■会社概要
2. 事業内容
不二精機<6400>事業は精密金型事業と精密成形品事業に分類され、2018年12月期における売上高は、精密金型事業が2,364百万円(構成比38.5%)、精密成形品事業が3,784百万円(同61.5%)となっている。同様に事業別営業利益では精密金型事業が193百万円(構成比46.8%)、売上高営業利益率8.2%、精密成形品事業が220百万円(同53.2%)、営業利益率5.8%となっている。
(1) 精密金型事業
同社の祖業である精密金型事業は、「精密金型の不二精機」のブランディングを前面に掲げ、ハイサイクル、多数個取り、長寿命な精密成形用金型に特化する形で事業展開してきた。その代表的な製品がCD用プラスチックケース向け精密金型並びに周辺機器を組み合わせた成形システムの拡大である。CDについては1979年にソニー<6758>とフィリップスが共同開発を進め、1982年にCDの生産が開始されていたが、同社は発売当初よりCDケース用精密金型に関わっており、1984年にはCD研究開発用精密金型、CDケース用金型も開発し、1995年にはCDプラスチックケース用精密金型の量産タイプを開発、ホットランナー用温度コントローラー、自動組立装置、自動梱包装置、ハイサイクル用取り出しロボットなどの周辺装置と組み合わせた成形システムとして輸出販売も開始するなどにより事業の急拡大を図った。実際、単純な形に見える「ディスクケース」成形であるが、大量生産製品は自動組み立てラインで製造され、成形品の外寸誤差が5ミクロンを超えると、ラインが停止する。そのためにミクロン精度の金型が必要となる。しかも低コスト化のために、ハイサイクル(1回の成形時間が短い)、多数個取り(1回の成形サイクルで多数の製品を成形)技術、さらには長寿命でメンテナンスコストも軽減できる金型が必須となり、圧倒的な成形品のコストダウンのために同技術を得意とした同社の精密金型システムの採用が広がり、2000年12月には台湾のRitekからCD-Rの精密金型システムの大型受注を獲得、金額にして56億円規模にも上り、当時の同社売上高の50%を占める状況にもなっていた。このような環境で、薄型CDケース用精密金型では90%程度のシェアを獲得することとなり、同社の精密金型事業は大きく成長した。しかし光ディスク全般について、音楽の世界ではアップルが2001年にデジタルオーディオiPodを発売、その後、2007年には初代iPhoneの登場、PCやTV録画においてもHDDの普及などで光ディスク需要が減退、急速に情報関連向け精密金型の市場が縮小することとなる。
同社はこのような環境下、超精密、ハイサイクル、多数個取りの金型技術を他業界に生かすべく、1997年9月には、現在の主力となる注射器用精密金型を開発した。その後、シャーレ、点滴用品、ダイアライザーなどの医療分野へ大きく舵取りを変化させた。2018年12月期、食品・医療機器関連精密金型の売上高は1,262百万円、構成比率は53.4%と同事業の50%超を占めている。
(2) 精密成形品事業
精密成形品事業は精密金型で培ったノウハウを生かすため、2001年1月にタイにTHAI FUJI SEIKI Co.,LTD.を設立したところから始まる。同年9月には中国の生産拠点として上海に、2002年3月には蘇州と、相次いで精密成形品の生産拠点を設けた。スタート時点の成形品の中心はCDケース、デジカメのオートフォーカスレンズ鏡筒部品が中心で、特に蘇州工場においてはフィリップスの新たなCDケース規格のSUPER JEWEL BOXを独占供給するために20億円を投じ大型射出成形機ラインを導入、2004年12月期は一気に売上高5,729百万円まで拡大した。しかしその後、この新規格品が拡大することはなく、しかも2005年には原油価格の高騰で高い原材料を使用していたために急速に業績が悪化、2009年には製造打ち切りとなり、2009年12月期に精密成形品事業はピーク時半減の2,903百万円まで落ち込むこととなった。この後、蘇州では2010年より大型射出成形機の遊休設備対策としてサムスン向けにFPD用導光板成形品を手掛けたものの収益性は厳しく、2014年には富優技研(維爾京)股フン有限公司にすべてを譲渡して撤退するという大きな授業料を払う結果となった。利益面でも償却負担、原材料高などの影響で、同事業全体の足を大きく引っ張る形となり、同事業の収益は蘇州撤退時の2014年12月期まで安定しなかった。
一方では、非情報関連の拡大を目指し、長期的に安定した需要が見込める分野として、自動車関連事業をターゲットとした。きっかけとなったのがタイで、納入していた精密金型の技術力が評価され、ISO/TS 169498(品質マネジメントシステム:自動車生産及び関連サービス部品、組織のISO9001:2009適用に関する固有要求事項)を取得し、本田技研工業<7267>系のケーヒン<7251>に2輪車向けインジェクター(エンジンとスロットルボディやキャブレターと接続する樹脂製パーツ)成形品を納入したことが始まりとなった。その後、住友電装(株)向けにワイヤーハーネスの留め具なども供給するようになり、日系自動車部品現地法人向け中心に4輪向けにも安全保安部品などの小物自動車部品成形品が拡大していった。2018年12月期の同事業の売上高3,784百万円の中で、2輪・自動車関連部品成形品は2,504百万円、同部門の66.2%を占めるまでになっている。また同部門の収益力が安定してきたのは、蘇州からの撤退に加え、先行投資負担が大きかったインドネシア子会社が2016年12月期に営業黒字化したことが寄与している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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2. 事業内容
不二精機<6400>事業は精密金型事業と精密成形品事業に分類され、2018年12月期における売上高は、精密金型事業が2,364百万円(構成比38.5%)、精密成形品事業が3,784百万円(同61.5%)となっている。同様に事業別営業利益では精密金型事業が193百万円(構成比46.8%)、売上高営業利益率8.2%、精密成形品事業が220百万円(同53.2%)、営業利益率5.8%となっている。
(1) 精密金型事業
同社の祖業である精密金型事業は、「精密金型の不二精機」のブランディングを前面に掲げ、ハイサイクル、多数個取り、長寿命な精密成形用金型に特化する形で事業展開してきた。その代表的な製品がCD用プラスチックケース向け精密金型並びに周辺機器を組み合わせた成形システムの拡大である。CDについては1979年にソニー<6758>とフィリップスが共同開発を進め、1982年にCDの生産が開始されていたが、同社は発売当初よりCDケース用精密金型に関わっており、1984年にはCD研究開発用精密金型、CDケース用金型も開発し、1995年にはCDプラスチックケース用精密金型の量産タイプを開発、ホットランナー用温度コントローラー、自動組立装置、自動梱包装置、ハイサイクル用取り出しロボットなどの周辺装置と組み合わせた成形システムとして輸出販売も開始するなどにより事業の急拡大を図った。実際、単純な形に見える「ディスクケース」成形であるが、大量生産製品は自動組み立てラインで製造され、成形品の外寸誤差が5ミクロンを超えると、ラインが停止する。そのためにミクロン精度の金型が必要となる。しかも低コスト化のために、ハイサイクル(1回の成形時間が短い)、多数個取り(1回の成形サイクルで多数の製品を成形)技術、さらには長寿命でメンテナンスコストも軽減できる金型が必須となり、圧倒的な成形品のコストダウンのために同技術を得意とした同社の精密金型システムの採用が広がり、2000年12月には台湾のRitekからCD-Rの精密金型システムの大型受注を獲得、金額にして56億円規模にも上り、当時の同社売上高の50%を占める状況にもなっていた。このような環境で、薄型CDケース用精密金型では90%程度のシェアを獲得することとなり、同社の精密金型事業は大きく成長した。しかし光ディスク全般について、音楽の世界ではアップル
同社はこのような環境下、超精密、ハイサイクル、多数個取りの金型技術を他業界に生かすべく、1997年9月には、現在の主力となる注射器用精密金型を開発した。その後、シャーレ、点滴用品、ダイアライザーなどの医療分野へ大きく舵取りを変化させた。2018年12月期、食品・医療機器関連精密金型の売上高は1,262百万円、構成比率は53.4%と同事業の50%超を占めている。
(2) 精密成形品事業
精密成形品事業は精密金型で培ったノウハウを生かすため、2001年1月にタイにTHAI FUJI SEIKI Co.,LTD.を設立したところから始まる。同年9月には中国の生産拠点として上海に、2002年3月には蘇州と、相次いで精密成形品の生産拠点を設けた。スタート時点の成形品の中心はCDケース、デジカメのオートフォーカスレンズ鏡筒部品が中心で、特に蘇州工場においてはフィリップスの新たなCDケース規格のSUPER JEWEL BOXを独占供給するために20億円を投じ大型射出成形機ラインを導入、2004年12月期は一気に売上高5,729百万円まで拡大した。しかしその後、この新規格品が拡大することはなく、しかも2005年には原油価格の高騰で高い原材料を使用していたために急速に業績が悪化、2009年には製造打ち切りとなり、2009年12月期に精密成形品事業はピーク時半減の2,903百万円まで落ち込むこととなった。この後、蘇州では2010年より大型射出成形機の遊休設備対策としてサムスン向けにFPD用導光板成形品を手掛けたものの収益性は厳しく、2014年には富優技研(維爾京)股フン有限公司にすべてを譲渡して撤退するという大きな授業料を払う結果となった。利益面でも償却負担、原材料高などの影響で、同事業全体の足を大きく引っ張る形となり、同事業の収益は蘇州撤退時の2014年12月期まで安定しなかった。
一方では、非情報関連の拡大を目指し、長期的に安定した需要が見込める分野として、自動車関連事業をターゲットとした。きっかけとなったのがタイで、納入していた精密金型の技術力が評価され、ISO/TS 169498(品質マネジメントシステム:自動車生産及び関連サービス部品、組織のISO9001:2009適用に関する固有要求事項)を取得し、本田技研工業<7267>系のケーヒン<7251>に2輪車向けインジェクター(エンジンとスロットルボディやキャブレターと接続する樹脂製パーツ)成形品を納入したことが始まりとなった。その後、住友電装(株)向けにワイヤーハーネスの留め具なども供給するようになり、日系自動車部品現地法人向け中心に4輪向けにも安全保安部品などの小物自動車部品成形品が拡大していった。2018年12月期の同事業の売上高3,784百万円の中で、2輪・自動車関連部品成形品は2,504百万円、同部門の66.2%を占めるまでになっている。また同部門の収益力が安定してきたのは、蘇州からの撤退に加え、先行投資負担が大きかったインドネシア子会社が2016年12月期に営業黒字化したことが寄与している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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