■APAMAN<8889>の今後の見通し
2.成長戦略
(1)Sharing economy事業
民泊サービスについては2018年6月15日の住宅宿泊事業法(民泊新法)施行によって本格的にスタートしている。ただ、最大マーケットである都心部では民泊新法に基づく届け出受理件数が低調な滑り出しとなっている。新宿区や世田谷区など大半の自治体で、住宅エリアでの営業を週末のみに限定する条例が決定したことされたことや、民泊新法では年間営業日数の上限が180日に設定されたことに加えて、行政での受付体制がまだ十分整備されていないこともボトルネックになっていると見られる。都心部では、家賃相場が高いこともあり、民泊物件に転換するメリットが薄まっていることから、ワンルームよりも大人数で利用できる戸建物件等が増える可能性があるほか、営業日数制限のない旅館業法を用いた民泊物件が拡大していくものと予想される。一方、地方都市では家賃相場が低いこともあり、民泊新法による営業でも十分採算が取れる見込みで、今後、民泊物件が増えていくものと予想される。
同社では民泊物件5,000室で稼働率50%(年収200万円)を前提に、売上高100億円を当面の目標としている。同社の強みは、全国47都道府県で約20万人の取引不動産オーナーを抱えており、希望するオーナーの物件を取り扱うことが可能なこと、また、地方自治体とのネットワークも広く、遊休施設の民泊への転用プロジェクトも多く、こうした物件も今後増加すると予想され、多種多様な民泊施設を利用者に提供していくことが可能なことにある。今後は他社サイトだけでなく自社で専用サイトも開設し、集客を図っていく戦略で、2019年9月期以降の収益貢献が期待される。
(2)コワーキング事業
コワーキング事業では国内外で100拠点、うち直営で50拠点(1拠点当たり年収2億円)、売上高100億円を目標としている。拠点数は2017年9月期末の10拠点から直近はほぼ2倍の21拠点となっている。2018年9月期の売上規模としては拠点数の拡大もあって、前期の約2億円から3-4億円程度まで伸びる可能性がある。ただ、設備機器などの償却負担など先行投資費用が継続すること、新規開設拠点の稼働率がまだ低いことから、利益貢献は早くても2019年9月期の下期以降となる見通しだ。同社では当面は既存拠点での収益化を優先して取り組んでいく方針となっているため、新拠点の開設予定はないが、良い条件の案件があれば開設する可能性はある。国内ではスタートアップ企業の増加によりレンタルオフィス需要の拡大により、競争も激しくなることが予想されるが、同社はスタートアップ企業への支援プログラムの充実やイベント開催などサービス面での差別化を図っていくこと、また、地方自治体との連携を強化し、官民共働型施設の運営も展開していくことで、同事業を拡大していく戦略となる。官民共働型施設に関しては福岡県で「FUKUOKA growth next」(福岡市)、「COMPASS小倉」(北九州市)の2施設を運営支援をしているほか、東京都八王子市で「多摩ものづくり型創業支援施設整備補助事業」により、「fabbit八王子」を運営している。
(3)Share Cycle事業、Parking事業
Share Cycle事業では、設置台数10万台(1台当たり年収10万円)で売上高100億円を目標としている。今後も取引不動産オーナーや様々な企業、自治体などと協業しながら設置台数を拡大していく戦略となっている。
一方、Parking事業では、駐車場台数3万台(1台当たり年収33万円)で売上高100億円を目標としている。ここ最近は自動車市場についてもシェアリングサービスが拡大しており、特に、都心部においてはその動きが顕著となっている。このため、取引不動産オーナーの保有する物件においても空きスペースが増えており、こうした駐車場をコインパーキングとして活用していくことで、同事業を拡大していく戦略となる。稼働率向上のため「軒先パーキング」とのシステム連携も図っており、今後は新たにグループに加わったプレストサービスの駐車場も含めて拡大が期待される。
(4)Platform事業
Platform事業については引き続き店舗当たりの収益力向上を最優先に取り組んでいく方針で、店舗数拡大については次のステップとして考えている。直営店事業についての収益力向上施策としては、付帯商品・サービスの拡充を進めていくほか、店舗への集客力向上施策として、お部屋探しサイト「apamanshop.com」の利便性向上やSNSを使った物件検索サービス、ITを活用した接客サービス、外国人向け通訳サービスといった各種施策を継続して取り組んでいく。また、生産性向上施策として、前述したRPAツールの導入を進めていく。
PM事業では引き続き賃貸管理戸数の積み上げを進めていくほか、入居率の向上や各種サービスの内製化に伴う原価低減施策に取り組んでいく。管理戸数についてはプレストサービスが加わることで約8.7万戸に拡大したが、今後も年間数%ペースで積み上げていく考えだ。営業戦略としては、前期途中から地方銀行などからの紹介ルートを強化しており、効果的に管理戸数を伸ばしていく戦略に方針転換している。
(5)Cloud technology事業
Cloud technology事業では引き続き革新的なサービスを開発し、直営店での導入を経てFC店にもサービス提供し、収益拡大を進めていく戦略となっている。現在は、紹介CLOUDや来店CLOUD、査定CLOUDなど店舗で活用するクラウドサービスが中心で、これらサービスを活用することによって店舗の収益力向上が見込まれている。また。今後は「Docusign」やスマートロックなど不動産オーナーや入居者の利便性向上につながるサービスについても積極的に展開していく方針となっている。
このうち、「Docusign」(米DocuSign Inc.)は不動産オーナー向け付帯サービスとして、2017年7月より導入を開始している。同社の賃貸管理業務総合支援システム(APS)とドキュサインを連携し、APS上で作成した業務関連の書類等を不動産オーナーにインターネットを介して送信し、ネット上で署名をもらうシステムとなる。従来は、FAXでの送受信が主流であったが、電子化することでペーパレス化が可能となりコスト削減が進むほか、生産性向上も期待できる。賃貸契約の署名はまだ法律上できないが、日々の管理業務に関する手続きは同サービスを利用していくことになる。将来的に、賃貸契約書の電子署名も可能となればさらにコスト低減が期待できることになる。同社では今後、FC店舗へも「Docusign」のサービスを提供していく考えだ。
また、スマートロックについては現在、開発企業である(株)tsumugと共同で実証実験を行っており、2019年9月期からサービスを開始する予定となっている。キーユニットに3G/LTE、ブルートゥースモジュール等の無線通信モジュールを内蔵し、スマートフォン等のアプリを使って施・解錠するシステムで、最大5名までのキーシェアリングや、一時的にキーを発行し解錠ができるワンタイムキー発行機能も備えている。これらの機能を使うことによって、入居者は誰が入退室したかアプリを通じて遠隔で確認できるほか、民泊用物件での利用も可能となる。同社では、シェアリングキーにすることによって、内見業務の効率化が図れるほか、付加価値サービスの提供によって賃貸物件の価値向上にもつながると見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2.成長戦略
(1)Sharing economy事業
民泊サービスについては2018年6月15日の住宅宿泊事業法(民泊新法)施行によって本格的にスタートしている。ただ、最大マーケットである都心部では民泊新法に基づく届け出受理件数が低調な滑り出しとなっている。新宿区や世田谷区など大半の自治体で、住宅エリアでの営業を週末のみに限定する条例が決定したことされたことや、民泊新法では年間営業日数の上限が180日に設定されたことに加えて、行政での受付体制がまだ十分整備されていないこともボトルネックになっていると見られる。都心部では、家賃相場が高いこともあり、民泊物件に転換するメリットが薄まっていることから、ワンルームよりも大人数で利用できる戸建物件等が増える可能性があるほか、営業日数制限のない旅館業法を用いた民泊物件が拡大していくものと予想される。一方、地方都市では家賃相場が低いこともあり、民泊新法による営業でも十分採算が取れる見込みで、今後、民泊物件が増えていくものと予想される。
同社では民泊物件5,000室で稼働率50%(年収200万円)を前提に、売上高100億円を当面の目標としている。同社の強みは、全国47都道府県で約20万人の取引不動産オーナーを抱えており、希望するオーナーの物件を取り扱うことが可能なこと、また、地方自治体とのネットワークも広く、遊休施設の民泊への転用プロジェクトも多く、こうした物件も今後増加すると予想され、多種多様な民泊施設を利用者に提供していくことが可能なことにある。今後は他社サイトだけでなく自社で専用サイトも開設し、集客を図っていく戦略で、2019年9月期以降の収益貢献が期待される。
(2)コワーキング事業
コワーキング事業では国内外で100拠点、うち直営で50拠点(1拠点当たり年収2億円)、売上高100億円を目標としている。拠点数は2017年9月期末の10拠点から直近はほぼ2倍の21拠点となっている。2018年9月期の売上規模としては拠点数の拡大もあって、前期の約2億円から3-4億円程度まで伸びる可能性がある。ただ、設備機器などの償却負担など先行投資費用が継続すること、新規開設拠点の稼働率がまだ低いことから、利益貢献は早くても2019年9月期の下期以降となる見通しだ。同社では当面は既存拠点での収益化を優先して取り組んでいく方針となっているため、新拠点の開設予定はないが、良い条件の案件があれば開設する可能性はある。国内ではスタートアップ企業の増加によりレンタルオフィス需要の拡大により、競争も激しくなることが予想されるが、同社はスタートアップ企業への支援プログラムの充実やイベント開催などサービス面での差別化を図っていくこと、また、地方自治体との連携を強化し、官民共働型施設の運営も展開していくことで、同事業を拡大していく戦略となる。官民共働型施設に関しては福岡県で「FUKUOKA growth next」(福岡市)、「COMPASS小倉」(北九州市)の2施設を運営支援をしているほか、東京都八王子市で「多摩ものづくり型創業支援施設整備補助事業」により、「fabbit八王子」を運営している。
(3)Share Cycle事業、Parking事業
Share Cycle事業では、設置台数10万台(1台当たり年収10万円)で売上高100億円を目標としている。今後も取引不動産オーナーや様々な企業、自治体などと協業しながら設置台数を拡大していく戦略となっている。
一方、Parking事業では、駐車場台数3万台(1台当たり年収33万円)で売上高100億円を目標としている。ここ最近は自動車市場についてもシェアリングサービスが拡大しており、特に、都心部においてはその動きが顕著となっている。このため、取引不動産オーナーの保有する物件においても空きスペースが増えており、こうした駐車場をコインパーキングとして活用していくことで、同事業を拡大していく戦略となる。稼働率向上のため「軒先パーキング」とのシステム連携も図っており、今後は新たにグループに加わったプレストサービスの駐車場も含めて拡大が期待される。
(4)Platform事業
Platform事業については引き続き店舗当たりの収益力向上を最優先に取り組んでいく方針で、店舗数拡大については次のステップとして考えている。直営店事業についての収益力向上施策としては、付帯商品・サービスの拡充を進めていくほか、店舗への集客力向上施策として、お部屋探しサイト「apamanshop.com」の利便性向上やSNSを使った物件検索サービス、ITを活用した接客サービス、外国人向け通訳サービスといった各種施策を継続して取り組んでいく。また、生産性向上施策として、前述したRPAツールの導入を進めていく。
PM事業では引き続き賃貸管理戸数の積み上げを進めていくほか、入居率の向上や各種サービスの内製化に伴う原価低減施策に取り組んでいく。管理戸数についてはプレストサービスが加わることで約8.7万戸に拡大したが、今後も年間数%ペースで積み上げていく考えだ。営業戦略としては、前期途中から地方銀行などからの紹介ルートを強化しており、効果的に管理戸数を伸ばしていく戦略に方針転換している。
(5)Cloud technology事業
Cloud technology事業では引き続き革新的なサービスを開発し、直営店での導入を経てFC店にもサービス提供し、収益拡大を進めていく戦略となっている。現在は、紹介CLOUDや来店CLOUD、査定CLOUDなど店舗で活用するクラウドサービスが中心で、これらサービスを活用することによって店舗の収益力向上が見込まれている。また。今後は「Docusign」やスマートロックなど不動産オーナーや入居者の利便性向上につながるサービスについても積極的に展開していく方針となっている。
このうち、「Docusign」(米DocuSign Inc.)は不動産オーナー向け付帯サービスとして、2017年7月より導入を開始している。同社の賃貸管理業務総合支援システム(APS)とドキュサインを連携し、APS上で作成した業務関連の書類等を不動産オーナーにインターネットを介して送信し、ネット上で署名をもらうシステムとなる。従来は、FAXでの送受信が主流であったが、電子化することでペーパレス化が可能となりコスト削減が進むほか、生産性向上も期待できる。賃貸契約の署名はまだ法律上できないが、日々の管理業務に関する手続きは同サービスを利用していくことになる。将来的に、賃貸契約書の電子署名も可能となればさらにコスト低減が期待できることになる。同社では今後、FC店舗へも「Docusign」のサービスを提供していく考えだ。
また、スマートロックについては現在、開発企業である(株)tsumugと共同で実証実験を行っており、2019年9月期からサービスを開始する予定となっている。キーユニットに3G/LTE、ブルートゥースモジュール等の無線通信モジュールを内蔵し、スマートフォン等のアプリを使って施・解錠するシステムで、最大5名までのキーシェアリングや、一時的にキーを発行し解錠ができるワンタイムキー発行機能も備えている。これらの機能を使うことによって、入居者は誰が入退室したかアプリを通じて遠隔で確認できるほか、民泊用物件での利用も可能となる。同社では、シェアリングキーにすることによって、内見業務の効率化が図れるほか、付加価値サービスの提供によって賃貸物件の価値向上にもつながると見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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