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記憶にありません

登場人物:
LOP:主人公(記憶回路に問題があって、クヨクヨできない体質。)
Q美:LOPの妻(自分のことを用心深い性格だと思っているが、残念ながらその用心には大きなアナがあいてる。)


「ああ、もう出かけないと。」
「え、そんな急いでるなんて、なんか仕事?。」
「いや、そうじゃないけど、昨日ねぇ、病院にお見舞いに行ったんだ。ほら、Nさんの件で。」
「また今日もお見舞い?。」
「それがねぇ、病院の入り口のところで声をかけられてさ・・・、<ホント久しぶりだね、どう元気にやってる?、」>とか、すごくフレンドリーな感じで。」
「ダレなん、それ?なんかヒッス項目の入力が欠けてるよ。」
「うん、ちょっと恥ずかしんだけど、そんとき、その人のこと思い出せなくてさ・・・。でもフィンキ的に言い出せなくて、(まさか、今さらあなた誰です?とか言えなくてねぇ、)調子合せて世間話しちゃったんだ。」
「あなたボケるのちょっと早くね?。でもまあ、(名前がわかんないけどこのヒト知ってる人だ・・・、)って思ってエシャクぐらいよくするケド。」
「うん、軽いノリだし、(世間話程度だからダイジョブだろう・・・、)と思ってたんだけど、株のこととか話がもりあがってねぇ。その人はむかし証券会社にもいたんだって・・・。有望そうな株の情報とか交換できたんだよ。でも、それからがねぇ。」
「そのあとバレたの?そのヒトのこと忘れてたって。」
「いやぁ、それが違うんだ・・・。立ち話が終わって、その人と別れた後で気付いたんだけど、椅子に小さなトートバッグが置いてあったんだ。」
「忘れ物?。」
「うん、会ったとき持ってたのは知ってたからその人の持ち物なんだと思うけど、名前入りじゃないんだよね、これが。」
「ケーサツに届けたの?」
「とりあえず、病院の守衛の方と一緒に中をあらためさせてもらったんだ。診察券とかあれば一発でわかるし、緊急に必要なものが入ってたとき、警察に届けるより本人に連絡したほうが早いから。」
「そりゃそうだケド、なんかわかったの?。」
「残念ながら、手がかりなしだったんだ。身元がわかるものとか、貴重品らしきものもなかったんだけど、本人にとっては大切なものかも知れないんだしねぇ。」
「じゃ、どうしたの?。」
「とりあえず取得物ということで、病院に預けてきたんだけど、帰ってきてから、会話の中で出てきたことをいくつかメモしたんで、確実に特定できると思うんだ。今日はすこし早めに出て、病院に寄って行こうかと思って。」
「へー。アナタにしては気が利いてるね。どんなコト?。」
「うん。その人は物忘れ外来に来てたんだ。あとマッタク知り合いじゃないことが判明した。」
「はあ・・・そうきたか、ホント驚かされたよ。アナタちょっとバカくね。」
「うーん。参加したことのない会の話が出てたんだよ、メモの最後のほうで。そこでやっと気づいた。」
「ソーナンデスカ。じゃ、ついでにアナタも物忘れ外来にかかってきたらいいんじゃ・・・。」

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