外国人個人投資家の日本株ETF買いによる株式市場の上昇

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最新投稿日時:2015/09/03 11:39 - 「外国人個人投資家の日本株ETF買いによる株式市場の上昇」(みんかぶ株式コラム)

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外国人個人投資家の日本株ETF買いによる株式市場の上昇

著者:舞妓さん
投稿:2015/09/03 11:39

【概要】
 今年に入ってから、特に外国人個人投資家のETF(上場投資信託)による日本株の買いが注目されています。外国人個人投資家が好むETFは日本人投資家にはなじみがあまりない指数に連動したものが多いです。その組入比率は中小型株が少なく、超大型ではない中型寄りの大型株が多いという特徴があります。今年に入って、その組入比率が高い銘柄が上昇しやすいという傾向がしばしば見られました。この現象は個別企業の業績などのファンダメンタルとは全く関係ないものです。市場の上昇とは関係なく割安な銘柄が放置されたままになっていることも考えられます。魅力的な銘柄を安く買うチャンスが、まだ続いているとも見ることができるわけです。

【本文】
 市場が上昇すると「外国人投資家が日本株を買っている」といわれる場合がしばしばあります。確かに外国人投資家が買い越しになると市場は上昇する傾向にありますが、ひとくちに外国人投資家といってもさまざまな投資家がいます。そして、投資家によって日本株の買い方がさまざまです。今年に入ってから特に注目されているのがETFによる日本株の買いです。特に海外の個人投資家などが日本株を買うときに日本株を組み入れたETFを買うことが多いと言われています。

 ETFはTOPIX(東証株価指数)などの指数に連動するように、指数とまったく同じ銘柄を同じ組入比率でもっている場合がほとんどです。そのため、ETFによる日本株の買いの場合、その指数の組入銘柄が上昇しやすく、組み入れられていない銘柄は上昇しづらくなります。外国人投資家がよく買う日本株のETFは、TOPIXや日経平均株価など、日本人になじみが深いものよりも、MSCI Japan Indexなど世界各国共通のルールで作成された指数に連動するものが多いようです。TOPIXは東証1部上場の普通銘柄1,854銘柄*1がすべて組み入れられていますが、MSCI Japan Indexは314銘柄*2と少ないです。そのため、このようなETFの買いによって日本株市場が上昇するときは、これらの指数に大きく組み入れられている銘柄が特に上昇する傾向があります。

 図1は、横軸にTOPIXでの組入比率順位を、縦軸にはTOPIXおよびMSCI Japan Indexにその順位の銘柄が組み入れられている比率*3を示しています。TOPIXは時価総額に応じて組入比率が決まっていますので、順位が上位であるほど大型株です。図1は、MSCI Japan IndexはTOPIXに比べ、特に大型株を多く組み入れ、中小型株の組み入れが少ないことを示しています。つまり、外国人投資家によるETFを通じた日本株の買いが多いときは、中小型株はあまり上昇しないのに対し、大型株は大きく上昇しやすいことが分かります。今年に入って、大型株の方が上昇しやすいことが多かったのはこれも原因だと考えられています。これは、中小型株は割安なまま放置されているとも考えることができるので、今後上昇しやすいのは中小型株であるという見方もあります。

(図1)
zu1
出所:スパークス・アセット・マネジメント


 さて、最近特に注目されているETFとして、指数の変動をなるべく小さくする低リスク型があります。なるべく株価変動が小さい銘柄や、お互いに株価変動が逆になるような組み合わせの銘柄を組み入れることによって、指数の変動を小さくおさえようとするものです。代表的なものとして、MSCI Minimum Volatility Indexというものがあります。図2は、iShare MSCI EAFEMinimum Volatility ETFの設定来の運用残高の推移を示しています。このETFはMSCI EAFEMinimum Volatility Indexに連動します。この指数は米国とカナダを除く先進国の株式を組み入れた低リスク型の指数です。図2が示すように、このETFは残高を伸ばしており、特に今年に入ってから急激に伸びています。このような低リスク型ETFの組み入れ銘柄は非常に偏っているため、ごく一部の銘柄が突出して上昇するという現象が見られました。

(図2)
zu2
出所:スパークス・アセット・マネジメント

 図3は、TOPIXとMSCI Japan Minimum Volatility Indexの組入比率を比べたものです。MSCIJapan Minimum Volatility Indexは日本株のみを対象とした低リスク型指数で、組み入れ銘柄は155銘柄*4しかありません。図3が示すように、上位50から250位くらいまでのやや中型寄りの大型株の組入が非常に大きいです。一方で、それ以下の中小型株の組み入れはとても少なく、また、図4が示すように上位10位くらいまでの超大型株も組み入れが少なくなっています。

 この指数はMSCI Japan Indexの341銘柄からリスクが低い155銘柄を選んでいますが、重要なのは、選ばれた銘柄が時価総額に応じた比率ではなく、ほとんど同じ比率で組み入れられることです。MSCI Japan Indexは314銘柄しか組み入れていませんから、中小型株はもともと組み入れがないわけです。中小型株がない中から選んだ半分くらいの銘柄が、同じ比率で組み入れられるので、超大型株の組入比率はTOPIXでの比率より低くなり、中型よりの大型株の比率は高くなります。そのため、超大型でない中型寄りの大型株の組入比率だけが高くなるのです。

(図3)
zu3
出所:スパークス・アセット・マネジメント


(図4)
zu4
出所:スパークス・アセット・マネジメント

 MSCI Japan Minimum Volatility Indexのような低リスク型指数に連動するETFが買われると、中型寄りの大型株のみが上昇しやすいという、とても特殊なことが起きます。実際、今年に入ってから特殊なことが何度か起き、たまたま中型寄りの大型株の銘柄を持っていなかったアクティブファンドが苦戦するということが何度か見られました。

 しかし、この現象は個別企業の業績などのファンダメンタルとは全く関係ないものです。魅力的な個別銘柄を選んで買う投資家にとって、この現象は企業のファンダメンタルと関係ない要因での株価変動を起こすため、保有銘柄の株価は振るわないこともあり、苦しいものとなることもあります。しかし、市場の上昇とは関係なく割安な銘柄が放置されたままになっていることも考えられます。魅力的な銘柄を安く買うチャンスが、まだ続いているとも見ることができるわけです。

*1 2015年6月末現在。詳細は、
http://www.jpx.co.jp/markets/indices/topix/

*2 2015年6月末現在。詳細は、
https://www.msci.com/documents/10199/78a2d66c-74d6-422b-bb03-e54542d30152

*3 縦軸は小さい値付近を拡大して見やすくするために、log[組入比率(%)+1]とした。

*4 2015年6月末現在。詳細は、
https://www.msci.com/documents/10199/ab8bdecf-c465-4d6e-9388-67f5f7e49c22

図1:TOPIXとMSCI Japan Indexの組入比率。MSCI Japan Indexは大型株を大きく組み入れ中小型株をあまり組み入れていないことが分かる。
各種webサイトの情報をもとにスパークス作成。
TOPIXは2015年6月末現在。詳細は、
http://www.jpx.co.jp/markets/indices/topix/
MSCI Japan Indexは2015年7月10日現在。この指数との連動を目指したiShare MSCI Japan ETFの組入比率を用いた。詳細は、
https://www.ishares.com/us/products/239665/ishares-msci-japan-etf

図2:iShares MSCI EAFE Minimum Volatility ETF 運用残高。低リスク型ETFの残高が今年に入ってから特に増えている。Bloombergよりスパークス作成。

図3:TOPIXとMSCI Japan Minimum Volatility Indexの組入比率。中型寄りの大型株を非常に大きく組み入れ、超大型株と中小型株の組み入れが少なくなっていることが分かる。
各種webサイトの情報をもとにスパークス作成。TOPIXは図1と同じ。MSCI Japan Indexは2015年7月10日現在。この指数との連動を目指したiShare MSCI Japan minimum Volatility ETFの組入比率を用いた。詳細は、
https://www.ishares.com/us/products/264613/ishares-msci-japan-minimum-volatility-etf

図4:図3のうち上位30銘柄を拡大して表示。

※当コラムは執筆者の見解が含まれている場合があり、スパークス・アセット・マネジメント株式会社の見解と異なることがあります。

このページのコンテンツは、スパークス・アセット・マネジメント㈱の協力により、転載いたしております。
配信元: みんかぶ株式コラム

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