイルスの感染拡大で、市場は2020年2月19日(当時の終値での高値)から2020年3月23日までに33.93%下落しましたが、3月のこの安値から71.61%回復し、現在コロナ(の影響を受ける)前の2月19日の水準を13.39%上回っています。市場は長期的なものであり、そうしたアプローチを取る場合、2022年は高値、安値、イベント、歴史を通じて解釈する必要があります(短期的な資産の再配分が助けとなる可能性はあるものの危険です ―― 市場のタイミングを見極めるのは相変わらず最も難しい仕事です)。

 では、2023年に私たちはどうすればよいのでしょうか? それが分かっているならお教えします(幾つかのトレードのすぐあとに)。筆者には幾つかの事柄が浮かんでいます(私見です)。

 企業利益が1月の市場の試金石になるでしょう。企業ガイダンスと消費者の支出(そしてシフト)が2023年の利益(およびキャッシュフロー)の見通しに役立つでしょう。2023年に関しては、現在のボトムアップ分析で営業利益は13.2%増と見込まれており(実現は難しそう)、2023年予想株価収益率(PER)は17.0倍と高水準です(歴史的高水準)。「良き時代」は再びやって来ますが、利益予想に「遅れ」が生じれば相場上昇のタイミングは遅れ、株価下落につながる可能性があります。

 政府支出は、債務と金利の水準に(ほとんど)関係なく続き、失業率が低水準で推移し、雇用に対する需要は高く、賃金上昇が続くことを踏まえると、消費支出も同様に続き(ただしより低い水準で)、経済は支えられるでしょう。

 配当(開示事項:筆者は、とりわけ年齢を重ねてから、配当を重視しています ―― 配当収入で生計を立て、株価や税金に関する心配は子供たちに任せましょう)。配当支払いは11年連続で過去最高を記録しました(S&P500指数構成企業が支払った配当額は5645億7000万ドルと、2021年の5112億3000万ドルから増加)。2023年も容易に記録を更新できるとみられ(12年目)、唯一不明なのは幾らになるかです。

 景気後退に関しては、所得・資産格差の拡大が続く中、「景況感」指標の使用は、公式の定義(全米経済研究所の景気循環日付認定委員会)に比べ、選別色が強いと考えます(悪い年だという人もいれば壊滅的な年だという人もおり、前者は後者ほど苦境に陥っていません)。誰もがソフトランディング(失業率5%未満)と政治的な礼節を期待する中、景気後退は2023年のほとんどの期間続くとみられます。

 「1月の相場がその年の相場を決める」という格言の実現率は1929年以降で71.28%となっています(そして2022年は格言通りとなりました:1月に5.26%下落し、通年でも19.44%の下落となりました)。取引初日の相場がその年の相場を決める確率はコイントスと同じ、50%です(2022年は外れました。取引初日に終値で高値〔4796.56。前営業日比0.64%上昇〕をつけ)、それが終値ベースで年間の高値となりました。

 楽しい(そして安全な)ホリデーシーズンをお過ごし下さい。そして、トレードが上手く行きますように。

 過去の実績を見ると、12月は73.4%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は2.97%、下落した月の平均下落率は3.08%、全体の平均騰落率は1.36%の上昇となっています。2022年12月のS&P500指数は、5.90%の下落となりました。

 1月は61.7%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は4.20%、下落した月の平均下落率は3.81%、全体の平均騰落率は1.13%の上昇となっています。「1月の相場がその年の相場を決める」という格言の実現率は1929年以降で71.28%となっています(そして、2022年はこの格言通りとなりました:1月に下落し、通年でも下落しました)。取引初日の相場がその年の相場を決める確率はコイントスと同じ、50%です(2022年は外れました。取引初日に終値で高値をつけ、それが終値ベースで年間の高値となりました)。

 今後の米連邦公開市場委員会(FOMC)のスケジュールは、2023年は1月31日-2月1日、3月21日-22日、5月2日-3日、6月13日-14日、7月25日-26日、9月19日-20日、10月31日-11月1日、12月12日-13日、となっています。

 S&P500指数は12月に5.90%下落して3839.50で月を終えました(配当込みのトータルリターンはマイナス5.76%)。11月は4080.11で終え、5.38%の上昇(同プラス5.59%)、10月は3871.98で終え、7.79%の上昇(同プラス8.10%)でした。2022年第4四半期の過去3ヵ月では7.08%上昇(同プラス7.56%)、2022年は19.44%の下落(同マイナス18.11%)、2021年は26.89%の上昇(同プラス28.71%)、2020年は16.26%の上昇(同プラス18.40%)、2019年は28.88%の上昇(同プラス31.49%)、2018年は6.24%の下落(同マイナス4.38%)でした。2022年1月3日の最高値からは19.95%の下落(同マイナス18.63%)、コロナ危機前の2020年2月19日の高値からは13.89%上昇(同プラス18.75%)でした。

 ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は12月に4.17%下落して3万3203.93ドルで月を終えました(配当込みのトータルリターンはマイナス4.09%)。11月は3万4589.77ドルで終え、5.67%の上昇(同プラス6.04%)、10月は3万2732.95ドルで終え、13.95%の上昇(同プラス14.07%)でした。2022年1月4日の最高値(3万6799.65ドル)からは9.93%下落しました。2022年第4四半期の過去3ヵ月では15.39%上昇(同プラス16.01%)、2022年は8.78%の下落(同マイナス6.86%)でした。

主なポイント

 ○S&P500指数はサンタクロースを迎えることなく2022年を終えました。サンタクロースどころか、慈悲深き者は一人も現れることがありませんでした(ただし、7月には9.11%上昇しました。緊急事態には登場していたはずです)。S&P500指数は12月に5.90%下落しましたが、11月に5.38%上昇、10月に8.80%上昇しており、その結果、2022年第4四半期のリターンは7.08%の上昇と、3ヵ月ベースでは年間で最も高いリターンとなりました(9月は9.34%下落、8月は4.24%下落)。残念ながら7.08%の上昇は、1月から9月までの24.77%の下落分を埋め合わせるには程遠い水準で、リターンは通年で19.44%の下落となりました。これに対して2021年は26.89%の上昇でした(2年間では2.36%上昇)。

  ⇒12月は11セクターすべてが下落しました。公益事業のパフォーマンスが最も高く、下落率は0.77%にとどまりました。一方、パフォーマンスが最も悪かったのは一般消費財セクターで月間の下落率は11.31%となりました。

  ⇒2022年通年では、エネルギーセクターのみがプラスのリターンをつけ、59.05%上昇しました(ちなみに公益事業は配当込みのトータルリターンがプラス1.57%と、小幅ながらプラスとなりました)。パフォーマンスが最も悪いセクターはコミュニケーションサービスで、40.42%の下落でした。情報技術セクターは2022年に28.91%下落し、指数の下落の約44%を占めました。

  ⇒12月は値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を大幅に上回りました。値上がり銘柄数は僅か84銘柄(うち5%以上上昇した銘柄は12銘柄、10%以上上昇した銘柄数はゼロ)にとどまり、値下がり銘柄数は418銘柄となりました(5%以上下落した銘柄が236銘柄、10%以上下落した銘柄は81銘柄)。2022年通年でも、値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を大幅に上回りました。値上がり銘柄数は139銘柄(10%以上上昇したのは93銘柄、20%以上上昇したのは53銘柄でした)、値下がり銘柄数は363銘柄となりました(10%以上下落した銘柄は283銘柄、20%以上下落した銘柄は204銘柄でした)。また、2022年は11セクターのうち10セクターが下落しました(エネルギーが59.05%上昇した一方で、コミュニケーションサービスは40.42%下落し、騰落率の差が99%ポイントとなりました)。

  ⇒市場全体で見ると、S&P500指数の時価総額は12月に2兆1560億ドル減少しました(12月末時点の時価総額は32兆1330億ドル)。11月は1兆7360億ドル増加しました。2022年通年では8兆2240億ドル減少しましたが、コロナ危機前の最高値を記録した2020年2月19日との比較では 4兆690億ドル増加しました。

 ○人員削減の動きが急拡大しました。飲料食品メーカーのペプシコ、投資銀行のモルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス・グループ、バンク・オブ・アメリカ、半導体メーカーのマイクロン・テクノロジーが人員削減とコスト削減計画を発表しました(11月にはアマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズ、ツイッターなどが同様の発表を行いました)。

 ○銘柄数で97%、時価総額で98%に相当する企業が決算発表を終えました。2022年第3四半期の利益は予想を上回り(とはいえ好調とは言えません)、事前のウィスパーナンバー(アナリストによる非公式の業績予想)より大幅に良好な水準となっています。決算発表を終えた486銘柄中の335銘柄(68.9%)で営業利益が予想を上回り、485銘柄中342銘柄(70.5%)で売上高が予想を上回り、売上高は過去最高を更新する見通しです(販売数量の増加ではなく、販売価格の上昇によるものとみられます)。

  ⇒2022年第3四半期の営業利益は前期比8.0%増、前年同期比では2.7%減となる見通しです。

  ⇒売上高は過去最高を記録した前期(第2四半期)から3.5%増加、前年同期比13.0%増が見込まれ、過去最高を更新する見通しです。

  ⇒2022年第3四半期中に株式数の減少によってEPSが大きく押し上げられた発表済みの銘柄の割合は、2022年第2四半期の19.8%に対して21.6%となりました。この割合は2021年第3四半期では7.4%でした。(2019年第3四半期は22.8%)。

  ⇒2022年第3四半期の営業利益率は第2四半期の10.86%から上昇して11.34%となる見通しです(1993年以降の平均は8.26%、過去最高は2021年第2四半期の13.54%)。

 ○S&P500 指数の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)の12月の平均値は1.58%となり、11月の1.61%から低下しました(10月は2.14%)。2022年通年では平均1.84%(11月末時点では1.86%)となりました。2021年は0.97%、2020年は1.51%、2019年は0.85%(2018年は1.21%、2017年は1962年以降で最低となる0.51%)でした。

利回り、金利、コモディティ

 ○米国10年国債利回りは、11月末の3.61%から3.88%に上昇して月末を迎えました(2021年末は1.51%、2020年末は0.92%、2019年末は1.92%、2018年末は2.69%、2017年末は2.41%)。30年国債利回りは、11月末の3.75%から3.97%に上昇して取引を終えました(同1.91%、同1.65%、同2.30%、同3.02%、同3.05%)。

 ○英ポンドは11月末の1ポンド=1.2056ドルから1.2099ドルに上昇し(同1.3525ドル、同1.3673ドル、同1.3253ドル、同1.2754ドル、同1.3498ドル)、ユーロは11月末の1ユーロ=1.0409ドルから1.0703ドルに上昇しました(同1.1379ドル、同1.2182ドル、同1.1172ドル、同1.1461ドル、同1.2000ドル)。円は11月末の1ドル=138.05円から132.21円に上昇し(同115.08円、同103.24円、同108.76円、同109.58円、同112.68円)、人民元は11月末の1ドル=7.0925元から6.9683元に上昇しました(同6.3599元、同6.6994元、同6.9633元、同6.8785元、同6.5030元)。

 ○12月末の原油価格は、11月末の1バレル=80.45ドルから横ばいの同80.45ドル(2022年に同130.50ドルまで上昇しました)、2022年の上昇率は7.0%(2021年末は同75.40ドル)となりました。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は2022年に5.1%下落しました(12月末は1ガロン=3.203ドル、11月末は同3.649ドル、2021年末は同3.375ドル)。2020年末から原油価格は66.2%上昇し(2020年末は1バレル=48.42ドル)、ガソリン価格は37.5%上昇しました(2020年末は1ガロン=2.330ドル)。

  ⇒EIAは2021年のガソリン価格の内訳について、53.6%が原油、16.4%が連邦税および州税、15.6%が販売・マーケティング費、そして14.4%が精製コストと利益だと説明しています。

 ○金価格は11月末の1トロイオンス=1783.10ドルから上昇して1829.80ドルで月の取引を終えました(2021年末は1829.80ドル、2020年末は1901.60ドル、2019年末は1520.00ドル、2018年末は1284.70ドル、2017年末は1305.00ドル)。

 ○VIX恐怖指数は11月末の20.58から21.67に上昇して月を終えました。月中の最高は25.84、最低は18.95でした(2021年末は17.22、2020年末は22.75、2019年末は13.78、2018年末は16.12、2017年末は11.05)。

  ⇒同指数の2021年の最高は37.51、最低は14.10でした。

  ⇒同指数の2020年の最高は85.47、最低は11.75でした。

新型コロナウイルスとサル痘

 ○サル痘の感染拡大ペースは引き続き鈍化しており、(米国では)感染拡大に歯止めがかかったと判断されています。米疾病対策センター(CDC)によると、現時点で米国内では2万9740人の感染が確認されています(11月時点では2万9325人、10月時点では2万8302人)。世界全体の感染者数は8万3424人(同8万2999人、同8万1225人)となっています。

 ○報道によると、中国では(ゼロコロナ政策からの方針転換により)旅行や社会活動に対する制限緩和を実施して以降、新型コロナウイルスの感染が急拡大しています。今後も感染拡大が続くようであれば(中国国民の多くはワクチン未接種。また、中国製ワクチンの効果は他のワクチンに比べて低い)、製造業や物流に悪影響が及ぶ可能性があり、懸念が強まりました。

  ⇒中国は(コロナ対策としての各種規制の緩和措置の一環として)自国民の海外渡航制限の緩和を開始しました。一方、一部の国(米国、インド、日本)は中国人の入国に対し、検査による陰性証明を義務付けることにしました。

 ○新型コロナウイルス関連データ:

  ⇒新型コロナウイルスによる世界全体の累計死者数は、668万人となりました(11月末時点は663万人)。

  ⇒新型コロナウイルスの累計感染者数は1億人となりました(同9870万人)。

  ⇒米国の新型コロナウイルスによる累計死者数は109万人となりました(同108万人)。

  ⇒新規感染者数の7日間平均は12月末時点で7万509人となり、11月末時点の4万2451人から増加しました。新規感染者数の7日間平均は2022年1月11日に141万7493人に達しました(2021年11月末時点では8万3120人)。また、死者数の7日間平均は413人に減少しました(11月末時点は285人)。

<後編>へ続く
 


配信元: みんかぶ株式コラム

みんかぶおすすめ