2016年6月1日時点での主要市場見通し

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最新投稿日時:2016/06/02 11:25 - 「2016年6月1日時点での主要市場見通し」(みんかぶ株式コラム)

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2016年6月1日時点での主要市場見通し

著者:馬渕 治好
投稿:2016/06/02 11:25

花の一里塚~市場見通しサマリー

2016年6月1日時点での主要市場見通し

 
主要見通し
 

基本シナリオと見通し数値について

 世界市場は、引き続き、1~2月の下振れ(いたずらな悲観論の台頭による)から脱却の流れにあると考える。年央(6~7月辺り)までは、こうした明るい動きが基調となろう。ただし、6~7月は、日銀や米連銀の金融政策を巡る思惑や、英国のEU離脱についての国民投票などが、短期的な波乱を引き起こす可能性は高い。とは言っても、述べたような明るい流れを阻害するようなものにはなるまい。 年後半は、米大統領選挙を 11月に控えて、米国内の政治的不透明感の高まりや、円高思惑の広がり、日本株の参院選挙後の材料息切れなどが懸念材料として控えているため、内外の株価や外貨相場は、やや弱含みの展開になると見込まれる。

 具体的な予想レンジについては、上記のような全体展望は前号(5月号)と変わらないが、6月末までの予想レンジは、残された時間が短くなったことに応じて、予想レンジを狭める。

 年後半(7~12月)の予想レンジは、前半の修正に応じて微調整するにとどめる。繰り返しになるが、大きなシナリオ(7月頃までは日本株高・外貨高気味だが、年末にかけて再度調整する)に変更はない。

 2016年 6月までの予想レンジについて、前月号(5/2(月)時点)から、下記の修正を行なった(下線太字部は変更箇所)。

日経平均株価(円) 15500~19500 ⇒ 1650019000
10年国債利回り(%) -0.1~0.4 ⇒ -0.150.3
米ドル(対円) 105~115 ⇒ 107~115
ユーロ(対円) 120~135 ⇒ 120~130
豪ドル(対円) 80~95 ⇒ 80~90

 2016年 12月までの予想レンジについては、前月号(5/2(月)時点)から、下記の修正を行なった(下線太字部は変更箇所)。

日経平均株価(円) 18000~22000 ⇒ 18000~21000
10年国債利回り(%) -0.1~0.5 ⇒ 変更なし
米ドル(対円) 112~125 ⇒ 変更なし
ユーロ(対円) 125~145 ⇒ 120~145
豪ドル(対円) 80~100 ⇒変更なし

シナリオの背景

・世界経済は、力強くはないが、中国経済の悪化も限定的なもので、中国の景気減速にかかわらず世界経済は緩やかな持ち直し基調にある、という経済環境認識に、変わりはない。そのため、今年1~2月の世界市場波乱は、市場心理が悲観的に振れ過ぎた、株価と外貨(対円相場)の売られ過ぎであり、現在はそこからの持ち直し過程にあるという見解を維持する。

・市場心理の振れ過ぎとは、もう少し詳細にみると、1月は新興国中心の懸念(エネルギー価格下落による、産油国経済・財政の悪化や、中国経済の失速懸念など)、2月は先進国中心の懸念(米国経済の減速やゼロ金利の復活説、ドイツ銀行の経営不安など)であった。(図表1)、(図表2)に示されているように、実際の株価動向(※1)は、ロシア、ブラジルが1月に、日米欧が2月に底入れし、その後は概ね持ち直しに向かっている。
 
※1 株価指数を日本円に換算しているため、それぞれの国の株価動向と為替相場動向を、合わせてみている。
 
(図表1)
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(図表2)
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・インドについては、経済・政治の安定感から、先進国と似た株価・通貨の動きとなっており、先進国と同様、2月の方が株価が安い。中国は、景気が失速に向かってはいないものの減速が続いていることから、株価は底這いを続けている。

・なお、話が脇にそれるが、直近の日本株の位置をみると、図表で取り上げた6か国および1地域(ユーロ圏)のなかでは、中国に次ぐ低位置にある。これまで述べてきたような世界の懸念要因は、ことごとく日本以外からのものであるのに、この株価不振である。その背景要因は、次のようにいくつか考えられる。

1)日本株の売買高における外国人投資家の比率が高く、日本国内で何らの悪材料がなくても、世界的な不安から全般的に株価が下落するとの懸念が広がると、グローバルな投資家が世界の株式をまんべんなく売ることとなる。その際、日本では国内投資家が独自の相場観から買い向かうことが少ないため、海外投資家の売りを日本だけが十分に吸収できず、株価の下落が大きくなってしまう。

2)日本については、米ドル円相場に対し、株価の反応が過敏である。これは、日本の主力株にグローバル企業が多い、といった点もあるが、過去に「円高=株安」という相関関係が高かったため、それに基づいたプログラム売買が、円高の際に日本株全般(株価指数先物など)を売り込んでいるものと推察される。

・議論を、世界市場が1~2月の売られ過ぎを脱却しつつある、という話に戻すと、様々な市場を個別に長期的にみても、たとえば米国株式・債券市場においては、イールドレシオ(S&P500株価指数の予想PER×10年国債利回り)が、2008年 12月(リーマンショック)、2012年7月(スペイン財政危機)に続いて、今年2月に大きく低下した(図表3、187週のリズムを示しているが、今年2月のイールドレシオの底は、2/12に終わる週で、2週間だけずれている)。イールドレシオの低下は、米国経済に対する、市場における悲観論を示していると考えられる(企業収益の先行きに悲観となれば、足元の企業収益水準が高くても株価が売られてPERが下落し、景気悲観から長期金利も低下する)ため、今年2月のタイミングで過度の悲観が一巡し、楽観に向かい始めたとすれば、ちょうど良い頃合いであったと言える。

・また、国際商品市況で、白金の先物価格と金の先物価格の、価格差をとってみた(図表4)。この価格差が上下する理由として、景況感の浮沈が挙げられる。というのは、白金も金もともに貴金属ではあるが、金は用途の約8割が宝飾用で、工業用等産業関連の用途は15%程度とされている。これに対し白金は、宝飾品需要は全体の2割程度で、半分が自動車触媒用、1/4がその他産業用とされており、白金の方が一般的な景気動向に価格が左右されやすい。したがって、商品先物市場における世界的な景況観を反映して、グラフが上下していると推察できる。

(図表3)
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(図表4)
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・すると驚くべきことに、(図表4)のグラフの底は、(図表3)の米国のイールドレシオの底と、ほぼタイミングが一致している。すなわち、米イールドレシオも、白金と金の価格差も、ともに、現在は景気悲観論からの脱却過程の初期にあたる、という可能性を示唆していると言える。


・こうした緩やかだが明るい流れが、長期的に継続すると見込むが、6~7月は短期的な波乱要因が多いものの基調は明るく、その後、7月以降は、半年程度の株価・外貨の調整期にあたる恐れがある。ただし数年単位の流れは、株高・外貨高を見込む。すなわち、足元から7月頃までは、短期的な波乱を交えながらも株高・外貨高基調、そこから今年末ないし来年初めころまでは、株安・外貨安の調整色がにじむが、数年単位での大きな明るい流れを壊してしまうほどではない、という相場展望だ(日経平均株価で言えば、波乱含みながらも7月までに2万円超えとなるが、年末に 18000円程度に下押しし、2017年に再度上昇基調に復するというイメージ)。

・まず、6~7月の波乱要因としては、1)日銀の金融政策決定会合、2)米連銀のFOMC、3)英国のEU離脱を巡る国民投票、が挙げられる。

・日銀の当面の金融政策決定会合は、6/15(水)~6/16(木)と、7/28(木)~7/29(金)に開催される。一時に比べ対米ドルで円安に振れ戻り、多くの企業が収益計画の前提とする 110円前後の推移となっていることや、政府が消費増税の再延期を打ち出し、さらに他の経済政策を打ち出してくる構えになっていることから、日銀が追加緩和を急ぐ状況ではない。もちろん、市場動向が急変すればそれを受けての日銀の対応が見込まれるが、様々な策の手詰まり感が強まっているなか、あえて6~7月に追加緩和を打ち出す状況ではないだろう。

・ただし、引き続き一部の海外投資家のなかには、「予想もしないような策を打ち出してくるのではないか」との、根拠が薄い観測が根強い。こうした期待が外れることで、短期的に国内株価や米ドル円に売りが嵩み、波乱が生じる展開はありえよう。

・米FOMCは、6/14(火)~6/15(水)と7/26(火)~7/27(水)に開催される。一部の連銀高官から、6月利上げの可能性を示唆する発言が相次いだが、これは市場が6月はあり得ないと決め打ちしていた空気をけん制したもので、6月利上げの方針が決定されたわけではない。今後の経済統計や市場動向にもよるが、イエレン議長を筆頭に足元の状況を見極めようとの意向が強く、どちらかと言えば7月に0.25%の利上げが行なわれると見込む。

・連銀の利上げは、極めて慎重でタイミングを見極めたものであり、また利上げ幅も0.25%と小幅だ。したがって、利上げが実体経済や資金の流れをかき乱すようなものではない。しかし市場は、本来は波乱要因ではないものを波乱要因として上下に騒ぐことはあるので、連銀の金融政策が市場動向の大きな流れを変えてしまうことはないが、短期的な波乱はありうると懸念する。

・英国のEU離脱の可否を問う国民投票は、6/23(木)に実施される。世論調査によって、EU残留派と離脱派のどちらが優勢かが異なっており、結果は微妙な情勢だ。ただ、EU離脱という結果になった場合、もちろん英ポンドやユーロ等の欧州通貨、欧州株価などについては、相当の波乱が生じ、それが米ドル相場や日米等主要国の株価にもぶれを引き起こそうが、世界市場が大きな混乱に巻き込まれるとは考えていない。その理由をいくつか挙げると、次のようになる。

1)今年2月頃の、離脱論の台頭時に、市場は離脱の可能性を相当に織り込んでしまっている。たとえば英ポンド相場は、2月下旬に、対米ドルでは1ポンド 1.39米ドル割れで、底値を付けた様相だ。国民投票で離脱が決定し、再度 1.40米ドル水準を割り込んだとしても、大きく下回り続ける可能性は薄いと見込む。

2)国民投票で離脱が決定しても、すぐに離脱するわけではない。おそらく2年程度と言われる準備期間を経て、他欧州諸国との様々な取り決めを定め、その後離脱となる。

3)英国の離脱論の背景は、移民に対する拒否感情と、英国は金融業が基幹産業であるため、欧州大陸諸国の比較的厳しい金融業規制と歩を合わせたくない、という2点が主なものだ。したがって、英国としては、欧州大陸諸国との経済・金融面での結び付きは極力維持し、経済的なデメリットが出ないよう、準備期間における条件交渉を行なっていくだろう。もちろん、英国の好き放題にできるか、という点や、スコットランドはEU残留を希望しているため、スコットランドの英国からの離脱論が再燃する、という不安要因はあるが、英国のEU離脱が経済的な悲劇ではない、という点が知れ渡るにつれて、市場の不安も沈静化していこう。

・こうして、内外の多くの株価や外貨相場は、7月辺りにかけて、波乱含みながらも上値を探ってくると予想するが、そこから年末にかけては、不安要素が頭をもたげてくると懸念される。そうした不安要素とは、次の通り。

1)7月頃に向けて、連銀の利上げを消化して、米景気に対する楽観論が広がり、米株価が上昇していくと、それが米長期金利上昇を招くと予想される。米長期金利の動きが緩やかであればよいが、急速な長期債価格の下落(長期金利の跳ね上がり)が生じると、それが米国の景況感や米国株価・米ドル相場を、悪い方向に振り戻す恐れがある。

2)11月の米大統領・議会選挙に向けて、選挙のための米ドル高抑制発言(「米輸出製造業の雇用を守る」などの名目で)が繰り返されることで、米ドル安・円高が進むと懸念される。

3)日本では、7/10(日)が有力視される参議院選挙の後、安倍政権の経済政策への力の入れ方が緩むことが不安視される。それでも、秋頃には第二次補正予算の具体化が進むと見込まれるし、仮に経済政策を何も打ち出さなかったとしても、景気が一気に悪化するわけでもない。ただ、前回の安保関連法案の審議の際も、外国人投資家の間では、「経済政策に対して政府が手抜きになっていることを憂慮している」との意見が多かった。

・こうした諸点から、決して長期的な株安・外貨安を見込むわけではないが、年後半は、半年程度の調整相場を予想している。

以上、シナリオの背景。
このあと、前月号(2016年 5月号)見通しのレビュー。

前月号見通し(2016/5/2時点)のレビュー

日経平均株価
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日経平均株価は、予想レンジ下限手前で踏みとどまり、反転上昇を始めた。短期的な波乱を交えながらも、この後は持ち直し基調を持続すると見込む。ただし6月末までの残された時間で 19000円を大きく超えてくる可能性は低下したと考え、予想レンジを狭める。

②国内長期金利
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・国内長期金利は、引き続き低水準で推移している。日銀はすぐには追加緩和を行なう構えにはなく、さらなる長期金利低下は極めて限定的だと考える。

③外国為替相場
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・米ドルとユーロは、予想レンジ下限手前で踏みとどまった。今後は、日米欧の金融政策を巡る思惑や英国のEU離脱に関する国民投票などから、短期的な振れはあろうが、当面は外貨高・円安基調が続くと予想する。

・豪ドルは、豪州準備銀行の利下げを材料として、行き過ぎた金利先安観が広がり、予想レンジを小幅割り込んだ。しかし足元では、堅調な経済指標が豪州景気の実力を示し、徐々に対円で豪ドルは持ち直しの色合いを濃くし始めている。

・今後も、豪州に対する過度な悲観論が剥落し、先進諸国内での金利の高さや国債格付けの健全さが着目され、豪ドルは堅調な推移を続けると見込んでいる。

(以上)

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配信元: みんかぶ株式コラム

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