リズム感の変化
トランプ新大統領が決定して、マーケットの景色が一変、これまでの常識・感覚が通用しないような展開となっている。今回と似たような展開は、2012年11月の党首討論会(野田・安倍)、解散・総選挙を経て、民主党から自民党へ政権が変わった時だ。
党首討論会前日には79円台だったドル円は、安倍第二次内閣誕生に伴う期待先行で、1ヶ月で約10円上昇し、2013年4月の黒田バズーガー砲(量的・質的金融緩和導入)により、100円台を回復。野田政権の際には、50円まで下げるとの見方もあったドル円の景色が政権交代で一変。200日移動平均線を下値支持として、黒田バズーガー第二弾もあり、押し目や保合いでの調整を経ながら、2015年の125円台まで大幅続伸となった。
今回のトランポリン相場は、この時よりもスピード感がある展開だ。値位置は違うものの、期待先行から2週間ほどで10円以上の急騰となっている。大統領就任前の空白期間と言う事も、投機的な動きや、各市場でこれまで積み上げてきたポジションの巻き戻しを加速させたかもしれない。ドル円は、2015年6月高値~2016年6月安値までの下げ幅に対する61.8%戻し(115.59円水準)~心理的節目115円を試す流れだが、選挙期間中に保護主義を掲げてきたトランプ次期大統領が、米製造業の意向を無視して、どこまでドル高を容認するのか否かは不透明だ。今回の株高で潤ったのは、やはりエスタブリッシュメント(支配階級)で、トランプ勝利に貢献した没落する白人中間層らへの恩恵は想定的に少ないだろう。ドル高と共に新興国通貨・株価が売られており、米利上げが新興国リスクに繋がるリスクも残ったままだ。アベクロ相場のような、第一弾・第二弾のドル高相場になるためには、やはり、新政権での通貨政策がドル高となる必要があろう。
来年125円との声も出始めているが、12月の米利上げは95%以上織り込まれている状態で、何の調整もなしに、上げ続ける相場はない。11月24日の感謝祭、30日のOPEC総会、12月2日の雇用統計、4日のイタリア国民投票、オーストリアのやり直し大統領選挙、13-14日のFOMCなど、急速に進んだトレンドの手仕舞いになりそうなイベントが年末にかけて相次ぐ。
相場の最終局面は往々にしてオーバーシュートするものだが、売り方が踏まされ・踏まされ、お手上げになった時、遅れてくる負け組投資家層が強気で買い付いた時が、振り返って見れば天井となるもの。新政権の通貨政策が見えてくる前の高値掴みは避けたいと考える。リズム感の大きな変化がマーケットを読み難くしているが、トランポリンでのジャンプのように、アップダウンとも急速に動くリスクにも警戒したい。