■アイ・エス・ビー<9702>の今後の見通し
2.中期経営計画について
(1) 中期経営計画の概要
2021年12月期からスタートした「ISBグループ中期経営計画2023」では、方針として「新しい一歩~move up further~」を掲げた。「新たなグループ価値の創出」に向け、今までの50年間の進化と新たな領域への挑戦により、より多くの顧客にソリューションを提供できる企業を目指していく。
業績目標については、後述する3つの重点戦略を推進することによって2023年12月期に売上高300億円、営業利益24億円、営業利益率8.0%を目指す。2020年12月期から売上高で1.23倍、営業利益で1.46倍の水準となる。年平均成長率で見れば売上高で7.1%成長、営業利益で13.4%成長となる見通しだ。事業環境の前提として、コロナ禍の影響で企業のIT投資意欲は短期的に弱含むものの、5Gやモビリティサービス、DX関連の領域では投資意欲が旺盛で、分野によって強弱感が出てくるものと見ている。このため、業界全体では1ケタ台前半の成長率で推移したとしても、同社はそれを上回る成長を目指していく。なお、M&Aについても引き続き成長戦略の1つとして考えているが、今回の業績計画の中には織り込んでいない。弊社では、5Gやモビリティサービスなど今後の成長領域においては、同社の高い技術開発力やノウハウが生かされるものと考えており、市場環境が前提よりも悪化しなければ業績目標値は十分達成可能な水準だと見ている。
(2) 重点戦略
中期経営計画の重点戦略として、「顧客開拓、有望分野の拡大」「ソリューション事業の創出」「グループ経営強化」の3点を掲げている。
a) 顧客開拓、有望分野の拡大
同社は今後3年間で新規顧客の開拓に注力していく方針を掲げている。3年間で開拓した新規顧客の売上高を最終年度で75億円とし(初年度の2021年12月期は17億円)、全売上高の25%まで引き上げることを目標とした。
新規顧客の開拓施策として、ソリューション提案強化のための部門を新設したほか、営業ツールの活用による受注機会の増加に取り組んでいる。同社はソリューション提案を強化するため、2021年より営業部と併設する格好でソリューション営業統括部を新設した。営業部では新規顧客の獲得やイベント企画・プロモーションなどを主に行い、ソリューション営業統括部では顧客ニーズや市場動向の分析、顧客課題解決のための提案を行っていく。今後、5Gやモビリティサービスなど先進的なICTの利活用が進むなかにおいて、ターゲットとなる見込み顧客もメーカーやサービス事業者など多岐にわたることが想定され、技術力をベースとした提案営業を行うことで多様なニーズに対応し、新規顧客の獲得につなげていく戦略だ。また、営業ツールとしてはマッチングサービスを2021年より本格的に活用し始めたほか、Webサイトの充実やインバウンドセールスの強化を進めており、新規受注案件の獲得機会を増やしている。
有望分野の拡大では、今後の市場成長が見込まれる「5G関連」「車載」「モビリティサービス」「医療」「業務サービス」の5分野に注力し、これら5分野の売上構成比を2021年12月期見込みの20%から、最終年度に30%まで引き上げることを目標とした。売上高に換算すると90億円前後を目指しているものと見られる。同社はこれまで培ってきた技術やノウハウ、実績などを生かして、これら有望分野の事業規模を拡大していくと同時に、人材育成(先端技術やシステム設計、プロジェクト管理)も強化していくことで、2024年12月期以降の成長にもつなげていく考えだ。特に、無線通信分野では、次世代の6G技術の世界進出に向けて日本電信電話(NTT)<9432>と日本電気(NEC)<6701>が共同開発プロジェクトを2020年に立ち上げており、成長期待は大きい。同社は無線通信分野の開発を得意とし、NECとの取引関係も長いだけに、研究開発が進めば同分野における開発業務が増加するものと期待される。
b) ソリューション事業の創出
ソリューション事業の創出にも注力していく。顧客ニーズを捉えたFAE(フィールドアプリケーションエンジニア)による技術提案営業を積極的に進め、プライム事業など高付加価値業務の受注を拡大していく。また、プロダクトソリューションでは顧客ニーズに合わせたプロダクトの機能追加・改善を継続的に実施し、導入件数を拡大していく。売上高比率は2021年12月期の約18%から、2023年12月期は約20%と漸増となるが、グループ内の技術・ナレッジを結集することで、売上高がさらに伸びる可能性は十分にある。
c) グループ経営強化
前中期経営計画から継続する重点戦略として、グループ経営の強化に取り組んでいく。具体的には、オフショア・ニアショア活用の推進による稼働率の最適化やコスト競争力の向上、人材交流による技術・ノウハウの共有、得意分野での連携拡大などを進めていく。また、各地域拠点での受注拡大にも取り組んでいく。
ベトナムのオフショア拠点に関してはグループ内受注が90%前後となっているが、子会社単独でも独自で受注が取れるようにするため、80%を目安に置いている。またニアショア拠点についても、全体では首都圏等からの受注が20%程度だが、まだ活用が進んでいない子会社もあり、こうした会社で比率を引き上げていくことになる。
また、グループ管理業務の効率化も引き続き推進していく。全社的なIT化の推進によりグループ会社の管理業務を一元化することで、コスト低減を図っていく。また、働き方改革を推進するため、テレワーク制度等の整備(テレワーク実施率は40%)や、評価制度の充実、コミュニケーションの活性化、全国各地の優秀な技術者の確保・育成に取り組んでいる。
(3) サスティナビリティ経営推進への取り組み
同社は事業活動を通じた社会課題解決のため、ESG経営及びSDGsへの取り組みについても推進している。2021年に入って社長の若尾一史(わかお かずふみ)氏によるタウンホール・ミーティングを開催し、グループ理念体系などにつき、グループ各社の従業員へ主旨や想いを伝え、浸透を図っている。また、事業活動とESG/SDGsとの関係性の把握や、周知並びに理解促進を図るため、社内に専門チームを作って推進活動を開始している。今後、取り組むべき課題の把握や、目標・施策などを策定していく予定にしている。
なお、SDGsに対する取り組みについて見ると、「情報通信インフラの高度化」に対しては、モバイルインフラや通信機器の開発業務を行うことによって、5G関連市場の拡大を支援している。「安心・安全・快適な移動」に対しては、車載、モビリティサービス分野の開発業務に取り組むことで、貢献していくことになる。また、「医療のIT化」に対しては、医療情報分野(AI、クラウド等)での開発業務への取り組みを推進している。そのほか、今後もIT社会の基盤構築に欠かせない重要な技術や製品・サービスの開発・提供、並びに次世代で必須となるような新技術・サービス、ソリューションの創出に取り組むことで、社会課題の解決に貢献していく考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2.中期経営計画について
(1) 中期経営計画の概要
2021年12月期からスタートした「ISBグループ中期経営計画2023」では、方針として「新しい一歩~move up further~」を掲げた。「新たなグループ価値の創出」に向け、今までの50年間の進化と新たな領域への挑戦により、より多くの顧客にソリューションを提供できる企業を目指していく。
業績目標については、後述する3つの重点戦略を推進することによって2023年12月期に売上高300億円、営業利益24億円、営業利益率8.0%を目指す。2020年12月期から売上高で1.23倍、営業利益で1.46倍の水準となる。年平均成長率で見れば売上高で7.1%成長、営業利益で13.4%成長となる見通しだ。事業環境の前提として、コロナ禍の影響で企業のIT投資意欲は短期的に弱含むものの、5Gやモビリティサービス、DX関連の領域では投資意欲が旺盛で、分野によって強弱感が出てくるものと見ている。このため、業界全体では1ケタ台前半の成長率で推移したとしても、同社はそれを上回る成長を目指していく。なお、M&Aについても引き続き成長戦略の1つとして考えているが、今回の業績計画の中には織り込んでいない。弊社では、5Gやモビリティサービスなど今後の成長領域においては、同社の高い技術開発力やノウハウが生かされるものと考えており、市場環境が前提よりも悪化しなければ業績目標値は十分達成可能な水準だと見ている。
(2) 重点戦略
中期経営計画の重点戦略として、「顧客開拓、有望分野の拡大」「ソリューション事業の創出」「グループ経営強化」の3点を掲げている。
a) 顧客開拓、有望分野の拡大
同社は今後3年間で新規顧客の開拓に注力していく方針を掲げている。3年間で開拓した新規顧客の売上高を最終年度で75億円とし(初年度の2021年12月期は17億円)、全売上高の25%まで引き上げることを目標とした。
新規顧客の開拓施策として、ソリューション提案強化のための部門を新設したほか、営業ツールの活用による受注機会の増加に取り組んでいる。同社はソリューション提案を強化するため、2021年より営業部と併設する格好でソリューション営業統括部を新設した。営業部では新規顧客の獲得やイベント企画・プロモーションなどを主に行い、ソリューション営業統括部では顧客ニーズや市場動向の分析、顧客課題解決のための提案を行っていく。今後、5Gやモビリティサービスなど先進的なICTの利活用が進むなかにおいて、ターゲットとなる見込み顧客もメーカーやサービス事業者など多岐にわたることが想定され、技術力をベースとした提案営業を行うことで多様なニーズに対応し、新規顧客の獲得につなげていく戦略だ。また、営業ツールとしてはマッチングサービスを2021年より本格的に活用し始めたほか、Webサイトの充実やインバウンドセールスの強化を進めており、新規受注案件の獲得機会を増やしている。
有望分野の拡大では、今後の市場成長が見込まれる「5G関連」「車載」「モビリティサービス」「医療」「業務サービス」の5分野に注力し、これら5分野の売上構成比を2021年12月期見込みの20%から、最終年度に30%まで引き上げることを目標とした。売上高に換算すると90億円前後を目指しているものと見られる。同社はこれまで培ってきた技術やノウハウ、実績などを生かして、これら有望分野の事業規模を拡大していくと同時に、人材育成(先端技術やシステム設計、プロジェクト管理)も強化していくことで、2024年12月期以降の成長にもつなげていく考えだ。特に、無線通信分野では、次世代の6G技術の世界進出に向けて日本電信電話(NTT)<9432>と日本電気(NEC)<6701>が共同開発プロジェクトを2020年に立ち上げており、成長期待は大きい。同社は無線通信分野の開発を得意とし、NECとの取引関係も長いだけに、研究開発が進めば同分野における開発業務が増加するものと期待される。
b) ソリューション事業の創出
ソリューション事業の創出にも注力していく。顧客ニーズを捉えたFAE(フィールドアプリケーションエンジニア)による技術提案営業を積極的に進め、プライム事業など高付加価値業務の受注を拡大していく。また、プロダクトソリューションでは顧客ニーズに合わせたプロダクトの機能追加・改善を継続的に実施し、導入件数を拡大していく。売上高比率は2021年12月期の約18%から、2023年12月期は約20%と漸増となるが、グループ内の技術・ナレッジを結集することで、売上高がさらに伸びる可能性は十分にある。
c) グループ経営強化
前中期経営計画から継続する重点戦略として、グループ経営の強化に取り組んでいく。具体的には、オフショア・ニアショア活用の推進による稼働率の最適化やコスト競争力の向上、人材交流による技術・ノウハウの共有、得意分野での連携拡大などを進めていく。また、各地域拠点での受注拡大にも取り組んでいく。
ベトナムのオフショア拠点に関してはグループ内受注が90%前後となっているが、子会社単独でも独自で受注が取れるようにするため、80%を目安に置いている。またニアショア拠点についても、全体では首都圏等からの受注が20%程度だが、まだ活用が進んでいない子会社もあり、こうした会社で比率を引き上げていくことになる。
また、グループ管理業務の効率化も引き続き推進していく。全社的なIT化の推進によりグループ会社の管理業務を一元化することで、コスト低減を図っていく。また、働き方改革を推進するため、テレワーク制度等の整備(テレワーク実施率は40%)や、評価制度の充実、コミュニケーションの活性化、全国各地の優秀な技術者の確保・育成に取り組んでいる。
(3) サスティナビリティ経営推進への取り組み
同社は事業活動を通じた社会課題解決のため、ESG経営及びSDGsへの取り組みについても推進している。2021年に入って社長の若尾一史(わかお かずふみ)氏によるタウンホール・ミーティングを開催し、グループ理念体系などにつき、グループ各社の従業員へ主旨や想いを伝え、浸透を図っている。また、事業活動とESG/SDGsとの関係性の把握や、周知並びに理解促進を図るため、社内に専門チームを作って推進活動を開始している。今後、取り組むべき課題の把握や、目標・施策などを策定していく予定にしている。
なお、SDGsに対する取り組みについて見ると、「情報通信インフラの高度化」に対しては、モバイルインフラや通信機器の開発業務を行うことによって、5G関連市場の拡大を支援している。「安心・安全・快適な移動」に対しては、車載、モビリティサービス分野の開発業務に取り組むことで、貢献していくことになる。また、「医療のIT化」に対しては、医療情報分野(AI、クラウド等)での開発業務への取り組みを推進している。そのほか、今後もIT社会の基盤構築に欠かせない重要な技術や製品・サービスの開発・提供、並びに次世代で必須となるような新技術・サービス、ソリューションの創出に取り組むことで、社会課題の解決に貢献していく考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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