日豪共同連携の強化【実業之日本フォーラム】

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最新投稿日時:2021/06/22 09:35 - 「日豪共同連携の強化【実業之日本フォーラム】」(フィスコ)

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日豪共同連携の強化【実業之日本フォーラム】

配信元:フィスコ
投稿:2021/06/22 09:35
2021年6月9日、茂木敏充外務大臣、岸信夫防衛大臣、マリズ・ペイン・オーストラリア連邦外務大臣及びピーター・ダットン・オーストラリア連邦国防大臣は、日豪外務・防衛閣僚協議(「2プラス2」)をテレビ会議方式で実施した。日本と豪州の「2プラス2」は、2007年以来9回目である。日本は現在まで、米国をはじめ英国、フランス、ロシア、インドなど8カ国と「2プラス2」を実施しているが、オーストラリアとは、米国に次ぐ頻度で「2プラス2」を開催している。

両国は、インド太平洋地域の安全保障環境が厳しさを増しているなか、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、基本的価値観と戦略的利益を共有する「特別な戦略的パートナー」として相互の協力の深化を確認した。4大臣は、東シナ海情勢、南シナ海情勢への深刻な懸念と中国海警法施行に対する懸念を表明した。さらに、台湾海峡の平和と安定が重要であること、両岸問題の平和的解決を促すことで一致している。安全保障・防衛協力については、日豪部隊間の相互運用性を強化し、空中給油を含め自衛隊と豪州軍による複雑かつ高度な演習への取組みの進展を確認した。また、経済安全保障上の課題、サイバー空間に関する問題、宇宙空間の持続的かつ安定的な利用等の宇宙分野の安全保障についても日豪間の協力を確認した。

4大臣は「日豪円滑化協定」の戦略的重要性についても再確認し、早期の署名への取組みの加速化で一致した。外務省によると、「日豪円滑化協定」は、自衛隊及び豪州軍の相互訪問に関し、行政的、政策的および法的手続きを改善するために必要な内容を規定するものだという。日本とアメリカの間には安全保障条約が締結されているのに対し、オーストラリアとは同様の条約は締結されていない。そのため、「日米地位協定」の内容とは大きく異なるが、日豪軍がそれぞれの国への入国に際し、武器持ち込み、税制、司法等を対象に両軍の活動に対する法的手続きなどの枠組を定めることは、日豪間の安全保障関係が日米間に次ぐ強固な関係となることが期待できる。

2017年1月、日本は、既にオーストラリアとACSA(物品または役務の相互提供協定)を締結している。ACSAとは後方支援の一環として、自衛隊と他国の軍隊間で物資や役務を融通しあう協定であり、食料、燃料、輸送、宿泊、通信、弾薬など相互に提供することができる。国連平和維持活動、大規模災害発生時の国際援助活動及び共同訓練実施時に適用され、これにより、両軍の連携強化が期待できる。なお、わが国は、米国、豪州、英国と協定の締結が、フランス、カナダ、インドとは協定への署名が完了している。

今回の「2プラス2」では、自衛隊法95条の2に係る自衛官による豪州軍の武器等の防護任務の実施について合意し、今後、豪州軍からの要請を踏まえ、同条に基づき警護任務を実施することを確認した。「武器等防護の武器使用」については2016年の安全保障法に基づき米軍に対して実施されており、豪州軍が2カ国目となる。武器等防護とは、「自衛隊の武器、弾薬、船舶、航空機、車両、有線電気通信設備、無線設備または液体燃料を職務上警護するに当たり、人または武器等を防護するため必要であると認める相当の理由がある場合には合理的に必要と判断される限度で武器が使用できる」という規定である。

米軍等に対しては、自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動(共同訓練を含み、現に戦闘行為が行われるものを除く。)に従事している場合に限定され、実施状況は定期的に公表されるという制限が設けられている。岸防衛大臣は、6月9日の定例記者会見において「自衛隊法95条の2の運用に関する指針においては、外国の軍隊等から警護要請があった場合に、原則として、国家安全保障会議(NSC)において審議し、防衛大臣が実施の判断をすることとされているので、豪州軍からの要請に際して手続きをとることになる」と今後の実施の手続きを確認している。

2020年10月、ピューリサーチセンターのグローバル・アティチュード調査において、オーストラリアでは、「中国を好ましくない」とする回答は81%に上り、前年から24ポイント上昇している。日本においても前年とほぼ同等の86%が否定的と回答している。権威主義的な言動や力による現状変更に対する嫌悪や脅威の現れであろう。岸防衛大臣は、前述の記者会見で「東シナ海、南シナ海を巡って、国連海洋法条約と整合しない中国の一方的な海洋権益主張と活動に反対する。日豪防衛協力は、もはや二国間に限らず、インド太平洋地域の平和と安定に一層積極的に貢献する必要がある」と述べている。

日豪両国は、「自由と民主主義、基本的人権、法の支配」という基本的価値観と「自由で開かれたインド太平洋構想」という戦略認識を共有している。中国の強硬な海洋進出を牽制する枠組みとして日米豪印のQUADへの期待が高まりつつある。4か国の中で、オーストラリアは、2019年度の輸出総額の3割強を中国が占める等中国の存在感が高い。QUADの結束を強めるには、広がりつつある中豪関係を不可逆的なものとする必要があり、日豪の連携強化が果たす役割は大きいであろう。


サンタフェ総研上席研究員 將司 覚
防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。P-3C操縦士、飛行隊長、航空隊司令歴任、国連PKO訓練参加、カンボジアPKO参加、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動教訓収集参加。米国海軍勲功章受賞。2011年退官後、大手自動車メーカー海外危機管理支援業務従事。2020年から現職。

写真:代表撮影/ロイター/アフロ

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