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最新投稿日時:2015/12/03 12:06 - 「2015年12月1日時点での主要市場見通し」(みんかぶ株式コラム)

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2015年12月1日時点での主要市場見通し

著者:馬渕 治好
投稿:2015/12/03 12:06

花の一里塚~市場見通しサマリー

2015年12月1日時点での主要市場見通し

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基本シナリオと見通し数値について

2016年の投資環境は、極めてゆっくりと明るさを増そう、
~ただし日本株は年央髙、円相場は年後半ボックス推移

今号から、予想期間を2016年末までに延長した。

2016年の投資環境は、極めてゆっくりではあるが、改善を持続しよう。

日米共通に、外需製造業劣位、内需非製造業優位、というまだら模様を全般的にはらみながらも、雇用の改善などに支えられて、緩やかな景気回復基調にあると考える。欧州は、景気が低迷しながらも、一段と悪化するような状況にはない。新興諸国は、インドなど経済状況が比較的堅調な国と、ブラジル、ロシア、中国など状況が悪い国に分かれるが、全体として経済実態については、2016年は底固めの年となろう。

そうしたなか、世界の株価、外貨の対円相場、米国等の長期金利は、経済実態に沿った緩やかな上昇基調が2016年内は見込まれる。ただし、米国は米ドルの一段高を容認しがたい状況にあり、米ドルの対円での上値余地はほぼ120円台(最大129円超えまで)に限られ、年後半はボックス圏内での推移となろう。また日本の株価は、7月の参議院選挙までは概ね上昇基調をたどろうが、その後は2017年の消費増税への懸念もあって、勢いを失おう。

世界市場の大きなテーマとしては、経済実態面では、先進国優位、新興国劣位、という状況であるが、それを市場が十分に織り込んだ後、どこで先進国から新興国に物色が移行するか、という点であろう。そのタイミングは定かにはわからないし、それが起こるのはもしかすると2016年ではなく、さらに先かもしれない。

具体的な予想レンジの修正については、2015年12月までのレンジは、予想期間が短くなったことに対応して、レンジを狭めた。2016年6月までのレンジについては、国内長期金利、ユーロ、豪ドルを下方修正し、米ドルを微調整した。

具体的に、2015年12月までの予想レンジについて、下記の修正を行なった(下線太字部は変更箇所)。

日経平均株価(円) 18000~21000 ⇒ 19500~21000
10年国債利回り(%) 0.25~0.9 ⇒ 0.25~0.5
米ドル(対円) 115~127 ⇒ 120~127
ユーロ(対円) 130~145 ⇒ 127135
豪ドル(対円) 83~100 ⇒ 8595

2016年6月までの予想レンジについては、下記の修正を行なった(下線太字部は変更箇所)。

日経平均株価(円) 19000~23000 ⇒ 変更なし
10年国債利回り(%) 0.6~1.7 ⇒ 0.31.0
米ドル(対円) 110~130 ⇒ 115~130
ユーロ(対円) 135~160 ⇒ 127145
豪ドル(対円) 90~110 ⇒ 85105

シナリオの背景

世界全般としては、極めて緩やかではあるが、景気の持ち直しが見込まれる。IMF(国債通貨基金)の見通しによれば、先進国全般、新興国全般、共に、2016年の成長率は2015年から小幅だけ高まると予想されている(※1)(図表1)。

※1 IMF “World Economic Outlook”(2015年10月)によれば、実質経済成長率(2015年→2016年)は、世界全体:3.1%→3.6%、先進国:2.0%→2.2%、新興国:4.0%→4.5%。

(図表1)
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ただし、景気の改善は、国ごとに、また同じ国でも需要項目ごとに、一律ではなく、まだら模様の回復になると予想される。たとえばBRICs諸国をみれば、ロシア、ブラジルでは当面マイナス成長が見込まれており、中国は成長率が低下していくが、インドは堅調な経済成長が予想されている(※2)。

米国では、主要な経済指標の推移をみると(図表2)、厳冬の影響などで経済活動が落ち込んだ時期(図中の楕円)を除けば、小売売上高、自動車販売、住宅着工といった内需系の指標は堅調だが、輸出向け製品の生産減から、鉱工業生産に勢いがない。これは新興諸国市場の景気低迷や米ドル高の影響が大きいと推察されるが、このように内需非製造業優位、外需製造業劣位、といった図式がみられる。

これが製造業企業を中心に、賃金増や設備投資増に慎重な態度を強める結果となり、過去の景気回復期に比べ、賃金上昇や設備投資の勢いが鈍いという指摘を招いている。

こうした内需非製造業対外需製造業といった図式は、日本でも似通っている。円安にもかかわらず、日本からの輸出数量は足元減少が続いている(図表3)。また、日本企業は、賃上げや設備投資に、米国と同様に慎重な態度を崩していない。

※2 同IMF予想では、ロシア:-3.8%→-0.6%、ブラジル:-3.0%→-1.0%、中国:6.8%→6.3%、インド:7.3%→7.5%。

(図表2)
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(図表3)
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また、日米ともに、雇用が(決してとても強いとは言い難いが)失業率などで見る限り、そこそこの改善を続けていることが、個人消費を下支えしている点も、共通している。

ユーロ圏の経済は、実質経済成長率(前期比ベース)では2013年10~12月期からプラスに転じ、2015年1~3月期から1%台が定着するなど、じわじわと堅調さを増してきている。内部では、ドイツ経済と他国との成長率のばらつきがあるが、ECB(欧州中央銀行)は一段の金融緩和により、しっかりと景気を支えようとの姿勢を示している。

このように、世界経済は、様々な分野でのばらつきをはらみながらも、全般としては緩やかな回復基調を2016年はたどると見込まれる。とすれば、世界主要国の株価や外貨の対円相場、米国の長期金利等については、各国経済の回復に応じた緩やかな上昇基調が予想される。

ただし米ドルについては、たとえば購買力平価との乖離率でみると、1985年9月に米ドル高の修正に向けて主要国の協調がなされたプラザ合意の、直前の時期のように、20%以上米ドル高・円安に位置している(図表4)。

(図表4)
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米国は、2015年4月および10月に公表された、財務省半期為替報告書でも、日本やユーロ圏が過度に金融緩和に依存している(金融緩和による円安、ユーロ安に依存している)と指摘し、さらなる米ドル高に対して懸念を表明している。

まだ景気や金利等の日米格差が大きいため、現水準より米ドル高・円安が進む余地はあると見込むが、米国の米ドル高牽制姿勢が強まりそうななか、米ドル円相場が130円を超えることは難しく、2016年後半は、125円を中心としたボックス圏内での推移になると予想する。

ユーロと豪ドルについては、それぞれの通貨の下落材料(ユーロについては、景気のもたつきやECBの追加緩和、ギリシャ問題、パリでのテロ事件、フォルクスワーゲン社のスキャンダルなど、豪ドルについては、豪州から中国向け輸出の減少懸念など)は、十分市場の織り込まれていると想定される。このため、先行きの対円での通貨上昇率は、米ドルより両通貨がやや勝る(ユーロや豪ドルの対米ドル相場はやや上昇する)と見込んでいる。

日本株については、2016年は一直線の上昇基調は考えていない。企業業績は、全産業の連結経常利益について、2015年度(2016年3月期)はほぼ10%程度の増益、2016年度(2017年3月期)は10%に近い一桁の増益が、期待できるだろう。このため、日経平均株価は、22000~23000円の水準に、年央辺りには達することができると予想している。

この上昇相場の背景については、2016年7月の参議院選挙(場合によっては衆参ダブル選挙)に向けて、与党が経済政策に力を入れる(それが実際に景気にどの程度の効果を及ぼすかは別として)という点も挙げられる。

しかし参議院選挙を過ぎると、安倍政権の政策の比重が再度安全保障に向かう(経済政策が手抜きになる)可能性が懸念されるうえ、株式市場は、2017年4月の可能性が高い消費税率の引き上げ後の経済状況を、気にするようになってこよう。このため、2016年末の日経平均株価は2万円程度まで下押しする可能性が強いと見込んでいる。

こうした概況以外の注目点としては、世界の株式市況の大きな流れでは、これまで先進諸国の株価が比較的落ち着いた推移をみせるなか、中国株は一時のバブル的な無理な上昇のツケを払いつつあり、ロシアやブラジルの株価は低迷している(図表5)(※3)。こうした新興主要国の株価の不振は、それぞれの諸国の経済状況の不振を正しく表しているわけだが、悪材料はかなり織り込んだ、とも言える。

※3 図表5は、日本円に換算した値で描かれているので、それぞれの国の株価指数と通貨相場(対円)の両方を合わせてみていると考えられる。

(図表5)
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今後、新興諸国の経済状況が、著しい改善をみせなくとも悪化に歯止めがかかったとの見解が広がるようなことがあれば、投資資金がどこかの時点で先進国から新興国に移動する局面が生じると予想される。そこが世界的な投資資金の流れの大きな分岐点になる可能性があるが、それはすぐではないだろうし、もしかすると2017年以降のことになるかもしれない。

なお、これまで述べてきたシナリオに対するリスク(悪い方向のリスク)を4点挙げると、

1)先進諸国内におけるイスラム過激派の大規模テロや、
  シリアを巡る国際情勢の混迷、
2)中国の景気悪化の大幅な加速、
3)商品市況の低迷持続による、
  資源国の財政悪化や商品先物で運用しているファンドの破たん、
4)米国長期金利の急速な跳ね上がりやジャンク債市場の崩壊、

であろう。

以上、シナリオの背景。
このあと、前月号(2015年11月号)見通しのレビュー。

前月号見通し(2015/11/2時点)のレビュー

日経平均株価
zu①

・11月の日経平均株価は、レンジの下限にやや近い位置から上限に向かう動きをみせた。
2万円手前で重い動きとなったが、今後も2016年前半までは、国内株価は堅調な推移を続けるものと予想する。

②国内長期金利
zu②

・国内長期金利は、引き続き低水準で横に這った動きを続けている。この先も、日銀の大量購入による長期金利低迷は、極めて長く続くものと見込まれる。

③外国為替相場
zu③

・11月は、3通貨ともほぼレンジ内での推移となった。
・ただしユーロは、パリでの大規模テロの影響や、ECBの追加緩和思惑から、レンジ下限に絡む推移が多くなった。
・今後は3通貨とも、対円で上昇する余地を残していると見込んでいる。

(以上)

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配信元: みんかぶ株式コラム

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