年間レンジを、ほぼ出し切った可能性も
中国勢が旧正月(春節)入りで下げが一服する期待もあったが、ドイツ銀行のCDS急騰など、リスク回避は欧州にも飛び火し、世界的に株価が急落、ドル売りも加速。ドル円は110円台まで続落、日経平均も15,000円を割り込む水準まで売り込まれ、アベノミクス相場の終焉が意識され始めている状況だ。一方、リスク回避の流れの中、大きく買い進まれたのが「金(GOLD)」だ。昨年は「モノの顔」として生産コスト割れ水準まで売られた金だが、年が変わり「安全資産としの顔」「通貨の顔」が輝き始めている。
今週のドル円は、ドイツ銀行の債券買い戻し発表をきっかけとする銀行株の上昇や原油先物価格の急騰、堅調だった1月米小売売上高など好材料が重なり反発した先週のポジション調整の動きを引き継いでいるが、これまでの支持線である115~116円が抵抗となり、上値が重くなっている。5匹のクジラの買いに期待する向きもあるが、ポートフォリオ・リバランスがほぼ一巡した中、海外証券投資絡みのさらなるドル買いは期待薄だ。10日のイエレンFRB議長証言で、3月FOMCでの追加利上げ観測が大きく後退している中、日本の経常収支も急増しており、ドル円が自律反発以上の高値を付ける可能性は低くなっている
NYダウもダブルボトムを形成しつつあるものの、ネックライン(2月1日高値)と同水準の16500円水準を明確に上抜いてこないと、ダブルボトム完成とはならない。
キーとなるのが、イランのザンガネ石油相発言で反発した原油市場だが、依然としてNY原油は30ドル±5ドルのレンジで底練りを形成し始めたばかりで、「OPECの歴史は減産破りの歴史」とも言われる中、レンジを放れるまでは、産油国の協調姿勢も見極めが必要で、株価やドルにとって新たな上昇トレンドを形成するような追い風にはなり難いだろう。
米大統領選挙年のドル円の変動幅は他の年と比較して低い傾向がある。今年は既に1月~2月の値動きで、1992年以降の大統領選挙年の年間平均値幅約13円(2008年のリーマンショック時23.29円を除く)をほぼ達成しており、2月末に予定されている上海G20で、一部で噂された「中国版プラザ合意」などの波乱がなければ、1月~2月で年間レンジの90%強を出し切った事で、スーパーチューズデーや全人代を見極めようと徐々に小動きに収れんしていく展開も想定される。
ちなみに、歴史をさらに遡り、本年1月29日高値が年間最高値と仮定して、1988年以降の大統領選挙年の平均値幅(リーマンショック時を含む)を差し引くと、106円台がカウントできる。2008年のリーマンショック時を当てはめると98円台もカウントできる。仮にレンジ収れんではなく、新たな金融危機などから2月11日安値を割り込んだ場合の目安としたい。