電磁パルス攻撃は「現実の脅威」

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電磁パルス攻撃は「現実の脅威」

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 「一発の核爆弾が我が国上空のはるかな高さで爆発することで、電力供給網と死活的に重要なインフラが崩壊し、何百万もの生命が危険にさらされる。北朝鮮が核弾頭搭載可能なミサイルを持ち、イランも保有に近づく現状を見れば、電磁パルス攻撃は理論上の懸念ではなく、現実の脅威である」――。


 昨年7月、ドナルド・トランプ氏を大統領候補に正式指名した米共和党大会で採択された綱領に、こんな一項が盛り込まれていた。


 電磁パルスは、一定の高度で核爆発が起きた時に起きる電磁波のことだ。核爆発により放出されるガンマ線が空気分子と衝突することで発生する。電磁パルスが地磁気に引き寄せられて地上に向かう時に大電流となり、電子機器や送電線などに入り込んで破壊してしまうのだ。


 2004年に米議会に提出された専門家委員会の報告書「電磁パルス攻撃の合衆国への脅威評価」によると、電磁パルスは核爆発が地上40~400キロ・メートルの高さ(30~500キロ・メートルという説もある)で起きる時に最も発生しやすい。大気が適度に希薄なためにガンマ線が爆発地点から遠方まで拡散するためだという。爆発地点が米国中部の上空高度400キロ・メートルなら、地上の影響範囲は全米をすっぽり覆う半径2200キロ・メートルに達するという試算もある。



◆電力システム崩壊なら「1年後に9割死亡」


では、国全体で長期間、電力がまったく使えなくなると、どのようなことが起きるのだろうか。

そのイメージをつかむのに、今年2月公開の日本映画「サバイバルファミリー」(矢口史靖監督)が参考になる。平凡な一家の視点から、現代人の生活がどれほど電力に依存し、それがないと、どんなことが起きるかがわかりやすく描かれていた。


 普段と変わらないある日、原因もわからず電気が止まる。

目覚まし時計もスマホもテレビも、冷蔵庫もガスコンロも水道も使えない。

今何時かもわからないまま外へ出ると、エレベーターも信号機も自動車も電車も、何もかも止まっている。

現金自動預け払い機(ATM)は作動せず、預金データも消えてしまっている。

食料や水、日用品は次第に尽きていく――。



核爆発の高度が高ければ高いほど被害を受ける地域の半径は拡大する。

2004年に米議会に提出された専門家委員会の報告書「電磁パルス攻撃の合衆国への脅威評価」で示された被害推計を日本に当てはめると、東京上空高度30kmで爆発した場合、中国地方を除く本州が被害地域に収まり、高度100kmでは北海道から本州、四国、九州一帯まで覆われる。



3・11の悪夢がよみがえるのが原子力発電所だ。

送電線からの外部電源を利用する原発が非常用電源や自家発電で停電に対処できない場合、冷却ができなくなり、福島原発事故のようなメルトダウンが現実味を帯びてくる。 

       

爆風や放射能の影響で人が死ぬことはないが、直ちに人命に関わるケースも発生する。医療分野では生命維持装置や心臓ペースメーカーが停止する恐れもある。

航行中の飛行機が制御機能を失って墜落したり、運転中の自動車の電気系統が破壊されて交通事故が多発したりすることも考えられる。


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