ドル売り・円買いポジションの巻き戻し
ドル円は安値109円26銭から、高値111円80銭まで上昇、ドル高近辺で引けた。直接の材料は、日銀の追加緩和期待だ。
このドル円の急反発を、シカゴIMM通貨先物市場における、ドル円ポジションの推移から解説してみよう。
この資料をもとに私は右上のグラフを作成した。数値発表が現在の形式となった2012年5月から、直近4月19日までの数値だ。グラフ上部の黄色線が円ロング、茶色線が円ショート、シカゴの取引はドル建てなので、どちらの数値も対ドルとなる。そこで、緑色線がドル円のネットポジションとなるのだが、2016年初頭以来、ドルショート・円ロングが拡大していることが分かる。
グラフ下部は、同時期のドル円レートの推移だ。右肩上がり・右肩下がりなどと言われるトレンドは、貿易実需や長期投資家の動向を反映する。一方で、ドル円レートの短中期の波動は、緑色線に見られるシカゴなど投機筋のポジションをよく反映していることが分かる。つまり、年初来円高となった原因の一部は、投機筋の記録的な円買いを反映していた。その円買いは、少なくとも先週の前半までは続いていた。
ところが、ドル円レートの年初からの部分を拡大してみると、投機筋の円買いにも関わらず、ドル円はいったんの底打ち感を強めていたことが分かる。
ドル円は4月7日に安値107円66銭を付け、翌週11日に63銭まで売られるが、その日は、ほぼ寄引同事線となる。また、安値を3銭だけ更新したとはいえ、その後の展開次第ではダブルボトムと見なせる形となる。つまり、売り込んでも、レートが下げなくなってきたのだ。
翌週18日は再度、下値を試しに行くが、安値は107円84銭と、前の安値から切り上げた。この時点でもドルショート・円ロングのポジションは拡大中だが、チャート的には更なるドル安が見込めなくなってきており、次週の米連銀と日銀による金融政策発表を前に、週末までに膨大なポジションを少しでも軽くしておきたい気持ちが起きるのは自然だった。私などは、この展開で、そういう気持ちが起きないディーラーを危ういと見なす。
シカゴ筋が少なくとも19日まではドル売りで攻めているのに、ドルが下げなくなったのは何故か? 言うまでもないことだが、シカゴ筋だけが市場参加者ではないからだ。実需もいれば、長期投資家もいる。
また、投機筋でも金融機関のディーラーは、あまりIMMを使わない。
現状の貿易実需はむしろ円買い超だが、先週は長期投資家が外貨投資を拡大するとの報道が目立っていた。郵貯、生保、損保などだ。これは中長期的な円売りを示唆する。仮に、そういった人たちが動かなくても、上のローソク足チャートを見ていれば、最速で12日か13日に、遅くても20日には、いわゆる谷越え確認の判断がついていた。そこに出たのが、「貸出支援基金の金利をマイナスにする」かもとの報道だった。