2016年4月1日時点での主要市場見通し

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最新投稿日時:2016/04/04 12:51 - 「2016年4月1日時点での主要市場見通し」(みんかぶ株式コラム)

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2016年4月1日時点での主要市場見通し

著者:馬渕 治好
投稿:2016/04/04 12:51

花の一里塚~市場見通しサマリー

2016年4月1日時点での主要市場見通し

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基本シナリオと見通し数値について

 大枠のシナリオに、これまでと変わりはない。世界経済の実態は目覚ましく良いわけではないが、悲観するほど悪くもない。こうしたなか、1~2月の波乱で、主要国の株価や通貨相場は売られ過ぎた。

 この年初来の波乱は、新興国中心の懸念(1月)と先進国中心の懸念(2月)が、それぞれ台頭した局面に分けられる。それぞれの局面を過ぎて、ほぼすべての主要国の株価は、正常水準への復帰を始めているが、日本株は出遅れた感がある。それは米ドル安・円高によるところが大きいと推察される。

 足元は、ちょっとした連銀の利上げに対する見通しのブレで、米ドル円相場は上下動を繰り返しているが、米国証券市場における景況感は改善を進めており、いずれ米ドル高へと押し出されていこう。それは、日本株について、株価上昇材料となるだろう。

 具体的な予想レンジの修正については、2016年6月までのレンジについて、予想期間が短くなった(残り3か月)ことを反映して、予想レンジを狭める。予想を変更する理由はこれだけであって、先行きの展望を変えたわけではない。

 2016年6月までの予想レンジについて、前月号(3/1(火)時点)から、下記の修正を行なった(下線太字部は変更箇所)。

日経平均株価(円) 15000~22000 ⇒ 1550021000
10年国債利回り(%) -0.1~0.4 ⇒ 変更なし
米ドル(対円) 112~125 ⇒ 112~123
ユーロ(対円) 120~140 ⇒ 123~140
豪ドル(対円) 78~100 ⇒ 82~100

2016年12月までの予想レンジについては、変更は一切ない。

シナリオの背景

・今年1~2月の世界市場の波乱は、2つの局面にわけて考えることができる。1つは1月に最も悪化した、新興諸国中心の懸念だ。具体的には、1)中国の経済に対する失速懸念や、同国の市場周りの政策に対する疑念(株式市場におけるサーキットブレーカーの導入と撤回、過度な元安政策を進めるのではないかとの心配)、2)原油価格の下落と、それによる産油国経済・財政悪化観測、および産油国が日本株などを大いに売却するとの見解、3)サウジアラビアとイランの国交断絶、シリア情勢の混迷、中東諸国などにおけるIS(いわゆる「イスラム国」)のテロの可能性などの、地政学的リスク、といったものであった。またブラジルの経済や政治の不安定化も、これに加わっただろう。

・続いての波乱は2月に起こった。これは先進国発の懸念であったと言える。具体的には、1)ドイツ銀行の社債償還に絡む経営懸念、2)英国のEU離脱観測の高まり(離脱を巡る国民投票自体は6月23日に実施)など、欧州政治に対する疑念、3)米国の一部経済指標の悪化やシェール業者の経営破たんなどによる、米景気のリセッション突入説の広がり(一時はゼロ金利への後戻りまでささやかれた)、といったところだ。

・そこで、BRICs4か国の株価の今年初来の推移をみると(図表1)(※1)、1月の安値にかけ、総じて下落した。その後は、景気懸念が強い中国株は下落気味の推移が続き、BRICsのなかでは経済が安定していて「先進国っぽい」インドは2月の方が株価・通貨が安いが、ブラジル・ロシアの動きは、新興国懸念が1月に峠を越したことを示している。

※1 この図では、株価指数は日本円に換算されている。すなわち、各国の株価の動きと通貨(対円)の動きを合わせてみていると言える。

(図表1)
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(図表2)
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・続いて、日米欧の株価の推移をみると(図表2、比較するため、図表1と縦軸の目盛を合わせている)、1月に新興諸国の懸念に「お付き合い」した後、2月にさらに深押しする展開となった。ただしその2月安値からは持ち直しに入っており、新興国に遅れて、先進国市場でも波乱が一巡したことがうかがえる。

・こうして2度の波乱を経てみると、直近(3/31(木)現在)の位置が前の2図で90を下回っているのは、他国と僅差とは言え日本と、大差がついて中国だけだ。特に最近の市場波乱をもたらした要因は、そのほとんどが海外発(日本発ではない)ことを踏まえると、日本株の体たらくは異常と言える。

・この日本の極度の売られ過ぎは、1)グローバルな投資家は、日本に何も悪い要因がなくても、世界的な市場の波乱が生じ、リスクを避ける場合や、顧客からの解約要求に応えて現金を用意しなければならない場合に、全般的に世界市場における株式保有を落とすが、日本の株式市場は外国人投資家の売買比率が高いため、そうした日本の経済実態とは何の関係もない売りを浴びた時に、株価が脆い、2)日本の株式市場は以前から「不安の問屋」であり、どこかの国で何かの懸念要因が生じると、そのたびに不安をせっせと仕入れて売られる傾向が、以前から強い(自信喪失状態)、といった面が挙げられる。加えて、対米ドルでの円高気味の推移が、影を落としている。

・とりわけ足元の国内株式市場は、米ドル円相場の上下をにらんで、右往左往している。たとえば4/1(金)朝に発表された日銀短観を受けて、同日の国内株価は大幅に下落した。その要因として、業況判断DIの悪化や、2016年度の設備投資計画の慎重さなどが指摘されているが、企業が2016年度の平均として前提としている米ドル円レートが、117.46円と、現状よりかなり円安になっていたことが大きかったと推察する。筆者は後述するように、今から米ドル高・円安が進むと予想しているので、2016年度平均が117円台になることはありうると考える。しかし、そう考えない多数の投資家にとっては、企業の為替の前提は甘く、今後は想定と比べた円高による企業収益等の下方修正が大いに生じるのではないか、との懸念が広がったのだろう。

・このように、他諸国の株価が、世界的な投資心理の好転などにより、既に売られ過ぎから正常水準への復帰を始めているなか、出遅れた日本株にとっての最後の重石は、米ドル相場(円高気味の推移)となっている。

・ただし、米国の経済実態は内需中心に堅調で、それを受けて、米国証券市場における景況感は改善を見せ始めている。

・週当たり雇用者総賃金の前年比をみると、リーマンショックにより大きく落ち込んだあとは、4%前後での安定した推移が続いている(図表3)。

(図表3)
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(図表4)
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 雇用者所得の安定した改善基調が、家計の個人消費や住宅投資を下支えし、米国経済の内需中心の回復をもたらしている。

・こうした景気回復を、米国の証券市場も正しく評価し始めている。イールドレシオ(=長期金利÷益回り=長期金利×PER)(図表4)(※2)は、米景気に対する悲観論が台頭すると、金利低下とPER縮小により、大きく低下する。近年では、リーマンショック直後(2008年)とスペイン財政懸念時(2012年)に底をつけた。この2時点間が187週空いているが、2012年の底から187週目が今年2月26日の週に相当していた。実際の最近のイールドレシオは、米国経済について、市場の見解が過度の悲観から正常な評価に戻りつつあることで、2/12(金)を底に上昇に転じている。市場の景況感が改善するには、絶好のタイミングであったと言えよう。

・こうして米国経済の内需中心の回復が継続し、それについての評価が米国の株式・債券市場で広がっていけば、米ドル相場も対円で明確な上昇軌道入りしておかしくないだろう。そうした米ドル円相場の動きは、日本株にもプラスに働きうる。

・ただし、日本自身の経済環境は、手放しで楽観できるような状況ではない。内需については、家計の心理(図表5)、企業の心理(図表6)ともに、はかばかしくはない。

※2 米10年国債利回りとS&P500指数の予想PERから算出。

(図表5)
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(図表6)
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(図表7)
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 春闘の賃上げ率も前年を下回る模様で、消費者の財布のひもは緩みにくいものと予想される。

・輸出についても、最近は前年比で減少基調にある(図表7)。この要因としては、1)中国などの景気減速、2)生産拠点の海外移転、3)日本が得意とする資本財(生産機械など)や電子部品等の不振(資本財は世界的な設備投資の減退で、電子部品はスマホ生産の伸び悩みで)、4)家電等を中心とした国際競争力の劣化、などが挙げられている。

・こうした日本の景気回復のもたつきから、企業収益見通しの下方修正が続いている。ただ、それを踏まえても、依然として日本株の水準は割安だ。

・ファクトセット社の集計による、TOPIXベース(すなわち東証一部全企業)の2016年(ここでは暦年)の一株当たり利益予想は、これまでの各アナリストの下方修正の結果、52週前比(=前年比)でわずか3.12%の伸びしか見込まれていない。暦年と年度の差はあるが、QUICK社のコンセンサス予想では、2016年度は経常利益が6.3%増、税引後利益が13.2%増とされており(※3)、それと比べてかなり慎重な数値であると言える。

(図表8)
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※3 税引後利益予想の方が伸びが高いのは、2015年度に計上された特別損失が剥げ落ちると見込まれていることによる。さらに、自社株買い戻しを行なう企業が多いことを踏まえると、仮にQUICKコンセンサスで一株当たり利益の伸びを計算すれば、一段と高くなると推察される。

・この、既に下方修正が十分に行われた後の一株当たり利益予想値を用いて、TOPIXベースの予想PERを計算すると(図表9)、安倍政権発足後のレンジ下限である13倍辺りまで、ようやく戻ったに過ぎない。

(図表9)
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・一方で国内では、足元の景気の軟調さから、景気対策期待が膨らんでいる。5/26(木)~5/27(金)の伊勢志摩サミットを前に、対策が取りまとめられるという観測が有力だ。内容としては、1)消費増税の再延期、2)2016年度当初予算を前倒し執行することで、年度後半に公共事業等が落ち込むことを埋めるための、補正予算、3)子育て支援や消費刺激策などが、想定される(このほか、インフラ輸出やインバウンド消費を支援する策も継続して追加されよう)。

・ただし、何かひとつ打ち出されれば、景気が目覚ましく良くなり、株価が暴騰する、といったような策はありえない。今後の国内株価上昇の本質は、売られ過ぎから正常状態への復帰であり、経済対策はそれに花を添える、といった程度に考えておくべきだろう。

以上、シナリオの背景。
このあと、前月号(2016年3月号)見通しのレビュー。

前月号見通し(2016/3/1時点)のレビュー

日経平均株価
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日経平均株価は、上値が重かったものの、底固く推移した。今後は時折の波乱はあろうが、おおむね予想レンジ上限に向かうような動きを予想している。

②国内長期金利
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・国内長期金利は日銀によって抑え込まれ、予想レンジ下限に張り付いて推移することが多かった。今後も基本的には低位での推移が続くと見込まれる。

③外国為替相場
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・米ドルは、米連銀の金融政策見通しに左右され、予想レンジ下限近辺で、頭が重い推移が続いた。

・一方、ユーロや豪ドルは、対米ドルのみならず対円でも、徐々に上値を模索する動きに移行したと言える。

・今後は米国の堅調な経済実態に沿って、米ドルの上昇が遅れてやってくる展開になると予想している。

(以上)

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配信元: みんかぶ株式コラム

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