[資源・新興国通貨1/13~17の展望] 豪中銀の利下げ観測が高まる
豪ドル
“RBA(豪中銀)が2月4日の次回会合で利下げするとの観測”が市場で高まっています。豪州で2019年に発生した大規模な森林火災が景気に悪影響を及ぼすおそれがあるうえ、雇用の先行指標である求人広告件数が大幅に減少したためです。12月のANZ求人広告件数(インターネット&新聞。12/2発表)は前月比マイナス6.7%、前年比マイナス18.8%。前月比で7カ月ぶり、前年比で2009年10月以来の大幅減でした。
中東情勢をめぐる懸念が後退したことは豪ドルにとってプラス材料ですが、一方でRBAの利下げ観測が高まっている状況では豪ドルは上値も重い展開になりそうです。
NZドル
豪ドルと同様、中東情勢をめぐる懸念の後退は、NZドルにとってプラス材料です。14日、NZの2019年10-12月期のNZIER(NZ経済研究所)企業信頼感指数が発表されます。市場では、RBNZ(NZ中銀)は政策金利を当面据え置くとの見方が有力ななか、企業信頼感指数が前回のマイナス40から改善した場合、政策金利の据え置き観測が一段と高まり、NZドルは堅調に推移しそうです。
カナダドル
10日、カナダの12月雇用統計が発表されます。ポロズBOC(カナダ中銀)総裁は9日に「最近の雇用創出(ペース)の減速が持続するかどうかを注視する」と語っており、雇用情勢はBOCの金融政策における重要な判断材料となりそうです。本稿執筆時点で結果は判明していませんが、雇用統計が堅調な結果になった場合、市場で根強いBOCの利下げ観測が後退してカナダドルの上昇材料になりそうです。原油価格(米WTI先物)のほか、カナダドル/円については米ドル/円の影響も受けますが、それらも底堅く推移すれば、カナダドル/円は84.360円(2019/4/17高値)を超える可能性があります。
トルコリラ
中東情勢をめぐる懸念が後退したことを受け、トルコリラは今週(1/6- )対米ドルや対円で反発しました。一方で、トルコによるS400(ロシア製地対空ミサイルシステム)導入問題、リビアやシリア情勢などのリラ安につながりかねない要因は残存しています。それらに関して新たなニュースが出てくれば、リラの地合いは変化する可能性があり、要注意です。
16日、TCMB(トルコ中銀)が政策金利を発表します。市場の見方は“据え置き”と“利下げ”で分かれているうえ、利下げ幅の予想も割れています。そのため、政策金利がどのような結果になったとしても、トルコリラが反応する可能性があります。
南アフリカランド
中東情勢をめぐる懸念の後退は、新興国通貨である南アフリカランドにとってプラス材料です。一方で、南アフリカの2019年11月製造業生産は前年比3.6%減と、6カ月連続でマイナスを記録。また、エスコム(国営電力会社)は計画停電を行っています(少なくとも1/10まで)。それらは南アフリカの景気低迷が続くことを示唆しています。市場の関心が南アフリカ景気に向かえば、ランドは弱含む可能性があります。
1月16日のSARB(南アフリカ中銀)会合では、政策金利の6.50%への据え置きが決定されそうです。SARBの利下げ観測が市場であるなか、会合後に行われるクガニャゴ総裁の会見でSARBの金融政策の先行きについて新たな手掛かりが提供されるのかどうかに注目です。利下げ観測が高まる場合、ランドは下押し圧力が加わる可能性があります。
メキシコペソ
メキシコペソは今週(1/6- )、対米ドルや対円で約8カ月ぶりの高値を記録しました。中東情勢をめぐる懸念が後退したことでリスク回避の動きが緩和し、ペソの支援材料となりました。
9日、メキシコの12月CPI(消費者物価指数)が発表されました。結果は前年比+2.83%と、上昇率は2016年8月以来、3年4カ月ぶりの低さを記録し、BOM(メキシコ中銀)のインフレ目標である+3%からさらに下方へ遠ざかりました。メキシコの景気低迷やCPI上昇率の鈍化を背景に、BOMは、2019年12月19日の前回会合まで4回連続で利下げを実施。CPI上昇率のさらなる鈍化は、BOMに追加利下げを促す要因となり得ます。
一方で、メキシコでは今月(1月)から1日当たりの最低賃金が20%引き上げられました。賃金の上昇によってインフレ圧力が再び強まりかねないことをBOMは懸念しており、利下げのハードルはこれまでよりも高くなりそうです。BOMの現在の政策金利は7.25%、次回会合は2月13日です。
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