哲人セネカの言葉

[kouboudaisiさん]

　　　　　　　　　　　　「セレヌスへの助言」

　一つの旅の後に別の旅が企てられ、見世物に別の見世物が代わる。かくしてルクレティウスが言ったように、「このようにして誰もが、絶えず自分自身から逃れようとする」。

そかし、それが何になるのか、その人が自分自身から逃れられないならば？

自分が自分自身のあとを追い、ついには最も厄介な同伴者になるだけです。

だから我々は知らなければなりません。我々が苦しむのは、環境に原因があるのではなくて、我々自身が悪いのです。我々が弱いために何事にも耐えられず、苦労でも、快楽を我慢することでも、自分自身でもその他何でも、ちょっとの間も耐えることが出来ないのです。

そのことがある人々を死へと追いやりました。彼らが何度目標を変えてもまた元の場所に戻ってきてしまい、新しいものの入る余地が残っていなかったからです。

かくして彼らは、人生も、世界そのものも嫌になり始め、怠惰な享楽生活の果てにひそかに心の中にあの疑問がもち首をもたげるののです。

「こんなことがいつまでつづくんだ？」

家にいても外に出ても為すことのない空虚感にとらわて刺激を外に求めたがる。外に出て次々に変るものにいっとき心を楽しませても、自分一人に戻ればまた空虚感と自己嫌悪にとらわれる。

哲人セネカの精神分析による助言が力を持つのは、それがつねにこういう正確な現実観察に基づいているからです。環境をいくら変えてみても駄目だ。

本当の原因は自分自身にあるのだから、とセネカは断言するのです。