調整は予想されるものの、日柄調整となる可能性も
事の真偽は不明だが、G20前には、オバマ大統領が2月24日に貿易相手国の為替操作を阻止する措置が盛り込まれた関税関連法案に署名、同法が成立しており、円安(通貨安政策)について、米財務省(ルー財務長官)やヒラリー・クリントン前国務長官から牽制が出ていた事を考慮すると、アベノミクス相場が始まって以降の円安ドル高容認姿勢に変化が出ている可能性は高いだろう。黒田日銀総裁は4日の参院予算委員会で、「現時点で、さらにマイナス金利を下げることは考えてない」と述べており、米当局を刺激しないようにしているようにも感じられる。こういった中、ドルのサイクルトップ、NY金のサイクルボトムが確認されつつあるとの見方が市場では強まっている。
G20財務相会合、スーパーチューズデーと言ったイベントを通過し、足元の注目イベントは、米雇用統計と全国人民代表大会(全人代)、そして日米欧の金融政策(ECB理事会・FOMC・日銀金融政策決定会合)だ。米2月雇用統計の事前予想は失業率が4.9%、非農業部門雇用者数が19.5万人増、平均時給は前月比+0.2%、労働参加率は62.8%。既に発表されたADP雇用統計は、強気の内容となっており、それ以上に強気の内容とならなければ、米国の追加利上げ思惑は高まり難いだろう。今年に入ってからの金相場の強気な流れを見る限り、ドルの戻りは売られやすく、金の押し目は買われやすい流れが続きそうだ。
5日から全人代が開催される。中国経済に関する数値目標が発表される予定で、財政赤字拡大を容認して財政出動で、どの程度の景気対策を打つのかが注目だ。10日には追加緩和が期待される欧州中央銀行(ECB)理事会が控えており、原油が安値圏で底堅さを見せ始める中、市場の期待に背かない緩和策が採られれば、2月に大きく売られた株式・ドルの自律反発局面が、もうしばらく続くかもしれない。
ドルとの逆相関のNY金の季節傾向(2000年~)を振り返ると、3月は年間で最も陽線確率の低い月でもある。長期の上昇トレンドが再開したと見られるNY金も、年初の大幅続伸に対する調整が3月に入る可能性がある事も、ドル反発の一因になるかもしれない。
テクニカル面からは115円台の攻防が焦点だ。同水準を抜ければダブルボトム完成、抜け切れなければ110‐115円でのボックス相場継続となろう。今年は米大統領選挙の年であり、過去の例ではリーマンショックのあった2008年以外は、ドル円は変動幅が小さい傾向がある。既に、過去の大統領年の平均値幅の8-9割がたの値幅を、この1-2月で出し切っており、レンジブレイクしても、その後の伸びは、それほど大きくならないであろう。3月にドル円・NY金、それぞれ修正高、修正安があっても、大きな値幅ではなく日柄で調整される可能性もありそうだ。